上 下
39 / 103

39、教会の下のパラダイス

しおりを挟む


 ダンジョン地下3階。
 松明の明かりでは頼りない程暗い。
 凹凸のある岩壁。
 数メートル先までしか見えない為、洞窟の先がどこまで続いているのかまるでわからない。
 進むたびに闇に飲み込まれて行くような錯覚に陥る。

「‥‥‥ニア様、怖いです」

 俺の服の裾を掴みながらレイラ。
 今にも泣きそう。
 洞窟内で時折り響く音。
 その度に小さな悲鳴をあげていた。
 おそらくモンスターの生活音。

「リアルお化け屋敷だな」



「キュー!」

「ひぃ!!」

 現れた黒く光る金属スライムさんの声で、ヘナヘナと床に座り込むレイラ。

「レイラ倒しちゃえ! いそげ逃げちゃうぞ!」

「‥‥‥すいません無理です、動けません」

「仕方ない」

 俺が石を投げて殲滅する。



【経験値90,210 獲得】

レベルが186に上がった
力3
素早さ4
身の守り2
かしこさ3
魅力2
HP6
MP3
それぞれ上昇


 ‥‥‥このダンジョンは、やばいかもしれない。
 さっきから金属スライムさんにしか出会ってない。
 そしてたまに出てくる黒光りする金属スライムさんは、経験値を90,000もくれる。
 

「レイラ、大丈夫?」

 レベルも上がったしホクホク顔の俺。
 
「‥‥‥駄目です、立てません」

 完全に腰を抜かしたようだ。
 仕方ない。

「おいで、急ごう」

 レイラの方に背中を向けて屈む。

「やった! おんぶしてくれるんですか?」

「奥が気になる、急ごう」

「はい!」

 レイラをおぶりながら、奥へ進む。
 もう正直『勇者の剣』よりも、このダンジョン自体への興味が強くなった俺。
 
 後ろでこっそり俺の背中に顔をスリスリしてるレイラを乗せて奥へ奥へ。
 



「‥‥‥凄い」

 ダンジョン地下5階。
 ずっと続いた細い洞窟が急に終わり、開けた場所に出た。

「‥‥‥綺麗、プラネタリウムみたい」

 背中でレイラの声が聞こえた。

「確かに」

 洞窟の広い空間。
 至る所でボンヤリと岩が光っていた。
 凄く綺麗。
 先程までの細い洞窟と違い、薄っすらと辺りが見渡せる。
 かなり広い、奥がどれくらいあるかまでは流石に岩の光源だけでは把握出来なかった。

「レイラ、あれなんだと思う?」

「モンスターですかね?」

 先程から遠くで丸いブヨブヨした物体が動いてるのが目に入っていた。
 軽く2メートルはありそう。

「狙撃してみようか」

「‥‥‥物凄く強かったらどうするんですか?」
 
「その時は逃げる」

 俺たちが通ってきた、洞窟の通路を通れなさそうなサイズ感。

「そうですね」

「じゃあやってみる。えい!」

 ガンッ!

 洞窟に響く金属音。
 
「ギュー!」

「あ、怒った!」

 一撃で倒せなかった。
 レイラをおぶってるとはいえ、それなりに力を込めてる筈なんだが。

「こっちに向かって来てます!」

「気持ち悪!」

 丸い大きな物体はドロドロ状になりながら、こちらに凄いスピードで向かって来る。

「やばい! もう一発!」

 ガギンッ!

「まだ生きてます!」

 こいつ強いぞ!
 スピードを落とすこともなく、こちらに向かって来る。
 むしろ早くなったか。

「よし! 逃げる」

「はい!」

 距離がかなりあったので、レイラを抱えながらでも余裕で通路に逃げ込めた。

「ニア様、来てます!」

「やっぱり気持ち悪い!」

 ドロドロ状になってるので通路に入って来てしまっている。
 ブチュブチュとかゴボゴボとか変な音を響かせながら迫り来る物体。
 流石にスピードは落ちている。

「これでとうだ!」

 俺は大きめな岩を出して通路を塞いだ。
 隙間はあるが簡単には通れまい。

「うわ、隙間から出て来てます!」

「もう気持ち悪いな!」

 隙間からドロドロと溢れ出る物体に向かって石を投げつけた。
 攻撃すると一度引っ込むのだが少しするとまたウニョウニョと出てくる。

「こいつしつこいな、魔族より強いんじゃないか?」

 合計3発投げた時ドロドロは消滅した。

「あ、消えましたね!」

「‥‥‥この洞窟はやばいな」

「私も、もうこの洞窟嫌です」

 泣きそうな声のレイラ。

 

【経験値1,082,520 獲得】

レベルが187に上がった
力3
素早さ3
身の守り3
かしこさ5
魅力4
HP7
MP4
それぞれ上昇

 
 桁がおかしい。
 一、十、百‥‥‥100万!

「‥‥‥レイラ」

「どうしました?」

「‥‥‥俺ここに住もうかな」

「え?!」



 パラダイスを見つけました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家族全員異世界へ転移したが、その世界で父(魔王)母(勇者)だった…らしい~妹は聖女クラスの魔力持ち!?俺はどうなんですかね?遠い目~

厘/りん
ファンタジー
ある休日、家族でお昼ご飯を食べていたらいきなり異世界へ転移した。俺(長男)カケルは日本と全く違う異世界に動揺していたが、父と母の様子がおかしかった。なぜか、やけに落ち着いている。問い詰めると、もともと父は異世界人だった(らしい)。信じられない! ☆第4回次世代ファンタジーカップ  142位でした。ありがとう御座いました。 ★Nolaノベルさん•なろうさんに編集して掲載中。

最強スキルで無双したからって、美女達によってこられても迷惑なだけなのだが……。冥府王は普通目指して今日も無双する

覧都
ファンタジー
男は四人の魔王を倒し力の回復と傷ついた体を治す為に魔法で眠りについた。 三十四年の後、完全回復をした男は、配下の大魔女マリーに眠りの世界から魔法により連れ戻される。 三十四年間ずっと見ていたの夢の中では、ノコと言う名前で貧相で虚弱体質のさえない日本人として生活していた。 目覚めた男はマリーに、このさえない男ノコに姿を変えてもらう。 それはノコに自分の世界で、人生を満喫してもらおうと思ったからだ。 この世界でノコは世界最強のスキルを持っていた。 同時に四人の魔王を倒せるほどのスキル<冥府の王> このスキルはゾンビやゴーストを自由に使役するスキルであり、世界中をゾンビだらけに出来るスキルだ。 だがノコの目標はゾンビだらけにすることでは無い。 彼女いない歴イコール年齢のノコに普通の彼女を作ることであった。 だがノコに近づいて来るのは、大賢者やお姫様、ドラゴンなどの普通じゃない美女ばかりでした。 果たして普通の彼女など出来るのでしょうか。 普通で平凡な幸せな生活をしたいと思うノコに、そんな平凡な日々がやって来ないという物語です。

伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ
ファンタジー
※弟子「究極魔法とかいいので収納魔法だけ教えて」師匠「Σ(゚Д゚)エー」 数十年前に異世界から召喚された人間が存在した。その人間は世界中のあらゆる魔法を習得し、伝説の魔術師と謳われた。だが、彼は全ての魔法を覚えた途端に人々の前から姿を消す。 ある日に一人の少年が山奥に暮らす老人の元に尋ねた。この老人こそが伝説の魔術師その人であり、少年は彼に弟子入りを志願する。老人は寿命を終える前に自分が覚えた魔法を少年に託し、伝説の魔術師の称号を彼に受け継いでほしいと思った。 「よし、収納魔法はちゃんと覚えたな?では、次の魔法を……」 「あ、そういうのいいんで」 「えっ!?」 異空間に物体を取り込む「収納魔法」を覚えると、魔術師の弟子は師の元から離れて旅立つ―― ――後にこの少年は「収納魔導士」なる渾名を付けられることになる。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...