僕が立派な忠犬になるまで。

まぐろ

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39日目:計画立て

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 朝リビングに行くと、お兄さんは既に起きていて、手招きして僕を呼んだ。

「見ててね、君は多分帰っても冷たくされると思う。俺はずっと見てるからさ、頃合いだと思ったら合図送ってくれる?」

「……合図?」

 僕が聞き返すと、お兄さんは頷いた。どうやら合図を頼りに、僕を誘拐し直す作戦らしい。そんなこと、できるんだろうか。

「部屋の窓を開けて遠吠え…とか?」

「…確かに君の犬の真似は上手になったけど…それだと君が合図したってバレちゃうから…」

 僕は頭を抱えた。考えて考えた結果、窓にぴたりと手を当てるということになった。こんな合図で、お兄さんは気づいてくれるんだろうか。

「お兄さん…ほんとうに、僕の事誘拐してくれる…?」

「ああ、俺を信じて。なんて言ったって…俺は君のことずっと見てたからね。もちろんお家も。」

 お兄さんがにやりと笑った。少しだけ寒気がしたが、今回はとても心強く思えた。

「あのね、僕…学校も行こうと思う…筆箱取りに行きたいんだ。」

「気に入ってたの?筆箱。」

 僕は頷く。あれは僕が1年生のときに両親に買ってもらった物だ。僕が思い出す限りで幸せな思い出だから手元に残しておきたかったのだ。

「そうか…じゃあ、学校帰りに誘拐するよ。当日、窓に手をくっつけてくれる?」

「うん、わかった。」

 そう返事をして、お兄さんと車に乗った。やっぱり家からは離れた場所だったらしく、道を覚えないよう僕は車に乗ると目隠しをつけられた。

「君を誘拐した日、寝てる君を車まで運ぶの大変だったんだよね。まあ深夜だから人に見られる心配はなかったけどさ。」

「お兄さん…僕が家出するの待ってたでしょ。」

 バレた?とお兄さんは笑う。やっぱりずっと見ていたんだ。僕のことを。
 車は走り続けるがまだまだ着く気配はない。いつの間にか僕はすやすやと寝息を立て始めた。

「…すっかり警戒心も無くなっちゃって…このまま山に埋められたり、海に沈められたらどうするのか…まあそんな事しないけどさ…」

 お兄さんは目隠しをしながら口を半開きにして眠る僕を見て、何か疼いたのか歯痒そうに目をそらした。

「……目隠しかぁ。風音も懐いてくれたしお家に帰ったら……ふふっ…楽しみだな…」

 車の中にお兄さんの含んだ笑い声が響く。翌朝には、僕の家がある町に着く。僕は、ちゃんと出来るだろうか……
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