僕が立派な忠犬になるまで。

まぐろ

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59日目:追憶

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「ま…まず…どこまで覚えてる?」

「わん…わんっ…朝起きて、注射されて、わん、わんわん…?えと…ぐるぐるーってなって…?暗くなって…怖い…?」

 たどたどしい僕の話をお兄さんは真剣な顔で聞いていた。僕がはっきりと覚えているのは、朝起きたらお兄さんに媚薬を打たれた所までだ。その後は気持ちよかったことだけ覚えている。

「風音その時鼻血吹いて喜んでたの覚えてる?」

「わんっ!?」

 ブンブンと首を横に振る。そんな事覚えてない。僕は鼻血が出にくい体質なのに鼻血が出るってことは…よほど強い薬でも打たれたんだろうか?だから今も頭がぼーっとするんだろうか……

「じゃあ出来なくなったこと確認していこう…立てる?ご飯食べられる?」

「ご飯は、わんっ…食べられる…」

 駄目だ、会話中にどうしても鳴いてしまう。お兄さんの調教のせいだ。でも完全に犬になる前に戻ってこられてよかった。
 お兄さんの言うとおり立ち上がろうとすると、なんとか立てるものの足がふらふらする。

「なるほど…四足歩行で体当たりとかしてるうちに骨盤とか歪んだかな…?風音、風音はどうしたい?」

「んぇ…?」

 お兄さんは真剣な表情のまま続ける。

「風音が望むならこのまま完全に壊す事もできるよ。また苦しいこといっぱいしたり薬漬けにしたりしてさ。どうする?」

「ぼ…僕は…」

 心の中では僕が2人いるみたいに迷いが喧嘩していた。このまま壊れて昨日までの僕みたいに何もわからないままお兄さんの犬になるか、僕のままお兄さんの犬になるか。
 僕が前者を望めば、僕は何も思うことなく快楽に溺れられる。でも、その時僕はお兄さんを好きだと思っていられるんだろうか…

「壊れる…は…嫌だ…わん、わんっ、僕は…わんっ…お兄さんの事愛したい、から…」

「そっか。じゃあそうしよう。」

 お兄さんが僕のことを抱きしめた。僕は少しおかしくなってしまったけれど、一応風音のままだ。まだ治せるはず。

「ちゃんと風音のままってことはさ…逃げる可能性も少しはあるって事だからね。少しの束縛は許してね。」

「大丈夫…わんわんっ、僕…ひとり怖い、わんっ…だし…こんなだから…」

 言葉がうまく出てこないけど、お兄さんは理解してくれる。
 とりあえずやる事は、僕を治すことだ。お兄さんはそう話していた。僕は治ってもお兄さんの犬でいられることに、少しだけ安心した。
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