39 / 48
39、嬉しい時は倍になる!
しおりを挟む「昨日から本ばっかり読んでる‥‥‥アルフレド様にまた借りたの?」
「うん」
帰宅してすぐ俺の部屋に入ってきたマナ。
「しかも、今日早退したの?」
「ちょっと色々やる事があってさ」
「なんだか忙しそうだね。帰っても本読んでばっかりだし‥‥‥」
「知らない事が多すぎる。もっと頑張らないと」
色んな人と話してわかった、俺にはまだまだ知識が足りない。
時間があるなら、少しでも頭に情報を入れておきたい。
「で、アルフレド様はどうなの?」
「どうとは?」
「付いていくの?」
主君として認めたのかどうかという事だろう。
俺は机の上に読んでいた本を置き、ベッドに転がるマナの方に身体を向けた。
「マナ、ちょっと話しをしてもいい?」
俺に付いてくると言っていたのだから、ちゃんと話してる方がいいな。
「うん。難しい話はわからないかもしれないけど、ちゃんと聞いておく」
マナもベッドに腰掛け、真剣な顔を此方に向けた。
「アルフレド様は王になるつもりでいるのね?」
「俺はそれを助けようと思ってる」
「で、なんでそんな紙切れが必要なの?」
アルフレド様が書いた檄文を指差すマナ。
「これは、血判状にもなってるんだ。アルフレド様の味方になる人間を探して、署名してもらってる」
「ねえねえ、シャーロット様を私とカイトで暗殺しちゃった方が楽じゃない?」
「‥‥‥物騒な事を軽々と言うなよ」
「そしたら自然と、第二王子のアルフレド様に継承権が来るじゃない」
「そうは上手くいかないよ。頭でっかちのアルフレド様は、現国王にもよく思われていないんだ。第三王子や第四王子に継承権が流れちゃうかもしれない」
王様は子沢山。
そしてアルフレド様以外の王子達は、皆この国の教えに従い身体を鍛え、騎士団の部隊長などに任命されている。
「そしたら第三王子も第四王子もヤッちゃえば?」
「‥‥‥そうすると、アルフレド様がめちゃくちゃ疑われちゃうな」
「王様もヤッちゃえば上手くいかない?」
物凄く好戦的な英雄。
まあでも、それはその通りなんだけどね‥‥‥。
「仮に今俺が魔法で王を暗殺したとしよう。時と場所さえ選べば上手くいくかもしれない。だけどその後どうすんだ?」
「その後って‥‥‥アルフレド様が王様になって国を治めるんでしょ?」
「王様を倒したから、今日から俺が王様だ! なんて言っても誰も付いてこないだろ? すぐに反撃されて全滅しちゃうよ‥‥‥。それにあまりゴタゴタしてると、他の国に弱みを見せる事になるだろう。俺たちの目的は国を壊す事じゃなく立て直す事。だから王を討った後、迅速に国を治められるように仲間は多い方がいい」
「つまり王様は倒すけど、倒したら終わりって訳じゃないから仲間を増やしてるってわけね」
まあ、そもそも王を倒すのが普通困難なんだけどな‥‥‥。
アルフレド様は大分前から仲間を増やしつつ、その機会を窺っていたらしいが、やはり隙をつき王を討つのは至難の業だったようだ。
兵を使い大軍で攻めると、お互いに戦死者が出てモスグリーン王国の国力を大きく失う事になるので、出来れば避けたい。
しかし、俺が魔法で風の刃を使えば、遠くからでも襲撃が可能。
そうすれば兵士は失わないし、被害は最小限になる。
俺は自らその役を買って出て、頓挫していた作戦を進めるようにアルフレド様に進言した。
ツラい仕事になるからと本人には何度も止められたが、ここで魔法を使わないなんて絶対にありえないんだ。
───誰かがやらないと国は変えられない。
俺の強い説得もあり、第二王子アルフレドは重い腰を上げ遂に動き出した。
檄文を作成し、自分の覚悟を皆に伝える為に血判状まで用意する。
余談だが、作戦決定後も若い俺に汚れ役を任せる事を謝ってくるアルフレド様を見て、この人についていこうと俺は再度心に決めたのだった。
「ねえねえ、見てもいい?」
ベッドから立ち上がり、机に置かれた血判状を手に取るマナ。
「いいけど丁寧に扱ってくれよ。それが原本なんだし、もし王国側の人間に見られると、署名してる人は全員打首なんだから」
「流石にそれくらいは私でもわかるから‥‥‥。あ、ウェンディさんの名前もあるのね」
「快く署名してくれたよ」
ウェンディ先輩は内容を話すと『その時を待つよ』と一言だけ言うと、捺印してくれた。
彼女が賛同してくれたのは、俺にとってはかなり大きい。
自分の行動が間違ってないという確認にもなったし、何より相談出来る相手が出来たことが本当にありがたかった。
「ちょっと座るね」
「‥‥‥何してんの?」
マナは椅子に座る俺の足の間に強引に座ると、机の方を向いてペンを手にしている。
「何って、私も署名するのよ」
「あ、待った!」
急ぎマナからペンを取り上げる。
「え、なんで? 私も名前書くわよ?」
「マナは血判状に署名しないでほしいんだ」
「‥‥‥私だけ除け者?」
「マナが署名しちゃうと、多分人が集まり過ぎちゃう‥‥‥」
マナ・グランドの人気は王より高い。
「それでいいじゃない。仲間は多い方がいいんでしょ?」
「いや、マナ・グランドが参加してるって聞いたら、意味もよく理解しないで入りたいって人が増えそうだろ? あまり志の低い人は参加してほしくないんだ。どこから話が漏れるかもわからないし」
「当の私もあんまり理解できてませんけど、こんな人は参加するなって事かな?」
睨まれた。
同じ椅子に座っているので顔が近い。
「‥‥‥怒るなよ。マナの戦闘能力や名声は、アルフレド様にとってとんでもない戦力になるのは間違いないんだから。血判状には最後に署名してくれたらいいと思う」
「最後‥‥‥」
「それより、俺がやろうとしてるのは反乱なんだ。失敗したら殺されると思う」
「知ってる」
「その‥‥‥本当にいいのか?」
付いてきてくれると言ってはいたが‥‥‥。
「ねえ、もしかして‥‥‥私がいると邪魔?」
また睨まれた。
「そういう意味じゃなくてだな‥‥‥俺の一存で決めちゃっていいのか?」
「まだ、署名すらさせてもらえてませんけど」
「このままだと、マナも参加する事になるんだぞ?」
王の暗殺の際、マナの戦闘能力はきっと必要になる‥‥‥。
「だからヤルって言ってんじゃん」
「‥‥‥ツラいぞ?」
「カイトもツラいんでしょ?」
「‥‥‥そりゃな」
王だからとかじゃない。
人を殺めるとはそういう事だ。
「じゃあ一緒ね」
そう言うと、そっと抱きついてくるマナ。
「‥‥‥」
「ツラいのは半分こしよ。私はずっとカイトに付いて行くから」
半分こね‥‥‥。
「‥‥‥マナ、ありがとう」
俺を抱きしめてくれてるマナの体温は、とても温かく感じられた。
0
お気に入りに追加
231
あなたにおすすめの小説
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!
ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。
なのに突然のパーティークビ宣言!!
確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。
補助魔法師だ。
俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。
足手まといだから今日でパーティーはクビ??
そんな理由認められない!!!
俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな??
分かってるのか?
俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!!
ファンタジー初心者です。
温かい目で見てください(*'▽'*)
一万文字以下の短編の予定です!
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
【異世界ショップ】無双 ~廃絶直前の貴族からの成り上がり~
クロン
ファンタジー
転生したら貴族の長男だった。
ラッキーと思いきや、未開地の領地で貧乏生活。
下手すれば飢死するレベル……毎日食べることすら危ういほどだ。
幸いにも転生特典で地球の物を手に入れる力を得ているので、何とかするしかない!
「大変です! 魔物が大暴れしています! 兵士では歯が立ちません!」
「兵士の武器の質を向上させる!」
「まだ勝てません!」
「ならば兵士に薬物投与するしか」
「いけません! 他の案を!」
くっ、貴族には制約が多すぎる!
貴族の制約に縛られ悪戦苦闘しつつ、領地を開発していくのだ!
「薬物投与は貴族関係なく、人道的にどうかと思います」
「勝てば正義。死ななきゃ安い」
これは地球の物を駆使して、領内を発展させる物語である。
【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?
つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。
平民の我が家でいいのですか?
疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。
義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。
学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。
必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。
勉強嫌いの義妹。
この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。
両親に駄々をこねているようです。
私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。
しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。
なろう、カクヨム、にも公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる