僕が立派な忠犬になるまで。

まぐろ

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3日目:お兄さんの部屋

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「あのさ…俺部屋から出てもいいよって言ってるのに全然出てくれないじゃん。犬の方が甘やかしてもらえるから?」

「わん…」

 僕は顔をしかめた。確かに犬のように振る舞えばお兄さんはとっても優しくしてくれる。それは…少し嬉しかった。ずっと笑顔で接してくれる事が、僕の心を揺るがす。

「…いいよ、じゃあ犬のままでいいから部屋の中お散歩しよ?」

「わんわん…」

 少し嫌がって見せると、お兄さんは僕の服に手をかけた。抵抗は許さないということだろうか…

「脱がすよ?犬は服着ないもんねー」

「きゃんっ!!」

 素っ裸で部屋の中を歩き回るのは嫌だ。
 お兄さんのあとを大人しく付いていく。リビング、キッチン、和室…よくあるお家だ。それなのに、僕の部屋だけ犬小屋風にされている。

「次は俺の部屋ね。」

「わんわん…」

 首に巻かれたベルトが少し擦れて不快だ。そんな事を考えながら僕はお兄さんの部屋に入った。そして、部屋の中を見て僕はぽかんとした。

「え…これ…お兄さんが使うの…?」

 机やパソコン、ベッドなどは普通なのに、ガラスケースの中に並んでいたのはモザイクのつきそうな物の数々だった。
 前に友達に見せられたえっちなビデオに出てきたものに似ている…というかそれだ。

「お兄さん…は…女の子…?なの…?お姉さんだったの…?」

「違うよ?俺は雄だし、人格も男。これは君に使うんだよ。」

 僕に使うのか。でも僕には交尾をする穴はない。
 それと、モザイクのつきそうな物は置いておいて、一緒にしまわれている薬品たちは何だろう。ガラスケースの端っこに『風音』と書かれているから、あれも僕に使うんだろうか。

「あの…あの薬は…?」

「え?あれはね、媚薬と、犬みたいになるやつと、睡眠薬と……」

 聞けば聞くほど良くないものばかりだ。名前は出していないけど、きっと逮捕案件の物もありそうだ。

「あ…そういえば風音って精通してるの?それによって遊び方変わるんだけど…」

 お兄さんが振り返って興味津々で聞いてくる。誘拐されたということは、そういう事もされるんだと覚悟していたが、本当にするとは。

「…してません…けど。」

 お風呂場で恥ずかしがっていたのが馬鹿みたいだ。…でも僕は男の子。お兄さんは僕をどうする気だろう。

「…そっか。あと…犬語取れたね。風音、ようこそ、俺の部屋に。」

 すっと顔を掴まれたと思うと、次の瞬間にはお兄さんの唇は僕の唇と重ねられていた。軽く吸われ、びっくりしていると、お兄さんは口を離してにやりと笑った。
 近くで見るとお兄さんの顔がよく見える。優しそうな目は、正直好きだ。

「……キス…奪われた…」

 お兄さんを軽く睨むと、お兄さんはごめんね、と僕を抱きしめた。
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