SSランクの聖剣エクスカリバーを手に入れた少年…聖剣少女と旅に出る

八雲 全一

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少女一撃…野神との出会い

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俺達はサウスサツマシティを立った。結構活気があって個人的には気に入っていた町だったが聖道教会に居場所を嗅ぎ付けられている。あいつらどうやって俺達の居場所を嗅ぎ付けているのだろう。

胡散臭い神の祝福という奴だろうか?それだけじゃない。帝国だって比較的高い頻度で襲ってくる。奴らには伝説の預言者サリバンが着いている。その予知能力なのだろうか?

どちらにせよ。厄介な事だ。どんどん俺達は追い込まれていく。闘いは終わらない。俺達が死ぬか…アニスが言っていたな。聖剣を手離すまで。

確かにエクスカリバーを手放し、それで見逃して貰えるなら問題ないだろう。しかし俺達は余りにも多くの帝国と聖道教会の血を流しすぎた。お互いに引くに引けない筈だ。

それでもウラグスクに行けば帝国の支配圏外だし、聖道教会とは違う宗教の支配地域でもある。そこまで行けば安全だ。まあ今はシンジュクスラムより遥か西の果てに来てしまった訳だが。

一歩一歩噛み締めて歩いて行くしかない。千里の道も一歩からだ。

考え事をしながら道中を進むとリィナが話し掛けてきた。

「サウスサツマシティ…もう訪れる事は無いんでしょうね。素敵な町でした。首飾りも買って頂けましたしね。少し名残惜しいです。」
俺も返事を返す。
「そうだな。この先にはヒオキシティという町があるという噂だ。またそこで敵が来るまではのんびりしよう。俺達の旅路は急いだってろくな事は無いんだからな。」
「どんな町なのか楽しみです。あたしはマクラザキシティしか知らないから新しい町が楽しみで仕方ありません。それにエクスカリバーさんとシオンと旅するのも楽しいですよ。」
エクスが口を開く。
「貴女にとってはとても厳しい旅路になるけれど…明るく前向きな姿勢は評価できるわ。早く幻想顕現を使いこなして戦力としても活躍出来るようにならないとね。」
「もちろんです。あたし毎晩幻想顕現で英雄の武器を呼ぶ訓練しているんです。ピカピカしていたりバキバキのオーラを放つ剣や槍をバンバン作っています。キチンと構造と使い方も勉強していますよ。」

俺が口を出す。
「英雄の武器の知識なんか持っていたのか?意外だな。そんなものは金持ちの息子の道楽で得られる知識だと思っていたんだが…君みたいな可愛い女の子が興味を持ちそうで無いと思っていたけど。」
「それがですね。心を落ち着けて幻想顕現をしようとすると何処からともなく声が聞こえてくるんです。グングニルと詠唱しなさい…みたいな!その声に従うとどんなものでも錬成出来るんですよ。まあ側だけが錬成出来て中身が詰まっていないと言えばそうなんですが。戦闘で使おうと思うとあまり慣れていない武器は使えません。だから馴染みのある何度も錬成した英雄の武器を使うことになると思います。」

エクスが問いかける。
「そうなの。なかなか頼もしいじゃない。でもエクスカリバーは100%の精度では錬成出来ないんでしょ?」
「たはは…痛い所を突いてきますね。その通りです。エクスカリバーさんは一番身近に見ているんですがレベルが高すぎて完璧には錬成出来ないんです。偽物のランクで錬成は可能ですが…失礼でなければいつか本物のエクスカリバーさんを幻想顕現してみたいものです。」

そんな話をしながら瓦礫の道を進んでいくと洞窟があった。もう夜半だし今日はその洞窟で休んでいく事にする。俺は疲れからか見落としてしまった。リィナもエクスも気付かなかったようだ。

「サイレンジ洞窟…野神封印の危険地域」

俺達は洞窟の中に進んでいく。
エクスカリバーを松明の代わりに明かりを灯して進んでいく。中に入って三十分ほどたつが目立った障害は無かった。

リィナが口を開く。
「洞窟に入るのなんて人生初めてです!怖いモンスターがわんさか出てくるのが相場だと思っていたのですが…そうでも無いみたいですね。何だか殺風景です。石ころ以外何も転がっていないなぁ…シオン…何処まで進むんですか?」
「うぅん。そうだな…もうこの辺でいい気もするんだが…奥にモンスターがいるかもしれないし…寝てる間に襲われたら流石のエクスカリバー持ちでも時既に時間切れって感じで待った無しに死にそうだからなぁ。エクスはどう思う。」
「そうね。最奥まで進むしか無いでしょう。もしかしたら宝箱でも置いてあるかもね。」
「まあ今は金には困って無いんだがな。あって困るもんでもないし、奥まで進みますか。」
「レッツゴーです!ワクワクしますね。シオン…エクスカリバーさん!」
「はいはい。リィナ!気を引き締めて掛かりなさい。」

俺達は更に洞窟の奥へと進んでいく。そして厳重な隔壁で閉鎖されているエリアに到着した。古い隔壁だ。帝国歴以前の年代の遺跡だろうか?

俺が口を開く。
「エクス、リィナ…どうする?」
リィナが答える。
「中に入ってみましょう。ここまで来て入らないと落ち着きません。」
エクスも口を開いた。
「私もリィナに同感。敵がいたら倒すだけよ。洞窟探検の醍醐味を捨てる訳には行かないわ。」
「了解。隔壁の横にボタンがある。押すぞ。」

ゴゴゴ…と音を立てて隔壁が解放される。そこには鎖に縛られた巨人がいた。十メートルはある。その空間は洞窟の外まで吹き抜けになっていた。

巨人が話す。
「俺を閉じ込めし小さき者よ。滅びの時が来た。俺を繋ぐ鎖は解き放たれた。この時が来るのを悠久の時の中で待っていたぞ。我が名はバルバドス。神と崇められる者。いざ参らん!」

バルバドスは鎖を引きちぎり、その巨大な拳を俺に向かって振り下ろしてきた。
エクスが吠える!

「まさか野神とはね。これまでにない大物よ。覚悟して掛かりなさい!シオン、リィナ!シオンはこのままアヴァロンで防御。リィナは幻想顕現で頭部を狙撃しなさい。」
「「了解!」」

俺は右手で自動的にエクスカリバーを掴むとからだの前で構えた。そこに楽園の限定結界…アヴァロンを展開する。バルバドスの拳が叩きつけられる。衝撃で十メートル程吹っ飛ばされた。全身が軋む。これが神の一撃か…結界ごしにこれとはな。バルバドスは腕を伸ばし結界の上から俺を握り持ち上げた。

ミシミシと身体が悲鳴を上げる。ギリギリ耐えられるが結界がなかったら、潰されて死んでいるだろう。

「シオンはやらせない。幻想顕現…グングニル。錬成!投擲します!敵を穿て!絶世の神槍よ!」

リィナがグングニルを思い切り振りかぶって投擲した。神速に加速しバルバドスの頭部に着弾する。その痛みと驚きでバルバドスの手による拘束が緩んだ。

「今よ!シオン。エクスカリバーで決めるわ!必殺の!」
「「龍脈より力を授からん!霊脈大剣!エクスカリバーオーバロード!斬!」」

エクスカリバーから青い炎が吹き出し長い剣となる。それを振りかぶりバルバドスの頭部を切りつけた。霊気の剣で焼かれバルバドスの頭部から夥しい量の血が吹き出る。脳漿が飛び散りバルバドスは完全に絶命した。

拘束が解かれ地上に降り立つ。バルバドスの身体は霊気の塵に帰っていった。

「弱いと言えど流石は神だったわね。攻撃力に特化しすぎだったわ。アヴァロンの守りが無ければ死んでいたでしょう。」
「うへぇ…あれで弱い方なのか。もう二度と神とは闘いたくないね。命がいくらあっても足りない。」
「シオン…エクスカリバーさん…見ていてくださいましたか!あたしのグングニルが格好よく決まっていた所を!」
「ああ…助かったよ。リィナも立派な仲間だ。そういえばエクス…自動換金システムは?どうなった?」
「金貨二袋ってところね。神にしては湿気ているけど仕方無いでしょう。」
「まあ金はいっぱいあるしがっつく程でもないか。今日は疲れた。ここを宿にしよう。静かだし、ひんやりしてる。バルバドスは死体も残さなかったしな。」
リィナが答える。
「そうですね。今晩は山羊の乳のクリームシチューです!出来上がりを楽しみに待っていてください。」
「美味しそうね。私も身体があれば頂けるんだけど残念だわ。」
「本当に勿体ないよ。リィナの飯は天下一だからな。俺は後で頂くとしよう。」

俺達はその後食事を取り、すぐに寝付いてしまった。
次の冒険に続く。
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