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第二章 執筆
冬
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4 冬
「完成したから、原稿、見に来てくれないか?」
十二月の最初の週の木曜日、前日に電話で奏さんにそう言われ、私は部室に向かった。
尊さんにも見せたかったそうだが、相変わらず忙しいようで、結局私だけが行くことになった。しかし、私からもその旨を伝えると、すごく嬉しそうに、それから、私に感謝してくれた。本当は原稿を見てから尊さんとは話をしようとも思ったが、今の私は、彼を、奏さんを、信じている。
「こんにちは、奏さん」
「お、朱美。来たか」
午後の講義を終え、部室に辿り着いた。そこにはいつもの定位置に座る彼の姿と、以前よりはかなり分厚さの落ち着いた紙の束が、机に置かれている光景があった。
「これ、ですか?」
「そうだ」
その紙の束を手に取る。
「じゃあまた前と同じように、明日辺りに──」
「いえ、できれば今日中に感想伝えたいので、一時間ほどお時間頂いてもいいですか?」
「え? まあいいが、そんなに速く読めるのか?」
「奏さんを、信じてますから」
「……そうか。わかった」
それから約一時間、正確には一時間十六分とだいたい三十秒、ひたすら彼の世界観を、頭の中に映し出した。
「……ふう。奏さん」
「ん? お、終わったか」
定位置にいた奏さんは、いつものノートパソコンで何かの調べ物をしていたようだった。
「それで、どうだった?」
「……、良いと、思います。私から言えることは、何もないくらいに」
「……、そうか」
そのとき、こちらを向いていた奏さんは、元の位置に向き直り、私に背中を向けた。
だが私は、一瞬緩んだ奏さんの口元を、見逃さなかった。
「ストーリーは、最後の変などんでん返しみたいな演出もなくなって綺麗に纏まってますし、その一方で心理描写は、主人公からは奏さんのダメな部分が終始うまく引き出されてて、相手の女の子もそれにちょうどよく呼応する感じが、本当に素敵だと思います」
「なんか一瞬、悪口言われた気がするんだが……」
「良い意味で、ですよ。良い意味で」
「良い意味でをつければ何でも許されると思うなよ」
この場に尊さんがいたら、どんなに相乗効果が生まれていたことか。
「ていうか、相変わらず、意味深な終わり方が好きなんですね」
「まあな。晴れやかなハッピーエンドよりも、やっぱりこっちの方が性に合うんだ」
「そうですね。でも、綺麗にできてると思います。二人を普通の恋人同士の関係にするんじゃなくて、どこか心が通じ合っているパートナーみたいにして、最後に自分の想いを、二人だけが解る言葉で伝え合う」
「ああ。その先は読者に想像させつつ、作中に伏線を忍ばせているみたいな」
「それ、今考えたでしょ?」
「……、バレたか」
でももしかしたら、本当に忍ばせていたのかもしれない。
「そういえば、題名ってどうするんですか?」
「あ、そうか。まだ決めてなかったな」
いつもならば、いつものようにそれなりの悪態をつくのだが、今日に関しては、その答えを期待している自分がいた。
「私、一個、思いついたのがあるんです。ただもしかしたら、ちょっとテーマが変わっちゃうかもしれないんですけど」
「へえ、どんなのなんだ?」
息を吸い込む。
待ちに待ったこの作品に、そして、奏さんにピッタリな、一つの言葉を思い浮かべる。
「『月が、綺麗ですね。』、なんて、どうですか?」
ずっと座っていた彼の身体が、一瞬、立ち上がろうとして、落ち着いた。
「……なるほど。面白い」
また、私に背を向けるように、向き直る。
「この言葉、知ってました?」
「夏目漱石がI love youを訳したときに、使ったと言われている言葉だろう? 俺もネットで流行っているのを見ただけだから、そこまでちゃんと把握はしてないが」
「はい。信憑性は薄いとも言われてるんですが、でも、なんか、ロマンチックですよね」
自然と私も、彼に背を向ける。
「良いと思うぞ。すごく」
「ありがとうございます。ただ、」
「ただ?」
「せっかく書き直してストレートな作品になったのに、この言葉でまた回りくどくなっちゃうと、もしかしたら読者に反発されるかもなんて思っていて……」
「ああ、それなら心配いらない」
「え?」
背中を向けていた彼の方を振り向く。いつの間にか、奏さんもこちらを見ていた。
「ちょっとずつ調整していけばいい。まだ推敲も完全には済んでいないし、今からなら充分直せる」
「でも、せっかくできたのに、今からまた直すなんて大変じゃ……」
「それくらい──」
息を吸い込み、間を作る。
「その言葉が、気に入ったんだ」
私の中に、太陽よりも熱い何かが湧き上がる。
奏さんの中にもきっと、月よりも綺麗な何かが心を震わせている。
「……、わかりました。楽しみに、してますよ?」
「……、そうしてくれ」
今この瞬間、私たちは、私たちの『月が、綺麗ですね。』が完成することを、確信した。
「そういえば、これってどこの新人賞に応募するとか、もう決めてるんですか?」
「ああ、そのことなんだが、」
立ち上がり、机に置かれた原稿を手に取る。
「少し前にツイッターで出版関係の人と知り合ってな、もう既に何度か会っているんだが、作品ができたら見てくれるって言うんで、今度会おうと思ってる」
「へえ、奏さんが先回って動いてるなんて、ちょっと意外ですね」
「俺ももう、あまり長くは大学に居られないからな」
そのときだけ、少し、表情を強張らせた。
「たぶん会うのは年末辺りになると思うから、それまでに一度、もう一回見てほしい」
「わかりました」
「たぶん、二週間ぐらいでできると思う」
「了解です。あ、この原稿、もう一回ゆっくり読みたいので貰っちゃっていいですか?」
「ああ。構わないよ」
「ありがとうございます。じゃあまた」
「うむ。また会おう」
そのまま部室を出て、駅へ向かった。
冬の空は、冷たい空気とは対照的に、行き交う大学生を見守っている、ような気がした。
宣言通り、あの日からちょうど二週間後の木曜日、奏さんから招集がかかった。
奏さんは再び原稿の紙束を刷ってきたが、元の話は既に読み尽くしており、さらには変更点も奏さんに逐一聞きながら読み進めたので、読み切るのに時間はかからなかった。そもそも、この原稿はそのまま出版関係だという人に渡すものになるため、あまりガチャガチャと触れたくないという気遣いも、心の中にはあった。
「じゃあ、これで完成ですね! お疲れ様です!」
「ああ。まあ、本当の勝負はこれからだがな」
そんな風な強気の言葉が、以前より少しだけ、本当に、頼もしく聞こえる。
「出版関係の人とはアポ取れました?」
「一応、来週の水曜にウチの近くの喫茶店で会うことになった」
「そうなんですか。頑張ってください!」
「朱美も、来るか?」
「え?」
反射的に固まってしまう。
「……遠慮しておきます」
「そうか。わかった」
彼の残念そうな顔を見ると、少しだけ、反射的に断ったことを後悔する。
でも心なしか、今回は、私がその場にいない方が、彼がやりやすいのではないかと思った。
「そういえば、ペンネームってどうするんですか?」
幾許か気まずくなった空気を破るために、話題を呈する。
「ああ、実は名字の方はもう考えてあるんだ」
「へえ、なんですか?」
「俺の奏に音って字を付けて、奏音」
「え?」
あまり見慣れない文字の並びだったので、思わず驚いたような声が漏れる。
「それは、何か特別な意味があるんでしょうか?」
「……、好きなAV女優の名だ」
「……はあ?」
この人、何を言っているんだろう。
「……冗談だ」
間違いない。この目は、マジだ。
「……、変えた方がいいと思います」
「……うむ、そうする……」
この世で最も穢いものを見たかのような私の目に、さすがに色々察したようだ。
「でも、『奏』って字を名字に混ぜるのは、悪くないかもしれませんね」
そのままの目で私がそんなことを言ったので、奏さんはひっくり返るように、身体が変な反応を見せていた。
「ほ、本当か?」
「はい。でもさっきのは絶対却下です。ていうか、嫌です」
「わかった……。それに関しては謝る……」
奏さんはそれなりに申し訳なさそうな目をしながら、それなりに頭を下げる。
その傍らで、私はスマートフォンでGoogleの検索画面を開いていた。
「と言っても、『奏』が付く名字なんて、どんなものがあるんだろうな」
「今調べたら色々出てきましたよ」
そう言いながら、スマートフォンの画面を見せる。
「へえ、結構あるんだな。お、これなんかいいじゃないか」
「奏に風って書いて奏風、なんか、ザ・ペンネームって感じですね。あ、でもこれ、よく見たら全部名前の例でした」
「別にいいんじゃないか? 余計ペンネームっぽくて」
「余計AV女優感も増してますけど……」
「ん? なにか言ったか?」
「なんでもないです!」
そう言って、奏さんの肩を叩いた。その一連の流れが理解できなかったようで、奏さんは不思議そうな顔をしている。
「で、名前の方はどうするんですか?」
「それも一応、ざっくりは考えてある」
「……、ちょっと聞くの怖いですけど」
「こっちは断じて不純な理由じゃない! というか、君にも関連しているんだ」
「え、どういうことですか?」
奏さんの方を見ると、奏さんも私を見ていた。目が合い、少し逸らし合う。
「君の名前の、『朱』という字を使いたいんだが、どうだろう?」
逸らした目を、再び合わせる。
彼の茶色がかった瞳は、眼鏡の奥で真っ直ぐと、私を捉えている。
「別に、構わないですけど」
「いいのか?」
「はい。むしろ、嬉しいです。でも、」
「でも?」
「嬉しい」という言葉が、本当に自然に出た。
だから、もう一つ、本当に思っていることを、言わなければならない。
「奏さんはいいんですか? これは奏さんの作品なのに、私なんかが入り込んじゃって」
「違うよ」
その声に、心臓が跳ねる。
「これは、朱美と俺の作品だ。朱美がいたから、完成できた。だから朱美が入り込むのは当然だろう? 本当は、来週も一緒に来てほしかったんだが」
息を止めて、跳ねた心臓を必死で抑える。
「……そんなストレートに言わないでください」
「え? 俺、変なこと言ったか?」
「もういいです……!」
動揺を無理やり掻き消すように、無駄に大きな声を発する。
「で、肝心な名前の方ですけど」
「ああ、そうだった。まあシンプルに悟とかを付けて、朱悟とかでいいんじゃないか?」
「奏風朱悟、なんか、響きだとラノベの主人公みたいですけど、文字見るとちょっとだけ落語家みたいですね」
「まあ、ペンネームなんてそんなもんだろう」
さっきまでAV女優とか言っていた人が、よくそんなこと言えるなと内心思いつつ、
「じゃあ、これで決定ですね」
「ああ。尊にも伝えておく」
「そうですね! それじゃ、来週、頑張ってください!」
「ああ。終わったら報告するよ」
「そうしてください!」
そうして高揚しながら、部室を出る。
しかしそんな私とは裏腹に、冬の風はなんだが、春の嵐を予感させるように、私の体を芯から冷やしていった。
時は流れるように過ぎ行き、いつの間にか年が明け、いつの間にか期末試験が終わり、いつの間にか、春休みに突入した。さらにそこから約一ヵ月が経ち、今は二月下旬に差し掛かっている。
簡単に事後報告をすると、あの後、奏さんは無事出版関係の人と会えたらしく、原稿も快く受け取ってくれたらしい。その三日後に、いつかのように尊さんも交えて三人で食事をし、そのときの様子を嬉しそうに語ってくれた。出版という話になればまた連絡するということらしいので、しばらくは待つということで、その日は帰ったらしい。
また、久しぶりに三人で会うということで、尊さんは私たちの話を聞きたがった。渋谷で道に迷ったこと、私と美月の会話を盗み聞きしていたこと、海へ行き、その道中で謎の行動の末、車に轢かれかけたこと、その後ただ海を眺めていたこと、私の家に押しかけ、それから、並んで朝焼けを見つめたこと。最後の話は恥ずかしい部分もあったため、話すときはだいぶ省略したが、そのどれもこれもを、尊さんは嬉しそうに聞いてくれた。データで残っていた原稿を見せると、これまた嬉しそうに、笑顔が似合うその顔を綻ばせた。
その後年が明け、期末試験の勉強もあり、暖房のない部室に入り浸ることはなかったが、集まったときは軽い近況報告や、現在奏さんが執筆しようとしている作品の話などで、束の間を埋めた。試験はお互い問題なく済み、奏さんも無事進級できることが決まった。
後期が終わると、周りの三年生は就活で大忙しな中、奏さんは尊さんと共に旅に出かけた。私も誘ってくれたが、私は私で春休みに入ってすぐに帰省することになっていたので、泣く泣く辞退することとなった。
地元に帰ると、まずは一花とひたすら時を過ごし、お互いの一年間の出来事を振り返った。奏さんのことも話したが、存在自体を信じてもらえず、ただ男子たちと楽しく文芸に耽っている充実した女子大生のように捉えられたので、激しく訂正した。一方実家では、密かに二つの準備を進めていた。一つはおそらくもう少しすれば明らかになり、もう一つは、自分の夢のために、去年の十一月から始めたことを、本格的に実家でも継続した。
美月にも一度、こっちで会った。高校のときの友人とも関係を修復したらしく、私にも何人か紹介してくれた。そうして、十一月以来に会ったその日、
「久しぶり朱美ー! って、うっそー! コンタクトにしたの!?」
「うん! こっち帰ってきてお母さんに言ってみたら、色々準備してくれて」
「そうなんだ! めっちゃいい! やっぱ思った通り! はあー、早く朱美と東京行きたいー!」
「美月にそんなこと言われたら、照れちゃうよ……!」
「そう? じゃあ、もっと照れさせてやるー!」
ということで、私はこの機会に、眼鏡を卒業した。
だが断固として言っておくが、あくまで美月のアドバイスに従っただけだ。家では眼鏡に戻ることもあるが、そのときにギャップを狙おうなどとは、毛頭も考えていない、と、心の表面は訴えている。
そんなこんなでそこそこ充実した地元での日々を過ごしていたある日、というか今日、ふと、小説の情報サイトを見てみた。我々の小説が形になっているならそろそろではないかと、期待半分不安半分で、ページを開く。
すると、トップニュースの中に、私の目を強く惹くものが眩いていた。
「投稿サイトで話題の『月が、綺麗ですね。』、遂に書籍化へ!」
思わず、身体が揺れた。
私たちの作品が、本当に、世間に認められている。世間に、受け入れられている。そこに宿った感情は、歓喜や達成感などではなく、ただひたすらに、何かが湧き上がった。あの言葉が私たちの前に舞い降りたときのように、何かが私の心を震え上がらせた。それらを言の葉で表現できる能力を、私はこれから身に付けなければならない。その先に、夢があるのだから。
それにしても、なぜ奏さんはこのことを教えてくれなかったのだろう。投稿サイトで評判が良かったのはともかく、書籍化なんて話になれば、まず間違いなく彼に連絡がいく。そうしたら、私にも連絡してくれる約束だったのに。そもそも、投稿サイトに投稿したことすら聞いていない。もしかして、会っていないこの期間で、愛想を尽かされた?
「『月が、綺麗ですね。』の作者・五木あおいとは、一体何者!?」
記事の関連ページにあった別のニュースに目がいく。
ペンネームもいつの間にか、落語家みたいな名前から、アニメのヒロインのような名前に変わっていた。やっぱり奏さんは、私に黙って、色々勝手に進めている。
そのときにはもう、奏さんに電話をかけていた。三回の呼出音の後、通話が繋がった。
「あ、奏さん! よかった……。お久しぶりです!」
「おう、朱美。どうした?」
電話には出てくれた。
「どうしたじゃないですよ! 奏さん、なんで教えてくれなかったんですか!?」
「え、何のことだ?」
彼は私をおちょくっているのだろうか。
もしくは、サプライズを仕掛けているのかもしれない。
「小説ですよ! 今度書籍化するんでしょう!?」
「え、そうなのか?」
もしかしたら、私の見た情報が先走りしすぎていたのかもしれない。
彼の声色の中には、全くと言っていいほど嘯いたものがなかった。
「ちょっと、ちゃんとそういう情報把握しといてくださいよ!」
「そう言われても、何も連絡がないから、てっきり全然ダメだと思っていたんだよ」
「え? ……変ですね。ネットじゃ結構話題になってたのに」
「話題になってた? どういうことだ?」
少しずつ、話が噛み合わない。
それでも私は、一刻も早く、この感情を彼と共有したかった。
「それより、ペンネーム、変えたんですね! 思いっ切り女性の名前になってたんで、ちょっとビックリしちゃいましたよ!」
「おいおい、さっきから、君は何を言ってるんだ? ネットの情報は見てないからわからないが、ペンネームなんて変えた覚えはないし、それになぜだかはわからないけど、前に会ったあの人とあれ以来、連絡が全く取れないんだよ」
「え……、それ、本当ですか……?」
一陣の暖かな風が、私の胸を切り裂く。
その不穏な趨勢に煽られて、鼓動は胸騒ぎから確信に換わった。
「じゃあ、あの、『月が、綺麗ですね。』の作者の五木あおいって人は、一体誰なんですか……?」
「……、絶対、何かおかしい」
出てくる月を間違えた腹いせか、いつか私の前に訪れた暖かな春の風は、嵐となって、私たちの前に立ち塞がった。
「完成したから、原稿、見に来てくれないか?」
十二月の最初の週の木曜日、前日に電話で奏さんにそう言われ、私は部室に向かった。
尊さんにも見せたかったそうだが、相変わらず忙しいようで、結局私だけが行くことになった。しかし、私からもその旨を伝えると、すごく嬉しそうに、それから、私に感謝してくれた。本当は原稿を見てから尊さんとは話をしようとも思ったが、今の私は、彼を、奏さんを、信じている。
「こんにちは、奏さん」
「お、朱美。来たか」
午後の講義を終え、部室に辿り着いた。そこにはいつもの定位置に座る彼の姿と、以前よりはかなり分厚さの落ち着いた紙の束が、机に置かれている光景があった。
「これ、ですか?」
「そうだ」
その紙の束を手に取る。
「じゃあまた前と同じように、明日辺りに──」
「いえ、できれば今日中に感想伝えたいので、一時間ほどお時間頂いてもいいですか?」
「え? まあいいが、そんなに速く読めるのか?」
「奏さんを、信じてますから」
「……そうか。わかった」
それから約一時間、正確には一時間十六分とだいたい三十秒、ひたすら彼の世界観を、頭の中に映し出した。
「……ふう。奏さん」
「ん? お、終わったか」
定位置にいた奏さんは、いつものノートパソコンで何かの調べ物をしていたようだった。
「それで、どうだった?」
「……、良いと、思います。私から言えることは、何もないくらいに」
「……、そうか」
そのとき、こちらを向いていた奏さんは、元の位置に向き直り、私に背中を向けた。
だが私は、一瞬緩んだ奏さんの口元を、見逃さなかった。
「ストーリーは、最後の変などんでん返しみたいな演出もなくなって綺麗に纏まってますし、その一方で心理描写は、主人公からは奏さんのダメな部分が終始うまく引き出されてて、相手の女の子もそれにちょうどよく呼応する感じが、本当に素敵だと思います」
「なんか一瞬、悪口言われた気がするんだが……」
「良い意味で、ですよ。良い意味で」
「良い意味でをつければ何でも許されると思うなよ」
この場に尊さんがいたら、どんなに相乗効果が生まれていたことか。
「ていうか、相変わらず、意味深な終わり方が好きなんですね」
「まあな。晴れやかなハッピーエンドよりも、やっぱりこっちの方が性に合うんだ」
「そうですね。でも、綺麗にできてると思います。二人を普通の恋人同士の関係にするんじゃなくて、どこか心が通じ合っているパートナーみたいにして、最後に自分の想いを、二人だけが解る言葉で伝え合う」
「ああ。その先は読者に想像させつつ、作中に伏線を忍ばせているみたいな」
「それ、今考えたでしょ?」
「……、バレたか」
でももしかしたら、本当に忍ばせていたのかもしれない。
「そういえば、題名ってどうするんですか?」
「あ、そうか。まだ決めてなかったな」
いつもならば、いつものようにそれなりの悪態をつくのだが、今日に関しては、その答えを期待している自分がいた。
「私、一個、思いついたのがあるんです。ただもしかしたら、ちょっとテーマが変わっちゃうかもしれないんですけど」
「へえ、どんなのなんだ?」
息を吸い込む。
待ちに待ったこの作品に、そして、奏さんにピッタリな、一つの言葉を思い浮かべる。
「『月が、綺麗ですね。』、なんて、どうですか?」
ずっと座っていた彼の身体が、一瞬、立ち上がろうとして、落ち着いた。
「……なるほど。面白い」
また、私に背を向けるように、向き直る。
「この言葉、知ってました?」
「夏目漱石がI love youを訳したときに、使ったと言われている言葉だろう? 俺もネットで流行っているのを見ただけだから、そこまでちゃんと把握はしてないが」
「はい。信憑性は薄いとも言われてるんですが、でも、なんか、ロマンチックですよね」
自然と私も、彼に背を向ける。
「良いと思うぞ。すごく」
「ありがとうございます。ただ、」
「ただ?」
「せっかく書き直してストレートな作品になったのに、この言葉でまた回りくどくなっちゃうと、もしかしたら読者に反発されるかもなんて思っていて……」
「ああ、それなら心配いらない」
「え?」
背中を向けていた彼の方を振り向く。いつの間にか、奏さんもこちらを見ていた。
「ちょっとずつ調整していけばいい。まだ推敲も完全には済んでいないし、今からなら充分直せる」
「でも、せっかくできたのに、今からまた直すなんて大変じゃ……」
「それくらい──」
息を吸い込み、間を作る。
「その言葉が、気に入ったんだ」
私の中に、太陽よりも熱い何かが湧き上がる。
奏さんの中にもきっと、月よりも綺麗な何かが心を震わせている。
「……、わかりました。楽しみに、してますよ?」
「……、そうしてくれ」
今この瞬間、私たちは、私たちの『月が、綺麗ですね。』が完成することを、確信した。
「そういえば、これってどこの新人賞に応募するとか、もう決めてるんですか?」
「ああ、そのことなんだが、」
立ち上がり、机に置かれた原稿を手に取る。
「少し前にツイッターで出版関係の人と知り合ってな、もう既に何度か会っているんだが、作品ができたら見てくれるって言うんで、今度会おうと思ってる」
「へえ、奏さんが先回って動いてるなんて、ちょっと意外ですね」
「俺ももう、あまり長くは大学に居られないからな」
そのときだけ、少し、表情を強張らせた。
「たぶん会うのは年末辺りになると思うから、それまでに一度、もう一回見てほしい」
「わかりました」
「たぶん、二週間ぐらいでできると思う」
「了解です。あ、この原稿、もう一回ゆっくり読みたいので貰っちゃっていいですか?」
「ああ。構わないよ」
「ありがとうございます。じゃあまた」
「うむ。また会おう」
そのまま部室を出て、駅へ向かった。
冬の空は、冷たい空気とは対照的に、行き交う大学生を見守っている、ような気がした。
宣言通り、あの日からちょうど二週間後の木曜日、奏さんから招集がかかった。
奏さんは再び原稿の紙束を刷ってきたが、元の話は既に読み尽くしており、さらには変更点も奏さんに逐一聞きながら読み進めたので、読み切るのに時間はかからなかった。そもそも、この原稿はそのまま出版関係だという人に渡すものになるため、あまりガチャガチャと触れたくないという気遣いも、心の中にはあった。
「じゃあ、これで完成ですね! お疲れ様です!」
「ああ。まあ、本当の勝負はこれからだがな」
そんな風な強気の言葉が、以前より少しだけ、本当に、頼もしく聞こえる。
「出版関係の人とはアポ取れました?」
「一応、来週の水曜にウチの近くの喫茶店で会うことになった」
「そうなんですか。頑張ってください!」
「朱美も、来るか?」
「え?」
反射的に固まってしまう。
「……遠慮しておきます」
「そうか。わかった」
彼の残念そうな顔を見ると、少しだけ、反射的に断ったことを後悔する。
でも心なしか、今回は、私がその場にいない方が、彼がやりやすいのではないかと思った。
「そういえば、ペンネームってどうするんですか?」
幾許か気まずくなった空気を破るために、話題を呈する。
「ああ、実は名字の方はもう考えてあるんだ」
「へえ、なんですか?」
「俺の奏に音って字を付けて、奏音」
「え?」
あまり見慣れない文字の並びだったので、思わず驚いたような声が漏れる。
「それは、何か特別な意味があるんでしょうか?」
「……、好きなAV女優の名だ」
「……はあ?」
この人、何を言っているんだろう。
「……冗談だ」
間違いない。この目は、マジだ。
「……、変えた方がいいと思います」
「……うむ、そうする……」
この世で最も穢いものを見たかのような私の目に、さすがに色々察したようだ。
「でも、『奏』って字を名字に混ぜるのは、悪くないかもしれませんね」
そのままの目で私がそんなことを言ったので、奏さんはひっくり返るように、身体が変な反応を見せていた。
「ほ、本当か?」
「はい。でもさっきのは絶対却下です。ていうか、嫌です」
「わかった……。それに関しては謝る……」
奏さんはそれなりに申し訳なさそうな目をしながら、それなりに頭を下げる。
その傍らで、私はスマートフォンでGoogleの検索画面を開いていた。
「と言っても、『奏』が付く名字なんて、どんなものがあるんだろうな」
「今調べたら色々出てきましたよ」
そう言いながら、スマートフォンの画面を見せる。
「へえ、結構あるんだな。お、これなんかいいじゃないか」
「奏に風って書いて奏風、なんか、ザ・ペンネームって感じですね。あ、でもこれ、よく見たら全部名前の例でした」
「別にいいんじゃないか? 余計ペンネームっぽくて」
「余計AV女優感も増してますけど……」
「ん? なにか言ったか?」
「なんでもないです!」
そう言って、奏さんの肩を叩いた。その一連の流れが理解できなかったようで、奏さんは不思議そうな顔をしている。
「で、名前の方はどうするんですか?」
「それも一応、ざっくりは考えてある」
「……、ちょっと聞くの怖いですけど」
「こっちは断じて不純な理由じゃない! というか、君にも関連しているんだ」
「え、どういうことですか?」
奏さんの方を見ると、奏さんも私を見ていた。目が合い、少し逸らし合う。
「君の名前の、『朱』という字を使いたいんだが、どうだろう?」
逸らした目を、再び合わせる。
彼の茶色がかった瞳は、眼鏡の奥で真っ直ぐと、私を捉えている。
「別に、構わないですけど」
「いいのか?」
「はい。むしろ、嬉しいです。でも、」
「でも?」
「嬉しい」という言葉が、本当に自然に出た。
だから、もう一つ、本当に思っていることを、言わなければならない。
「奏さんはいいんですか? これは奏さんの作品なのに、私なんかが入り込んじゃって」
「違うよ」
その声に、心臓が跳ねる。
「これは、朱美と俺の作品だ。朱美がいたから、完成できた。だから朱美が入り込むのは当然だろう? 本当は、来週も一緒に来てほしかったんだが」
息を止めて、跳ねた心臓を必死で抑える。
「……そんなストレートに言わないでください」
「え? 俺、変なこと言ったか?」
「もういいです……!」
動揺を無理やり掻き消すように、無駄に大きな声を発する。
「で、肝心な名前の方ですけど」
「ああ、そうだった。まあシンプルに悟とかを付けて、朱悟とかでいいんじゃないか?」
「奏風朱悟、なんか、響きだとラノベの主人公みたいですけど、文字見るとちょっとだけ落語家みたいですね」
「まあ、ペンネームなんてそんなもんだろう」
さっきまでAV女優とか言っていた人が、よくそんなこと言えるなと内心思いつつ、
「じゃあ、これで決定ですね」
「ああ。尊にも伝えておく」
「そうですね! それじゃ、来週、頑張ってください!」
「ああ。終わったら報告するよ」
「そうしてください!」
そうして高揚しながら、部室を出る。
しかしそんな私とは裏腹に、冬の風はなんだが、春の嵐を予感させるように、私の体を芯から冷やしていった。
時は流れるように過ぎ行き、いつの間にか年が明け、いつの間にか期末試験が終わり、いつの間にか、春休みに突入した。さらにそこから約一ヵ月が経ち、今は二月下旬に差し掛かっている。
簡単に事後報告をすると、あの後、奏さんは無事出版関係の人と会えたらしく、原稿も快く受け取ってくれたらしい。その三日後に、いつかのように尊さんも交えて三人で食事をし、そのときの様子を嬉しそうに語ってくれた。出版という話になればまた連絡するということらしいので、しばらくは待つということで、その日は帰ったらしい。
また、久しぶりに三人で会うということで、尊さんは私たちの話を聞きたがった。渋谷で道に迷ったこと、私と美月の会話を盗み聞きしていたこと、海へ行き、その道中で謎の行動の末、車に轢かれかけたこと、その後ただ海を眺めていたこと、私の家に押しかけ、それから、並んで朝焼けを見つめたこと。最後の話は恥ずかしい部分もあったため、話すときはだいぶ省略したが、そのどれもこれもを、尊さんは嬉しそうに聞いてくれた。データで残っていた原稿を見せると、これまた嬉しそうに、笑顔が似合うその顔を綻ばせた。
その後年が明け、期末試験の勉強もあり、暖房のない部室に入り浸ることはなかったが、集まったときは軽い近況報告や、現在奏さんが執筆しようとしている作品の話などで、束の間を埋めた。試験はお互い問題なく済み、奏さんも無事進級できることが決まった。
後期が終わると、周りの三年生は就活で大忙しな中、奏さんは尊さんと共に旅に出かけた。私も誘ってくれたが、私は私で春休みに入ってすぐに帰省することになっていたので、泣く泣く辞退することとなった。
地元に帰ると、まずは一花とひたすら時を過ごし、お互いの一年間の出来事を振り返った。奏さんのことも話したが、存在自体を信じてもらえず、ただ男子たちと楽しく文芸に耽っている充実した女子大生のように捉えられたので、激しく訂正した。一方実家では、密かに二つの準備を進めていた。一つはおそらくもう少しすれば明らかになり、もう一つは、自分の夢のために、去年の十一月から始めたことを、本格的に実家でも継続した。
美月にも一度、こっちで会った。高校のときの友人とも関係を修復したらしく、私にも何人か紹介してくれた。そうして、十一月以来に会ったその日、
「久しぶり朱美ー! って、うっそー! コンタクトにしたの!?」
「うん! こっち帰ってきてお母さんに言ってみたら、色々準備してくれて」
「そうなんだ! めっちゃいい! やっぱ思った通り! はあー、早く朱美と東京行きたいー!」
「美月にそんなこと言われたら、照れちゃうよ……!」
「そう? じゃあ、もっと照れさせてやるー!」
ということで、私はこの機会に、眼鏡を卒業した。
だが断固として言っておくが、あくまで美月のアドバイスに従っただけだ。家では眼鏡に戻ることもあるが、そのときにギャップを狙おうなどとは、毛頭も考えていない、と、心の表面は訴えている。
そんなこんなでそこそこ充実した地元での日々を過ごしていたある日、というか今日、ふと、小説の情報サイトを見てみた。我々の小説が形になっているならそろそろではないかと、期待半分不安半分で、ページを開く。
すると、トップニュースの中に、私の目を強く惹くものが眩いていた。
「投稿サイトで話題の『月が、綺麗ですね。』、遂に書籍化へ!」
思わず、身体が揺れた。
私たちの作品が、本当に、世間に認められている。世間に、受け入れられている。そこに宿った感情は、歓喜や達成感などではなく、ただひたすらに、何かが湧き上がった。あの言葉が私たちの前に舞い降りたときのように、何かが私の心を震え上がらせた。それらを言の葉で表現できる能力を、私はこれから身に付けなければならない。その先に、夢があるのだから。
それにしても、なぜ奏さんはこのことを教えてくれなかったのだろう。投稿サイトで評判が良かったのはともかく、書籍化なんて話になれば、まず間違いなく彼に連絡がいく。そうしたら、私にも連絡してくれる約束だったのに。そもそも、投稿サイトに投稿したことすら聞いていない。もしかして、会っていないこの期間で、愛想を尽かされた?
「『月が、綺麗ですね。』の作者・五木あおいとは、一体何者!?」
記事の関連ページにあった別のニュースに目がいく。
ペンネームもいつの間にか、落語家みたいな名前から、アニメのヒロインのような名前に変わっていた。やっぱり奏さんは、私に黙って、色々勝手に進めている。
そのときにはもう、奏さんに電話をかけていた。三回の呼出音の後、通話が繋がった。
「あ、奏さん! よかった……。お久しぶりです!」
「おう、朱美。どうした?」
電話には出てくれた。
「どうしたじゃないですよ! 奏さん、なんで教えてくれなかったんですか!?」
「え、何のことだ?」
彼は私をおちょくっているのだろうか。
もしくは、サプライズを仕掛けているのかもしれない。
「小説ですよ! 今度書籍化するんでしょう!?」
「え、そうなのか?」
もしかしたら、私の見た情報が先走りしすぎていたのかもしれない。
彼の声色の中には、全くと言っていいほど嘯いたものがなかった。
「ちょっと、ちゃんとそういう情報把握しといてくださいよ!」
「そう言われても、何も連絡がないから、てっきり全然ダメだと思っていたんだよ」
「え? ……変ですね。ネットじゃ結構話題になってたのに」
「話題になってた? どういうことだ?」
少しずつ、話が噛み合わない。
それでも私は、一刻も早く、この感情を彼と共有したかった。
「それより、ペンネーム、変えたんですね! 思いっ切り女性の名前になってたんで、ちょっとビックリしちゃいましたよ!」
「おいおい、さっきから、君は何を言ってるんだ? ネットの情報は見てないからわからないが、ペンネームなんて変えた覚えはないし、それになぜだかはわからないけど、前に会ったあの人とあれ以来、連絡が全く取れないんだよ」
「え……、それ、本当ですか……?」
一陣の暖かな風が、私の胸を切り裂く。
その不穏な趨勢に煽られて、鼓動は胸騒ぎから確信に換わった。
「じゃあ、あの、『月が、綺麗ですね。』の作者の五木あおいって人は、一体誰なんですか……?」
「……、絶対、何かおかしい」
出てくる月を間違えた腹いせか、いつか私の前に訪れた暖かな春の風は、嵐となって、私たちの前に立ち塞がった。
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