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魔王と勇者
4、宿屋の経営が基本的に大事
しおりを挟む「余の自動回復を上回り出した」
ポツリと呟く玉座の魔王。
「‥‥それは凄いですな」
跪くガーゴイル。
魔王は毎ターン終了時に体力を100回復する。1ターンで100以上のダメージを与えないと、魔王には永遠に勝てない。
「パーティーメンバーが4人になればかなりいけると思うのだが」
「何故メンバーを増やさないのでしょう?」
何度か増やす様に説得してみたが『吟遊詩人クラブ事件』以来、新しいメンバーは加入していない。
「‥‥‥わからぬ。勇者マルチナは頑固だからな、余が言っても聞かぬ」
溜息を吐く魔王。
「ダリルの件で懲りてしまったのでしょうか‥‥」
勇者マルチナのパーティーは生娘の集まりだ、世間を知らない。
紐の様なただのビキニを伝説の鎧と商人に吹き込まれ高額で購入し、戦士レナがとんでもない格好で現れた事は記憶に新しい。
「‥‥‥まあ、パーティーメンバーはまた変なのを連れてこられるより、いない方がましであるか」
「魔王様が倒される日がいずれくるのでしょうか?」
ふと疑問に思うガーゴイル。
魔王は強い。
過去Lv99の4人パーティーが来たことがあったが、軽く屠ってみせた。
魔王は強すぎる。
ゲームバランスは崩壊していた。
「‥‥それはそれでまた楽しいではないか。ところで余が死んだら、其方も死んでしまうのだが?」
ニヤリと笑う魔王。
「‥‥そういえばそうでしたな」
なんてこともない顔のガーゴイルであった。
「魔王様、勇者マルチナのパーティーが攻めて参りました」
「‥‥通せ」
扉を開け勇者マルチナのパーティーが現れた。
「質問がある!『勇者の剣』とは何だ?!」
「魔王に大ダメージを与えられる、地上唯一の剣だ」
「それは何処にある?!」
勢い良く質問する勇者マルチナ。
「‥‥‥‥何故知らんのだ‥‥」
「‥‥わからんから恥を忍んで聞いている」
勇者マルチナの実家の宿屋の為、側に作った『流離のダンジョン』の目玉商品である。
『勇者の剣』と『看板娘マルチナ』目当てに来る客で、宿屋は大盛況だった筈だ。
「‥‥‥勇者マルチナよ其方は、何を考えて日頃から生きておるのだ‥‥」
「うるさい!敵の説教は受けぬ!」
「‥‥‥‥実家に帰って親にでも聞いてみろ」
遠い目をする魔王。
「‥‥貴方まで‥‥私達を騙す気なのか!」
悲壮な顔の勇者マルチナ。
同じく後ろで悲しそうな顔の生娘2人。
「‥‥何故そうなる‥‥其方らは本当に色々大丈夫なのか?」
「敵の哀れみは受けん!」
勇者マルチナは剣を構えた。
「‥‥とにかく、実家に戻ったら聞いてみろ」
「‥‥‥わかった」
素直に勇者マルチナ。
「今日もやるのか?」
「臆したのか、覚悟しろ!」
戦士レナと僧侶メリルも武器を構える。
「良いだろう。‥‥あと一つ、僧侶メリルはメイスを装備しておるが杖の方が良い」
玉座から立ち上がり戦闘態勢の魔王。
「詳しく教えろ!」
「‥‥‥僧侶メリルは非力だ、魔王に殴りかかってどうする。そんな命令をしてるから余の全体攻撃でパーティーが崩壊するのだ。補助と回復に専念させよ」
「‥‥‥ありがとう」
深くお辞儀する勇者マルチナ。
「よく来たな勇者マルチナと仲間達よ。二度と歯向かえぬよう、其方らにこの世の物とは思えぬ絶望を味合わせてくれるわ」
「魔王、覚悟!」
勇者と魔王の壮絶な戦いが今始まる。
「実家の側に捨てて来て」
勇者マルチナのパーティーの亡骸を指差し魔王。
「‥‥なかなか骨が折れますな」
ガーゴイルは部下を数名呼び、勇者マルチナの実家の場所を地図で説明する。
「‥‥流離のダンジョンの守護モンスターは誰だ?」
「確か、煉獄の騎士にございます」
「そうか‥‥これも一緒に捨てといて」
『吹雪の盾』装備する者は火属性の特技・魔法を無効化。装備すると涼しい。
「あと、勇者の剣が無くなったら、これダンジョンの宝箱に入れといて」
『豪華なマント』防御力は皆無だがとにかく豪華。派手でカラフルな色と煌びやかな装飾でマハラジャの気分になれるが、装備すると、もの凄く恥ずかしい。売ると巨額の富を得る。
「‥‥‥何の為にでございますか?」
「ダンジョンの宝箱に何もないと、宿屋の経営が傾いてしまうであろう?」
「‥‥‥はっ!」
ガーゴイルは跪き頭を下げた。
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