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少女流転…異世界漂流者
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カゴシマシティに来てからもう一週間か。
ミーシャの依頼で帝国軍を殲滅したので、この町には脅威は無かった。
平和な日常が過ぎていく。前は一人ぼっちだった。仕事仲間は居たけど皆孤独だった。本当に信頼できる者なんて何も無かった。鉄のジャングルの中で気づいたら放り出され、日々の糧を得るために仕事をしていた。「先生」との授業が唯一の慰めだった。
「先生」は俺の様な身寄りの無い子供を集めて教育をしていた。
世界とは…神とは…そして帝国とは…様々な事を学んだ。もう五年程前の事だけど昨日の様に思い浮かべる事が出来る。結局先生は帝国軍に違法な私塾を開いていたという罪で投獄されてしまった。
俺達生徒は隠れて帝国軍をやり過ごすしか無かった。まだ子供だったから帝国軍に仕返しする事も出来なかった。
まあ大人になった今でも帝国軍に歯向かうという事はどれ程無謀で愚かかという事も分かるし、きっと先生を取り返しには行かなかっただろう。
でも今はどうだろうか?俺には力がある。どんな強大な敵にも立ち向かう事が出来る…SSランクの聖剣エクスカリバーがある。
もしもう一度先生に会えるなら…俺は折れずに闘い続けられるだろう。まあそんな奇跡は起きる筈もない。何にせよ帝国の支配下にあるジャパンサークルを脱出しウラグスク連邦共和国を目指すのが先だ。
ベッドからゆっくり身体を起こす。今は何時だろう…昼の2時か…寝過ぎたな。リィナは買い物に出掛けただろう。さてどうするかな?
エクスが話し掛けてくる。
「ようやくお目覚めかしらシオン。」
「ああ…待たせちまったな。カゴシマシティに出掛けるか?」
「いいえ、その前に片付けるべき事があるわ。町の正門に高度な霊圧を感じるの。敵対者かもしれない。」
「帝国軍…は一人じゃやってこないな。ってことはまたアニスとフレデリカか?」
「違うと思うわ。あそこまでネジ曲がった嫌な霊圧じゃないけれど…余りにもレベルが高すぎる。神霊クラスね。」
「神様がカゴシマシティに居るってことか?ミーシャも現人神だって言っていたけれど…戦闘能力はそこまででも無かったしな。取り敢えず行ってみるか。」
「臨戦体勢で行くわよ。何が起こるか分からないわ。」
「了解。リィナのバックアップも期待できないしな。」
俺達は宿屋を出ると正門に向かっていった。心なしか空が荒れている気がする。暗雲が立ち込め…風が吹いている。
いつもは人で賑わっているのに今日は正門前には彼女以外誰もいなかった。
赤い髪の少女。変わった格好をしている。ピチピチのスーツみたいのを着ている。語彙力が死んでるな。声を掛けてみるか。
「お嬢さん。そんなに禍々しいオーラを出してどうしたんだい?彼氏にでも振られた?」
「私、私は死んだ筈なのに何故生きているんですか?あれほど死にたかったのに…女神とやらが異世界転生させるとか言い出したから…止めようと思ったのに…私を殺してくれませんか?代わりに貴方も壊してあげます。」
濃厚な魔の霊力がはね上がった。何なんだこいつは…
エクスが口を開く。
「聞いた事があるわ。異世界からの転生者。ギフテッド。与えられし者。圧倒的な戦闘能力を与えられて野に放たれる神の尖兵よ。放っておけば甚大な被害をもたらすわ。ここで殺しきるのよ。」
「俺には普通の女の子にしか見えないよ。さあ落ち着いて、俺が宿代を奢ってあげよう。一緒の宿に泊まって話を聞かせてくれ。」
少女はまるで聞こえていないかのそぶりだ。
「何で貴方は逃げないんですか?私が気持ち悪くて怖いんでしょう。そう言った人達を沢山殺してきました。何個も町を壊滅させてこの町にたどり着いたんです。貴方も終わりです。死になさい。絶牙!」
そう少女が唱えると霊力の牙が生成されこちらに放たれる。俺はエクスカリバーを掴むとエクスに任せて、霊力の牙を打ち払った。
ガキィンと音を立てて牙を弾く。しかし俺の両手から血が飛び散った。
エクスが舌打ちする。
「ちっ!直撃じゃなくてこれとはね。恐らくアヴァロンの守りも守れるかどうか…敵に攻撃のチャンスを与えないで!一気に殺しきるわよ。」
「くっ…了解。それしか道は無いのか…」
「霊脈大剣…格納聖杯50パーセント解放!エクスカリバーアルテマオーバーロード!」
エクスが叫ぶ。
俺は虹色の光刃を放つエクスカリバーを振りかざし、少女に近寄る。そして神速で振り下ろすが…
バギィン!固い手応え…少女は右手の人差し指と中指でエクスカリバーを止めていた。
「私を邪魔しないでください。邪魔するってことは死にたいんですよね。良いでしょう。ここで死んでください。天衝絶牙!」
巨大な牙が精製され天から俺に振り落とされる。
「限定結界…アヴァロン!」
エクスの結界の展開が間に合い寸での所で天衝絶牙は止まった。
エクスはまだ詠唱する。
「格納聖杯臨界!エクスカリバーオルタ降臨!自立攻撃!」
そう叫ぶともう一振の黒い実体剣が呼び出され、少女の頭を撥ね飛ばした。
それは一瞬の出来事だった。
少女の身体は虹色の泡に還っていく。
「これで死んだのかな。あの娘は死にたがっていたけど。」
「どうでしょうね。ギフテッドは無限の生命…コンティニューが出来ると聞いたことがあるわ。呼び出した女神にもう一回強制召喚されるんじゃないかしら。まあこの町の危機はさったわ。最低の殺人鬼の殺戮という結果はね。さあ宿屋に戻りましょう。」
俺は名も知らぬ少女を救えなかった事に罪悪感と心地悪さを感じながら宿屋へと帰って行った。
この両手の届く範囲しか俺は守れない。それでも俺は進もう。未来を掴むために…
次の冒険に続く。
ミーシャの依頼で帝国軍を殲滅したので、この町には脅威は無かった。
平和な日常が過ぎていく。前は一人ぼっちだった。仕事仲間は居たけど皆孤独だった。本当に信頼できる者なんて何も無かった。鉄のジャングルの中で気づいたら放り出され、日々の糧を得るために仕事をしていた。「先生」との授業が唯一の慰めだった。
「先生」は俺の様な身寄りの無い子供を集めて教育をしていた。
世界とは…神とは…そして帝国とは…様々な事を学んだ。もう五年程前の事だけど昨日の様に思い浮かべる事が出来る。結局先生は帝国軍に違法な私塾を開いていたという罪で投獄されてしまった。
俺達生徒は隠れて帝国軍をやり過ごすしか無かった。まだ子供だったから帝国軍に仕返しする事も出来なかった。
まあ大人になった今でも帝国軍に歯向かうという事はどれ程無謀で愚かかという事も分かるし、きっと先生を取り返しには行かなかっただろう。
でも今はどうだろうか?俺には力がある。どんな強大な敵にも立ち向かう事が出来る…SSランクの聖剣エクスカリバーがある。
もしもう一度先生に会えるなら…俺は折れずに闘い続けられるだろう。まあそんな奇跡は起きる筈もない。何にせよ帝国の支配下にあるジャパンサークルを脱出しウラグスク連邦共和国を目指すのが先だ。
ベッドからゆっくり身体を起こす。今は何時だろう…昼の2時か…寝過ぎたな。リィナは買い物に出掛けただろう。さてどうするかな?
エクスが話し掛けてくる。
「ようやくお目覚めかしらシオン。」
「ああ…待たせちまったな。カゴシマシティに出掛けるか?」
「いいえ、その前に片付けるべき事があるわ。町の正門に高度な霊圧を感じるの。敵対者かもしれない。」
「帝国軍…は一人じゃやってこないな。ってことはまたアニスとフレデリカか?」
「違うと思うわ。あそこまでネジ曲がった嫌な霊圧じゃないけれど…余りにもレベルが高すぎる。神霊クラスね。」
「神様がカゴシマシティに居るってことか?ミーシャも現人神だって言っていたけれど…戦闘能力はそこまででも無かったしな。取り敢えず行ってみるか。」
「臨戦体勢で行くわよ。何が起こるか分からないわ。」
「了解。リィナのバックアップも期待できないしな。」
俺達は宿屋を出ると正門に向かっていった。心なしか空が荒れている気がする。暗雲が立ち込め…風が吹いている。
いつもは人で賑わっているのに今日は正門前には彼女以外誰もいなかった。
赤い髪の少女。変わった格好をしている。ピチピチのスーツみたいのを着ている。語彙力が死んでるな。声を掛けてみるか。
「お嬢さん。そんなに禍々しいオーラを出してどうしたんだい?彼氏にでも振られた?」
「私、私は死んだ筈なのに何故生きているんですか?あれほど死にたかったのに…女神とやらが異世界転生させるとか言い出したから…止めようと思ったのに…私を殺してくれませんか?代わりに貴方も壊してあげます。」
濃厚な魔の霊力がはね上がった。何なんだこいつは…
エクスが口を開く。
「聞いた事があるわ。異世界からの転生者。ギフテッド。与えられし者。圧倒的な戦闘能力を与えられて野に放たれる神の尖兵よ。放っておけば甚大な被害をもたらすわ。ここで殺しきるのよ。」
「俺には普通の女の子にしか見えないよ。さあ落ち着いて、俺が宿代を奢ってあげよう。一緒の宿に泊まって話を聞かせてくれ。」
少女はまるで聞こえていないかのそぶりだ。
「何で貴方は逃げないんですか?私が気持ち悪くて怖いんでしょう。そう言った人達を沢山殺してきました。何個も町を壊滅させてこの町にたどり着いたんです。貴方も終わりです。死になさい。絶牙!」
そう少女が唱えると霊力の牙が生成されこちらに放たれる。俺はエクスカリバーを掴むとエクスに任せて、霊力の牙を打ち払った。
ガキィンと音を立てて牙を弾く。しかし俺の両手から血が飛び散った。
エクスが舌打ちする。
「ちっ!直撃じゃなくてこれとはね。恐らくアヴァロンの守りも守れるかどうか…敵に攻撃のチャンスを与えないで!一気に殺しきるわよ。」
「くっ…了解。それしか道は無いのか…」
「霊脈大剣…格納聖杯50パーセント解放!エクスカリバーアルテマオーバーロード!」
エクスが叫ぶ。
俺は虹色の光刃を放つエクスカリバーを振りかざし、少女に近寄る。そして神速で振り下ろすが…
バギィン!固い手応え…少女は右手の人差し指と中指でエクスカリバーを止めていた。
「私を邪魔しないでください。邪魔するってことは死にたいんですよね。良いでしょう。ここで死んでください。天衝絶牙!」
巨大な牙が精製され天から俺に振り落とされる。
「限定結界…アヴァロン!」
エクスの結界の展開が間に合い寸での所で天衝絶牙は止まった。
エクスはまだ詠唱する。
「格納聖杯臨界!エクスカリバーオルタ降臨!自立攻撃!」
そう叫ぶともう一振の黒い実体剣が呼び出され、少女の頭を撥ね飛ばした。
それは一瞬の出来事だった。
少女の身体は虹色の泡に還っていく。
「これで死んだのかな。あの娘は死にたがっていたけど。」
「どうでしょうね。ギフテッドは無限の生命…コンティニューが出来ると聞いたことがあるわ。呼び出した女神にもう一回強制召喚されるんじゃないかしら。まあこの町の危機はさったわ。最低の殺人鬼の殺戮という結果はね。さあ宿屋に戻りましょう。」
俺は名も知らぬ少女を救えなかった事に罪悪感と心地悪さを感じながら宿屋へと帰って行った。
この両手の届く範囲しか俺は守れない。それでも俺は進もう。未来を掴むために…
次の冒険に続く。
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