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第二話
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乾いていく渇いていく凍える凍える飢える餓える…俺の生涯とはそうしたものだった。当て所なくさ迷い奪い食らう。そうしている内に俺は人の姿すら保てなくなった。
そう俺は鬼に成り果てていた。何百何千と人を喰らい犯し殺した。当然の報いだったのかもしれない。
だが鬼になっても殺ることは変わらない。渇きを癒し、その血液で寒さに耐え、人の肉で餓えを満たす。俺は日本で暮らしていたが、殺人を繰り返して有名になってしまい居ることが出来なくなってしまった。そして現在アラブサークルのアブダビという町にいる。石油で潤い住民達は遊んで暮らしている。しかしそこに鬼の暗い影が差し込んでいた。毎日一人ずつ食らう。恐怖が広がる。だが俺は止まらない。人間の極上の肉を食らう。好き嫌い等無い。老若男女全てを食らい尽くす。
今日もアブダビの裏路地にじっと身を潜めていた。何時間経ったのだろう。時の感覚が麻痺している。路地に一人の少女が入ってきた。赤い外套の女。壁と同化している俺を睨み付けている。…気づかれたか?完全に気配を消しているのに?俺は偽装を解いて直接戦闘で女を殺そうと思った。…が…次の瞬間…
女が口ずさむ。終わりの歌を…
「夢幻錬成!童子切安綱!装着!鬼よ…隠れたつもりなのだろうが私の千里眼の前には筒抜けだぞ。人間を喰らう悪鬼よ。ここで消え果てるが良い!」
私は童子切安綱を握った。刺すような体をグチャグチャに裂かれる様な霊気だ。これが本霊の童子切安綱…私の魔術回路はズタズタになっている。魔力行使は難しいだろう。しかしこの鬼を討つにはそれでも十分だ。怪異殺しの本領を見せつける。
私は上段八相に構える。そして鬼の眼前に縮地した。鬼は擬態を解除すると剛腕を振るってくる。そこに神速の袈裟斬りを叩き込み腕を吹き飛ばした。
「ガアアア!腕が!俺の腕が!」
「痛いか!化物!お前に喰われた人の痛みはこんなものでは済まされないぞ。さあ地獄の底に落ちる時が来たな。鬼に堕ちし者よ。」
そう告げると女は横一閃に俺の首に目掛けて斬撃を放ってきた。両手を失って血が吹き出ている…ドンドン体が冷たく成っている。如何に鬼と言えど俺は人間に過ぎなかったと言うことか…そんなことを走馬灯の様なスピードで考えている内に刃が俺の首をはねた。
「ああ…ここで終わりだったか…俺の人生も…鬼としての生き様も。」
俺は首だけになって転がっていた。体は青い炎に包まれて燃えている。まあ何時かは終わりを迎えると思っていた。それが今日この日だっただけだ。しかし俺の終焉は美しい少女だったな。犯して喰らえばどんなに美味だったのだろう。ここアブダビにはあんな上玉は居なかった。ああ…意識が薄れていく。さあ地獄に旅立とう。人から鬼に堕ちるのはどれだけ罪が思いのだろう。閻魔も驚くかなぁ………俺の意識はシャットアウトされた。
「人食い鬼の討伐完了。夢幻錬成解除。童子切安綱を奉納。オモイカネデバイス起動。」
オモイカネデバイス
「対象の誅滅完了。人世を脅かす悪鬼を滅ぼしたのですね。潮蓮子…報酬は口座に入金しました。」
「了解。アブダビでの犠牲者は三十人…日本では推定千五百人。日本に居るときは人間だったようだけど徐々に鬼へと変わっていったのね。最初は人間の血肉で餓えを満たす狂人…果ては鬼か。まだまだこの世界には狂気の化物が彷徨いている。私が少しでも間引かねば…死んでいった人の為にも…。」
私は踵を返すとその場を離れた。人食い鬼の脅威は去った。残るのは失われた人の悲しみのみ…私は人の世界を守る為に闘う。どんなに愚かでもそれは違えない。私の旅は続く。果てはない。
さらばだ。アブダビの民よ。また静かに眠れる夜がやってきた。安心して永久の安寧に身を委ねると良い。
私は歩く…ここではない何処かに向かって。
そう俺は鬼に成り果てていた。何百何千と人を喰らい犯し殺した。当然の報いだったのかもしれない。
だが鬼になっても殺ることは変わらない。渇きを癒し、その血液で寒さに耐え、人の肉で餓えを満たす。俺は日本で暮らしていたが、殺人を繰り返して有名になってしまい居ることが出来なくなってしまった。そして現在アラブサークルのアブダビという町にいる。石油で潤い住民達は遊んで暮らしている。しかしそこに鬼の暗い影が差し込んでいた。毎日一人ずつ食らう。恐怖が広がる。だが俺は止まらない。人間の極上の肉を食らう。好き嫌い等無い。老若男女全てを食らい尽くす。
今日もアブダビの裏路地にじっと身を潜めていた。何時間経ったのだろう。時の感覚が麻痺している。路地に一人の少女が入ってきた。赤い外套の女。壁と同化している俺を睨み付けている。…気づかれたか?完全に気配を消しているのに?俺は偽装を解いて直接戦闘で女を殺そうと思った。…が…次の瞬間…
女が口ずさむ。終わりの歌を…
「夢幻錬成!童子切安綱!装着!鬼よ…隠れたつもりなのだろうが私の千里眼の前には筒抜けだぞ。人間を喰らう悪鬼よ。ここで消え果てるが良い!」
私は童子切安綱を握った。刺すような体をグチャグチャに裂かれる様な霊気だ。これが本霊の童子切安綱…私の魔術回路はズタズタになっている。魔力行使は難しいだろう。しかしこの鬼を討つにはそれでも十分だ。怪異殺しの本領を見せつける。
私は上段八相に構える。そして鬼の眼前に縮地した。鬼は擬態を解除すると剛腕を振るってくる。そこに神速の袈裟斬りを叩き込み腕を吹き飛ばした。
「ガアアア!腕が!俺の腕が!」
「痛いか!化物!お前に喰われた人の痛みはこんなものでは済まされないぞ。さあ地獄の底に落ちる時が来たな。鬼に堕ちし者よ。」
そう告げると女は横一閃に俺の首に目掛けて斬撃を放ってきた。両手を失って血が吹き出ている…ドンドン体が冷たく成っている。如何に鬼と言えど俺は人間に過ぎなかったと言うことか…そんなことを走馬灯の様なスピードで考えている内に刃が俺の首をはねた。
「ああ…ここで終わりだったか…俺の人生も…鬼としての生き様も。」
俺は首だけになって転がっていた。体は青い炎に包まれて燃えている。まあ何時かは終わりを迎えると思っていた。それが今日この日だっただけだ。しかし俺の終焉は美しい少女だったな。犯して喰らえばどんなに美味だったのだろう。ここアブダビにはあんな上玉は居なかった。ああ…意識が薄れていく。さあ地獄に旅立とう。人から鬼に堕ちるのはどれだけ罪が思いのだろう。閻魔も驚くかなぁ………俺の意識はシャットアウトされた。
「人食い鬼の討伐完了。夢幻錬成解除。童子切安綱を奉納。オモイカネデバイス起動。」
オモイカネデバイス
「対象の誅滅完了。人世を脅かす悪鬼を滅ぼしたのですね。潮蓮子…報酬は口座に入金しました。」
「了解。アブダビでの犠牲者は三十人…日本では推定千五百人。日本に居るときは人間だったようだけど徐々に鬼へと変わっていったのね。最初は人間の血肉で餓えを満たす狂人…果ては鬼か。まだまだこの世界には狂気の化物が彷徨いている。私が少しでも間引かねば…死んでいった人の為にも…。」
私は踵を返すとその場を離れた。人食い鬼の脅威は去った。残るのは失われた人の悲しみのみ…私は人の世界を守る為に闘う。どんなに愚かでもそれは違えない。私の旅は続く。果てはない。
さらばだ。アブダビの民よ。また静かに眠れる夜がやってきた。安心して永久の安寧に身を委ねると良い。
私は歩く…ここではない何処かに向かって。
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