僕が立派な忠犬になるまで。

まぐろ

文字の大きさ
上 下
61 / 68

59日目:追憶

しおりを挟む
「ま…まず…どこまで覚えてる?」

「わん…わんっ…朝起きて、注射されて、わん、わんわん…?えと…ぐるぐるーってなって…?暗くなって…怖い…?」

 たどたどしい僕の話をお兄さんは真剣な顔で聞いていた。僕がはっきりと覚えているのは、朝起きたらお兄さんに媚薬を打たれた所までだ。その後は気持ちよかったことだけ覚えている。

「風音その時鼻血吹いて喜んでたの覚えてる?」

「わんっ!?」

 ブンブンと首を横に振る。そんな事覚えてない。僕は鼻血が出にくい体質なのに鼻血が出るってことは…よほど強い薬でも打たれたんだろうか?だから今も頭がぼーっとするんだろうか……

「じゃあ出来なくなったこと確認していこう…立てる?ご飯食べられる?」

「ご飯は、わんっ…食べられる…」

 駄目だ、会話中にどうしても鳴いてしまう。お兄さんの調教のせいだ。でも完全に犬になる前に戻ってこられてよかった。
 お兄さんの言うとおり立ち上がろうとすると、なんとか立てるものの足がふらふらする。

「なるほど…四足歩行で体当たりとかしてるうちに骨盤とか歪んだかな…?風音、風音はどうしたい?」

「んぇ…?」

 お兄さんは真剣な表情のまま続ける。

「風音が望むならこのまま完全に壊す事もできるよ。また苦しいこといっぱいしたり薬漬けにしたりしてさ。どうする?」

「ぼ…僕は…」

 心の中では僕が2人いるみたいに迷いが喧嘩していた。このまま壊れて昨日までの僕みたいに何もわからないままお兄さんの犬になるか、僕のままお兄さんの犬になるか。
 僕が前者を望めば、僕は何も思うことなく快楽に溺れられる。でも、その時僕はお兄さんを好きだと思っていられるんだろうか…

「壊れる…は…嫌だ…わん、わんっ、僕は…わんっ…お兄さんの事愛したい、から…」

「そっか。じゃあそうしよう。」

 お兄さんが僕のことを抱きしめた。僕は少しおかしくなってしまったけれど、一応風音のままだ。まだ治せるはず。

「ちゃんと風音のままってことはさ…逃げる可能性も少しはあるって事だからね。少しの束縛は許してね。」

「大丈夫…わんわんっ、僕…ひとり怖い、わんっ…だし…こんなだから…」

 言葉がうまく出てこないけど、お兄さんは理解してくれる。
 とりあえずやる事は、僕を治すことだ。お兄さんはそう話していた。僕は治ってもお兄さんの犬でいられることに、少しだけ安心した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫁さんのいる俺はハイスペ男とヤレるジムに通うけど恋愛対象は女です

ルシーアンナ
BL
会員制ハッテンバ スポーツジムでハイスペ攻め漁りする既婚受けの話。 DD×リーマン リーマン×リーマン

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話

あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ハンター ライト(17) ???? アル(20) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 後半のキャラ崩壊は許してください;;

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...