入厨 ‐いりくりや‐

天野 帝釈

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まぁまぁ美味しい話

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今日は最後に建てる家の仕上げのみだったので、昼飯時までには最後の仕事も終わった。

神主様が家になにか祝詞を呼んでいるのを聞きながら、あぁこの仕事ももう終わりかと思っていると、
同僚の数人に次の仕事はどうするのかと聞かれた。

まだ、決めちゃいないと伝えると、皆それぞれに案を出してきたり、紹介してくれると言う。

金にはなるしありがたいが、興味のある仕事がどうも浮かばない。

そうすると棟梁が、
「おめぇさんは真面目だし、手先も器用だ。料理もうまい。料理人になったらどうだい。」
と言ってくれた。

話を聞くと、小料理屋だが、真面目な若い男を一人探しているらしい。

給金は安いが、飯と寝床は与えてくれて、料理も一から教えてくれると言う。

小料理屋と言ってもそこそこ良い飯を売る店なので、賄も期待できそうだ。


正直給金等無くとも、男の以前の生活を思えば、飯が食えるだけ有り難いというものだ。

だが、以前紹介された泥棒仲間からの仕事も、金や名を上げるせっかくの機会だ。

少しばかり気になるというもの。正直金だけで言や、誰の仕事よりも儲かる。

男は少し答えに時間をくれと棟梁に伝えた。棟梁はおっかさんの事を心配してくれたが、
今朝の事を話すと、心ばかり最後の給金に色を付け、俺も手を合わせに行っても良いかと言ってくれた。



同僚達も同じように言ってくれたが、勘繰りがあったら困るのと、
あの家が見られるのは何だかこそばゆい感じがするので、葬式はひっそりと二人でやると礼を言っておいた。
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