少年人形の調教録。

まぐろ

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どうしたの

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「どうしたの、首絞め怖かったの?」

「嫌、嫌だ嫌だ…!!出ていけえっ…!」

 お兄さんへの愛が、僕の頭を破壊する。目の奥がキリキリと動いて、全身がぞくぞくする。
 視界はやけにお兄さんだけが映る。他がぼやけてみえてくる。

「夜空くんごめんね、そんな怖がらせるつもりなくて……ん…目どうしたの…」

「…な、にか…変です、か。」

 明らかにおかしいのは僕が一番わかっている。でもここで違和感を訴えてしまったら、僕はどうなるんだろう。一度おかしくなってしまったロボットはもう戻れないのに。

「俺のこと殺そうとした?瞳孔が開ききってるよ。」

 僕の事を心配そうな顔で見下ろすお兄さんの首には、くっきりと手の跡がついてしまっている。
 もうお兄さんにバレた。僕がおかしくなりかけている事が。昨日の首絞めが引き金になってしまったのかもしれない。

「お兄さん…」

「傷つけちゃったね、人間を。夜空くん…やっちゃったねぇ。」

「ごめ…、なさ…もう…、しない…ゆ、許して…くださ……」

 僕はこれからどうなるんだろう。
 ガクガクと震えながら謝ろうと口を動かすが、うまく話せない。
 そんな僕を見ながら、お兄さんはにっこりと笑った。

「ごめんね、許しちゃだめなんだよね。半壊させないと……」

 がくん、と視界が揺れる。…殴られた?お兄さんに…?お兄さんと僕では力の差がありすぎる。抵抗しようと思ったが、あっという間に床にねじ伏せられた。

「い、嫌だ!!痛いのやだぁっ!」

「人を傷つける子はさ、生かす場合は半壊させないといけないんだよね。危害がないように…法律だから。でも可哀想だなぁ……普通に閉じ込めるとかでもいいかな…」

 お兄さんが迷う時間分、僕は苦しむ。お兄さんと一緒にいたかった。でも、もっと酷くなる前にひと思いに破壊して欲しい。
 お兄さんが僕を気に入っていて、壊せない事くらい知っている。大好きだからこそ、歪んだものを押し付けたくないのに。
 さっきからずっと、視界が揺れ続けている。揺れる視界には、僕から出たのであろう赤い液体が映っていた。

「ごめんね夜空くん…またこうなっちゃった…不良品の君を捨てられなくて。…どうしたらいいんだろうね…」

「いた…い……こ…こわ…い…」

 そう呟き、僕は停止する。お兄さんは僕の顔を覗き込み、感情の読めない顔をしながら、僕をずるずると引きずった。

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