意地を張っていたら6年もたってしまいました

Hkei

文字の大きさ
上 下
1 / 27

1 事の始まり

しおりを挟む
ここは緑豊かで、農作物が豊富に取れるラファラン国。国全体がゆったりとしていて平和な国である。

貴族街にあるダンヴィル公爵家では長女のレイラ・ダンヴィルの10歳の誕生日パーティーが華やかに行われていた。

屋敷の中とは思えないほどの大きなホールでは楽団の演奏が続き、たくさんのメイド達が飲み物を配っていた。部屋の壁際には豪華な食事も用意されており、好きなものを食べれるようになっている。

ダンヴィル公爵は外交大臣として働いているため訪問客も絶えない。そのお客全てに今日の主役であるレイラは挨拶をしていた。

栗色の髪を綺麗に編み込み、茶色の瞳をキラキラと輝やかし、可愛らしいおじぎを披露してみんなの注目を浴びていた。

大好きな黄色の新しいドレスを着れて、みんなからお祝いを言ってもらい、褒めてもらえるのがとても嬉しかった。

普段何事も頑張って努力して身につけたとしても、できて当たり前と言われ、完璧な兄と比べられ褒められる事が少なかったレイラにとって無条件に褒めてもらえる今日はとても楽しい日であった。

2歳年上の兄アルフも寮から戻り学友を何人か連れて戻ってきていて、最上級に褒めてくれた。

「レイラ。お誕生日おめでとう。今日は一段と可愛いね。さすがは私のお姫様だね」
「お兄様ありがとうございます」

「殿下もそこにいる…」

アルフが振り向いて入口の方をみると、レイラの婚約者の第一王子セドリックが沢山の女の子に囲まれているところだった。
サラサラな綺麗なストレートの金髪に吸い込まれそうな深い緑色の目をしており端正な顔立ちな為注目を集める。
王宮でのパーティーではここまで囲まれる事もないだろうが、個人の誕生日パーティーなので女性陣の遠慮がない。

セドリックはアルフと同じ歳で学園でも同じクラスで仲はいい。

レイラは少しムッとした顔をしてその光景を眺めていた。
セドリックはそれを認識していたが周りの女の子を無下に扱うわけにもいかず中々レイラのところに行けなかった。

「殿下も大変だな。もうすぐ解放されるよ」

「そうだといいのですが…」


セドリックは一人一人に当たり障りのない会話をしながら、徐々に人数を減らしだいぶ時間がたってからレイラの前にやってきた。

「すまない。時間がかかった」
「殿下の人気は素晴らしいですわね」

ちょっと拗ねたように言うとセドリックはクスッと笑いながらホールを見渡した後、レイラと向かいあう。

「お嬢様方は皆可愛いね」
「え?」

「レイラと同じ年頃の子が多いからはりきって着飾っていて本当に可愛いよね。当然…」



「セドリック様は…一番に私を見ては下さらないのですね」

涙が出そうになるのを必死に堪える。

今日は…今日だけは自分が一番になれる日で褒めてもらえる日で…
セドリックの髪色のドレスを着て、朝から時間をかけ準備をしてきた。

──セドリック様には褒めていただきたかった…

「何を…怒っているのか?」

わけが分からないと眉を寄せて聞いてくるセドリックに悲しくなると同時怒りも覚えた。

──婚約者である私の誕生日パーティーで他の令嬢ばかり褒めて、そんなに私のことが嫌いですか!


「セドリック様が悪いのですわ!」
「そうか?」

セドリックはアルフや他の学友に自分が悪いのか?と指をさしながら聞いていた。


「もう…セドリック様なんて大嫌いです!!」

思わず言ってしまったが、訂正することなくそのままクルッと向きを変え、下を向いたままその場から逃げるように正反対の方へ歩いて行った。

「レイラ!」

アルフはセドリックを一瞬睨んでから妹の後を追いかけた。

「嫌い?…何故だ?」
「殿下…さすがに…」

状況を把握できていないのはセドリック一人であった。



しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

【完結】義姉の言いなりとなる貴方など要りません

かずきりり
恋愛
今日も約束を反故される。 ……約束の時間を過ぎてから。 侍女の怒りに私の怒りが収まる日々を過ごしている。 貴族の結婚なんて、所詮は政略で。 家同士を繋げる、ただの契約結婚に過ぎない。 なのに…… 何もかも義姉優先。 挙句、式や私の部屋も義姉の言いなりで、義姉の望むまま。 挙句の果て、侯爵家なのだから。 そっちは子爵家なのだからと見下される始末。 そんな相手に信用や信頼が生まれるわけもなく、ただ先行きに不安しかないのだけれど……。 更に、バージンロードを義姉に歩かせろだ!? 流石にそこはお断りしますけど!? もう、付き合いきれない。 けれど、婚約白紙を今更出来ない…… なら、新たに契約を結びましょうか。 義理や人情がないのであれば、こちらは情けをかけません。 ----------------------- ※こちらの作品はカクヨムでも掲載しております。

【本編完結】婚約を解消したいんじゃないの?!

as
恋愛
伯爵令嬢アーシアは公爵子息カルゼの婚約者。 しかし学園の食堂でカルゼが「アーシアのような性格悪い女とは結婚したくない。」と言っているのを聞き、その場に乗り込んで婚約を解消したつもりだったけどーーー

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

お別れを言うはずが

にのまえ
恋愛
婚約者に好きな人ができたのなら、婚約破棄いたしましよう。 エブリスタに掲載しています。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

妹ばかり見ている婚約者はもういりません

水谷繭
恋愛
子爵令嬢のジュスティーナは、裕福な伯爵家の令息ルドヴィクの婚約者。しかし、ルドヴィクはいつもジュスティーナではなく、彼女の妹のフェリーチェに会いに来る。 自分に対する態度とは全く違う優しい態度でフェリーチェに接するルドヴィクを見て傷つくジュスティーナだが、自分は妹のように愛らしくないし、魔法の能力も中途半端だからと諦めていた。 そんなある日、ルドヴィクが妹に婚約者の証の契約石に見立てた石を渡し、「君の方が婚約者だったらよかったのに」と言っているのを聞いてしまう。 さらに婚約解消が出来ないのは自分が嫌がっているせいだという嘘まで吐かれ、我慢の限界が来たジュスティーナは、ルドヴィクとの婚約を破棄することを決意するが……。 ◆エールありがとうございます! ◇表紙画像はGirly Drop様からお借りしました💐 ◆なろうにも載せ始めました ◇いいね押してくれた方ありがとうございます!

私のことが大嫌いらしい婚約者に婚約破棄を告げてみた結果。

夢風 月
恋愛
 カルディア王国公爵家令嬢シャルロットには7歳の時から婚約者がいたが、何故かその相手である第二王子から酷く嫌われていた。  顔を合わせれば睨まれ、嫌味を言われ、周囲の貴族達からは哀れみの目を向けられる日々。  我慢の限界を迎えたシャルロットは、両親と国王を脅……説得して、自分たちの婚約を解消させた。  そしてパーティーにて、いつものように冷たい態度をとる婚約者にこう言い放つ。 「私と殿下の婚約は解消されました。今までありがとうございました!」  そうして笑顔でパーティー会場を後にしたシャルロットだったが……次の日から何故か婚約を解消したはずのキースが家に押しかけてくるようになった。 「なんで今更元婚約者の私に会いに来るんですか!?」 「……好きだからだ」 「……はい?」  いろんな意味でたくましい公爵令嬢と、不器用すぎる王子との恋物語──。 ※タグをよくご確認ください※

【短編完結】婚約破棄ですか?了承致いたしますが確認です婚約者様

鏑木 うりこ
恋愛
 マリア・ライナス!お前との婚約を破棄して、私はこのリーリエ・カント男爵令嬢と婚約する事にする!  わたくしの婚約者であるサルトル様が声高に叫びました。  なるほど分かりましたが、状況を良く確認させていただきましょうか?   あとからやはりなかった、間違いだったなどと言われてはたまったものではございませんからね?  シーン書き2作目です(*'ω'*)楽しい。

処理中です...