SSランクの聖剣エクスカリバーを手に入れた少年…聖剣少女と旅に出る

八雲 全一

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その剣、その少女、曰く伝説。

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あーあっ今日もガラクタ漁り以外なーんにもやることがない。暇だ。暇だから自己紹介するか、俺はシオン。ここはジャパンサークルのシンジュクスラム。現在帝国歴2000年だ。昔は西暦って言ってたらしいけど…神との争いによって人間の住める土地の半分は焼け野原とクレーターになった。
それでも人類は死滅していない。皆俺のように瓦礫の山を死んだ目で漁っている。たまに昔の超高度霊子文明の遺産が掘れたりする。結構高く着くんだよな。これが。俺も皆に混ざって瓦礫をどかしながら、お目当ての獲物を探していた。
うんしょ…おいしょ…まだ18だってのに腰にくるなぁ。じいさんになったら俺はどうなるんだろう。朝の9時から夜中の24時まで休み無しでぶっ通しだ。疲れる疲れる。
遠くでうめき声が聞こえる。どうやら怪我人?病人?が出たらしい。
マドのじいさんが倒れた。65歳なのに頑張ってるじいさんだったがお陀仏か…南無三。
マドのじいさんが瓦礫の山から運ばれていった。俺はおこぼれがないかじいさんの持ち場を漁ってみる。
ガサゴソガサゴソガサゴソ…
…何だこの光輝く剣の柄は…刀身が無いみたいだが…何か書いてある。
「ボタンを押してみよう。」
ポチっとな。……脳に声が響く。凛とした少女の声だ。
「少年…私を呼んだか…王でもなく英霊でもない人の身で何のために私を振るう。何を求め何のために傷つく?貴方が私のマスターか?」
俺は当惑しながら答える。というか念じる。
頭の中で語り掛けるイメージで…
「えーとオタク誰ですか?この剣は柄しかないけど、金ぴかの柄だから高く売れそうだなと思っている。だからダマの旦那に売り飛ばす予定だ。マスターって何ですか?新手のオレオレ詐欺?」
「そうか…金を求めるか。私を使えばどんなモンスターも倒す事が出きるぞ。ガッポリ儲かる。さあ私と契約しよう。少年。」
「いややめておきます。俺闘いの心得とかないし。モンスターと闘ったら速攻で死ぬから。契約はしません。ダマが貴方のマスターです。よーし背中のバックパックにしまうか。」
俺は光輝く剣の柄を背中のバックパックにしまおうとした。が、手から離れない。ピッタリ吸い付いてますよね!これ!どうすんの?
少女の声が聞こえる。
「お兄さん。初めてなのね。大丈夫うちは利子取らないから、死後の魂を対価に頂くけど、生きてる間は無双の騎士になれるよ。さあ契約しよう。」
俺は憮然とした顔になった。聞こえない。聞こえない。これは怪しいコナをキメた時に聞こえてくるという噂の幻聴に違いない。
それでも声は容赦なく聞こえてくる。
「仕方無いわね。強行策は使いたくなかったけど、これから貴方の体の霊脈を暴走させて腕を吹き飛ばすわ。」
「えーと。この世界は人類滅びちゃった系の鉄血とオイルのサイバーパンクなんだけど…霊脈とかシオンさん知りませんよ。」
「試してみる?五、四、三…」
「たんまたんま!わかったってば!契約するよ!魂を捧げます!あんたの名は?なんだ。俺はシオン。」
「私、私は神代の伝説の聖剣が流れてこの暗黒の大地に流れ着いた物。光る剣刃が魔王をも穿つ。人よ感激で砕け散れ。そう我が名はエクスカリバー。龍脈の巫女。星の聖剣。」
その名を聞いたとき、体がゾクリと震えた。全身が生まれ直してるみたいだ。これが伝説、人を滅ぼしかけた神すら討つ聖剣。
「お前が凄いのは分かったよ。でもガラクタ漁りに役に立つのか。俺職業勇者じゃなくてスカベンジャーなんですけど。」
少女はなんだと呆れた。
「モンスターや悪の帝国を倒しに行けば良いじゃない。私が元いた時代と一緒で自動換金システムは生きてるみたい。これがあれば敵を倒せば金が手に入るわ。」
「お上に逆らっても良いこと無いぞ。スカベンジャーの仕事も元はお上の仕事が発注元だからな。それに悪の帝国って…そりゃあ隣国を侵略しまくってるけどさ。一応、一帝国国民として…ルールは守ろう!」
「ふーん。私が良いって言っても帝国側は許してくれないみたいよ。あの砂塵を見なさい。」
ガラクタの山の向こう…地平線に砂塵が上がっている。一つや二つじゃない。無数の砂塵だ。え…俺何かやらかしましたー?これってオラオラされる展開じゃないですかぁ…!
砂塵を上げていたバイクに乗ったならず者達が俺達の目の前まで迫ってきた。軽く百人はいるな。
ならず者のボス?が声を掛けてきた。
「この坊主か!伝説の預言者サリバンの予言した漆黒の騎士ってのは!帝国に仇成す逆賊…伝説の聖剣エクスカリバーの使い手…黒のマントに黒の皮鎧…間違いないな。野郎共やっちまいな!エクスカリバーを抜かせずに殺すんだ。ヒャッハー!」
「何だよ!漆黒の騎士ってただ黒いマントと安物のアーマー着てるだけだよね!こんなファッションの人いくらでもいるんですけどォォォ!預言者サリバンンン!何してくれてんの!エクスカリバー拾っただけで帝国の敵扱いかよォォォ!俺はただのガラクタ漁りだっつーの!」
「シオン…私の実力を見せる良い機会だ。無心で私を振るんだ!もう後戻りは出来ないわよ!」
ブォンブォンと音を立ててバイクで突っ込んでくるならず者達…轢かれる…そう思った時俺は無我夢中でエクスカリバーを袈裟斬りに振りかざした。
「聖剣抜刀!対軍奥義!エクスカリバーアルテマストライク!」
エクスカリバーがそう詠唱すると光の刀身が現れ光り、いや燃えだした。そこから放たれる一条の虹色の極光がヒャッハー達を突き穿った。上半身と下半身が切断され、血飛沫が辺り一帯で上がった。スカベンジャー仲間は物陰に隠れながら固唾を飲んで見守っている。
瓦礫の山は血と臓物で出来た海になった。
「これはやりすぎじゃ無いですか…エクスカリバーさん?」
「フフン!エクスと呼びなさい。これは私の力のほんの一端。星の龍脈からエネルギーを借りて放射しただけよ。私の力は雑兵百人叩ききった所で大して使われていないわ。さあ金貨を集めましょう。死体を供物に捧げて信仰の力で金貨に変えるのよ。」
「エクス…生憎帝国国民は無神論者なんだ。大昔に神様に大地と民を無茶苦茶にされたからな。祈る神など存在しないよ。」
「ならば私、エクスカリバーを神として祀りなさい。対価として金貨を生む秘跡を授けましょう。」
「やれやれ…信仰の処女を捧げる事になるとはな。良いだろう。エクスカリバーを神として信仰する。その信仰に応え我に糧を与えたまえ。」
「良いでしょう。金貨を授けます。受け取りなさい。」
そうエクスが言うと俺の手の中に金貨が降り注いできた。スカベンジャーの給料1ヶ月分は固い。エクスは底知れぬ強さを持った聖剣だ。これからじゃんじゃん敵を叩ききればドンドン儲かるかもしれない。どうせこれで帝国とは敵対したんだ。安息の場所はガルバニア帝国の中に無い。広大なガルバニア帝国の中のジャパンサークルとは言え逃げ道が無いわけではない。まずは北に存在するというウラグスク連邦共和国を目指すべきだろう。ホッカイドウスラムを経由して船で行くしかないな。ホッカイドウに行くまでどれ程の敵と遭遇するか分かったもんじゃない。
俺は手の中にある剣の柄をじっと見た。
でもこいつとならやれそうだ。ガルバニアを抜けて新天地で冒険者としてやり直す。スカベンジャーにも飽き飽きしてたしな。
「エクス…」
「なあにシオン。」
「お前を信じるよ。帝国から逃げ切ろう。ウラグスクを目指すぞ。帝国の支配の及ばない新天地へ。」
「別に倒してしまっても良いのでしょう?帝国を…」
「お前って奴は…」
俺の旅が始まる。人生最初で最後の冒険になるかもしれないがそれでもエクスとならやれるそんな気がするんだ。
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