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番外編 お使いするゾンビ
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とある街の、小さい八百屋。俺はそこで働いていた。
毎日毎日働いても、来るのは顔見知りの人ばかり。安心して接客できるのは良いが、たまにはちょっとした刺激が欲しかった。
「ううー」
「ん?なんだ?」
何やら下の方から子供の声がして見てみると、頭にお札を貼った子供のゾンビが俺を見上げていた。
ゾンビに噛まれたらゾンビになる。そんな事を思い出して一歩離れようとしたが、子供ゾンビも一歩、ぴょんと跳ねて近づいてくる。
動き方がなんというか、ゾンビというよりキョンシーだ。
「うー、おぅぁいぇ…」
「な、なんだ?ん…?」
子供ゾンビは何か言いたそうに口を動かしたが、喋れないタイプらしくうまく聞き取れない。こんな感じのゾンビと暮らす人は、どうやって意思疎通しているんだろう?
「ん?お札になんか書いてある…これ買えって?」
子供ゾンビに貼ってあるお札に野菜が書いてある。これを買ってこいと言われたんだろう。
俺はお札を見せてもらいながら、書いてある野菜をかごに入れていった。
お札を剥がして俺に渡してきたから、買う野菜はこれで間違いないだろう。でも子供ゾンビがお札を剥がしてから動かなくなってしまった。
「……?おい、ゾンビくん大丈夫か?」
「…………ぉぅぁ…」
子供ゾンビの目線がゆっくりと俺が持っているお札に向く。これを貼らないと動けないらしい。頭にお札をぺたりと貼り付けると、子供ゾンビはさっきまでのように動き出した。
「あっ、えっと、お金700円。ある?」
「うーうー」
ゆっくりと子供ゾンビがバッグの中身を漁る。可愛い見た目のバッグの中には、三瓶ほどの防腐薬やお札がつまっていた。
「あ!」
「お…あったの?」
ててーん!といった感じで子供ゾンビは財布を俺に見せてきた。自分で開けられないらしく財布を押し付けてくる。
俺は財布の中に一枚だけ入っていた千円札を貰い、お釣りの300円を入れて子供ゾンビに返した。
「よし…じゃあ気をつけて帰…あ、名前なんていうの?ゾンビくん、」
「ぅーあ、ぅーあ、」
「ぅーあ?ええっと…ゆあ、じゃなくて…んー……」
ぅーあ、というイントネーションから導かれる名前を探す。この子供ゾンビはなんの警戒もなく店に入ってきて、一番に俺に声を変えてきた。
それに、この顔、どこかで見たことがある。
「ぅー、ゆー、ゆうま…優馬くん!?」
「うう」
こくんと優馬が頷く。昔母親と店に来たときは小さかったのに。子供の成長は早いなあと思うと同時に、この子がゾンビになっていた事に驚いた。
「優馬ーっ!迎えに来たぞー」
若い男性の声がした。その瞬間、優馬はぐるんと振り返り、すごいスピードで声の主の方まで跳ねていった。
「ちょ!野菜忘れてる!!」
ビニール袋を持って、優馬を追いかける。野菜を渡すと、優馬は嬉しそうに、う!と鳴いた。
「どうも、ありがとうございます。」
優馬を連れた若い男性は、優馬のことを少し褒めて、それから手を繋いで帰っていった。
「うぇぃい!あぃおお、あぇあ」
「買い物買えて嬉しいのか、ありがとうな優馬。」
二人の後ろ姿を眺めつつ、若い男性が優馬と会話しているところを見て、なんだか安心した。
そして、尊敬もした。意思疎通ができているらしいという事はきっと、想像力とかが豊かなのだろう。と。
毎日毎日働いても、来るのは顔見知りの人ばかり。安心して接客できるのは良いが、たまにはちょっとした刺激が欲しかった。
「ううー」
「ん?なんだ?」
何やら下の方から子供の声がして見てみると、頭にお札を貼った子供のゾンビが俺を見上げていた。
ゾンビに噛まれたらゾンビになる。そんな事を思い出して一歩離れようとしたが、子供ゾンビも一歩、ぴょんと跳ねて近づいてくる。
動き方がなんというか、ゾンビというよりキョンシーだ。
「うー、おぅぁいぇ…」
「な、なんだ?ん…?」
子供ゾンビは何か言いたそうに口を動かしたが、喋れないタイプらしくうまく聞き取れない。こんな感じのゾンビと暮らす人は、どうやって意思疎通しているんだろう?
「ん?お札になんか書いてある…これ買えって?」
子供ゾンビに貼ってあるお札に野菜が書いてある。これを買ってこいと言われたんだろう。
俺はお札を見せてもらいながら、書いてある野菜をかごに入れていった。
お札を剥がして俺に渡してきたから、買う野菜はこれで間違いないだろう。でも子供ゾンビがお札を剥がしてから動かなくなってしまった。
「……?おい、ゾンビくん大丈夫か?」
「…………ぉぅぁ…」
子供ゾンビの目線がゆっくりと俺が持っているお札に向く。これを貼らないと動けないらしい。頭にお札をぺたりと貼り付けると、子供ゾンビはさっきまでのように動き出した。
「あっ、えっと、お金700円。ある?」
「うーうー」
ゆっくりと子供ゾンビがバッグの中身を漁る。可愛い見た目のバッグの中には、三瓶ほどの防腐薬やお札がつまっていた。
「あ!」
「お…あったの?」
ててーん!といった感じで子供ゾンビは財布を俺に見せてきた。自分で開けられないらしく財布を押し付けてくる。
俺は財布の中に一枚だけ入っていた千円札を貰い、お釣りの300円を入れて子供ゾンビに返した。
「よし…じゃあ気をつけて帰…あ、名前なんていうの?ゾンビくん、」
「ぅーあ、ぅーあ、」
「ぅーあ?ええっと…ゆあ、じゃなくて…んー……」
ぅーあ、というイントネーションから導かれる名前を探す。この子供ゾンビはなんの警戒もなく店に入ってきて、一番に俺に声を変えてきた。
それに、この顔、どこかで見たことがある。
「ぅー、ゆー、ゆうま…優馬くん!?」
「うう」
こくんと優馬が頷く。昔母親と店に来たときは小さかったのに。子供の成長は早いなあと思うと同時に、この子がゾンビになっていた事に驚いた。
「優馬ーっ!迎えに来たぞー」
若い男性の声がした。その瞬間、優馬はぐるんと振り返り、すごいスピードで声の主の方まで跳ねていった。
「ちょ!野菜忘れてる!!」
ビニール袋を持って、優馬を追いかける。野菜を渡すと、優馬は嬉しそうに、う!と鳴いた。
「どうも、ありがとうございます。」
優馬を連れた若い男性は、優馬のことを少し褒めて、それから手を繋いで帰っていった。
「うぇぃい!あぃおお、あぇあ」
「買い物買えて嬉しいのか、ありがとうな優馬。」
二人の後ろ姿を眺めつつ、若い男性が優馬と会話しているところを見て、なんだか安心した。
そして、尊敬もした。意思疎通ができているらしいという事はきっと、想像力とかが豊かなのだろう。と。
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