105 / 134
外伝~アスカ大公子物語~ 消せぬ想い
しおりを挟む
◇
ゲートの運用実験も終わった。護は明日、人族の国へ帰る。前夜に送別の宴が開かれた。
「もうお帰りになってしまうなんて。残念ですわ」
「また次のお休みに遊びにいらして」
着飾ったエルフの娘たちが護に群がる。ほんの1カ月の間に、ほとんどの中立派は親人族派に転じていた。
「次は冬休みにでも来てくれ。それまでに研究を進めておくから!」
超古代文明の学者達とも親交を深められた。護は彼らが好きになっていた。集中力にムラがあるという欠点を持つが、魔法を自在に操り、心の赴くままに暮らす優美な人々だ。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。言葉に表裏が無いのも良い。
「僕も皆さんに会えなくなるのが寂しいです。本当に素晴らしい経験でした」
護は嘘偽りない言葉で礼を述べ、本心からの笑みを見せた。
◇
「マモル。少しいいかしら?」
宴の後、部屋に戻ろうとした護をシルヴィア姫が呼び止めた。
「はい?」
「話があるの」
姫は王城の人気のない庭園に彼を誘った。夏の花々が咲き乱れ、蛍のような光る何かが舞い飛んでいる。
「マモル。私…あなたが…」
ロマンチックな雰囲気の中、背を向けたまま姫が話し始めた。護は最後まで言わせなかった。
「嫌いですよね。僕もです。宰相殿」
とたんにシルヴィア姫が男に変じる。なかなか見事な認識阻害魔法だった。振り向いた宰相は護を睨みつけた。
「とことん嫌なガキだな。二度と顔を見せるな」
「そんなことを言うために姫に化けたの?回りくどいなぁ」
護は200歳の宰相に敬語を使うべきか迷った。あまりに子供っぽい。
「もちろん違う。今のうちに始末するためだ!」
言いざま、宰相が闇魔法を放ってきた。護は聖女仕込みの多重光結界で闇の槍を弾いた。たちまち夜の庭園での魔法戦が始まってしまう。
「落ち着けよ。人族の貴族を殺すつもり?戦争だよ?」
「殺しはしない。その忌々しい顔を多少変えてやるだけだ!」
やはり父への逆恨みのようだ。護はうんざりした。親の因果が子に報いている。
「“拘束”」
人魚族の秘伝魔法で宰相殿を締め上げる。相手は手練れのエルフ族。油断は禁物だ。護は雷魔法で意識を刈り取ろうとした。
「!」
それより早く、宰相は口中の血を地面に吐き出した。その血が立体魔法陣を描く。初めて見る魔法だった。
(もしかして超古代文明の魔法陣かな?さすが200歳。色々知ってるなー)
ここまで毛嫌いされていなければ弟子入りしたいぐらいだ。
『変化の檻…血と…魔力を代償に…我が敵を…望む姿?』
魔法陣を構成する超古代文明文字を読むと、宰相の顔色が変わった。なぜ驚くのだろう。護がこの1カ月、何をしていたのか知らないのだろうか。
「これ禁呪でしょ。僕に勝ったって、あなたも罰せられるよ?」
護は魔法陣の所々欠けた文字を補い、“反転”させた。血の檻が宰相を捕らえる。その頃には騒ぎを聞きつけた他のエルフたちとシルヴィア姫が庭園に駆けつけてきた。
「宰相!マモル!何を…」
「いや…何だろう?決闘?ケンカ?」
傍から見たら人族がエルフを虐げているように見えたか。護は心配になってきた。魔法陣を停止し、状況を説明しようとしたら、エルフ王まで来てしまった。
「双方控えよ。王城内での私闘は禁止である」
全ての魔法をキャンセルし、護は跪いた。宰相もフラつきながら立ち上がる。王は重々しく沙汰を下した。
「先に仕掛けたのは宰相だな。しかもたった14の人族相手に禁呪か。情けない。3年謹慎せよ」
宰相は無言で俯いた。3年が長いのか短いのか、護にはピンとこない。警護の兵が宰相を連行していく。エルフたちは結果を知ると、何事もなかったかのように戻って行った。
(…宰相が謹慎喰らったのに?大事じゃないのかなぁ?)
釈然としない表情の護に、王は説明した。
「エルフに身分の差は無い。宰相と言ったところで、若者の当番程度だ」
「当番…。画期的な制度ですね」
王だけが特別なのだろう。実に亜人らしい。ということは次期女王のシルヴィア姫は相当な実力者だ。護はしげしげと姫を見た。彼女は顔を赤くして訊いた。
「何?」
「いえ。ぜひ一度手合わせをお願いしたいなと」
人族で護と互角に戦えるのは父だけだ。亜人ならば強者がうようよいるかもしれない。戦いの興奮冷めやらぬ護は、うっかり淑女に模擬戦を申し込んでしまった。怒ったシルヴィア姫は風魔法を護に叩きつけると、「おやすみ!」と言って去った。
「あれは攻める強さではない。護る時に真価を発揮する。お前の名前と同じだな」
王は笑って去っていった。荒れた庭園をスキルで直し、護も部屋に引き取った。
♡
シルヴィアは護が戦う姿を初めて見た。宰相は王に次いで強いエルフだ。それを完全に圧倒していた。
(聖女に聞いたことがあるわ。人族で一番強い魔法士はモーリーだとか)
その息子があれほど強い。護の弟妹は10人以上だと言う。全てが彼ほど強かったら、人族はエルフ族を上回る強者だと言える。
長年、エルフは魔法で他の亜人達に水をあけてきた。そのバランスが崩れようとしている。人族を警戒しなければならない。今後、亜人会議に参加する氏族間にゲートは設置される。文化や学術面での交流のみならず、魔法や武力の序列の変化も起こるだろう。
次期女王であるシルヴィアは、エルフ族をより良い未来に導くために、護公子に寄せる想いを封印した。
◇
3年後。護は魔法学園の最高学年になっていた。長期の休みにはエルフ族と共同研究をしたが、大公家の仕事も忙しく、全て伝話や手紙で進めた。そしてようやく研究結果が形になったので、亜人会議の場で発表することになった。
「お久しぶりです。シルヴィア姫」
今回の亜人会議の会場は人魚族の海底宮殿だ。護は歓迎パーティーで姫に挨拶をした。
「マモル…?」
姫は目を見開いて固まっていた。
「はい。お元気でしたか?」
「お…大きくなったわね。驚いちゃったわ」
「ありがとうございます。もう17ですから」
護は笑顔で礼を言った。やっと父の身長に追いついたのだ。だが父と区別がつかないので、髪を後頭部の高い位置で結んでいる。本当は短くしたいのだが、魔法士は髪に魔力を溜めるとかで切れない。
「直で会うのは久しぶりだな!マモル!」
超古代文明の共同研究者であるエルフが、今の宰相だそうだ。姫の付き添いとして会議に来ている。護は彼と握った拳を付き合わせた。研究発表では共に登壇する予定だ。
「本当に輪番だったんだな。宰相」
「おうよ。20年交代だ」
「さすがだよ。エルフ。人族ではあり得ん」
気の置けない仲間とのくだけた会話に、姫がぽかんとしている。そこへラミアの王女、ノーラがやってきた。
「御機嫌よう。シルヴィア姫。宰相閣下」
「お久しぶりね。ノーラ姫。あなたも大きくなったわ」
「おかげさまで。エルフの方はちっともお変わりないですね」
2人の王女はなぜか笑顔で牽制し合っている。挨拶が済むとノーラは護の腕に自分の腕を絡めた。
「マリエル陛下がお待ちよ。一緒にご挨拶にいきましょう」
ぐいぐいと護を引っ張っていこうとする。まだまだ子供だ。護はシルヴィア姫たちに頭を下げ、その場を辞した。
♥
ノーラはシルヴィアから護を引き離すことに成功した。だが亜人会議中は気が抜けない。
「こら。失礼じゃないか。向こうはエルフ族の代表だぞ。もっとラミアの王女として…」
護の説教が始まった。そんな所も祖父とそっくりだ。折よくマリエル女王がこちらを見た。
「殿?!」
「違います。護ですよ。お久しぶりです。陛下」
人前なので護は敬語で挨拶した。人魚族の女王は護に抱き着いた。
「殿とそっくり!本当は殿なんでしょ?」
「違うってば。元気だった?マリエル」
護は優しく女王の頭を撫でた。2人は共に育った 姉弟のような仲だ。だが腹が立つ。ノーラはかなり強引に女王を引き剥がした。
「はしたないですわ。陛下」
「まあノーラ。大きくなって。もう婚約者の1人でも決まったの?」
「いいえ。陛下こそ、良いお相手は見つかりまして?」
人魚とラミアは火花を散らせた。その間、護は声をかけてきたドワーフの王子と話をしていた。
「やあマモル。母が会いたがっているよ。たまにはドワーフ国にも来なよ」
「卒業したらね。そうしたら亜人の国を旅して回る予定なんだ」
「いいな!僕も行きたい」
「良いよ。2人で行こうよ」
ゲートを使えばどこへでも行ける。男子たちはもう卒業旅行の話で盛り上がっている。
「あの…お久しぶりです。マモル様」
そこへ狼耳の女が来た。獣人族の姫だ。護は外向きの笑顔で答えた。
「これは獣人族の。お元気でしたか?確か去年、ゲートの設置で伺った時以来ですね」
「覚えておいでで?嬉しい!公子の研究発表を聞きに参りましたの」
獣人の姫は頬を染めて、うっとりと護を見上げた。ノーラが青筋を立てて歩み寄ろうとすると、マリエル女王が止める。
「お止めなさい。あの顔に魅かれる女は絶えないわ。彼を独占することはできない」
アラクネ族の王女やハーピー族の王女も護に群がってきた。護はにこやかに娘たちと言葉を交わしている。祖父だったら女たちを寄せ付けないのに。ラミアの娘は唇を噛んで嫉妬を堪えた。
ゲートの運用実験も終わった。護は明日、人族の国へ帰る。前夜に送別の宴が開かれた。
「もうお帰りになってしまうなんて。残念ですわ」
「また次のお休みに遊びにいらして」
着飾ったエルフの娘たちが護に群がる。ほんの1カ月の間に、ほとんどの中立派は親人族派に転じていた。
「次は冬休みにでも来てくれ。それまでに研究を進めておくから!」
超古代文明の学者達とも親交を深められた。護は彼らが好きになっていた。集中力にムラがあるという欠点を持つが、魔法を自在に操り、心の赴くままに暮らす優美な人々だ。好きなものは好き、嫌いなものは嫌い。言葉に表裏が無いのも良い。
「僕も皆さんに会えなくなるのが寂しいです。本当に素晴らしい経験でした」
護は嘘偽りない言葉で礼を述べ、本心からの笑みを見せた。
◇
「マモル。少しいいかしら?」
宴の後、部屋に戻ろうとした護をシルヴィア姫が呼び止めた。
「はい?」
「話があるの」
姫は王城の人気のない庭園に彼を誘った。夏の花々が咲き乱れ、蛍のような光る何かが舞い飛んでいる。
「マモル。私…あなたが…」
ロマンチックな雰囲気の中、背を向けたまま姫が話し始めた。護は最後まで言わせなかった。
「嫌いですよね。僕もです。宰相殿」
とたんにシルヴィア姫が男に変じる。なかなか見事な認識阻害魔法だった。振り向いた宰相は護を睨みつけた。
「とことん嫌なガキだな。二度と顔を見せるな」
「そんなことを言うために姫に化けたの?回りくどいなぁ」
護は200歳の宰相に敬語を使うべきか迷った。あまりに子供っぽい。
「もちろん違う。今のうちに始末するためだ!」
言いざま、宰相が闇魔法を放ってきた。護は聖女仕込みの多重光結界で闇の槍を弾いた。たちまち夜の庭園での魔法戦が始まってしまう。
「落ち着けよ。人族の貴族を殺すつもり?戦争だよ?」
「殺しはしない。その忌々しい顔を多少変えてやるだけだ!」
やはり父への逆恨みのようだ。護はうんざりした。親の因果が子に報いている。
「“拘束”」
人魚族の秘伝魔法で宰相殿を締め上げる。相手は手練れのエルフ族。油断は禁物だ。護は雷魔法で意識を刈り取ろうとした。
「!」
それより早く、宰相は口中の血を地面に吐き出した。その血が立体魔法陣を描く。初めて見る魔法だった。
(もしかして超古代文明の魔法陣かな?さすが200歳。色々知ってるなー)
ここまで毛嫌いされていなければ弟子入りしたいぐらいだ。
『変化の檻…血と…魔力を代償に…我が敵を…望む姿?』
魔法陣を構成する超古代文明文字を読むと、宰相の顔色が変わった。なぜ驚くのだろう。護がこの1カ月、何をしていたのか知らないのだろうか。
「これ禁呪でしょ。僕に勝ったって、あなたも罰せられるよ?」
護は魔法陣の所々欠けた文字を補い、“反転”させた。血の檻が宰相を捕らえる。その頃には騒ぎを聞きつけた他のエルフたちとシルヴィア姫が庭園に駆けつけてきた。
「宰相!マモル!何を…」
「いや…何だろう?決闘?ケンカ?」
傍から見たら人族がエルフを虐げているように見えたか。護は心配になってきた。魔法陣を停止し、状況を説明しようとしたら、エルフ王まで来てしまった。
「双方控えよ。王城内での私闘は禁止である」
全ての魔法をキャンセルし、護は跪いた。宰相もフラつきながら立ち上がる。王は重々しく沙汰を下した。
「先に仕掛けたのは宰相だな。しかもたった14の人族相手に禁呪か。情けない。3年謹慎せよ」
宰相は無言で俯いた。3年が長いのか短いのか、護にはピンとこない。警護の兵が宰相を連行していく。エルフたちは結果を知ると、何事もなかったかのように戻って行った。
(…宰相が謹慎喰らったのに?大事じゃないのかなぁ?)
釈然としない表情の護に、王は説明した。
「エルフに身分の差は無い。宰相と言ったところで、若者の当番程度だ」
「当番…。画期的な制度ですね」
王だけが特別なのだろう。実に亜人らしい。ということは次期女王のシルヴィア姫は相当な実力者だ。護はしげしげと姫を見た。彼女は顔を赤くして訊いた。
「何?」
「いえ。ぜひ一度手合わせをお願いしたいなと」
人族で護と互角に戦えるのは父だけだ。亜人ならば強者がうようよいるかもしれない。戦いの興奮冷めやらぬ護は、うっかり淑女に模擬戦を申し込んでしまった。怒ったシルヴィア姫は風魔法を護に叩きつけると、「おやすみ!」と言って去った。
「あれは攻める強さではない。護る時に真価を発揮する。お前の名前と同じだな」
王は笑って去っていった。荒れた庭園をスキルで直し、護も部屋に引き取った。
♡
シルヴィアは護が戦う姿を初めて見た。宰相は王に次いで強いエルフだ。それを完全に圧倒していた。
(聖女に聞いたことがあるわ。人族で一番強い魔法士はモーリーだとか)
その息子があれほど強い。護の弟妹は10人以上だと言う。全てが彼ほど強かったら、人族はエルフ族を上回る強者だと言える。
長年、エルフは魔法で他の亜人達に水をあけてきた。そのバランスが崩れようとしている。人族を警戒しなければならない。今後、亜人会議に参加する氏族間にゲートは設置される。文化や学術面での交流のみならず、魔法や武力の序列の変化も起こるだろう。
次期女王であるシルヴィアは、エルフ族をより良い未来に導くために、護公子に寄せる想いを封印した。
◇
3年後。護は魔法学園の最高学年になっていた。長期の休みにはエルフ族と共同研究をしたが、大公家の仕事も忙しく、全て伝話や手紙で進めた。そしてようやく研究結果が形になったので、亜人会議の場で発表することになった。
「お久しぶりです。シルヴィア姫」
今回の亜人会議の会場は人魚族の海底宮殿だ。護は歓迎パーティーで姫に挨拶をした。
「マモル…?」
姫は目を見開いて固まっていた。
「はい。お元気でしたか?」
「お…大きくなったわね。驚いちゃったわ」
「ありがとうございます。もう17ですから」
護は笑顔で礼を言った。やっと父の身長に追いついたのだ。だが父と区別がつかないので、髪を後頭部の高い位置で結んでいる。本当は短くしたいのだが、魔法士は髪に魔力を溜めるとかで切れない。
「直で会うのは久しぶりだな!マモル!」
超古代文明の共同研究者であるエルフが、今の宰相だそうだ。姫の付き添いとして会議に来ている。護は彼と握った拳を付き合わせた。研究発表では共に登壇する予定だ。
「本当に輪番だったんだな。宰相」
「おうよ。20年交代だ」
「さすがだよ。エルフ。人族ではあり得ん」
気の置けない仲間とのくだけた会話に、姫がぽかんとしている。そこへラミアの王女、ノーラがやってきた。
「御機嫌よう。シルヴィア姫。宰相閣下」
「お久しぶりね。ノーラ姫。あなたも大きくなったわ」
「おかげさまで。エルフの方はちっともお変わりないですね」
2人の王女はなぜか笑顔で牽制し合っている。挨拶が済むとノーラは護の腕に自分の腕を絡めた。
「マリエル陛下がお待ちよ。一緒にご挨拶にいきましょう」
ぐいぐいと護を引っ張っていこうとする。まだまだ子供だ。護はシルヴィア姫たちに頭を下げ、その場を辞した。
♥
ノーラはシルヴィアから護を引き離すことに成功した。だが亜人会議中は気が抜けない。
「こら。失礼じゃないか。向こうはエルフ族の代表だぞ。もっとラミアの王女として…」
護の説教が始まった。そんな所も祖父とそっくりだ。折よくマリエル女王がこちらを見た。
「殿?!」
「違います。護ですよ。お久しぶりです。陛下」
人前なので護は敬語で挨拶した。人魚族の女王は護に抱き着いた。
「殿とそっくり!本当は殿なんでしょ?」
「違うってば。元気だった?マリエル」
護は優しく女王の頭を撫でた。2人は共に育った 姉弟のような仲だ。だが腹が立つ。ノーラはかなり強引に女王を引き剥がした。
「はしたないですわ。陛下」
「まあノーラ。大きくなって。もう婚約者の1人でも決まったの?」
「いいえ。陛下こそ、良いお相手は見つかりまして?」
人魚とラミアは火花を散らせた。その間、護は声をかけてきたドワーフの王子と話をしていた。
「やあマモル。母が会いたがっているよ。たまにはドワーフ国にも来なよ」
「卒業したらね。そうしたら亜人の国を旅して回る予定なんだ」
「いいな!僕も行きたい」
「良いよ。2人で行こうよ」
ゲートを使えばどこへでも行ける。男子たちはもう卒業旅行の話で盛り上がっている。
「あの…お久しぶりです。マモル様」
そこへ狼耳の女が来た。獣人族の姫だ。護は外向きの笑顔で答えた。
「これは獣人族の。お元気でしたか?確か去年、ゲートの設置で伺った時以来ですね」
「覚えておいでで?嬉しい!公子の研究発表を聞きに参りましたの」
獣人の姫は頬を染めて、うっとりと護を見上げた。ノーラが青筋を立てて歩み寄ろうとすると、マリエル女王が止める。
「お止めなさい。あの顔に魅かれる女は絶えないわ。彼を独占することはできない」
アラクネ族の王女やハーピー族の王女も護に群がってきた。護はにこやかに娘たちと言葉を交わしている。祖父だったら女たちを寄せ付けないのに。ラミアの娘は唇を噛んで嫉妬を堪えた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
15
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる