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第三章 本音編
11夜目 これはこれでちょっと気持ち良かったから、なんてことは絶対言えない
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ぐったりした身体を抱いて、絹糸のような髪を梳いた。
連夜、性交を続けるうちに、だんだんと反応が鈍くなってきたような気がする。
「おい、起きているのか? もう一度いいか」
「ま、待て……さすがにもう無理……」
「昨晩もそう言って、途中で寝落ちただろう。おれは一晩我慢したんだぞ」
ユインの声も、聞こえているやらいないやら。
だるそうに片目を開いたアグラヴィスは、手を伸ばしてユインの肩に触れた。
「あの……いや、もう俺が悪かったから。頼むからちょっと聞いてくれ」
「どうした」
息も絶え絶えに語りかけてくる様に、さすがに手が止まる。
まだこれから更に虐め苛もうと思っていたのだが、いつにないか弱さでユインにしがみついてくる。
愛らしいので、もうしばらく見ていたい気持ちになった。
「あのな、俺がお前をここに呼んでいるのは、実はこういうことをするためではないのだ」
「なに? それはどういうことだ」
「こうやって日を重ねるほどに物を考える力が失われていくので、もう諦めて率直に言うぞ? お前、帝国に婚約者がいるだろう」
「そりゃあ、いるが」
ユインにとっては、とっくの昔に諦めた話だ。
美しい娘だった。こうも長い間自分が戻らなければ、他にいい相手を見つけているだろう。
そう答えようとした言葉が、喉元で止まった。
「その娘、実は俺の妹だ」
「……はあ?」
頭痛を堪えるようなひどい渋面で、アグラヴィスは目を閉じる。
「じゃじゃ馬でな、俺の決めた相手が許せんと、魔王領を勝手に出て行った。戦場で見かけたお前が気に入ったらしく、魅了に昏迷と様々な精神魔術と手練手管を使って、帝国貴族の娘のふりをしてお前と婚約を結んだのだ」
「……なんだ、それは」
ぐったりした身体を抱いて、絹糸のような髪を梳いた。
連夜、性交を続けるうちに、だんだんと反応が鈍くなってきたような気がする。
「もう喋る元気もないから、遺言だと思って最後まで聞け。そんな妹ゆえに、兄の俺としては非常に心配していたところに、その相手であるお前がのこのこ捕虜になっていやがるのだ。そりゃあ、多少無茶な理由をつけても自室に呼び出すというものだろう」
「や、それにしたってもう少しマシな理由があるだろ」
「まあ、そこはあれだ……その……いや、もう喋る元気もないから、遺言だと思って最後まで聞け。とにかく、お前を呼んで状況を少しでも探ろうとしたら、これだ。こんなはずじゃなかったんだ、俺は」
「いや、それにしたってもう少し早くその話を……待て、遺言とはどういう意味だ。死ぬな」
「無理。もう無理。お前、どれだけ絶倫なんだ……毎夜毎夜、夜を明かして抱き潰されるとか……さすがにそろそろ俺だって死ぬに決まって、い……る……」
「おい!?」
小さくなっていく声に、慌てて身体を揺さぶる。
が、ユインの手の中の魔王は、既にすーすーと小さな寝息を立てていた。
そう言えば、これの寝顔を見るのは初めてかもしれない、とユインはふと思い至った。
ここのところ、朝までひたすらその身体を貪り続け、そのまま部屋を辞していたものだから。
そう言えば、個室待遇になってからは特に、ユインは昼間に睡眠を取っていたのだが……さて、政務をこなしていた魔王はどうしていたのだろう。
腰の疼きはおさまりそうになかったが、さすがにひどい想像に至って、ユインは大人しく魔王を寝かせておくことにした。
連夜、性交を続けるうちに、だんだんと反応が鈍くなってきたような気がする。
「おい、起きているのか? もう一度いいか」
「ま、待て……さすがにもう無理……」
「昨晩もそう言って、途中で寝落ちただろう。おれは一晩我慢したんだぞ」
ユインの声も、聞こえているやらいないやら。
だるそうに片目を開いたアグラヴィスは、手を伸ばしてユインの肩に触れた。
「あの……いや、もう俺が悪かったから。頼むからちょっと聞いてくれ」
「どうした」
息も絶え絶えに語りかけてくる様に、さすがに手が止まる。
まだこれから更に虐め苛もうと思っていたのだが、いつにないか弱さでユインにしがみついてくる。
愛らしいので、もうしばらく見ていたい気持ちになった。
「あのな、俺がお前をここに呼んでいるのは、実はこういうことをするためではないのだ」
「なに? それはどういうことだ」
「こうやって日を重ねるほどに物を考える力が失われていくので、もう諦めて率直に言うぞ? お前、帝国に婚約者がいるだろう」
「そりゃあ、いるが」
ユインにとっては、とっくの昔に諦めた話だ。
美しい娘だった。こうも長い間自分が戻らなければ、他にいい相手を見つけているだろう。
そう答えようとした言葉が、喉元で止まった。
「その娘、実は俺の妹だ」
「……はあ?」
頭痛を堪えるようなひどい渋面で、アグラヴィスは目を閉じる。
「じゃじゃ馬でな、俺の決めた相手が許せんと、魔王領を勝手に出て行った。戦場で見かけたお前が気に入ったらしく、魅了に昏迷と様々な精神魔術と手練手管を使って、帝国貴族の娘のふりをしてお前と婚約を結んだのだ」
「……なんだ、それは」
ぐったりした身体を抱いて、絹糸のような髪を梳いた。
連夜、性交を続けるうちに、だんだんと反応が鈍くなってきたような気がする。
「もう喋る元気もないから、遺言だと思って最後まで聞け。そんな妹ゆえに、兄の俺としては非常に心配していたところに、その相手であるお前がのこのこ捕虜になっていやがるのだ。そりゃあ、多少無茶な理由をつけても自室に呼び出すというものだろう」
「や、それにしたってもう少しマシな理由があるだろ」
「まあ、そこはあれだ……その……いや、もう喋る元気もないから、遺言だと思って最後まで聞け。とにかく、お前を呼んで状況を少しでも探ろうとしたら、これだ。こんなはずじゃなかったんだ、俺は」
「いや、それにしたってもう少し早くその話を……待て、遺言とはどういう意味だ。死ぬな」
「無理。もう無理。お前、どれだけ絶倫なんだ……毎夜毎夜、夜を明かして抱き潰されるとか……さすがにそろそろ俺だって死ぬに決まって、い……る……」
「おい!?」
小さくなっていく声に、慌てて身体を揺さぶる。
が、ユインの手の中の魔王は、既にすーすーと小さな寝息を立てていた。
そう言えば、これの寝顔を見るのは初めてかもしれない、とユインはふと思い至った。
ここのところ、朝までひたすらその身体を貪り続け、そのまま部屋を辞していたものだから。
そう言えば、個室待遇になってからは特に、ユインは昼間に睡眠を取っていたのだが……さて、政務をこなしていた魔王はどうしていたのだろう。
腰の疼きはおさまりそうになかったが、さすがにひどい想像に至って、ユインは大人しく魔王を寝かせておくことにした。
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