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56日目:昼夜逆転
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「んぁ…?」
僕が目を開けると、外は夜で僕はベッドの上でひとりぼっちだった。さっきまでお兄さんが抱っこしてくれていたのに。まあお兄さんも生活があるし仕方ない。
「わんわん…?わんっ」
お兄さんを呼ぶが返事がない。晩御飯を食べているか、お風呂に入っているんだろうか。ここはお兄さんの部屋だから寝ているなんてことは無いはずだ。
「わんわんわんっっ!!ぎゃんっ!!ぎゃぅぅっ!!」
外が暗くて怖くて、僕はとりあえず飛び跳ねた。これだけ動いていれば、僕の身体に何かがついてもすぐに振り落とせる。
ぴょんぴょんと部屋の中を跳ねまわって壁にぶつかって、ぺちゃっと言う感じで床に落ちた。
「うぅ……」
「風音?」
急に後ろから抱き上げられて、びっくりしてジタバタする。お兄さんは僕を羽交い締めにして大人しくなるまで待つと、少し強めに背中を叩いた。
「あぅっ…」
「大丈夫?ほら深呼吸して。吸ってー、吐いてー…」
「わぅ、わん…っ」
お兄さん似合わせて深呼吸をすると、だんだん落ち着いてくる。お兄さんから離れるのが怖い。僕のおかしくなったのはもう治らないんだろうか。
「風音、ご飯食べられる?何かお腹に入れないと死んじゃうよ。」
「わんわんっ」
身体は少し震えているが大丈夫だ。僕はお兄さんを見つめる。すると、大体言いたいことが分かってくれたようでお兄さんはキッチンへ向かった。もちろん僕もついていく。
「んー…バナナでいいかな?食べやすく潰して…りんごも入れるか…」
コト…と僕の前にお皿が置かれる。僕はすぐには食べずに、くんくんと匂いを嗅いでいた。
「ん?いいんだよ食べて?」
「わんっ」
お兄さんの了承を得て、僕はお皿に口をつける。果物は柔らかくて甘くて食べやすい。疲れきった身体は甘い味に喜んだ。
食べ終わってお兄さんの方を見ると、頬についてるよ…なんて言われて口に指を入れられた。
「んぅう、むぐ、うぅ…」
「美味しかったんだね、よかった。風音あんまり笑ってくれなくなっちゃってさ……ちょっと後悔してるんだ…やり過ぎたなって。」
「わんぅ…?」
お兄さんが何を言っているのか僕にはわからない。僕は悪いことをしたから閉じ込められた。そのはずだ。でも前の僕って、どんな感じだったっけ。僕は僕じゃないのか…?
「話しかけても真顔だし、犯してやっと口角が上がっても目が死んでるし、俺は『風音』を殺しちゃったのかな……?」
「わんわん…」
そんなに自分を責めないでお兄さん。僕は大丈夫、ここにいるよ。そう言いたかった。この感情はちゃんと風音の感情だ。だって風音はお兄さんが大好きだったから。
「風音…ごめんね、ちゃんと約束通り犬しててくれたのに。無理矢理なんて良くないよね…ごめんね…ゆっくり治していこう、もとの風音に戻るように…」
「わんっ…」
僕は返事をした。
正直、もう戻らなくたっていい。僕は犬になることを望んだから。でも、お兄さんは今、風音が戻ってくることを願っている。
お兄さんの気持ちは嬉しい。でも、お兄さんは結局、ペットプレイがしたかっただけなんだ。僕はそう思って、心底残念に感じてしまった。
僕が目を開けると、外は夜で僕はベッドの上でひとりぼっちだった。さっきまでお兄さんが抱っこしてくれていたのに。まあお兄さんも生活があるし仕方ない。
「わんわん…?わんっ」
お兄さんを呼ぶが返事がない。晩御飯を食べているか、お風呂に入っているんだろうか。ここはお兄さんの部屋だから寝ているなんてことは無いはずだ。
「わんわんわんっっ!!ぎゃんっ!!ぎゃぅぅっ!!」
外が暗くて怖くて、僕はとりあえず飛び跳ねた。これだけ動いていれば、僕の身体に何かがついてもすぐに振り落とせる。
ぴょんぴょんと部屋の中を跳ねまわって壁にぶつかって、ぺちゃっと言う感じで床に落ちた。
「うぅ……」
「風音?」
急に後ろから抱き上げられて、びっくりしてジタバタする。お兄さんは僕を羽交い締めにして大人しくなるまで待つと、少し強めに背中を叩いた。
「あぅっ…」
「大丈夫?ほら深呼吸して。吸ってー、吐いてー…」
「わぅ、わん…っ」
お兄さん似合わせて深呼吸をすると、だんだん落ち着いてくる。お兄さんから離れるのが怖い。僕のおかしくなったのはもう治らないんだろうか。
「風音、ご飯食べられる?何かお腹に入れないと死んじゃうよ。」
「わんわんっ」
身体は少し震えているが大丈夫だ。僕はお兄さんを見つめる。すると、大体言いたいことが分かってくれたようでお兄さんはキッチンへ向かった。もちろん僕もついていく。
「んー…バナナでいいかな?食べやすく潰して…りんごも入れるか…」
コト…と僕の前にお皿が置かれる。僕はすぐには食べずに、くんくんと匂いを嗅いでいた。
「ん?いいんだよ食べて?」
「わんっ」
お兄さんの了承を得て、僕はお皿に口をつける。果物は柔らかくて甘くて食べやすい。疲れきった身体は甘い味に喜んだ。
食べ終わってお兄さんの方を見ると、頬についてるよ…なんて言われて口に指を入れられた。
「んぅう、むぐ、うぅ…」
「美味しかったんだね、よかった。風音あんまり笑ってくれなくなっちゃってさ……ちょっと後悔してるんだ…やり過ぎたなって。」
「わんぅ…?」
お兄さんが何を言っているのか僕にはわからない。僕は悪いことをしたから閉じ込められた。そのはずだ。でも前の僕って、どんな感じだったっけ。僕は僕じゃないのか…?
「話しかけても真顔だし、犯してやっと口角が上がっても目が死んでるし、俺は『風音』を殺しちゃったのかな……?」
「わんわん…」
そんなに自分を責めないでお兄さん。僕は大丈夫、ここにいるよ。そう言いたかった。この感情はちゃんと風音の感情だ。だって風音はお兄さんが大好きだったから。
「風音…ごめんね、ちゃんと約束通り犬しててくれたのに。無理矢理なんて良くないよね…ごめんね…ゆっくり治していこう、もとの風音に戻るように…」
「わんっ…」
僕は返事をした。
正直、もう戻らなくたっていい。僕は犬になることを望んだから。でも、お兄さんは今、風音が戻ってくることを願っている。
お兄さんの気持ちは嬉しい。でも、お兄さんは結局、ペットプレイがしたかっただけなんだ。僕はそう思って、心底残念に感じてしまった。
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