今日から死体と暮らします。

まぐろ

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用品店

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優馬がゾンビになって、その行動パターンも覚えられてきた。きっと今なら、優馬を連れて出かけることができそうだ。
そう思って俺は、ゾンビ用品が売っている小さな店へと向かった。ゾンビ化の増加に伴い、こういった店も増加していった。

「いらっしゃいませー」

ゾンビ用品の店は、店員もゾンビであることが多い。なぜなら、ゾンビに関しての質問に一番答えられるのはゾンビ自身だからだ。

「どうだ優馬、気になるものあるか?」

「ぅー……」

優馬は俺の手を握って、小さな声で唸る。そういえば始めて来た場所にはいつもこんな感じだったっけ。
そんな様子ながらも優馬は、ある一点を見つめていた。見つめているあたりには、ゾンビが飲む防腐薬がある。

「これか…あ、あっちにお札あるぞ。」

警察が優馬に付けたものと同じお札が売られている。原理はわからないがゾンビが動きやすくなるお札だ。白い札が赤く縁取られた、そんな見た目だ。
メモのような使い方もできるから、忘れものが多くなってしまったゾンビにも需要がある。
お札を貼る場所はどこでもいいらしいが、優馬は頭に貼り付けるのが気に入っていた。

「うーうー」

「どうしたー?んー…?あー…」

優馬がゆっくりとした動きで指差した先には、一人のゾンビがいた。それも、少し腐り始めてもう人間には戻れないであろうゾンビだ。
でもきっとあの人はゾンビとして生きることを決めたのだろう。花や綺麗な飾りで傷を飾り、わざと見せるような服を着て歩いている。
優馬と違って表情も明るく、すれ違う人に挨拶をしている。なんだか楽しそうだ。

「いいな………優馬も、あんな顔してくれたらいいのに……」

「………ぅ…」

俺は会計を済ませ、店を出ようとした。だが、優馬がバランスを崩したのか転んでしまった。
ゆっくりした動作では受け身が取れず、地面にごろんと転がる形で優馬は倒れる。

「優馬…!?大丈夫か…?」

慌てて優馬を抱き起こそうとするが、優馬はいやいやと言うように首を振った。ぎこちない動きで、自分で立ち上がって俺の方を見る。

「あ…、優馬、大丈夫か…よかった……」

「ぅ……」

優馬の手を握ってまた歩き出す。優馬は家につくまでずっと、不満げに唸っていた。理由はわからない。

「うー…うー…」

「ちょっと休憩…待ってな優馬、少し休んだら、一緒に、遊ぶから……」

貧血のせいかどっと疲れて、床に寝転ぶ。
不満げな優馬を置いて、俺はいつの間にか眠ってしまっていた。
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