乱れそめにし

竹村龍女

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「委員長、おはよう」
 さっそく登校してきた生徒は、松崎恵輔の右隣の席に付きながら挨拶をする。
「おはようございます。
 おや?
 …顔色がすぐれないですが、大丈夫ですか?」
 松崎恵輔(学級委員長)は気品漂う優等生の模範的姿は本気で心配してるかのごとく、話し掛けてきたクラスメイトを気遣う。
 とたんに、松崎恵輔の右隣の少年は顔を真っ赤にそめあげる。 
 恵輔の右隣の少年の容姿は、高校生かと疑う程幼く、くりくりとした潤みを帯びた茶の瞳とくせッ毛の柔らかな焦茶の美少年なのだ。
「乙女さん?本当に、大丈夫なのですか?」
 恵輔はふんわりとしたオーラを惜し気もなく漂わせる。
 右隣の美少年、
 乙女 聖(オトメ   ヒジリ)は首をぶんぶんっと大げさに振りながら、
「大丈夫。本当…
 心配かけてごめん。
 ちょっと、昨日。
 寝付きが悪くて」
 疲れてれと、赤面したまま言い訳をはじめる乙女。
「今日の放課後に夏休み前の委員会、私一人ででましょうか?」
 恵輔は乙女を気遣い提案する。
「いや、大丈夫。
 いつも、委員長に任せてばかりだし。
 仮にも僕副委員長なんだから委員長の補佐をすべきなのに、迷惑ばっかかけてるから…」
 乙女は委員長、恵輔の申し出を断る。
 乙女は、病弱なのだがクラスメイトの投票で選ばれた。
 恵輔の場合は、担任の独断指名なのだ。
 本来の俺様な松崎恵輔の本来の性格丸出しできるなら、担任の強制指名等におとなしく従うわけない。
 とりあえず、実家の体裁上。外面だけは良い優等生を演じてる訳で、横暴な担任の委員長の指名された際ニコヤカに了承したのだ。
 
 松崎恵輔の外見は、目元を覆い尽くす前髪に眼鏡のオタク風味なのだが、

 パッと見の外見を打ち消す、

 近よりがたい、身にまとう気品。
 
 成績も、入学からずっと首席な上に全国模試も同様。
 運動能力も高く、
 まさに、文武両道のなだ。
 
 その上、学園きっての松崎家の家柄。

 なども相まって、恵輔に対し露骨に反感を表す生徒は入学してから、2年1学期の終了日(今日)まで片手数えるほどしか現れていない。

 副学級委員長、乙女の少しやつれた、蒸気を帯びた色気をはしめに、

 ※

 腐れてる。

 この学園の悪しき風習。

 恵輔自身、そのような視線を回避もかねてオタクチックに身を甘んじている。
 せいぜい、夏休み期間中は離れ離れになるからって、昨夜のうちにちちくりあってただけの話だろ。
 と、恵輔は推察していた。
 恵輔自身、帰国子女なのでゲイのなんとやらは理解しているが知識の上だけの話だ。
 12才までアメリカの大学院を卒業した。
 母国、日本の協調性を学ぶため、
 全寮制の五十嵐学園、2-A組に在籍している。


 
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