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幸せを求めて2
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心が痛い。お父さんに殴られたときよりもずっと。もう涙は止まっていた。
心臓がばくばくして、頭がぐるぐるする。
「お兄さん…どうして笑ってるの…?」
「これでいいんだよ。俺達はこうあるべきだったんだよ…」
今更。
散々楽しく過ごして、全部壊して。
「おかしくなったのはお兄さんの方だよ…それとも、最初からこうする気だったの…?」
「…愛だよ。」
え?と思わず声が出る。こんな、こんなものが愛なわけ無い。どうしてそこまで昔の僕に執着しているんだろう。いや違う。お兄さんは、いい子な僕が好きだったんだ。
「返して……僕の気持ち…僕の心返してよ…!!」
誘拐犯なんかを好きにならない、ずっと心の底では帰りたいと思っている…そんな僕がお兄さんは好きだったんだ。
お兄さんを受け入れて、懐いて家族みたいに過ごしたがる僕じゃ駄目なんだ……。
「ごめんなさい…いい子じゃなくて……」
「いい子…?…可愛い顔が涙でぐしょぐしょだよ。拭いて…」
涙が拭かれる。拭き方も優しくて、頭も撫でられる。それがまた僕の心を痛めつけた。
こんなに好きなのに。
「俺のこと、本当に嫌いになった?」
「いや…いやぁっ…もう僕壊さないで…っ…お願い…お願い、します…やめて…ください…っ…」
縛られているから耳も塞げない。優しい口調の残酷な言葉が耳を通して心を引き裂く。
「やり直すためには嫌いになってもらわないといけないんだよ。」
「やり直す…?」
「そう。そうしたらさ、悠佳くんとの関係もリセットできる。好きになりすぎないように、やり直すんだ。」
好きになりすぎないように…良かった…お兄さんも僕のことは好きだったみたい。今もきっと…本当はどうしたいんだろう。
「お兄さん…い…一生の、お願い…だからっ…」
学校に通っていたとき、友達が一生のお願いは1回だけ使えて、大人がお願い事を聞いてくれるんだと教えてくれた。1回だけ。僕はまだ使っていない。
でも、お兄さんに口を塞がれて言えなかった。
「……それは、もっと先に使って。今使っちゃだめ。」
いつものお兄さんみたいだった。僕の大好きな、優しくてかっこいいお兄さん。
でも、そんな眼差しも一瞬で消えた。
「おにぃ、さん…?」
「どうしても無理ならもう…新しい悠佳くんを作る。だからもう…」
また首を絞められた。今度は本当に殺す気だ。ギリギリと、お兄さんの爪が食い込んで痛い。
「や…だ…!!死んでほしくないって言ってたのはお兄さんじゃん……!!僕は…僕はずっと…!」
最後の力を振り絞る。縛られていても、固定はされていない。
だからお兄さんを思いっきり蹴り飛ばした。拘束は以外と緩かったのか、するすると身体から解けていった。
そして、蹴られて怯んだお兄さんに叫ぶ。
「はぁ、はぁ……!!僕はずっと…!お兄さんを…!氷雨さんを愛してるんだよ!!」
心臓がばくばくして、頭がぐるぐるする。
「お兄さん…どうして笑ってるの…?」
「これでいいんだよ。俺達はこうあるべきだったんだよ…」
今更。
散々楽しく過ごして、全部壊して。
「おかしくなったのはお兄さんの方だよ…それとも、最初からこうする気だったの…?」
「…愛だよ。」
え?と思わず声が出る。こんな、こんなものが愛なわけ無い。どうしてそこまで昔の僕に執着しているんだろう。いや違う。お兄さんは、いい子な僕が好きだったんだ。
「返して……僕の気持ち…僕の心返してよ…!!」
誘拐犯なんかを好きにならない、ずっと心の底では帰りたいと思っている…そんな僕がお兄さんは好きだったんだ。
お兄さんを受け入れて、懐いて家族みたいに過ごしたがる僕じゃ駄目なんだ……。
「ごめんなさい…いい子じゃなくて……」
「いい子…?…可愛い顔が涙でぐしょぐしょだよ。拭いて…」
涙が拭かれる。拭き方も優しくて、頭も撫でられる。それがまた僕の心を痛めつけた。
こんなに好きなのに。
「俺のこと、本当に嫌いになった?」
「いや…いやぁっ…もう僕壊さないで…っ…お願い…お願い、します…やめて…ください…っ…」
縛られているから耳も塞げない。優しい口調の残酷な言葉が耳を通して心を引き裂く。
「やり直すためには嫌いになってもらわないといけないんだよ。」
「やり直す…?」
「そう。そうしたらさ、悠佳くんとの関係もリセットできる。好きになりすぎないように、やり直すんだ。」
好きになりすぎないように…良かった…お兄さんも僕のことは好きだったみたい。今もきっと…本当はどうしたいんだろう。
「お兄さん…い…一生の、お願い…だからっ…」
学校に通っていたとき、友達が一生のお願いは1回だけ使えて、大人がお願い事を聞いてくれるんだと教えてくれた。1回だけ。僕はまだ使っていない。
でも、お兄さんに口を塞がれて言えなかった。
「……それは、もっと先に使って。今使っちゃだめ。」
いつものお兄さんみたいだった。僕の大好きな、優しくてかっこいいお兄さん。
でも、そんな眼差しも一瞬で消えた。
「おにぃ、さん…?」
「どうしても無理ならもう…新しい悠佳くんを作る。だからもう…」
また首を絞められた。今度は本当に殺す気だ。ギリギリと、お兄さんの爪が食い込んで痛い。
「や…だ…!!死んでほしくないって言ってたのはお兄さんじゃん……!!僕は…僕はずっと…!」
最後の力を振り絞る。縛られていても、固定はされていない。
だからお兄さんを思いっきり蹴り飛ばした。拘束は以外と緩かったのか、するすると身体から解けていった。
そして、蹴られて怯んだお兄さんに叫ぶ。
「はぁ、はぁ……!!僕はずっと…!お兄さんを…!氷雨さんを愛してるんだよ!!」
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