SSランクの聖剣エクスカリバーを手に入れた少年…聖剣少女と旅に出る

八雲 全一

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少女激震…天孫降臨

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俺達は海沿いの町ヤシロシティに辿り着いた。魚が大量に取れるらしい。宿屋に行って驚いた。食堂は満席で皆が魚に舌鼓を打っている。ここまで活気のある町だとは思わなかった。

食堂で食事を取っていると年は12位の少女に話し掛けられる。

「あんたは強いの?」

「強い。そこら辺の雑魚に引けは取らない。どうしたんだお嬢ちゃん。帝国軍にストーカーでもされているのか。」

食堂のお姉さんが制止する。
「やめなさい。リン。旅の人を巻き込んではいけません。私達の問題でしょう。ごめんなさい。冒険者さん。アジの干物をサービスしますから忘れてください。」

エクスがヒソヒソ声で呟く。
「ヤシロシティの外で神の反応が強くなっているわ。放っておくと町に侵入してきて無茶苦茶をやらかすわよ。」

「ああ…そういう。お姉さんにお嬢ちゃん。何があったか聞かせてもらえるかい。」

「あたし達は凄腕の冒険者。帝国軍を何度も撃退した事があるんです。どんな敵でも千切っては投げ千切っては投げ…ボコボコにしてきました。何でも言ってください。お代は頂戴しますけど。」

「アウラ…この人達になら話しても良いんじゃないの?あたし達の悲劇を…」

アウラと呼ばれたお姉さんは覚悟を決めた顔をする。
「仕方ありませんね。他人を巻き込みたくは無かったのですが…こちらへ」

俺達は店の奥のカウンターに案内された。ここなら満員の客に聞かれる心配もあるまい。蛇が出るか鬼がでるか…

アウラが語る。
「私達は宿屋を経営してはいるものの神の子孫…天孫なのです。最初は終局戦争の末期に地上を制圧する為に送られたスピアヘッド…尖兵でしたが、人間達に同情しだんだん同化していきました。今ではほとんど寿命も能力も普通の人間と変わりません。ですが、まれに強烈な先祖帰りをするものが居ます。私達の血族の中でも末妹のアニタはずば抜けた天孫でした。神にも届く戦闘能力…万能に等しい未来予知能力…ゴリラの様な筋力…枚挙してもしきれません。彼女の存在をひた隠しにしながら穏やかに過ごしていましたが、ある時聖道教会の異端審問官が発見してしまったのです。生きた奇跡を…それから私達は異端審問官を半殺しにすると…町の人の目を離す為にヤシロシティの西の無人島にアニタを封印しました。」

「しかしそのアニタを封じきれなくなった。怒りに身を任せたアニタがこのヤシロシティを襲来するかもしれないって所か。」

「悲しい話です。何とかして元の生活に戻してあげたいですね。あたしやシオンだって一般人から好奇の目で本来見られる異端者ですもの。アニタさんは正気を失っているんでしょうか?」

アウラが答える。
「無人島に閉じ込めて五年経つわ。もう一片の正気も残っていないでしょう。完全に人間への憎しみだけで理性をギリギリ保っているはず…貴方達にはアニタを楽にしてやってほしいの。天孫は人とは相容れない存在。ここで果てるしか無いのよ。」

リンだ。
「あたしからもお願い。あたし達は終わらせてあげたくてもその力も知恵もない。あの子は生きた暴風、神の鉄槌…もう戻れないんだ。せめて最後だけは穏やかに…」

「分かった。無力化しよう。生死は問わないんだな。」

エクスが口を出す。
「シオン…もしかして諦めているの?らしくないじゃない。黙って見てられなくなったわ。簡単に諦めないで。」

「そうですよ。エクスカリバーさんの言う通りです。アニタが余りにも哀れじゃありませんか?もう一度姉妹の元に戻してあげましょうよ。」

「………仕事を始めるぞ。リィナは対界封印奥義の準備を…。エクス。敵は何処だ。」

「ええい。仕方ないわね。ヤシロシティ西の海上500メートルまで接近。このスピードだと五分後に上陸よ。」

「湖の加護…ランスロットの加護を発動。水上歩行開始。」

「了解。有効時間は三分よ。それまでにけりをつけなさい。」

俺は目を細めて遠方を視認する。銀色の髪の全裸の少女が圧倒的な神気を纏ってこちらに向かってくる。激しい憎悪を感じる。ヤシロシティに上陸したら町は滅びる。

「リィナ!対界奥義で奴を隔離しろ。」

「了解です。幻想顕現!リミットブレイク!開闢の剣!夢想召喚!霊脈損傷…龍脈への強制連結!天界の干渉無効!150%の出力で行きますよ。開闢の理、創世の星!」

リィナの握る剣から青白いオーラが立ち上がり圧縮されてアニタの周辺を凪払った。神という神への特効奥義だ。

アニタの動きが止まる。

「痛い痛いよ。皆があたしを苛める。どうしてなんで苛めるの?あたしは生きていちゃいけないの?皆消えちゃえ…」

アニタの居る方の水面が一瞬煌めく。極大の霊力砲だ!俺を真っ直ぐ捉えている。あの巨大さ…避けきれない。

俺は叫ぶ。
「アヴァロン完全展開!六次元までの干渉無力化…同時に霊脈燃焼…速度に全振りだ!」

霊力砲が俺を貫き極大の爆発を引き起こす。

「シオン!クソッシオンをやったな!畜生…霊脈が焼き付いて幻想顕現出来ない。シオン…立って立ち上がってください。こんな所で終われないでしょう。」

爆発の閃光が収まる。そこには防御姿勢を取ったまま硬直しているシオンの姿がありました。

「霊力砲無効…流石にやばかったな。あれほどの霊力行使…しばらく身動きが取れまい。エクス…行くぞ!」

「いつでも!」

俺は水面を蹴って加速した。縮地…アニタの目の前に躍り出る。そして鋭い蹴りを腹に叩き込む。アニタは一瞬怯んだ。

「エクス!構造解析。コアを割り出せ。」

「了解…コアは胸部。」

一息の間に神速の二連閃を放つ。エックススラッシュカリバーン!俺の放った太刀はアニタのコアを貫いた。

「キャアアアアアア!ガクッ。」

「激痛で気絶したか。彼女は全身を神のコアに蝕まれて強制的に先祖帰りしていたんだ。これでもう普通の人間と変わるまい。」

「すごいです!シオン。どうしてそんな事が分かったんですか?」

「可能性に掛けただけさ。さあ彼女をアウラとリンの元に連れ帰ろう。」

その後俺らは気絶したアニタを引き連れて宿屋に戻った。アウラとリンが息を飲んで見守る。

目を覚ますアニタ。
「あれ、あたしは…長いこと夢を見ていた気がするわ。悲しくて苦しくて辛い夢。」

アウラだ。
「お帰り、お帰りなさい。アニタ。また一緒に暮らしましょう。もう二度と離さないわ。何処にも行かせない。幸せに生きましょう。」

リンも声を掛ける。
「本当にどんだけ待たせるんだよ。ようやく人間になったか…死ぬまで一緒だ。アニタ。ありがとう。冒険者さん。あんた達のお陰で家族が戻ってきた。忌まわしい天孫の力を喪って。ようやく穏やかな日常が…陽だまりが戻ってきた。お礼をしてもしたり無いよ。報酬は何でもあげよう。えっムフムフをしたい?あっ聖剣から人間の腕が生えて殴られてる。エッチな事だったんだ。こんな小さい少女にセクハラをするなんてね…。別に君になら嫌じゃないけど。まあお金はいくらでも払うよ。」

俺は頭を殴られた痛みに悶絶しながら答える。
「ハハハ…ムフムフなんて冗談さ。この宿屋で一番旨い飯を一週間食わせてくれ。そうしたら旅立つよ。」

「あたし、楽しみです!魚を使った料理はあたしも得意なんですが、ここの料理は格別に美味しいですから!」
……………………………………

俺達はそれから一週間程宿屋でお世話になり、ヤシロシティを立った。絶品の魚料理だった。アウラもリンも美人だったのでムフムフしてチェリーを卒業したかったが残念だ。

次の冒険でまた会おう。
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