僕が立派な忠犬になるまで。

まぐろ

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43日目:再会

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「ん……ぅあ?」

 目を覚ますと、僕はお兄さんの車の助手席に座っていた。まだぼーっとする頭のまま、お兄さんを見るとお兄さんは僕が起きたことを確認するなり抱きついてきた。

「風音ぇ~久しぶり!2日ぶりだねぇ元気だった~?」

「あ、お…お兄さん…あのね…お父さんもお母さんも、また帰ってきてねって…言ってた…」

 僕がそう言うと、お兄さんの僕を抱きしめる力が少し緩んだ。ずっと僕のことを思っていてくれていたお兄さんに申し訳なくなって、慌ててお兄さんを抱きしめ返した。

「……また帰りたい?」

「正直…帰りたくない。もうあの家は僕が居ないほうがいいんだ…弟が…産まれるから。」

 お兄さんが、手を離した。僕は知らないうちに悲しそうな顔をしていたのか、お兄さんは心配そうに僕の顔を覗きこんだ。

「僕…あのまま我慢してたら幸せになれてたのかな。学校だって、我慢してたら卒業できたわけで…ああでも…僕がいないから弟を作ろうとして…」

 僕がいないから、弟を作る?両親は僕のことを心配していた。ああやっぱり、家出なんてしないほうが良かったんだ。
 …今のほうが楽しいのは事実だけれど。

「……ううん、帰らなくていいんだ。僕はお兄さんと一緒にいるほうが楽しいし。本当だよ!」

 笑ってみせたが、その笑顔が帰ってくることはなかった。いつも笑っているお兄さんが、今日はずっとどこか不安げだ。

「そうだね。じゃあ…そうだな…気分転換にドライブしようか。風音はお外好きみたいだし。」

「あっ……う、うんっ…!」

 わん、と言うべきだったか。急に人として扱われると緊張してしまう。もう犬に戻っても良いのだろうか。四つん這いになりたいし、わんわんとだけ鳴いて褒められたい。もう昨日の事を思い出したくなかった。

「お兄さん、お兄さん……もう僕犬でいい…?犬扱いして…?」

 そう言うとお兄さんは嬉しそうな顔をした。良かった、やっと笑ってくれた。僕も嬉しくなって、お兄さんに擦り寄った。

「…よし!風音、家に帰るまで寄り道だ!せっかく車だし、いろんなお店行こう!」

「わんっ!!わんっ!」

 犬語を喋った途端、ふわりと心が軽くなった。お兄さんと遠出だ。嬉しい。
 僕が喜んでいると、車が動いた。どうやら僕が起きるのを待っていてくれたらしい。これからどこに行くんだろう。僕はわくわくしながら窓の外を眺めた。
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