入厨 ‐いりくりや‐

天野 帝釈

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お世話様

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さぁて、飯も鱈腹食った事だし、
とっととここらから離れて良さげな家を探すかぁと思った所、老婆がまた唸りだした。

汗や海風でべとついた額に手を添えると、人がこんな熱くなるのかと思うくらいには熱い。

呼吸がひゅうひゅうと小さくなり、今度はどうやら意識を失ったらしい。

やっぱりこりゃ老衰でなく、何かの病に違いねぇ。

俺の飯を食ったせいで死んだと思われちゃあ寝ざめが悪いと、他の布団と交換してやることにした。

布団を代えてやるにも、
今寝ているおんぼろより酷く薄い布団しかなかったが、これでも無いより大分ましだろう。

男は老婆の近くに寄っていって、老婆のおんぼろ布団を剥がすと、
まぁそこは想像以上に地獄絵図のようだった。いやはや蛆まで湧いている。

こりゃぁこの敷布団はもう駄目だろう。

着物も交換してやらなならねえ。

色々な意味で吐き気に耐えながら、汚ねぇもんは全てでかい石を重しにして海に突っ込んでやった。

しばらく時間がたったら一度引き上げてやろうと思ったのだ。

汚れが落ちりゃまだましになるだろう。

男は自分の布団など奉公先のとげとげした藁か、
宿で借りるもんしか知らないので洗い方の検討もつかなかった。
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