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九節 聖都レーヴェ
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聖都レーヴェ…砂漠の大地に存在しているグロリアス教の聖都である。人類開放騎士団もグロリアス教を主教としているので人類開放騎士団の最前線でもある。ここを抜けて竜人族の集落があるシャウヤーン連合地域に入る術を見つけなくてはならない。
自分の中でアラームを鳴らしナンバーズだと誇張する呪詛は既にナイフでほじくり出した。それに容姿偽装魔術も稼働中だ。これでこの町で身分を問われる事はあるまい。
メリー・ジョウガ霊信…アヴァロンの手先、神託の巫女は聖都レーヴェに入った。エルダーナイトマクソン!迎撃の準備をするのだ!
(…自分の為とは言えこんな戦争を任されるとはな。本尊として人間どもを操り続けるのも限界がある。プリマスまで彼らが生き延びるならその地で収束に向かわせねば。)
エルダーナイトマクソン霊信…了解。対象を見つけ次第捕縛する。状況開始。
しかし依然としてここは敵の本拠地である事に変わりはない。気を引き締めていかねば。
先に進んでいたエリーが大きく手を振りながら話しかけてくる。
「無銘!あの店で食事を取りたいわ。」
「…なになに激辛麻婆豆腐。御残しは制裁が下る…」
看板を見てみる。
クォルトミネ協会 激辛麻婆豆腐あります。残したものには金貨一山の制裁アリ
まさか、本気で制裁される事はないだろうと睨み、俺達は麻婆豆腐店に入った。
「おやこれは。青年と少女…我が激辛麻婆豆腐を求めるものだな。」
「ああ。親父。麻婆豆腐をおススメで頼むよ。余り辛過ぎない奴な。」
「そうだな。青年。そちらのレディは如何するか?」
「私も無銘と一緒。お任せで頼むわ。」
「しかと承った。このクォルトミネ協会特製麻婆豆腐を今から出来立てホヤホヤで提供させて頂こう。しばし待つのだ。青年とレディ。」
随分と胡散臭い店主だが、味にこだわりがありそうなので楽しみに待つ事にする。先日の一件も頭をよぎらせないよう辛い物を食べてすっきりするとしよう。
メニューをちらりと見る。世界で二番目に辛いトリニダートスコルピオ麻婆豆腐をあります…まさかな。そんなはずはないさ。
「お待たせしたな。両人。当店自慢のトリニダートスコルピオ麻婆豆腐。お待ち。」
まさかが的中してしまった。エリーは…?
「もうむりばたんきゅー。」
彼女は一口で昇天した。結構いい値段のする麻婆豆腐なんだ!俺は最後まで食べよう。
熱い痛い辛い熱い辛い痛い痛い痛い…
ありえない。尋常ではない辛さに脳細胞が沸騰しそうになる。というか沸騰してなかったのかと疑問に思う。
み、水…あれ水がない。よく探してみるんだ!
あった。水のボトルだ。親父…水。
「当店は水が有料になっており、金貨一枚でいくらでも飲んで宜しい事になっているぞ!」
この…こいつ!とんでもない悪党だ!それは間違いない。ここに来て水に大金を支払うのか!だが背に腹は代えられない!体から火が噴き出しそうである。
「分かった。ほら金貨一枚だ。水をくれ。」
「毎度あり。青年…残すなよ。」
俺はそのあと死に物狂いでトリニダートスコルピオ麻婆豆腐を食べ切った。
「親父…会計をしてくれ。」
「おやレディが残しているな。罰金として金貨一山頂こう。」
「なっ無茶苦茶な!それに子供がやった事だ。勘弁してくれないか?」
「君は自分より年が上の女性を子ども扱いするのか?」
こいつ!エリーがエルフだと見抜いたうえで責任を要求してきている。容姿偽装魔術を看破しているのか?
「それはそうだが…こんな金額俺は払えないぞ!」
「ほう…それでは私の八極拳が火を噴くな!足に矢を受けてしまってな。それまでは私はバリバリのエクソシストだったのだ。青年!神の御許に帰るか料金を払うか選べ。」
「無茶苦茶だな。あんた。俺はこんなところで刃傷沙汰は起こしたくないんだ。」
とその時、店の中に神声が響き渡った。
「こちらセイレーン大隊エルダーナイトマクソンである。ナンバーズ二五!君は完全に包囲されている!連れの者を引き連れてこの店を出なさい!今すぐ出頭せよ。」
「そういう事だ。親父…俺達はいかせてもらうぞ。」
「フフ運がよかったな青年。またのご来店をお待ちしております。」
まだふらふらとしているエリーに話しかける。
「エリー!戦闘準備だ。とんでもない量のアーマーに囲まれていると思え、大隊直属の中隊がいる。」
「ようやく意識が戻ったわ。アーマーに囲まれているって事なのよね。」
「その通りだ。余りにもアーマーを相手にするには数が多すぎる。逃げながら撃破していくぞ。」
「了解!行くわよ。」
ネームレス―こちらネームレス。天界から干渉を今回受けているな。嫦娥のジェネシックコードを感じる。天界としても今回の輪廻は見過ごせない。こちらでもバックアップするから、今いるバザールから聖都レーヴェのユリウス正門に抜けていくんだ。―
「ネームレス様。戦闘神託ありがとうございます。」
「頼りにしています。ネームレス様。」
―さあ行くんだ神託の巫女よ!―
俺達は麻婆豆腐店を出ると目の前に三機のナイト級アーマーだ。雑魚がこれって事は大隊が直接来ているみたいだな。
「お前達大人しく捕縛されろ。生死は問わないと言われている。」
「エリー!斬り抜けるぞ!」
ストームブリンガー抜刀!霊刃伸長!極大霊斬!
ストームブリンガーを纏うオーラを伸長し一気に三機をなます切りにした。
「こいつら抵抗しているぞ!撃て撃て!」
他のアーマーに嗅ぎつけられたようだ。俺達を包囲するように凱歌が聞こえる。
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
どこからかしこもこの部隊の歌が聞こえる。四面楚歌。ぞっとするこいつら全てを相手にするのか。
バザールをエリーの手を取って走り抜ける。目の前に着弾。
ネームレス―南東の方角に狙撃手。―戦闘神託
南東に振り向く狙撃用のアーマーに身を包んだ兵士がいる。ナイトイーターで応射。
ナイトイーター孔天開始!誤差補正!発射!弾着!狙撃用アーマー撃破。
走る走る。前と後ろで挟み撃ちだ。ナイトクラス。目の前のナイトクラスにはナイトイーターを発射して爆散させた。
「後ろは任せない!無銘!」
エリーの詠唱!大いなる主神イグドラシルの巫女を穢すものよ!滅びるがいい!ミストルティンバースト!一機撃破。
開けた通路に出る。十機は確認!
ナイトイーターを連続で発射し間引く。五機まで撃破。ヘビーマシンガンの弾が顔面をかすめる。
「エリー!防御呪術を!」
「了解!」
エリーの詠唱!汝護り給え!七天の楯よ!顕現せよ!天理アイアスの楯!
これでしばらく被弾の心配はしなくてもいい。
ネームレス―エリー!オドの酷使を和らげる結界を展開する。大技を撃て!―
「ありがとうございます!」
眼前五機!
エリー詠唱!生命の危機大いなる主神イグドラシルの巫女を穢すものよ!滅びるがいい!マルチミストルティンバースト!
五機全てがヤドリギに絡みつかれて絶命した。
増援二十機が広場から入ってくる。
「エリー!真言詠唱と連携で行くぞ!」
「了解!」
無銘の真言詠唱!第三の虹の扉よりいでし覇王!トールよ!その怒りで現世を掃滅するがいい!掃滅のミョルニル!
エリーの詠唱!偉大なるオーディンよ!そなたの巫女を穢す究極の害悪現れたり。グングニルを借り受ける!未来永劫の時の狭間まで消え果よ!ヘルレイズスパーク!
ミョルニルとヘルレイズスパークで広範囲攻撃成功。十五機撃破確認。
ハァハァ…心臓が破れそうだ。オドが焼き付くがまだ戦えるさ。
ナイトイーターで偏差断続射撃!五機撃破!
広間の道が開けた。エリーと走って先に向かう。この先は町の出口に繋がるユリウス正門だ。
やはり待っていたか…エルダーナイトの駆るパラディンクラスのアーマーがそこには鎮座していた。
「マクソン!ハーリアップ!デビルサモンシステムスタンバイ!偉大なる名状しがたき神VHHV召喚!」
けたたましい神声が吼える。パラディンは未だ沈黙したままだ。召喚されたVHHVという神霊と闘う事になるが、恐ろしい…狂い果てるほどの神気がこもっている神だ。
何故こんなものが召喚されて放置されているのだろうと思う。
「愚かなる人の子よVHHVなどというふざけた形で私を召喚し使役するなどもってのほかだ。チッ不快だが消えるための条件ならば仕方がない神罰の雷を下そう。消え果よ!地上を這う蛆虫!」
神の雷が俺を焼き吹っ飛ばされた。アイアスの上から全身が焼かれ痺れる。
神としての核は見えている。やってやるさ!
無銘の真言詠唱!第二の魔獣!バハムートよ。貴様への供物を用意した。喰らいつくすがいい。ラグナロクバースト!
着弾はしたもののあまり効いていないようだ。真言詠唱でも神をひるませるぐらいか…やはり全部のレベルが違う。格が違う。
「無銘!大丈夫?私も撃ち込むからナイトイーターで何とかしなさい。」
そうこう言っている間にも無作為に神の雷が飛び交っており焼かれそうになる。ナイトイーターを構える…コアをロックオン…
エリーの詠唱!偉大なるオーディンよ!そなたの巫女を穢す究極の害悪現れたり。グングニルを借り受ける!未来永劫の時の狭間まで消え果よ!ヘルレイズスパーク!
衛星軌道上から穿たれた神槍がVHHVを貫いた。
もだえ苦しむVHHV、その核も露出した。ナイトイーター発射!レールガンの弾丸がコアを撃ち抜きVHHV消滅。
「愚かなる蛆虫よ。私を消した事見事なり。むしろ褒美を遣わせたい位だが、余りにも不敬、不快故これにてさらばだ。輪廻の果ての仕事が待っているぞ。天界での貴様らの働きに期待させてもらおう。行くがいい。この穢れた大地を!神託の巫女とその戦士よ。」
正直どうやって神を倒したのか、俺にも理解が及ばないところがあるが、現実問題として対象は討ち取った。
残るはあのエルダーナイト様だ。大隊指揮官。ここのトップ殺せば闘いは緩み、逃げ出すチャンスになる。
またあの神声が木霊する。
「デビルイズディフィーテッドマクソン!ウェークアップユアバトルレディ?」
言葉もなく正門で戦闘姿勢に入るマクソン。その周りにはヘビーマシンガンやミサイルランチャー、ガトリングガン、ショットガン、ロケットランチャー等のありとあらゆる兵装がまるで墓標の様に刺さっている。
相当な手練れだ。どうする…どうでる?
マクソンはフルブラストでパラディンを吹かし、ロケットランチャーとミサイルランチャーを拾い連射してきた。こちらは防戦に徹するしかない。
無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!
エリーの詠唱!汝護り給え!七天の楯よ!顕現せよ!天理アイアスの楯!
お互いの防御呪術で守り通す。
マクソン…両兵装ともに残弾ゼロ。兵装を放棄。ショットガンとヘビーマシンガンを手に取る。
ブラスターを左右に吹かし回り込みながらショットガンとヘビーマシンガンを連射してくるだめだ。持たない。防御呪術が解ける…
マクソン…両兵装ともに残弾ゼロ。兵装を放棄。信仰補強済み対龍ガトリングガン装備。
「エリー伏せろ!防御呪術をありったけたくんだ!」
「分かった。やってみる。」
無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!…
エリーの詠唱!汝護り給え!七天の楯よ!顕現せよ!天理アイアスの楯!
そこにマクソンが発射した信仰補強済み対龍ガトリングガンの弾が襲い掛かる。VOVOVOVOOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVVOVOVOVOVVOVOVOVOVOVOVVOVOVOVOVVOVOVOVVOVOVOVO…バチャバチャグチャバグチャ…
エリー…肉の弾けて飛び散る音が私の鼓膜を叩いた。無銘…!
「無銘起きてよ!無銘!」
「ガはッおえっハァハァ。」
エリー…無銘の下半身は機銃掃射で無くなっていた。段々呼吸が浅くなって止まった。無銘は死んだ。私を護って。蘇るとはいえ死んだ。また私が無力だから死んだんだ。私は私が憎い。私の弱さを許せない。そう強く念じると新たなる呪詛が霊感で捉えられた。敵を殲滅せよともう一人の闘争本能と化した私が語り掛けてくる。良いわ。乗ってあげるわよ!
エリーゼ・ハーン流活殺呪詛!終焉の扉開きし者よ。貴様の獲物だ。ギガンティックフレア!爆縮!究極霊爆!
マクソンの駆るパラディンクラスの周りに雷撃のドームが一瞬広がると即座に縮まり究極の霊爆を引き起こした。これで奴も終わりよ。
蘇生した無銘が起き上がり語り掛けてくる。顔色が悪く真っ青だ。
「エリー。また君に助けられちまったな。でもこれでもう死ねないよ。」
「もう二度と死なないで。これからあんたが死ぬときは私が死ぬときよ。分かった?約束しなさい。」
「分かった。誓おう。俺は君が死ぬ時までは絶対に死なない。」
まだ勝負は終わってないようだ。パラディンクラスの生体維持機能が彼女をまだ生かしていたのだ。
マクソンが気炎を吐く。余りにも弱弱しいが…
「まだ死なない。死ねないのよ。アーマーは破損してもまだ私は立てる。」
その胸には戦術核が埋まっている。そこまでして人類開放騎士団の狂気に身を任せるのか。
「無銘!あの子を何とかできないの?」
「胸を撃ち抜いて殺すしかあるまい。」
俺はナイトイーターを構えてよろよろと剣を杖に歩く彼女の胸を撃ち抜いた。
「ガはッガはぁ…戦術核なんぞなくても闘えるぞ!」
彼女は自分の胸から戦術核を引き抜き投げ捨てた。何故闘う?何故素直に天に帰らない。
「私が死んだら…アニス様がまた独りぼっちになってしまう。死ねない。」
アニス…アニス・グラハム…人類開放騎士団の最高指導者、教導騎士か。
「もう胸の出血からして助からない。諦めて天に帰るのだ。」
「お前たちの施しなど期待していない。お前たちを討つのだ。」
深刻な面持のエリーがマクソンに問いかける。
「何が貴女をここまで駆り立てるの?情?憎しみ。」
「もう動けないか…無念。アニス様ごめんなさい。もう人食いエルフを止められません。さようなら。」
彼女エルダーナイトマクソンは俺に剣を突き付けながら死んでいった。凄まじい…騎士道の具現ともいえる死に方だろう。
「最後まで頑なな奴だったな。」
「人食いエルフって気になるわね。」
「噂か何かを聞いた事がある。この戦争は大昔に人間をエルフが狩り尽くして食べていた事から始まったってな。お偉方しか真相は知らなそうだが。」
「恐らく本当にあった事よ。エルフの中でも特にダークエルフは食人する事で飛躍的にオドが拡張される事が知られていたもの。」
「そうか…絶対的な正義も悪も無いってわけだ。」
「これが戦争の常なのね。」
「だから殺して生き延びて弔う事ぐらいしか、人間には出来ないのかもしれないな。」
「そうね。レーヴェを出ましょう。このままじゃ増援が来るわ。」
俺達はマクソンの亡骸を後に正門から外に飛び出した。
外にでるとアーマーにまたしても囲まれた。大隊所属の精鋭エクソシストが駆るナイトクラス五十機。
万事休すか…
ネームレス―救援を連れてきた。近くの建物の陰に隠れて。―
「了解した。行くぞエリー。」
「ええ。」
正門内に急いで駆け戻り退避する。上空からジェット音が聞こえてきた。何だ?
フーアーここが例の巫女さんたちの居場所ね!
お姉さま。全部食べちゃっていい?
勿論よ。全部食べちゃいなさい。
ネームレス―上空に竜人族の援護部隊到着―
X88Xヴァンパイア、X99Fゴースト到着。
ナイトクラス全弾自動補足機能オン!マルチバースト!ミサイルラウンチャー、航空機銃両方掃射!ナイトクラス爆発!三十機撃破!
ナイトクラスは散開してヘビーマシンガンを掃射。
ヴァンパイア被弾中破!バトロイドに変形!鐵鋼拳銃ジャッカル連続乱射!ナイトクラス五機爆発!
ゴースト!モビルモード変形!マルチバースト!ジャッカル連続乱射!ナイトクラス十機殲滅!
残り五機がこちらに駆け込んでくる。ナイトイーター断続発射。五機撃破!全増援撃破。
戦闘機が地面に着地した。戦闘機に宿っている神霊が話しかけてくる。黒歴史のメカに付いているAIに近しい存在だ。
「こちらは戦闘神霊ヴァンパイアよ。貴方たちを竜人族の領地に連れてくるように首長から命令を受けてやってきたわ。さあ乗りなさい。そちらのお嬢さんは妹のゴーストの方に乗って頂戴。」
「ありがとう。俺は無銘。こちらはエリーだ。なぜ俺達を助けてくれるんだ。理由が知りたい。」
「私達も詳しい事は聞いていないの。首長に直接聞くしかないわね。それにしてもこの状況だと私達に乗らざるをえないと思うけど。」
「それはそうだ。エリー、彼女達に乗っていこう。」
「分かったわ。無銘。ついて行くしかないみたいね。」
「お姉さまともどもよろしくね。私は戦闘神霊ゴーストよ。」
「よろしくお願いね。ゴースト。」
俺達は竜人族の聖地ランゴバルドまで空の旅をする事になった。久々の落ち着く時間だし、空の旅というのは初めての経験だ。悪い気はしない。
レーヴェはあっという間の滞在だったが目標だった竜人族の領地に入る事ができたので、まずは良しとしたい。
エリー…レーヴェでは一日しか滞在していないけれど色々な事があったわ。麻婆豆腐を食べて気絶したり、大量のアーマーに追われたり。正直踏んだり蹴ったりな面が多かったけれど次の目的地までの道が開けたし良しとしましょう。問題は無銘の不死刻印が切れてしまった事ね。これからは彼は簡単に死んだり、蘇ったりは出来なくなるわ。本人も良く分かっているでしょうけれど私からも良く言っておかなきゃ。そうしないと無銘はすぐに無茶をしてしまうんですもの。
自分の中でアラームを鳴らしナンバーズだと誇張する呪詛は既にナイフでほじくり出した。それに容姿偽装魔術も稼働中だ。これでこの町で身分を問われる事はあるまい。
メリー・ジョウガ霊信…アヴァロンの手先、神託の巫女は聖都レーヴェに入った。エルダーナイトマクソン!迎撃の準備をするのだ!
(…自分の為とは言えこんな戦争を任されるとはな。本尊として人間どもを操り続けるのも限界がある。プリマスまで彼らが生き延びるならその地で収束に向かわせねば。)
エルダーナイトマクソン霊信…了解。対象を見つけ次第捕縛する。状況開始。
しかし依然としてここは敵の本拠地である事に変わりはない。気を引き締めていかねば。
先に進んでいたエリーが大きく手を振りながら話しかけてくる。
「無銘!あの店で食事を取りたいわ。」
「…なになに激辛麻婆豆腐。御残しは制裁が下る…」
看板を見てみる。
クォルトミネ協会 激辛麻婆豆腐あります。残したものには金貨一山の制裁アリ
まさか、本気で制裁される事はないだろうと睨み、俺達は麻婆豆腐店に入った。
「おやこれは。青年と少女…我が激辛麻婆豆腐を求めるものだな。」
「ああ。親父。麻婆豆腐をおススメで頼むよ。余り辛過ぎない奴な。」
「そうだな。青年。そちらのレディは如何するか?」
「私も無銘と一緒。お任せで頼むわ。」
「しかと承った。このクォルトミネ協会特製麻婆豆腐を今から出来立てホヤホヤで提供させて頂こう。しばし待つのだ。青年とレディ。」
随分と胡散臭い店主だが、味にこだわりがありそうなので楽しみに待つ事にする。先日の一件も頭をよぎらせないよう辛い物を食べてすっきりするとしよう。
メニューをちらりと見る。世界で二番目に辛いトリニダートスコルピオ麻婆豆腐をあります…まさかな。そんなはずはないさ。
「お待たせしたな。両人。当店自慢のトリニダートスコルピオ麻婆豆腐。お待ち。」
まさかが的中してしまった。エリーは…?
「もうむりばたんきゅー。」
彼女は一口で昇天した。結構いい値段のする麻婆豆腐なんだ!俺は最後まで食べよう。
熱い痛い辛い熱い辛い痛い痛い痛い…
ありえない。尋常ではない辛さに脳細胞が沸騰しそうになる。というか沸騰してなかったのかと疑問に思う。
み、水…あれ水がない。よく探してみるんだ!
あった。水のボトルだ。親父…水。
「当店は水が有料になっており、金貨一枚でいくらでも飲んで宜しい事になっているぞ!」
この…こいつ!とんでもない悪党だ!それは間違いない。ここに来て水に大金を支払うのか!だが背に腹は代えられない!体から火が噴き出しそうである。
「分かった。ほら金貨一枚だ。水をくれ。」
「毎度あり。青年…残すなよ。」
俺はそのあと死に物狂いでトリニダートスコルピオ麻婆豆腐を食べ切った。
「親父…会計をしてくれ。」
「おやレディが残しているな。罰金として金貨一山頂こう。」
「なっ無茶苦茶な!それに子供がやった事だ。勘弁してくれないか?」
「君は自分より年が上の女性を子ども扱いするのか?」
こいつ!エリーがエルフだと見抜いたうえで責任を要求してきている。容姿偽装魔術を看破しているのか?
「それはそうだが…こんな金額俺は払えないぞ!」
「ほう…それでは私の八極拳が火を噴くな!足に矢を受けてしまってな。それまでは私はバリバリのエクソシストだったのだ。青年!神の御許に帰るか料金を払うか選べ。」
「無茶苦茶だな。あんた。俺はこんなところで刃傷沙汰は起こしたくないんだ。」
とその時、店の中に神声が響き渡った。
「こちらセイレーン大隊エルダーナイトマクソンである。ナンバーズ二五!君は完全に包囲されている!連れの者を引き連れてこの店を出なさい!今すぐ出頭せよ。」
「そういう事だ。親父…俺達はいかせてもらうぞ。」
「フフ運がよかったな青年。またのご来店をお待ちしております。」
まだふらふらとしているエリーに話しかける。
「エリー!戦闘準備だ。とんでもない量のアーマーに囲まれていると思え、大隊直属の中隊がいる。」
「ようやく意識が戻ったわ。アーマーに囲まれているって事なのよね。」
「その通りだ。余りにもアーマーを相手にするには数が多すぎる。逃げながら撃破していくぞ。」
「了解!行くわよ。」
ネームレス―こちらネームレス。天界から干渉を今回受けているな。嫦娥のジェネシックコードを感じる。天界としても今回の輪廻は見過ごせない。こちらでもバックアップするから、今いるバザールから聖都レーヴェのユリウス正門に抜けていくんだ。―
「ネームレス様。戦闘神託ありがとうございます。」
「頼りにしています。ネームレス様。」
―さあ行くんだ神託の巫女よ!―
俺達は麻婆豆腐店を出ると目の前に三機のナイト級アーマーだ。雑魚がこれって事は大隊が直接来ているみたいだな。
「お前達大人しく捕縛されろ。生死は問わないと言われている。」
「エリー!斬り抜けるぞ!」
ストームブリンガー抜刀!霊刃伸長!極大霊斬!
ストームブリンガーを纏うオーラを伸長し一気に三機をなます切りにした。
「こいつら抵抗しているぞ!撃て撃て!」
他のアーマーに嗅ぎつけられたようだ。俺達を包囲するように凱歌が聞こえる。
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
「我らはセイレーン大隊!神に背く背信者を滅するものである。」
どこからかしこもこの部隊の歌が聞こえる。四面楚歌。ぞっとするこいつら全てを相手にするのか。
バザールをエリーの手を取って走り抜ける。目の前に着弾。
ネームレス―南東の方角に狙撃手。―戦闘神託
南東に振り向く狙撃用のアーマーに身を包んだ兵士がいる。ナイトイーターで応射。
ナイトイーター孔天開始!誤差補正!発射!弾着!狙撃用アーマー撃破。
走る走る。前と後ろで挟み撃ちだ。ナイトクラス。目の前のナイトクラスにはナイトイーターを発射して爆散させた。
「後ろは任せない!無銘!」
エリーの詠唱!大いなる主神イグドラシルの巫女を穢すものよ!滅びるがいい!ミストルティンバースト!一機撃破。
開けた通路に出る。十機は確認!
ナイトイーターを連続で発射し間引く。五機まで撃破。ヘビーマシンガンの弾が顔面をかすめる。
「エリー!防御呪術を!」
「了解!」
エリーの詠唱!汝護り給え!七天の楯よ!顕現せよ!天理アイアスの楯!
これでしばらく被弾の心配はしなくてもいい。
ネームレス―エリー!オドの酷使を和らげる結界を展開する。大技を撃て!―
「ありがとうございます!」
眼前五機!
エリー詠唱!生命の危機大いなる主神イグドラシルの巫女を穢すものよ!滅びるがいい!マルチミストルティンバースト!
五機全てがヤドリギに絡みつかれて絶命した。
増援二十機が広場から入ってくる。
「エリー!真言詠唱と連携で行くぞ!」
「了解!」
無銘の真言詠唱!第三の虹の扉よりいでし覇王!トールよ!その怒りで現世を掃滅するがいい!掃滅のミョルニル!
エリーの詠唱!偉大なるオーディンよ!そなたの巫女を穢す究極の害悪現れたり。グングニルを借り受ける!未来永劫の時の狭間まで消え果よ!ヘルレイズスパーク!
ミョルニルとヘルレイズスパークで広範囲攻撃成功。十五機撃破確認。
ハァハァ…心臓が破れそうだ。オドが焼き付くがまだ戦えるさ。
ナイトイーターで偏差断続射撃!五機撃破!
広間の道が開けた。エリーと走って先に向かう。この先は町の出口に繋がるユリウス正門だ。
やはり待っていたか…エルダーナイトの駆るパラディンクラスのアーマーがそこには鎮座していた。
「マクソン!ハーリアップ!デビルサモンシステムスタンバイ!偉大なる名状しがたき神VHHV召喚!」
けたたましい神声が吼える。パラディンは未だ沈黙したままだ。召喚されたVHHVという神霊と闘う事になるが、恐ろしい…狂い果てるほどの神気がこもっている神だ。
何故こんなものが召喚されて放置されているのだろうと思う。
「愚かなる人の子よVHHVなどというふざけた形で私を召喚し使役するなどもってのほかだ。チッ不快だが消えるための条件ならば仕方がない神罰の雷を下そう。消え果よ!地上を這う蛆虫!」
神の雷が俺を焼き吹っ飛ばされた。アイアスの上から全身が焼かれ痺れる。
神としての核は見えている。やってやるさ!
無銘の真言詠唱!第二の魔獣!バハムートよ。貴様への供物を用意した。喰らいつくすがいい。ラグナロクバースト!
着弾はしたもののあまり効いていないようだ。真言詠唱でも神をひるませるぐらいか…やはり全部のレベルが違う。格が違う。
「無銘!大丈夫?私も撃ち込むからナイトイーターで何とかしなさい。」
そうこう言っている間にも無作為に神の雷が飛び交っており焼かれそうになる。ナイトイーターを構える…コアをロックオン…
エリーの詠唱!偉大なるオーディンよ!そなたの巫女を穢す究極の害悪現れたり。グングニルを借り受ける!未来永劫の時の狭間まで消え果よ!ヘルレイズスパーク!
衛星軌道上から穿たれた神槍がVHHVを貫いた。
もだえ苦しむVHHV、その核も露出した。ナイトイーター発射!レールガンの弾丸がコアを撃ち抜きVHHV消滅。
「愚かなる蛆虫よ。私を消した事見事なり。むしろ褒美を遣わせたい位だが、余りにも不敬、不快故これにてさらばだ。輪廻の果ての仕事が待っているぞ。天界での貴様らの働きに期待させてもらおう。行くがいい。この穢れた大地を!神託の巫女とその戦士よ。」
正直どうやって神を倒したのか、俺にも理解が及ばないところがあるが、現実問題として対象は討ち取った。
残るはあのエルダーナイト様だ。大隊指揮官。ここのトップ殺せば闘いは緩み、逃げ出すチャンスになる。
またあの神声が木霊する。
「デビルイズディフィーテッドマクソン!ウェークアップユアバトルレディ?」
言葉もなく正門で戦闘姿勢に入るマクソン。その周りにはヘビーマシンガンやミサイルランチャー、ガトリングガン、ショットガン、ロケットランチャー等のありとあらゆる兵装がまるで墓標の様に刺さっている。
相当な手練れだ。どうする…どうでる?
マクソンはフルブラストでパラディンを吹かし、ロケットランチャーとミサイルランチャーを拾い連射してきた。こちらは防戦に徹するしかない。
無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!
エリーの詠唱!汝護り給え!七天の楯よ!顕現せよ!天理アイアスの楯!
お互いの防御呪術で守り通す。
マクソン…両兵装ともに残弾ゼロ。兵装を放棄。ショットガンとヘビーマシンガンを手に取る。
ブラスターを左右に吹かし回り込みながらショットガンとヘビーマシンガンを連射してくるだめだ。持たない。防御呪術が解ける…
マクソン…両兵装ともに残弾ゼロ。兵装を放棄。信仰補強済み対龍ガトリングガン装備。
「エリー伏せろ!防御呪術をありったけたくんだ!」
「分かった。やってみる。」
無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!無銘の詠唱破棄!女神楯!アイギス!…
エリーの詠唱!汝護り給え!七天の楯よ!顕現せよ!天理アイアスの楯!
そこにマクソンが発射した信仰補強済み対龍ガトリングガンの弾が襲い掛かる。VOVOVOVOOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVOVVOVOVOVOVVOVOVOVOVOVOVVOVOVOVOVVOVOVOVVOVOVOVO…バチャバチャグチャバグチャ…
エリー…肉の弾けて飛び散る音が私の鼓膜を叩いた。無銘…!
「無銘起きてよ!無銘!」
「ガはッおえっハァハァ。」
エリー…無銘の下半身は機銃掃射で無くなっていた。段々呼吸が浅くなって止まった。無銘は死んだ。私を護って。蘇るとはいえ死んだ。また私が無力だから死んだんだ。私は私が憎い。私の弱さを許せない。そう強く念じると新たなる呪詛が霊感で捉えられた。敵を殲滅せよともう一人の闘争本能と化した私が語り掛けてくる。良いわ。乗ってあげるわよ!
エリーゼ・ハーン流活殺呪詛!終焉の扉開きし者よ。貴様の獲物だ。ギガンティックフレア!爆縮!究極霊爆!
マクソンの駆るパラディンクラスの周りに雷撃のドームが一瞬広がると即座に縮まり究極の霊爆を引き起こした。これで奴も終わりよ。
蘇生した無銘が起き上がり語り掛けてくる。顔色が悪く真っ青だ。
「エリー。また君に助けられちまったな。でもこれでもう死ねないよ。」
「もう二度と死なないで。これからあんたが死ぬときは私が死ぬときよ。分かった?約束しなさい。」
「分かった。誓おう。俺は君が死ぬ時までは絶対に死なない。」
まだ勝負は終わってないようだ。パラディンクラスの生体維持機能が彼女をまだ生かしていたのだ。
マクソンが気炎を吐く。余りにも弱弱しいが…
「まだ死なない。死ねないのよ。アーマーは破損してもまだ私は立てる。」
その胸には戦術核が埋まっている。そこまでして人類開放騎士団の狂気に身を任せるのか。
「無銘!あの子を何とかできないの?」
「胸を撃ち抜いて殺すしかあるまい。」
俺はナイトイーターを構えてよろよろと剣を杖に歩く彼女の胸を撃ち抜いた。
「ガはッガはぁ…戦術核なんぞなくても闘えるぞ!」
彼女は自分の胸から戦術核を引き抜き投げ捨てた。何故闘う?何故素直に天に帰らない。
「私が死んだら…アニス様がまた独りぼっちになってしまう。死ねない。」
アニス…アニス・グラハム…人類開放騎士団の最高指導者、教導騎士か。
「もう胸の出血からして助からない。諦めて天に帰るのだ。」
「お前たちの施しなど期待していない。お前たちを討つのだ。」
深刻な面持のエリーがマクソンに問いかける。
「何が貴女をここまで駆り立てるの?情?憎しみ。」
「もう動けないか…無念。アニス様ごめんなさい。もう人食いエルフを止められません。さようなら。」
彼女エルダーナイトマクソンは俺に剣を突き付けながら死んでいった。凄まじい…騎士道の具現ともいえる死に方だろう。
「最後まで頑なな奴だったな。」
「人食いエルフって気になるわね。」
「噂か何かを聞いた事がある。この戦争は大昔に人間をエルフが狩り尽くして食べていた事から始まったってな。お偉方しか真相は知らなそうだが。」
「恐らく本当にあった事よ。エルフの中でも特にダークエルフは食人する事で飛躍的にオドが拡張される事が知られていたもの。」
「そうか…絶対的な正義も悪も無いってわけだ。」
「これが戦争の常なのね。」
「だから殺して生き延びて弔う事ぐらいしか、人間には出来ないのかもしれないな。」
「そうね。レーヴェを出ましょう。このままじゃ増援が来るわ。」
俺達はマクソンの亡骸を後に正門から外に飛び出した。
外にでるとアーマーにまたしても囲まれた。大隊所属の精鋭エクソシストが駆るナイトクラス五十機。
万事休すか…
ネームレス―救援を連れてきた。近くの建物の陰に隠れて。―
「了解した。行くぞエリー。」
「ええ。」
正門内に急いで駆け戻り退避する。上空からジェット音が聞こえてきた。何だ?
フーアーここが例の巫女さんたちの居場所ね!
お姉さま。全部食べちゃっていい?
勿論よ。全部食べちゃいなさい。
ネームレス―上空に竜人族の援護部隊到着―
X88Xヴァンパイア、X99Fゴースト到着。
ナイトクラス全弾自動補足機能オン!マルチバースト!ミサイルラウンチャー、航空機銃両方掃射!ナイトクラス爆発!三十機撃破!
ナイトクラスは散開してヘビーマシンガンを掃射。
ヴァンパイア被弾中破!バトロイドに変形!鐵鋼拳銃ジャッカル連続乱射!ナイトクラス五機爆発!
ゴースト!モビルモード変形!マルチバースト!ジャッカル連続乱射!ナイトクラス十機殲滅!
残り五機がこちらに駆け込んでくる。ナイトイーター断続発射。五機撃破!全増援撃破。
戦闘機が地面に着地した。戦闘機に宿っている神霊が話しかけてくる。黒歴史のメカに付いているAIに近しい存在だ。
「こちらは戦闘神霊ヴァンパイアよ。貴方たちを竜人族の領地に連れてくるように首長から命令を受けてやってきたわ。さあ乗りなさい。そちらのお嬢さんは妹のゴーストの方に乗って頂戴。」
「ありがとう。俺は無銘。こちらはエリーだ。なぜ俺達を助けてくれるんだ。理由が知りたい。」
「私達も詳しい事は聞いていないの。首長に直接聞くしかないわね。それにしてもこの状況だと私達に乗らざるをえないと思うけど。」
「それはそうだ。エリー、彼女達に乗っていこう。」
「分かったわ。無銘。ついて行くしかないみたいね。」
「お姉さまともどもよろしくね。私は戦闘神霊ゴーストよ。」
「よろしくお願いね。ゴースト。」
俺達は竜人族の聖地ランゴバルドまで空の旅をする事になった。久々の落ち着く時間だし、空の旅というのは初めての経験だ。悪い気はしない。
レーヴェはあっという間の滞在だったが目標だった竜人族の領地に入る事ができたので、まずは良しとしたい。
エリー…レーヴェでは一日しか滞在していないけれど色々な事があったわ。麻婆豆腐を食べて気絶したり、大量のアーマーに追われたり。正直踏んだり蹴ったりな面が多かったけれど次の目的地までの道が開けたし良しとしましょう。問題は無銘の不死刻印が切れてしまった事ね。これからは彼は簡単に死んだり、蘇ったりは出来なくなるわ。本人も良く分かっているでしょうけれど私からも良く言っておかなきゃ。そうしないと無銘はすぐに無茶をしてしまうんですもの。
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