少年人形の調教録。

まぐろ

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起動

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「おはようございます!…貴方が僕のご主人様ですね!」

 目を覚まして、目の前の男の人に僕はそう言った。
 僕は人間の手伝い…主に家事をするために作られたAI搭載のロボットだ。
 人間のAI技術は進歩し、今では僕達ロボットも心を持てるようになっていた。その結果、ロボットが本格的に家族として受け入れられる時代が来た。
 僕は視線をご主人様に向ける。この人は僕より背が高い大人だ。今日からこの人のお手伝いができるのだと思うと、嬉しくてわくわくした。

「ああそうだよ。よろしく夜空くん。俺のことはお兄さんって読んでくれる?」

「わかりました!お兄さん、これからよろしくお願いします!」

 夜空とは、僕の名前だ。元気いっぱいの男の子をモデルにして作られた僕は、世界にもこの僕しかいない。
 そう、ロボットも人間と同じように、同じ個体がいないのだ。見た目が似ていても性格が違ったり、髪に特徴の出る個体やたまに問題のある個体が生まれてくる。
 人間には、世界に一体という特別感を気に入られたらしい。

「お兄さん、僕は何をしましょうか?教えていただければ何でもできますよ!」

「なるほど、それがお手伝いね…まあ後ででいいや。」

「…?そうですか…」

 お兄さんはまだ僕に何も教える気は無いらしい。子供モデルは最初から覚えていることが大人モデルよりも少ない。
 教える、ということがしたい人間が子供モデルを買うのだが…お兄さんは僕に何をさせてくれるのだろう。
 少しぼうっとしながら立っていると、お兄さんにほっぺを触られた。

「ひゃぁっ」

「おお…ぷにぷにしてる。なるほどね。うんうん……」

 お兄さんは僕の身体を触っては頷いている。
 これがスキンシップというやつか、と僕は理解した。だってお兄さんは笑っているし、触り方も優しいから間違いない。

「口の中は…お、ちゃんと濡れてるな。ほんとに物食べられるのか。」

「はひ、ほふはほほへは……」

 お兄さんの指が僕の口の中を、何かを確かめるように触る。
 僕達の作りは人間にとても似せられている。心臓も脳も、その他の器官も人間に似せられた役割をしている。
 ロボットというより、人造人間のほうが近いのかもしれない。

「んぐっ…!!」

 突然、口の中を触っていたお兄さんの指が喉の奥の方まで入ってくる。びっくりして後ずさろうとしたが、お兄さんに肩を掴まれて動けない。
 喉の奥まで行ったり来たり、お兄さんの指が撫でてくる。何回か嘔吐いたが、お兄さんの指をぎゅっと締め付けるだけで終わった。

「ふーん……はい、もう終わり。ごめんね夜空くん。びっくりしたよね。」

「うえぇ……いえ…大丈夫です…お兄さん、あまり乱暴に扱うと僕壊れちゃうので…これからは優しく扱っていただけると嬉しいです。」

 涙目になりながらお兄さんにそう言った。悪意はなくとも、僕は壊れたくない。壊れるのなんて痛そうだし。

「はいはい、…じゃあお手伝いの前に、この紙読んでくれるかな?」

「お手伝いの内容とかですか?やった…!ありがとうございます!」

 ロボットの為に仕事内容を紙にまとめてくれる人なんてなかなかいない。もしかしてすごくいい人なんじゃ…なんてわくわくしながら、お兄さんから貰った紙を読み始めた。
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