今日から死体と暮らします。

まぐろ

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跳ねる、歩く

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優馬を連れて、家の前を散歩する。俺が二歩歩く度、優馬がぴょんと跳ねてついてくる。
自主的に歩かせる事で、少しずつ人間に戻せるはず。だけど優馬はぴょんぴょんと跳ねるだけで歩いてくれなかった。

「優馬、こう…歩けない?」

「う」

俺が止まると、優馬もピタリと立ち止まる。
手を繋いで歩くと、優馬は少しずつ俺の真似をして歩こうとし始めた。
片足を少し上げては跳ねて、また跳ねてを繰り返す。
俺が止まると、優馬は褒めろと言わんばかりに俺のことを見た。

「なんだ、できそうじゃん。いいぞ優馬、その調子。」

「うーうーうー」

優馬は一定の感覚で唸る。多分鼻歌を歌っているんだろう。俺が昔よく鼻歌で歌っていた歌は、優馬はよく曲名を聞いてきた。まだ覚えているんだろうか。

優馬はゆっくりとした動きで一歩を踏み出し、また一歩、また一歩と進んでいく。形的には人間よりになったがまだ動きがぎごちない。
一番の目的は楽しんでもらうことだから動きは追々やっていこう。

「散歩楽しいな。また一緒にキャッチボールとかしような。」

「うー」

ゆっくりと振り向いた優馬の目が輝いた気がした。優馬は本当に遊ぶのが大好きだったから嬉しかったのかもしれない。

「っう」

「あぶねっ」

振り向きつつ歩いた優馬がよろける。俺はバランスを崩した優馬を抱きかかえた。よかった、今回は転ばせずに済んだ。

「大丈夫か?優馬、転けないように気をつけるんだぞ。」

「ぁ…う」

そっと優馬を立たせると、優馬は俺によりかかるように抱きついてきた。たくさん歩いて疲れたのかもしれない。もう少しだけ適当に歩いて、俺達は家に帰った。

「うーぅ、うー、うぉ、ぁぅ、」

帰ってきてからというもの、優馬が何か言いたげに口をパクパクさせている。でもそれが俺に伝わることはなかった。
輸血パックを用意しても首を振るし、玩具を用意しても俯くだけ。優馬は何を伝えたいんだろう。
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