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少女煌めく…無窮絶剣
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サンシャインシティに泊まって一週間は経つ。ガルバニア帝国の気配が町を覆っている…らしい。俺は何も分からないが、エクスの探知結界に引っ掛かっている。エクスカリバーなら遅れを取ることは無いだろうが、多勢に無勢と言う言葉もある。限界を超えた攻撃が殺到したら一溜りもない…エクスは否定しているが…今は攻勢に打って出る事は出来ない。
宿屋に素知らぬ顔で宿泊しているが、出ていかないとな。無関係の人間を巻き込むほどこのシオンさんは図太く無いんだ。
エクスに語りかける。
「宿屋から移動しよう。この人達を巻き込む訳にはいかない。」
「何処に逃げようとこの町が戦場になることには変わり無いわ。」
「それでも出来る事をやろう。俺達が特級の厄ダネだとしても…」
「町を囲んでるのは雑魚ばかりよ。そろそろ引きこもるのを辞めたら?闘って終わらせるのも手よ。」
俺はぶるぶると体を震わせる。怖いのか、興奮しているのか分からない。内臓が重く鈍い物で埋め尽くされていくような錯覚に囚われる。ここで死ぬのか…それとも生き延びるのか?それは分からないけれど、きっとここで立ち止まったら負けだ。何処までも前を向いて走る。死ぬまで走り続けてやる。
「行こう。エクス。敵を殲滅出来るか?」
「お安い注文よ。鉄の弾を打ち出す弩が武装としては精々でしょう。それなら私で防ぎきれる。人の理を揺らがせるレベルのアーティファクトでも無ければね。さあ行くわよ!聖剣抜錨!」
「うおおおおおおお!」
俺達は叫びながら町の中心にある宿屋から飛び出した。サンシャインシティは前門と後門に入口が限られる。その二点を攻撃すれば敵は戦力を大幅に消耗するだろう。
「エクス頼むぞ!対軍奥義で頼む。」
「了解!龍脈覚醒!霊力循環!神話回帰!人理干渉率極大!天界からの抑止力補正…対象殲滅率に影響無し。穿てこの世界をくらい尽くせ!スパーキングレイ!招雷!」
天が黒くなり稲光がエクスカリバーに着弾した。そして次の瞬間拡散する。バリバキバキバリブシャ…
俺にはハッキリと肉が雷で焼かれ砕け散る音が聞こえた。それも一つや二つではない。無数に木霊する。ああもう生きている者はいまい。自動換金システムが無慈悲に金貨を吐き出す。まるでこの金貨が俺が人を殺した代償とでも言わんばかりに。
「!…シオン!気を抜かないで。まだ居る!必殺の招雷を生き抜いた奴が!凄い速度でサンシャインシティの前門から駆け込んでくるわ。」
「エクス!防御体制頼む!バリアも張れるなら張ってくれ!」
「言われなくても!妖精の加護発動…限定結界…アヴァロン!」
それはぼそりと呟く様に聞こえた。
「因果を断て…無窮絶剣…因果律操作…零式。」
少女だった。人形のようなどこか壊れた印象のある青髪の少女。早すぎて振り抜く前に像が止まった。残るは俺が切断されたという因果のみ…のはずだったが…
「アヴァロンの護りに干渉してくるとはね。千年位モンスタースレイヤーでもやったのかしら。惜しかったわ。色々な意味で…貴女は死ぬのよ!今日…ここで!」
アヴァロンの結界が拡散し、少女の無窮絶剣を無効化した。
俺の右腕がするりと動くそしてエクスカリバーから神々しい波動が放たれ、光の剣刃が現れた。
「せめて奥義で葬りましょう。神話回帰…原始…天に太陽、地に星…イースガランティア!エクスカリバー!斬!」
虹の光を放ちながら振るわれた星の力を宿した一刀。それを少女は当たった瞬間にするりと抜けるように避けた。
「無銘転生…グゥッ」
しかし少女の全身から血が噴水の様に吹き出した。
「紙一重で致命傷を回避したわね。やるじゃない。ここで殺すのは惜しいわ。出直しなさい。気が変わらない内にね。名を名乗りなさい。」
少女は何処からか響く声に怪訝そうな顔をしながら息も絶え絶えに答えた。
「帝国に仇なす逆賊に語る名など持ち合わせては居ない。無銘だ…私は無銘の守護者だ。帝国の掃除屋。私を逃がした事を後悔する事になるわよ。」
「次こそ一刀の元に切り伏せて魅せるわ。それじゃあね。無銘。」
無銘と名乗った少女はよろよろとよろめきながら踵を返した。絶剣と呼ぶ妖刀を杖にしながら一歩一歩踏みしめながら帰っていく。
「強かったな。あの娘。」
俺はふと呟いた。
エクスはふんと鼻を鳴らす。
「まあまあ出来るわね。神話の時代ならともかく黄昏のこの時代にもあんな使い手が居るとわね。まあ私が最強なのは変わり無いけど。」
「エクスさんは無敵の聖剣様だもんな。どんな敵も一撃で粉砕してくださいよぉ。シオンさんはボディは貸すけど剣はからっきしだからさ。」
「鍛えて上げても良いけど、体を好き放題使う方が良いわね。壊れるまで扱ってあげる。」
「さらりとそう言うこと言う所が怖いよ。どんだけドSなんだよオオオ!」
「聖剣は皆ドSなのよ。覚えておきなさい。マスターを使い潰すように使われたく無かったらもう少し強くなりなさい。」
「面倒だからパス。戦闘は任せるよ。死ななければそれでいい。」
「私のアヴァロンは抜けないわよ。余程の神格のある妖刀、名剣でもない限りね。」
「鉄血のこの世界にアーティファクトが残っているもんかねぇ。」
「神秘とは身近にあるものよ。私も瓦礫の山から見つかった位だからね。慢心はお勧めしないわ。さあそろそろ他の町に行きましょう。帝国や聖道教会の追っ手が掛かるには時間が掛かるわ。」
「そうだな。こんだけ大袈裟に暴れといてこの町にはもう居れないだろう。」
俺はエクスを背中にしまうとサンシャインシティに背を向けた。ウラグスク連邦共和国を目指す旅は始まったばかりだ。このまま北上を続ける。終わり無き闘争の旅路…それでも俺は生き延びるさ。何の意味も無いのだとしても。
宿屋に素知らぬ顔で宿泊しているが、出ていかないとな。無関係の人間を巻き込むほどこのシオンさんは図太く無いんだ。
エクスに語りかける。
「宿屋から移動しよう。この人達を巻き込む訳にはいかない。」
「何処に逃げようとこの町が戦場になることには変わり無いわ。」
「それでも出来る事をやろう。俺達が特級の厄ダネだとしても…」
「町を囲んでるのは雑魚ばかりよ。そろそろ引きこもるのを辞めたら?闘って終わらせるのも手よ。」
俺はぶるぶると体を震わせる。怖いのか、興奮しているのか分からない。内臓が重く鈍い物で埋め尽くされていくような錯覚に囚われる。ここで死ぬのか…それとも生き延びるのか?それは分からないけれど、きっとここで立ち止まったら負けだ。何処までも前を向いて走る。死ぬまで走り続けてやる。
「行こう。エクス。敵を殲滅出来るか?」
「お安い注文よ。鉄の弾を打ち出す弩が武装としては精々でしょう。それなら私で防ぎきれる。人の理を揺らがせるレベルのアーティファクトでも無ければね。さあ行くわよ!聖剣抜錨!」
「うおおおおおおお!」
俺達は叫びながら町の中心にある宿屋から飛び出した。サンシャインシティは前門と後門に入口が限られる。その二点を攻撃すれば敵は戦力を大幅に消耗するだろう。
「エクス頼むぞ!対軍奥義で頼む。」
「了解!龍脈覚醒!霊力循環!神話回帰!人理干渉率極大!天界からの抑止力補正…対象殲滅率に影響無し。穿てこの世界をくらい尽くせ!スパーキングレイ!招雷!」
天が黒くなり稲光がエクスカリバーに着弾した。そして次の瞬間拡散する。バリバキバキバリブシャ…
俺にはハッキリと肉が雷で焼かれ砕け散る音が聞こえた。それも一つや二つではない。無数に木霊する。ああもう生きている者はいまい。自動換金システムが無慈悲に金貨を吐き出す。まるでこの金貨が俺が人を殺した代償とでも言わんばかりに。
「!…シオン!気を抜かないで。まだ居る!必殺の招雷を生き抜いた奴が!凄い速度でサンシャインシティの前門から駆け込んでくるわ。」
「エクス!防御体制頼む!バリアも張れるなら張ってくれ!」
「言われなくても!妖精の加護発動…限定結界…アヴァロン!」
それはぼそりと呟く様に聞こえた。
「因果を断て…無窮絶剣…因果律操作…零式。」
少女だった。人形のようなどこか壊れた印象のある青髪の少女。早すぎて振り抜く前に像が止まった。残るは俺が切断されたという因果のみ…のはずだったが…
「アヴァロンの護りに干渉してくるとはね。千年位モンスタースレイヤーでもやったのかしら。惜しかったわ。色々な意味で…貴女は死ぬのよ!今日…ここで!」
アヴァロンの結界が拡散し、少女の無窮絶剣を無効化した。
俺の右腕がするりと動くそしてエクスカリバーから神々しい波動が放たれ、光の剣刃が現れた。
「せめて奥義で葬りましょう。神話回帰…原始…天に太陽、地に星…イースガランティア!エクスカリバー!斬!」
虹の光を放ちながら振るわれた星の力を宿した一刀。それを少女は当たった瞬間にするりと抜けるように避けた。
「無銘転生…グゥッ」
しかし少女の全身から血が噴水の様に吹き出した。
「紙一重で致命傷を回避したわね。やるじゃない。ここで殺すのは惜しいわ。出直しなさい。気が変わらない内にね。名を名乗りなさい。」
少女は何処からか響く声に怪訝そうな顔をしながら息も絶え絶えに答えた。
「帝国に仇なす逆賊に語る名など持ち合わせては居ない。無銘だ…私は無銘の守護者だ。帝国の掃除屋。私を逃がした事を後悔する事になるわよ。」
「次こそ一刀の元に切り伏せて魅せるわ。それじゃあね。無銘。」
無銘と名乗った少女はよろよろとよろめきながら踵を返した。絶剣と呼ぶ妖刀を杖にしながら一歩一歩踏みしめながら帰っていく。
「強かったな。あの娘。」
俺はふと呟いた。
エクスはふんと鼻を鳴らす。
「まあまあ出来るわね。神話の時代ならともかく黄昏のこの時代にもあんな使い手が居るとわね。まあ私が最強なのは変わり無いけど。」
「エクスさんは無敵の聖剣様だもんな。どんな敵も一撃で粉砕してくださいよぉ。シオンさんはボディは貸すけど剣はからっきしだからさ。」
「鍛えて上げても良いけど、体を好き放題使う方が良いわね。壊れるまで扱ってあげる。」
「さらりとそう言うこと言う所が怖いよ。どんだけドSなんだよオオオ!」
「聖剣は皆ドSなのよ。覚えておきなさい。マスターを使い潰すように使われたく無かったらもう少し強くなりなさい。」
「面倒だからパス。戦闘は任せるよ。死ななければそれでいい。」
「私のアヴァロンは抜けないわよ。余程の神格のある妖刀、名剣でもない限りね。」
「鉄血のこの世界にアーティファクトが残っているもんかねぇ。」
「神秘とは身近にあるものよ。私も瓦礫の山から見つかった位だからね。慢心はお勧めしないわ。さあそろそろ他の町に行きましょう。帝国や聖道教会の追っ手が掛かるには時間が掛かるわ。」
「そうだな。こんだけ大袈裟に暴れといてこの町にはもう居れないだろう。」
俺はエクスを背中にしまうとサンシャインシティに背を向けた。ウラグスク連邦共和国を目指す旅は始まったばかりだ。このまま北上を続ける。終わり無き闘争の旅路…それでも俺は生き延びるさ。何の意味も無いのだとしても。
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