47 / 49
第1章
私の豪運は艦内を届ける。
しおりを挟む
あれから私達はリロに黒砕船を案内してもらっていた。
島と同じ規模の戦艦ということもあり、目に映る何もかもが規格外であった。
まず気がついたことは扉のサイズが尋常ではない・・・正確に言うと扉というものは存在せず壁である。
そして天井も見上げるだけではなく、目を細めてようやく幾つもの配管が通っていることを確認できるほどだった。
その配管も私達の中で1番大きなララがすっぽりと収まりそうなサイズの物がいくつも私達を横切っていった。
言うなれば私達が小さくなったような錯覚を起こすほどその戦艦は巨大だった。
大広間ほどの幅の、船員用と思われるここでは小さな通路をテアが無邪気に縦横無尽に駆け回る。
「ここ、ひろーい!」
「こら!走らないの!迷子になるわよ!!」
「そうじゃぞ、テア・・・っと少し目眩がしてきたのう・・・」
「奇遇にゃね。気分も悪くなってきたにゃ・・・・。」
その巨大さからか船酔いとは違う、別の錯覚による酔いを起こしていた。
あまりにもサイズが常識とかけ離れていたため、認識のズレが生じ脳が疲れ始めていたのである。
「気分が悪くなってきたなら、私が抱きしめて運んであげる・・・迷子になると大変・・・。」
「このガキのほうが迷子になりそうじゃのう」
「大丈夫だもん・・・」
永遠に続くこの錯覚に呑まれたら最後、迷子になるのは必至だろう。
そしてここで迷子になると大変な目に合う事は、誰にでもわかる。
壁際にある何処に続いているかわからない、人がすっぽりと入りそうな大きな穴。
巨大な配管から微かに吹き抜ける風・・・ここはまさに人が作り出した巨大な迷宮であった。
私にはダンジョンとも言うべきこれほどの船をどの様に作ったのか、想像も出来なかった。
迷子防止のための案内看板が一定間隔で設置されているが、たまに生き倒れている船員を見る限り効果は無さそうである。
そしてこのダンジョンの回復ポイントと呼べる小さなスペースも一定間隔で完備されており、部屋の入り口の周りには武器や食料が入った箱が大量に山積みされていた。
待合室のような場所に椅子や机が並べられているが、当然自販機のようなものはない。
青髪の少女はぐったりと大きく肩を預けるように椅子に腰掛けた。
「流石に気持ち悪くなってきたのう・・・元の姿に戻ったほうが楽かもしれぬな・・・」
「余計に気持ち悪くなるから、やめるにゃ・・・・」
「何じゃと!?小猫娘!!と言いたいところじゃが・・・怒る気力ものうなってきたわ。」
「だにゃ・・・・」
「はぁ・・・やっぱりこの船、王国よりも大きいんじゃないですか?」
「当たり前じゃない!世界最大の戦艦よ!」
「ちびっこは平気なのかのう?」
「誰がチビよ!!慣れたわよ!」
「最初は私に抱きついていたのに、いつの間にか成長していましたね。」
「当たり前じゃない!あなたの胸と同様に成長するの!」
そう言いながら少女は胸を揉んでいた。
「あっ!!ちょっとここで・・・恥ずかしいですよ!」
「あれから、成長してないにゃ・・・」
「そのようじゃの!お漏らしエロガキ・・・いやマセガキといった所かのう。」
「うるさいわね!揉んでると酔いが覚めるのよ!」
「本当かにゃ!?」
「嘘に決まっておろう・・・・。」
そう言いつつも二人はこの酔いを覚まそうとゆっくりとその胸に手を伸ばす。
その持ち主は迫りくる手に涙を浮かべていた。
「ちょ、ちょっと二人とも・・・・待って・・・」
二人の手に当たったのは別の女性の胸だった。
「ロモさんは私のを使ってください!」
「私のも使っていい・・・。」
「アイネかにゃ・・・」
「デカ娘、おぬし・・・」
獣人の二人は、ひと揉み、ふた揉みとその柔らかな胸を弄(まさぐ)っていく。
確かに、不思議と懐かしさが湧き上がり頭の中の錯覚が消えていくのが分かった。
「うぅ・・・」
「ちょっと気持ちいいかも・・・」
徐々に消えていく不快感に二人は夢中で弄っていく。
「確かにこれはいいかもにゃ・・・」
「じゃのう!」
その様子を見ていた少女はしたり顔で呟いた。
「ふふっ、エロガキね!!」
「しまったにゃ!」
「くっ、ワシとしたことが・・・ってお主もじゃろうが!」
「酔い覚ましなの!必要な医療行為よ!!」
「医療行為のう・・・。ってお主はなぜワシのを揉んでおるのじゃ・・・」
「リィアちゃんのプニプニしてて気持ちいい!」
「やめぬか、小娘!!特に子猫娘!貴様ッ!!」
猫の獣人は青髪の少女の胸を指で突いていた。
「確かにプニプニしてて面白いにゃ。」
青髪の少女は尻尾でその少女を引き剥がした。
「えーい!離れるのじゃ!ワッパ共!!」
「えーっ、もうちょっとしていたかったのに・・・」
腕組をしながらリィアは威張りだす。
「龍族・・・特に神聖なワシの胸は希少価値が高いのじゃ!!うかつに触れるものではないっ!!」
「希少価値・・・?そこら辺のお漏らしガキと変わらないにゃ・・。」
「何じゃと!?」
「なんですって!?」
休憩を終えた私達はしばらく歩き、戦艦の奥深くのエリアに来ていた。
先程の開けた場所とは違い、そこは見慣れた大きさの戦艦がレールの上に固定され自動車のように所狭しと並んでいる。
あの少年が言っていたトカゲの相手をしている暇ではない、という言葉があながち冗談ではないことを示していた。
「戦艦の中に戦艦!?」
「すごーい!」
「すごいのう・・・」
私達が目移りしながら歩いていると、突如リロが大声で叫ぶ。
「止まりなさい!」
「分かったにゃ。」
「何じゃ!?」
目の前の横切るレールの前で私達は止まった。
しばらくして地響きが鳴り響く。
「じ、地震ですか!?」
「ちがう・・・」
次の瞬間、巨大な台車に固定された戦艦が目の前のレールに沿ってゆっくりと私達を横切っていく。
今にも倒れてきそうな灰色の鉄の塊の迫力に私やリィアは後ずさりをした。
「で、でかいにゃ・・・」
「じゃのう!」
「このサイズだと護衛艦ね。」
戦艦が完全に通り過ぎると白を纏った少女は歩き出す。
「さぁ、急ぎましょ!」
「あれほどの物が幾つも・・・すごいですね。」
「普通よ、普通!」
「普通じゃないにゃ・・・・。」
歩きながら、猫の獣人は目の前の少女が案内しようとしている場所について考えていた。
この世界最大の戦艦に格納されていると言うからには恐らく巨大な何かだろう。
親友が作った杖の改良版・・・もしくは少女が喜びそうなスフィアと言ったところだろうか。
少女は黒く重厚で巨大な壁のような扉の前で立ち止まった。
「着いたわよ!」
明らかにここだけ使われている材質が異なる、おそらくは金喰鉱で作られているのだろう。
どうやら見せたいものは厳重に守られているようだった。
「この程度の扉であればワシの水流で余裕じゃがのう」
「壊しちゃダメだよ。リィアちゃん」
「すまぬ、テアよ」
「ふん、どっちが大人なんだか!」
「貴様もじゃ」
「どうせお前じゃ壊せないにゃ・・・。」
「これも金喰鉱じゃと!?」
「当たりよ!ララ、お願い。」
「うん、おねーちゃん」
そう言うとリロの妹のララの手が黄色く光り出す。
「マジカルシャイニーガントレット起動!」
ララが背負っていた箱から勢い良く巨大な籠手が飛び出す。
それは初めてこの少女に出会った時に獣人の行手を遮った籠手だった。
よく見るとその篭手は重厚な扉と同じ様な色彩を持っていた。
「これも、金喰鉱かにゃ・・・。」
「当たり。後で抱きしめてあげる。」
「お前が抱きしめたいだけにゃよ・・・。」
ララが手をかざして籠手を操作しその重厚な扉をゆっくりと開ける。
扉の隙間から眩い光が溢れ出していた。
「これは・・・。」
獣人の目に飛び込んで来たのは、天才少女が喜びそうな特大スフィアでも大戦を終わらせる様な最強の武器でも無かった。
目の前に現れた少女が見せたいものと言うのは、もう戻ってこないだろうと諦めていた懐かしい光景であった。
獣人は知らず知らずの間に流していた涙を拭き取った。
リロとレノが私を歓迎する。
「さぁ!ようこそ・・・いえ、お帰りなさい、テウリアへ!」
和風建築が建ち並び、木々が青々と芽吹く中、風情ある街並みの中を多くの獣人達が歩いていた。
それは私の記憶と寸分違わない程に再現され、遠くには見慣れた武家屋敷が建っている。
まるで2年前の出発した当時から、切り取り持って来たかのように忠実に再現されていた。
「お前たち・・・あ、ありがとうにゃ・・・」
「待ってください!テウリアは滅んだはずじゃないですか?」
「いや、そもそもなぜ船の中に街があるのじゃ?」
「作ったのよ!それにこの船は商業ギルドを兼ねた戦艦だもの、その要となる街は必要でしょ?」
「何と!商業ギルドじゃと!?」
「でもなんで商業ギルドにゃ?」
「レノおねーちゃんが2年前やろうとしていた事覚えてる?」
「えーっと、にゃんだっけ?」
レノ=アルバートが何か言いたそうにモジモジとしていた。
「妹様が私のために宣言してくださった事です・・・」
「確か、何とかカンパニーを作るって言ってたにゃ!」
「えぇ、商業ギルド、レノシッピングカンパニー・・・この船はその為に作られたの」
「にゃんだって!?」
少女は恥ずかしそうに反対側を見ながら呟いた。
「で、テウリアが大変な事になったっていうから仕方なく作ってあげたってだけよ!!」
獣人は嬉しさの余り勢い良く少女に抱きついた。
「リロ!ありがとうにゃーっ!」
少女は照れながら獣人の少女を引き離そうとする。
「ちょっと暑苦しいから離れなさいよ!」
「ひどいにゃ・・・でもどうやってここまで・・・」
「テウリアに出入りしていた獣人や冒険者の協力を得てほぼ再現することに成功したわ!」
「本当に・・・ありがとうにゃ・・・。」
「そこまで泣かなくてもいいじゃない・・・。」
「私からも礼を言わせてください!ありがとうございます。」
「は?なんでアンタから礼を言われなきゃいけないのよ!」
「ここに来るまでにロモさん本当に苦しそうで、こうやって嬉しそうにしているとこっちまで安心するというか・・・」
「まぁ受け取っておくけど、そこまで同情するなんて・・・アンタはロモの何なの?」
その言葉にアイネは頬を赤くしながら戸惑った。
「私はその・・・・。」
「アイネは私の親友にゃ!」
「あ・・・はい、親友です!」
「はぁ・・・。鈍感極まれりね・・・。」
「にゃ!?」
「まぁ、いずれ気が付くでしょ・・・。」
「こ、ここは何ですし!ロモさん案内してください。貴女の住まいを!」
「分かったにゃ!」
島と同じ規模の戦艦ということもあり、目に映る何もかもが規格外であった。
まず気がついたことは扉のサイズが尋常ではない・・・正確に言うと扉というものは存在せず壁である。
そして天井も見上げるだけではなく、目を細めてようやく幾つもの配管が通っていることを確認できるほどだった。
その配管も私達の中で1番大きなララがすっぽりと収まりそうなサイズの物がいくつも私達を横切っていった。
言うなれば私達が小さくなったような錯覚を起こすほどその戦艦は巨大だった。
大広間ほどの幅の、船員用と思われるここでは小さな通路をテアが無邪気に縦横無尽に駆け回る。
「ここ、ひろーい!」
「こら!走らないの!迷子になるわよ!!」
「そうじゃぞ、テア・・・っと少し目眩がしてきたのう・・・」
「奇遇にゃね。気分も悪くなってきたにゃ・・・・。」
その巨大さからか船酔いとは違う、別の錯覚による酔いを起こしていた。
あまりにもサイズが常識とかけ離れていたため、認識のズレが生じ脳が疲れ始めていたのである。
「気分が悪くなってきたなら、私が抱きしめて運んであげる・・・迷子になると大変・・・。」
「このガキのほうが迷子になりそうじゃのう」
「大丈夫だもん・・・」
永遠に続くこの錯覚に呑まれたら最後、迷子になるのは必至だろう。
そしてここで迷子になると大変な目に合う事は、誰にでもわかる。
壁際にある何処に続いているかわからない、人がすっぽりと入りそうな大きな穴。
巨大な配管から微かに吹き抜ける風・・・ここはまさに人が作り出した巨大な迷宮であった。
私にはダンジョンとも言うべきこれほどの船をどの様に作ったのか、想像も出来なかった。
迷子防止のための案内看板が一定間隔で設置されているが、たまに生き倒れている船員を見る限り効果は無さそうである。
そしてこのダンジョンの回復ポイントと呼べる小さなスペースも一定間隔で完備されており、部屋の入り口の周りには武器や食料が入った箱が大量に山積みされていた。
待合室のような場所に椅子や机が並べられているが、当然自販機のようなものはない。
青髪の少女はぐったりと大きく肩を預けるように椅子に腰掛けた。
「流石に気持ち悪くなってきたのう・・・元の姿に戻ったほうが楽かもしれぬな・・・」
「余計に気持ち悪くなるから、やめるにゃ・・・・」
「何じゃと!?小猫娘!!と言いたいところじゃが・・・怒る気力ものうなってきたわ。」
「だにゃ・・・・」
「はぁ・・・やっぱりこの船、王国よりも大きいんじゃないですか?」
「当たり前じゃない!世界最大の戦艦よ!」
「ちびっこは平気なのかのう?」
「誰がチビよ!!慣れたわよ!」
「最初は私に抱きついていたのに、いつの間にか成長していましたね。」
「当たり前じゃない!あなたの胸と同様に成長するの!」
そう言いながら少女は胸を揉んでいた。
「あっ!!ちょっとここで・・・恥ずかしいですよ!」
「あれから、成長してないにゃ・・・」
「そのようじゃの!お漏らしエロガキ・・・いやマセガキといった所かのう。」
「うるさいわね!揉んでると酔いが覚めるのよ!」
「本当かにゃ!?」
「嘘に決まっておろう・・・・。」
そう言いつつも二人はこの酔いを覚まそうとゆっくりとその胸に手を伸ばす。
その持ち主は迫りくる手に涙を浮かべていた。
「ちょ、ちょっと二人とも・・・・待って・・・」
二人の手に当たったのは別の女性の胸だった。
「ロモさんは私のを使ってください!」
「私のも使っていい・・・。」
「アイネかにゃ・・・」
「デカ娘、おぬし・・・」
獣人の二人は、ひと揉み、ふた揉みとその柔らかな胸を弄(まさぐ)っていく。
確かに、不思議と懐かしさが湧き上がり頭の中の錯覚が消えていくのが分かった。
「うぅ・・・」
「ちょっと気持ちいいかも・・・」
徐々に消えていく不快感に二人は夢中で弄っていく。
「確かにこれはいいかもにゃ・・・」
「じゃのう!」
その様子を見ていた少女はしたり顔で呟いた。
「ふふっ、エロガキね!!」
「しまったにゃ!」
「くっ、ワシとしたことが・・・ってお主もじゃろうが!」
「酔い覚ましなの!必要な医療行為よ!!」
「医療行為のう・・・。ってお主はなぜワシのを揉んでおるのじゃ・・・」
「リィアちゃんのプニプニしてて気持ちいい!」
「やめぬか、小娘!!特に子猫娘!貴様ッ!!」
猫の獣人は青髪の少女の胸を指で突いていた。
「確かにプニプニしてて面白いにゃ。」
青髪の少女は尻尾でその少女を引き剥がした。
「えーい!離れるのじゃ!ワッパ共!!」
「えーっ、もうちょっとしていたかったのに・・・」
腕組をしながらリィアは威張りだす。
「龍族・・・特に神聖なワシの胸は希少価値が高いのじゃ!!うかつに触れるものではないっ!!」
「希少価値・・・?そこら辺のお漏らしガキと変わらないにゃ・・。」
「何じゃと!?」
「なんですって!?」
休憩を終えた私達はしばらく歩き、戦艦の奥深くのエリアに来ていた。
先程の開けた場所とは違い、そこは見慣れた大きさの戦艦がレールの上に固定され自動車のように所狭しと並んでいる。
あの少年が言っていたトカゲの相手をしている暇ではない、という言葉があながち冗談ではないことを示していた。
「戦艦の中に戦艦!?」
「すごーい!」
「すごいのう・・・」
私達が目移りしながら歩いていると、突如リロが大声で叫ぶ。
「止まりなさい!」
「分かったにゃ。」
「何じゃ!?」
目の前の横切るレールの前で私達は止まった。
しばらくして地響きが鳴り響く。
「じ、地震ですか!?」
「ちがう・・・」
次の瞬間、巨大な台車に固定された戦艦が目の前のレールに沿ってゆっくりと私達を横切っていく。
今にも倒れてきそうな灰色の鉄の塊の迫力に私やリィアは後ずさりをした。
「で、でかいにゃ・・・」
「じゃのう!」
「このサイズだと護衛艦ね。」
戦艦が完全に通り過ぎると白を纏った少女は歩き出す。
「さぁ、急ぎましょ!」
「あれほどの物が幾つも・・・すごいですね。」
「普通よ、普通!」
「普通じゃないにゃ・・・・。」
歩きながら、猫の獣人は目の前の少女が案内しようとしている場所について考えていた。
この世界最大の戦艦に格納されていると言うからには恐らく巨大な何かだろう。
親友が作った杖の改良版・・・もしくは少女が喜びそうなスフィアと言ったところだろうか。
少女は黒く重厚で巨大な壁のような扉の前で立ち止まった。
「着いたわよ!」
明らかにここだけ使われている材質が異なる、おそらくは金喰鉱で作られているのだろう。
どうやら見せたいものは厳重に守られているようだった。
「この程度の扉であればワシの水流で余裕じゃがのう」
「壊しちゃダメだよ。リィアちゃん」
「すまぬ、テアよ」
「ふん、どっちが大人なんだか!」
「貴様もじゃ」
「どうせお前じゃ壊せないにゃ・・・。」
「これも金喰鉱じゃと!?」
「当たりよ!ララ、お願い。」
「うん、おねーちゃん」
そう言うとリロの妹のララの手が黄色く光り出す。
「マジカルシャイニーガントレット起動!」
ララが背負っていた箱から勢い良く巨大な籠手が飛び出す。
それは初めてこの少女に出会った時に獣人の行手を遮った籠手だった。
よく見るとその篭手は重厚な扉と同じ様な色彩を持っていた。
「これも、金喰鉱かにゃ・・・。」
「当たり。後で抱きしめてあげる。」
「お前が抱きしめたいだけにゃよ・・・。」
ララが手をかざして籠手を操作しその重厚な扉をゆっくりと開ける。
扉の隙間から眩い光が溢れ出していた。
「これは・・・。」
獣人の目に飛び込んで来たのは、天才少女が喜びそうな特大スフィアでも大戦を終わらせる様な最強の武器でも無かった。
目の前に現れた少女が見せたいものと言うのは、もう戻ってこないだろうと諦めていた懐かしい光景であった。
獣人は知らず知らずの間に流していた涙を拭き取った。
リロとレノが私を歓迎する。
「さぁ!ようこそ・・・いえ、お帰りなさい、テウリアへ!」
和風建築が建ち並び、木々が青々と芽吹く中、風情ある街並みの中を多くの獣人達が歩いていた。
それは私の記憶と寸分違わない程に再現され、遠くには見慣れた武家屋敷が建っている。
まるで2年前の出発した当時から、切り取り持って来たかのように忠実に再現されていた。
「お前たち・・・あ、ありがとうにゃ・・・」
「待ってください!テウリアは滅んだはずじゃないですか?」
「いや、そもそもなぜ船の中に街があるのじゃ?」
「作ったのよ!それにこの船は商業ギルドを兼ねた戦艦だもの、その要となる街は必要でしょ?」
「何と!商業ギルドじゃと!?」
「でもなんで商業ギルドにゃ?」
「レノおねーちゃんが2年前やろうとしていた事覚えてる?」
「えーっと、にゃんだっけ?」
レノ=アルバートが何か言いたそうにモジモジとしていた。
「妹様が私のために宣言してくださった事です・・・」
「確か、何とかカンパニーを作るって言ってたにゃ!」
「えぇ、商業ギルド、レノシッピングカンパニー・・・この船はその為に作られたの」
「にゃんだって!?」
少女は恥ずかしそうに反対側を見ながら呟いた。
「で、テウリアが大変な事になったっていうから仕方なく作ってあげたってだけよ!!」
獣人は嬉しさの余り勢い良く少女に抱きついた。
「リロ!ありがとうにゃーっ!」
少女は照れながら獣人の少女を引き離そうとする。
「ちょっと暑苦しいから離れなさいよ!」
「ひどいにゃ・・・でもどうやってここまで・・・」
「テウリアに出入りしていた獣人や冒険者の協力を得てほぼ再現することに成功したわ!」
「本当に・・・ありがとうにゃ・・・。」
「そこまで泣かなくてもいいじゃない・・・。」
「私からも礼を言わせてください!ありがとうございます。」
「は?なんでアンタから礼を言われなきゃいけないのよ!」
「ここに来るまでにロモさん本当に苦しそうで、こうやって嬉しそうにしているとこっちまで安心するというか・・・」
「まぁ受け取っておくけど、そこまで同情するなんて・・・アンタはロモの何なの?」
その言葉にアイネは頬を赤くしながら戸惑った。
「私はその・・・・。」
「アイネは私の親友にゃ!」
「あ・・・はい、親友です!」
「はぁ・・・。鈍感極まれりね・・・。」
「にゃ!?」
「まぁ、いずれ気が付くでしょ・・・。」
「こ、ここは何ですし!ロモさん案内してください。貴女の住まいを!」
「分かったにゃ!」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あまたある産声の中で‼~『氏名・使命』を奪われた最凶の男は、過去を追い求めない~
最十 レイ
ファンタジー
「お前の『氏名・使命』を貰う」
力を得た代償に己の名前とすべき事を奪われ、転生を果たした名も無き男。
自分は誰なのか? 自分のすべき事は何だったのか? 苦悩する……なんて事はなく、忘れているのをいいことに持前のポジティブさと破天荒さと卑怯さで、時に楽しく、時に女の子にちょっかいをだしながら、思いのまま生きようとする。
そんな性格だから、ちょっと女の子に騙されたり、ちょっと監獄に送られたり、脱獄しようとしてまた捕まったり、挙句の果てに死刑にされそうになったり⁈
身体は変形と再生を繰り返し、死さえも失った男は、生まれ持った拳でシリアスをぶっ飛ばし、己が信念のもとにキメるところはきっちりキメて突き進む。
そんな『自由』でなければ勝ち取れない、名も無き男の生き様が今始まる!
※この作品はカクヨムでも投稿中です。
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
やくもあやかし物語
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
やくもが越してきたのは、お母さんの実家。お父さんは居ないけど、そこの事情は察してください。
お母さんの実家も周囲の家も百坪はあろうかというお屋敷が多い。
家は一丁目で、通う中学校は三丁目。途中の二丁目には百メートルほどの坂道が合って、下っていくと二百メートルほどの遠回りになる。
途中のお屋敷の庭を通してもらえれば近道になるんだけど、人もお屋敷も苦手なやくもは坂道を遠回りしていくしかないんだけどね……。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる