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少女惑う…リィナの決意

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マクラザキシティを出て5日経つ。ナインステイツの瓦礫の山を掻き分けて進む。何処に行っても神と人間の戦争の傷痕が残っている。遅々として前に進むことが出来ない感じだ。前ならもっとイライラしていたが…リィナがいるお陰であまりカリカリせずに済んでいる。
彼女はもっぱら炊事担当だ。マクラザキシティで買ってきた食料を調理して出してくれる。
今日も飯の時間になった。
「はい…シオン。暴れ豚の串焼きです。どうぞ召し上がれ。」
「ありがとう。リィナ。今日も旨そうだな。ありがたく頂くよ。」
エクスが口を開く。
「本当に美味しそうね。私も受肉していたら食べられるんだけど…」
「聖剣の時点で肉体があるんじゃないか?」
「昔…神秘が色濃い時代は受肉する事もあったわ。今みたいな魔力が枯渇している上に機械文明が跳躍跋扈している時代ではまず無理だと思うけどね。」
リィナが口を挟む。
「へぇ…エクスカリバーさんが身体を持っていた時代があったんですね。きっと凄い美人さんだったに違いありません。あって見たかったなぁ。」
「ふふん…リィナの言うとおり可憐な美少女だったのよ。シオンにも見せてあげたかったわ。でもそうすると発情しちゃって旅どころじゃなくなっちゃうかもね。」
「人を動物扱いしないで貰えます?美人を見たからって一々発情しないよ。それにリィナだって充分美人だ。エクスの基準で言ったら発情する事になる。」
俺はそう言ってしまったと思った。ネタを与えてしまったな。
リィナが満面の笑顔を浮かべている。
エクスが口を開く。
「おやおや…そう言う風に見ていたのね。良かったじゃない…リィナ。おめでとう!」
「何がおめでたいんだ!リィナ…君は確かに可愛いけど…エクスが茶化しているみたいに俺が発情している訳じゃないんだからな。勘違いしないでくれよ。」
リィナは残念そうにしている。
「そうですか…あたしは別に嫌じゃないですよ。シオンとだったら…だって命の恩人ですもの。あたしの人生はシオンの為に使ってください。」
「君の人生は君のものだ。死後の魂はエクスカリバーに捧げる事になるけれど…旅には着いてきてもらうけれどそれ以外は自由だ。」
エクスが口を出す。
「本当は解放してあげたいけど、そうしたらその瞬間にリィナは絶命するでしょう。契約をする直前の状態に戻るから、右腕を失って大量の出血しているあの状態に身体が回帰するわ。」
「それだけはさせない。絶対に…俺はリィナを守ると誓ったんだ。もう死なせるような事はしない。」
「あたしは死にませんよ。シオン。だってエクスカリバーさんが守ってくれるんですから。それにシオンはあたしこそ守ります。あたしだって何とかして闘えるかもしれない。ですから…」
!?!?
俺の胸に穴が空いた。ゴポッゴポッと音を立てて血が流れ出す。
「奇襲よ!シオン…蘇生まで時間が掛かる…私の感知結界を抜けてくるとわね。超超ロングレンジからの狙撃…!リィナ逃げなさい。止まらないで走って!早く!貴女に私は扱えない!」
「嘘…嘘ですよね。シオン…あたしを守ってくれるって言いましたよね。どうして…あたしは…あたしは…」

あたしの脳裏に声が響く。何処か懐かしい声が…お母さん…?
力が欲しいか?敵を打ち払う…彼を守る力が?

「あたしだって闘いたい!シオンを見捨てたくない。敵に立ち向かいたい!あたしは…彼を守るの!」

ならば授けよう本来あり得ない技術を…英霊の奥義を…
幻想顕現…ファンタズムオーバーロード…この世の奥義や伝説の武具を一時的に産み出して使役する禁呪。

唱えよ。

リィナは唱える禁断の呪詛を…
「ファンタズムオーバーロード…アロンダイト!」

その小さな手に神話の武器が精製される。
手にした瞬間に闘い方が頭に叩き込まれる。
敵は超遠距離…使うべきはホーミングブレード!

「アロンダイト!ホーミングブレード!」

手元からアロンダイトが射出された。敵の気配がある所に自動で飛んでゆく。
狙撃をしていた男がシオンから標的をリィナに変えた瞬間だった。
ズブリと何かが貫通する感覚。自分の腹から剣が生えていた。そしてまばゆい光に包まれ剣は爆発した。
そこには狙撃手だった男の下半身が残っているだけだった。

ン!オン!シオン!
五月蝿いなぁ…誰かが大声で俺を呼んでいる。とても眠いんだ。俺の人生は終わった?良く分からないけど…このまま眠っていたい。
リィナ…蘇生は完了したわ。後は目覚めるのを待つだけ…でもシオンが目覚める気が無いのならずっとこのままと言うことも…

「じゃあ私が起こしてあげます。シオン…目覚めてください。」

リィナはゆっくりとシオンの唇に口付けた。
長い口づけ…俺はゆっくりと目覚める。

「リィナ…おはよう。敵に俺は殺されたんじゃあ無いのか?」
「一回死にましたよ。エクスカリバーさんが蘇生してくれたんです。後あたしがゴニョゴニョして目覚めさせました。」
「そっか…!?敵は?」
「あたしが幻想顕現という技を使って敵を倒しました。」
「幻想顕現…?」
エクスが口を挟む。
「何処かの神霊がリィナに干渉して英霊の武器や奥義を召喚する技術を授けたのよ。あれは何だったのか私にも分からない。もしかしたら今回の騒動に天界も介入してきてるのかもしれない。話がややこしくなってきたわ。」
「そっか…リィナを守ると約束したのに…逆に守られちまったな。ありがとう。」
リィナは俺を膝枕してポロポロと涙を溢す。涙が頬に当たる。
「本当に怖かったんですから!もうあたしを置いていなくならないで下さい。貴方が居なくなったらあたしは…あたしは…」
「これからはずっと一緒だ。一緒に闘ってくれ。俺達が落ち着いて生活出来るところにたどり着くまで…俺はもう少し眠るよ。リィナが無事で安心した。」
リィナは新たなる力を授かり闘いは続く。
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