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1 事の始まり
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ここは緑豊かで、農作物が豊富に取れるラファラン国。国全体がゆったりとしていて平和な国である。
貴族街にあるダンヴィル公爵家では長女のレイラ・ダンヴィルの10歳の誕生日パーティーが華やかに行われていた。
屋敷の中とは思えないほどの大きなホールでは楽団の演奏が続き、たくさんのメイド達が飲み物を配っていた。部屋の壁際には豪華な食事も用意されており、好きなものを食べれるようになっている。
ダンヴィル公爵は外交大臣として働いているため訪問客も絶えない。そのお客全てに今日の主役であるレイラは挨拶をしていた。
栗色の髪を綺麗に編み込み、茶色の瞳をキラキラと輝やかし、可愛らしいおじぎを披露してみんなの注目を浴びていた。
大好きな黄色の新しいドレスを着れて、みんなからお祝いを言ってもらい、褒めてもらえるのがとても嬉しかった。
普段何事も頑張って努力して身につけたとしても、できて当たり前と言われ、完璧な兄と比べられ褒められる事が少なかったレイラにとって無条件に褒めてもらえる今日はとても楽しい日であった。
2歳年上の兄アルフも寮から戻り学友を何人か連れて戻ってきていて、最上級に褒めてくれた。
「レイラ。お誕生日おめでとう。今日は一段と可愛いね。さすがは私のお姫様だね」
「お兄様ありがとうございます」
「殿下もそこにいる…」
アルフが振り向いて入口の方をみると、レイラの婚約者の第一王子セドリックが沢山の女の子に囲まれているところだった。
サラサラな綺麗なストレートの金髪に吸い込まれそうな深い緑色の目をしており端正な顔立ちな為注目を集める。
王宮でのパーティーではここまで囲まれる事もないだろうが、個人の誕生日パーティーなので女性陣の遠慮がない。
セドリックはアルフと同じ歳で学園でも同じクラスで仲はいい。
レイラは少しムッとした顔をしてその光景を眺めていた。
セドリックはそれを認識していたが周りの女の子を無下に扱うわけにもいかず中々レイラのところに行けなかった。
「殿下も大変だな。もうすぐ解放されるよ」
「そうだといいのですが…」
セドリックは一人一人に当たり障りのない会話をしながら、徐々に人数を減らしだいぶ時間がたってからレイラの前にやってきた。
「すまない。時間がかかった」
「殿下の人気は素晴らしいですわね」
ちょっと拗ねたように言うとセドリックはクスッと笑いながらホールを見渡した後、レイラと向かいあう。
「お嬢様方は皆可愛いね」
「え?」
「レイラと同じ年頃の子が多いからはりきって着飾っていて本当に可愛いよね。当然…」
「セドリック様は…一番に私を見ては下さらないのですね」
涙が出そうになるのを必死に堪える。
今日は…今日だけは自分が一番になれる日で褒めてもらえる日で…
セドリックの髪色のドレスを着て、朝から時間をかけ準備をしてきた。
──セドリック様には褒めていただきたかった…
「何を…怒っているのか?」
わけが分からないと眉を寄せて聞いてくるセドリックに悲しくなると同時怒りも覚えた。
──婚約者である私の誕生日パーティーで他の令嬢ばかり褒めて、そんなに私のことが嫌いですか!
「セドリック様が悪いのですわ!」
「そうか?」
セドリックはアルフや他の学友に自分が悪いのか?と指をさしながら聞いていた。
「もう…セドリック様なんて大嫌いです!!」
思わず言ってしまったが、訂正することなくそのままクルッと向きを変え、下を向いたままその場から逃げるように正反対の方へ歩いて行った。
「レイラ!」
アルフはセドリックを一瞬睨んでから妹の後を追いかけた。
「嫌い?…何故だ?」
「殿下…さすがに…」
状況を把握できていないのはセドリック一人であった。
貴族街にあるダンヴィル公爵家では長女のレイラ・ダンヴィルの10歳の誕生日パーティーが華やかに行われていた。
屋敷の中とは思えないほどの大きなホールでは楽団の演奏が続き、たくさんのメイド達が飲み物を配っていた。部屋の壁際には豪華な食事も用意されており、好きなものを食べれるようになっている。
ダンヴィル公爵は外交大臣として働いているため訪問客も絶えない。そのお客全てに今日の主役であるレイラは挨拶をしていた。
栗色の髪を綺麗に編み込み、茶色の瞳をキラキラと輝やかし、可愛らしいおじぎを披露してみんなの注目を浴びていた。
大好きな黄色の新しいドレスを着れて、みんなからお祝いを言ってもらい、褒めてもらえるのがとても嬉しかった。
普段何事も頑張って努力して身につけたとしても、できて当たり前と言われ、完璧な兄と比べられ褒められる事が少なかったレイラにとって無条件に褒めてもらえる今日はとても楽しい日であった。
2歳年上の兄アルフも寮から戻り学友を何人か連れて戻ってきていて、最上級に褒めてくれた。
「レイラ。お誕生日おめでとう。今日は一段と可愛いね。さすがは私のお姫様だね」
「お兄様ありがとうございます」
「殿下もそこにいる…」
アルフが振り向いて入口の方をみると、レイラの婚約者の第一王子セドリックが沢山の女の子に囲まれているところだった。
サラサラな綺麗なストレートの金髪に吸い込まれそうな深い緑色の目をしており端正な顔立ちな為注目を集める。
王宮でのパーティーではここまで囲まれる事もないだろうが、個人の誕生日パーティーなので女性陣の遠慮がない。
セドリックはアルフと同じ歳で学園でも同じクラスで仲はいい。
レイラは少しムッとした顔をしてその光景を眺めていた。
セドリックはそれを認識していたが周りの女の子を無下に扱うわけにもいかず中々レイラのところに行けなかった。
「殿下も大変だな。もうすぐ解放されるよ」
「そうだといいのですが…」
セドリックは一人一人に当たり障りのない会話をしながら、徐々に人数を減らしだいぶ時間がたってからレイラの前にやってきた。
「すまない。時間がかかった」
「殿下の人気は素晴らしいですわね」
ちょっと拗ねたように言うとセドリックはクスッと笑いながらホールを見渡した後、レイラと向かいあう。
「お嬢様方は皆可愛いね」
「え?」
「レイラと同じ年頃の子が多いからはりきって着飾っていて本当に可愛いよね。当然…」
「セドリック様は…一番に私を見ては下さらないのですね」
涙が出そうになるのを必死に堪える。
今日は…今日だけは自分が一番になれる日で褒めてもらえる日で…
セドリックの髪色のドレスを着て、朝から時間をかけ準備をしてきた。
──セドリック様には褒めていただきたかった…
「何を…怒っているのか?」
わけが分からないと眉を寄せて聞いてくるセドリックに悲しくなると同時怒りも覚えた。
──婚約者である私の誕生日パーティーで他の令嬢ばかり褒めて、そんなに私のことが嫌いですか!
「セドリック様が悪いのですわ!」
「そうか?」
セドリックはアルフや他の学友に自分が悪いのか?と指をさしながら聞いていた。
「もう…セドリック様なんて大嫌いです!!」
思わず言ってしまったが、訂正することなくそのままクルッと向きを変え、下を向いたままその場から逃げるように正反対の方へ歩いて行った。
「レイラ!」
アルフはセドリックを一瞬睨んでから妹の後を追いかけた。
「嫌い?…何故だ?」
「殿下…さすがに…」
状況を把握できていないのはセドリック一人であった。
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