少年人形の調教録。

まぐろ

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何が好き?

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 お兄さんに抱きしめられて数分。改めて恋人になれるんじゃないかと意識するとドキドキするのが抑えられない。これがお兄さんの思い通りでも、愛して愛されるなら問題はないだろう。

「夜空くんのここ…どくどくしてる。どう…?何か好きなこと、思いつく?」

「お兄さんが僕の事知ろうとしてくれてるのが嬉しいですよ。…お兄さんが大好きです。」

 思ったままの事を伝えたが、お兄さんがほしい回答はこれじゃない。でも嬉しそうだ。
 僕が好きなことは何だろう。もし主人がいなくて、人間だったなら僕は何をしていたんだろう。

「…泳いでみたい…大きいプールで。それとお花畑でお昼寝したいです…でもやっぱり、1日中お兄さんと愛し合って、ふかふかのベッドで眠るのが一番いいです。」

「いいね。俺もそれがいい。…それにしても、あんまり欲がないんだね。睡眠欲しかないじゃん。」

「せ…性欲も…あります…よ……?」

 少し恥ずかしくて、顔が赤くなるのが分かる。お兄さんにたっぷり調教されたお陰で、えっちなことをするときはすぐにスイッチが入る。自ら快楽を求めるようにもなれた。

「あはは、性欲はいつでも満たせるでしょう。もっとこう…あれ食べたいとか、これ欲しいとか……」

「んー……森でお散歩したり…海に映ってる月を見たいです…不思議ですよね、海の中の砂ってキラキラしてるんですよ。星空みたいですよね…」

「本当に、綺麗な欲だよね……じゃあ見に行こうか。大きいプールも、お花畑も、森も夜の砂浜も。それで最後に、思い出を喋りながらお布団で寝よ。」

 お兄さんとこんな話をしたのは初めてだ。僕が感動するものの話。見たことはないけど、きっと僕は感動するんだろう。
 話しているだけなのに、見たような気分になれる。胸が暖かくなって、この瞬間が一番楽しいと思えた。

「夜空くん。そうと決まれば、明日だ。明日から出発しよう。」

「へ…!?」

 急な提案に、僕は目を丸くする。善は急げとはこの事なんだろうけど、急ぎ過ぎなんじゃないか…?いやでも、僕もお兄さんもいつ終わりを迎えるかなんてわからない。
 それなら、やりたい事はやっておかないと駄目だ。後悔なんてしないほうがいい。

「……そう…ですね…!」

「行く前にふかふかのお布団用意して…帰ってきたら寝ようね。じゃあ夜空くんは早く寝ないと。おやすみ。」

「お…おやすみなさい…!」

 お兄さんと話すのに夢中で、いつ夜が来たのか分からなかった。わくわくしながら布団に入り、目を閉じる。
 その日の夜、僕は修学旅行の夜みたいに目が冴えて眠るのに苦労した。
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