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少女拮抗…ギフテッド再び

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ヒカワタウンまで後半日という所でそれは現れた。

平原のキャンプ場に盗賊団の死体の山。バラバラに解体されているので分からないが恐らく二十は越えているだろう。

リィナだ。
「これは…いくら盗賊とは言え惨たらしいですね。あたし達も人を殺す時綺麗に殺しているとは言えませんが…こんな弄ぶ殺し方はしません。シオン、エクスカリバーさん。まだ血が乾いていません。近くに居ますよ。醜悪な魔物が…」

「エクス。探知結界に感知は?」

「鈍いけど膨大な霊力反応。上級神…主神クラス。隠しきれずに滲み出ているって所ね。並みの雑魚じゃ無いわよ。危険度…人世崩壊クラス。本気を出されたら私達全員消し飛ぶわ。何か手段を考えましょう。」

ゾッとした。その瞬間…俺の首は撥ね飛ばされていた。ただの手刀。アヴァロンの護りを張るまでも無く即死。地面に転がる首を探して身体がよろよろと動く。

と…首が持ち上げられた。長い黒髪の少女。異世界の服を着ている。ギフテッド…
「異世界転生して与えられたミッション達成ね。漆黒の騎士の抹殺。ここまでちょろいとは。そっちの女の子は闘う?無駄だと思うけれど…面白い事を教えてあげる。私のギフテッドとしての特殊能力はね。思い描いた能力を完璧にコピーする事。さっきのパンチは最強の暗殺拳をイメージして得た能力。拳は飽きたし…銃にしましょうか。ギフト…神殺しの魔弾。ツインバレルマグナム。」

俺は視界に首の無い身体を捉えるとゆっくりと立ち上がらせた。そしてエクスカリバーを引き抜きゆっくりとギフテッドの少女に近づかせる。後5、4、3、2、1…

ギフテッドの少女はこちらに気付かずにツインバレルマグナムをリィナに向ける。

「撃ちなさい。そんなものでやられるあたしではありません。シオンの仇は討ちます。チラッチラッ…幻想顕現!地を舞うは星の息吹き!オルタカリバー!リミットブレイク!天理オルタカリバー!くぅあああ!」

「あら貴女も似たような能力の持ち主かしら。面白いわ!面白いわ!貴女の能力もコピーしてしまいましょう。勿論補正を加えた持ち主以上の精度でね。」

あたしはオルタカリバーに霊脈を臨界させるとギフテッドの少女に飛びかかりました。袈裟斬りに肩口から腰まで確かに…両断…ガバッ!

地面に新しい鮮血が舞った。ギフテッドの少女はリィナのオルタカリバーの一撃を受ける直前に刀を…神域の無銘の刀…この世の開闢から星の化身として存在し続けた刀を呼び出し、逆に切り伏せた。

「んー。完璧ね。名前も知らない刀だったけど結構出来るじゃない。あら…刀が砂になっちゃったわ。強度を越える斬撃だったからかしら?あれそう言えば漆黒の騎士の首は何処?落としちゃった?」

俺はリィナが殺られている間にギフテッドの少女に近づきそっと首を回収した。両手で元の位置に首を戻す。今が最後のチャンスだろう。まったく世の中には常識外れな強さの奴が多すぎる。そう言う奴を殺す為に業を磨いたのだが。

エクスカリバーに全霊脈を流し込む。逆流する記憶。アーサーの死の瞬間。モードレッドと呼ばれる娘による反乱。避けられぬ滅び。俺には国だ王だそんなものは関係ない。力を貸せエクスカリバー。ただ生き延びる為だけに。
龍脈と同期…限界まで霊力を吸い上げる。身体が焼けつく…苦悶を漏らしそうになる。それじゃあ気付かれる。必死に呼吸を押さえる。
神をも屠る一撃を練り上げる。内蔵聖杯臨界…ゴットレイジカリバー。エクスカリバーの柄から虹色の剣刃が煌めく。限界まで気配を消している。致命の一撃を決める。

ギフテッドの少女が振り向く。
その顔が余りに美しくて刃が止まった。闘気が萎えていく。

「正しい判断ね。あのまま打ち込んでいたら反撃で地上から消滅しているわよ。それにしてもどうやって見抜いたの?私が油断させるために無防備を限界まで役者の能力を使って演じていたのに。」

俺はポロリと溢す。
「ただ美しくて…剣が止まった。俺の負けだ。俺の命を持っていくが良い。悪質な女神様にな。ただリィナは見逃してくれ。ただの女の子なんだ。俺とは何の関係もない。」

ギフテッドの少女は愉快そうだ。
「何々?新手のナンパ。異世界にもナンパ男なんて存在するんだ。アハハハ。面白い。受ける!殺される所でそんな台詞普通言うかな?合格合格!今回は生かして帰してあげる。殺すには面白すぎるもの。私の神様には適当に言い訳しておくわ。そもそも私に指図する時点でなんかムカツクし。いざという時は神殺しの業をコピーすれば何時でも殺れるしね。じゃあね。瞬間移動…」

「待て!お前の名前は?」

「エリカ…エリカよ。じゃあね漆黒の騎士。精々長生きしなさい。」

そう言うとエリカは瞬間移動して消えた。

俺は震えを殺しながら口ずさむ。
「さよなら。エリカ。もう二度と会わない事を祈るよ。」

エクスが口を開く。
「色々言いたい事はあるけれどこれで良かったのかも知れないわね。ギフテッドは荒ぶる神の触覚。それを静める事が出来れば一番よ。無理に争う必要は無いわ。でもこれであの娘のお気に入りになったわね。それが吉と出るか凶と出るか…とにかくまだまだ精神の鍛練が足りない。何事にも動じない心を闘いの中で身に付けなさい。」

「ああ…完璧に俺の修行不足だ。殺しあいの最中に闘気を喪うなんて…」

リィナが何か聞きたそうだ。傷は完治したようだ。
「あのあの…あのエリカって言う女の子の事好きになっちゃったんですか?ちなみにあたしとどっちが好きですか?」

うわー爆弾発言来ました。返し方が問われるな…
「少し見惚れただけだ。そんなに好きな訳ではないよ。今までずっと一緒に旅をしてきたリィナの方が良いところも悪いところも含めて好きだよ。友達として。」

リィナはその場に崩れ去った。すまん。もう少し成長してくれ!色々とな。

俺達は盗賊団の死体を葬るとヒカワタウンへの旅路を再開した。その日の夜には町に到着し、宿屋で休養を取った。

エリカよ。ギフテッドとしての実力思い知ったかしら。別にチャームとかは掛けていなかったんだけど、可愛いって罪ね。また気が向いたら参上するわ。それじゃあね。信仰の奴隷君達。

次の冒険で会いましょう。

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