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僕が買われるまで
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「っ…はぁっ…!はぁっ…!」
僕達は子供だ。だから働かされる。少しでも手を抜いたり、ミスをすると立てなくなるまで殴られる。それで死んでいく子もいた。大人は、丈夫な子以外はいらないらしい。
毎日毎日、重い荷物を運んだり、定刻になると大人が来て、僕達の中から子供を買っていく。買われた子供のその後なんて知らなかった。
ただ、買った大人を『ご主人様』と呼ばなければいけないということは教えこまれていた。
「ご主人様の言う事は絶対。逆らいません。命を落としてでもご主人様に従います。」
「はい、よろしい。行ってよし。」
今日も職員の大人にお決まりの合言葉を言って、仕事を終えた。早く自由になりたい。自由なんてものは来ないけど、ここよりマシなところはあるはずだ。
「…優しいご主人様に出会えますように。」
それが、僕達みんなが願う事だった。本当の事かは知らないが、ここから買われていった子がとても幸せに暮らしているという噂をよく耳にする。実際、僕達は外のことなんか知らないから、勝手に夢を見ているだけに決まっているのだけれど。
部屋の壁をトントン叩く。子供達は話すことも許されないから、仕事中は物凄く小声で、部屋にいる時は壁を叩いた回数と間隔で会話をした。
『ねえ、生きてる?』
『生き、てる、よ。腕を、殴られて、痛いから、また、今度話そう、ね。』
向こう側から弱々しくコンコンと音が返ってきた。きっともう長くない。子供がまた減ると思うと僕は悲しくなった。
今日の疲れを癒そうと、硬い床に寝そべったその時。職員が僕の部屋を開けた。
「8842番!!主人が決まった!出てこい!」
ぐい、と首輪をつけられて引っ張られる。僕はよろけて咳き込みつつ、自分のご主人様に会いに行った。主人と奴隷が顔も合わせず決めることなんて滅多にない。
いつもとは違う、ふかふかのソファに座っていたのは、まだ成人して間もないようなお兄さんだった。優しそうで少し安心する。
「…やっぱり丈夫そうだな。この子にしよう。」
「はい!では契約書と諸々の書類にサインを…」
職員はぱたぱたと走り回り、書類を運んだ。
僕はご主人様の隣を歩いても恥ずかしくないようにとお風呂に入れられる。久々のお風呂は気持ちが良かった。
「はい、ではたくさん使ってあげてくださいね!今後ともごひいきにー!」
職員に一礼して、ご主人様は僕の手を掴んだ。
優しく手を引かれ、少し困惑しつつも付いていく。これが僕とご主人様の出会いであり、悪夢の始まりだった。
僕達は子供だ。だから働かされる。少しでも手を抜いたり、ミスをすると立てなくなるまで殴られる。それで死んでいく子もいた。大人は、丈夫な子以外はいらないらしい。
毎日毎日、重い荷物を運んだり、定刻になると大人が来て、僕達の中から子供を買っていく。買われた子供のその後なんて知らなかった。
ただ、買った大人を『ご主人様』と呼ばなければいけないということは教えこまれていた。
「ご主人様の言う事は絶対。逆らいません。命を落としてでもご主人様に従います。」
「はい、よろしい。行ってよし。」
今日も職員の大人にお決まりの合言葉を言って、仕事を終えた。早く自由になりたい。自由なんてものは来ないけど、ここよりマシなところはあるはずだ。
「…優しいご主人様に出会えますように。」
それが、僕達みんなが願う事だった。本当の事かは知らないが、ここから買われていった子がとても幸せに暮らしているという噂をよく耳にする。実際、僕達は外のことなんか知らないから、勝手に夢を見ているだけに決まっているのだけれど。
部屋の壁をトントン叩く。子供達は話すことも許されないから、仕事中は物凄く小声で、部屋にいる時は壁を叩いた回数と間隔で会話をした。
『ねえ、生きてる?』
『生き、てる、よ。腕を、殴られて、痛いから、また、今度話そう、ね。』
向こう側から弱々しくコンコンと音が返ってきた。きっともう長くない。子供がまた減ると思うと僕は悲しくなった。
今日の疲れを癒そうと、硬い床に寝そべったその時。職員が僕の部屋を開けた。
「8842番!!主人が決まった!出てこい!」
ぐい、と首輪をつけられて引っ張られる。僕はよろけて咳き込みつつ、自分のご主人様に会いに行った。主人と奴隷が顔も合わせず決めることなんて滅多にない。
いつもとは違う、ふかふかのソファに座っていたのは、まだ成人して間もないようなお兄さんだった。優しそうで少し安心する。
「…やっぱり丈夫そうだな。この子にしよう。」
「はい!では契約書と諸々の書類にサインを…」
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僕はご主人様の隣を歩いても恥ずかしくないようにとお風呂に入れられる。久々のお風呂は気持ちが良かった。
「はい、ではたくさん使ってあげてくださいね!今後ともごひいきにー!」
職員に一礼して、ご主人様は僕の手を掴んだ。
優しく手を引かれ、少し困惑しつつも付いていく。これが僕とご主人様の出会いであり、悪夢の始まりだった。
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