17 / 51
異世界、始めてみました。
アクロバティックソング!
しおりを挟む
グングンと、高くなる目線。
いつの間にか、雑貨屋も町も、遥か足元だ。
空の上は、風が強い。
はためくスカートの裾を押さえつつ、私はヒドく感動した。
箒に乗った時でさえ、上空の景色には感動したけど、その感動を味わう余裕などなかったので、改めて景色を堪能する。
綺麗だった。
青く澄んだ空も。
眼下に広がるカラフルな屋根も。
遥か遠くにそびえ立つ山脈も。
小さく見えるけど、驚くほど大きな木々も!
日本にいたら、決して見れない景色に、私は本当に感動した。
だから、ついついというか。
思わず、両手をガバっと広げて中腰になった。
突然の行動に、隣で座っていたトムが身体をビクリと震わせている。
けど、そんなことはお構いなし。私は、自分の感情の昂りのままに大きな声で歌っていた。
「すーてきーすぎーてー!!」
有名なシーンの歌。まさに、ヒロインとヒーローが魔法の絨毯に乗って歌うシーンだ。
あの何とも言えない空の旅が、私は大好きだった。
本当に信じられない。
まさか、あの歌のように魔法の絨毯で空を飛ぶ日が来るなんて!
「あーたらーしいーせかーいー!」
映画のシーンのように、いつの間にか絨毯が私を乗せてクルクルとアクロバティックに飛ぶ。
でも、それすらも私は楽しくて仕方ない。
風が気持ちよくて、思わず立ち上がろうとする私をトムが必死に何か叫びながら引き止めている。
風が煩くて何いってるか分からないけど、取り敢えず酷い顔だ。
あれかな、乗り物酔いかな。魔法の本の癖に。
しょうがないので歌をやめて、大人しく座ると、絨毯はさっきまでの動きが嘘のようにピタリと止まった。
「トム、大丈夫?」
トムは、肩で息をしながら苦しそうに私にしがみついている。
思わず声をかけると、トムは顔を歪ませた。
「ほ、箒より酷いじゃないですか!
何ですか、この動き!!」
どうやら、本当に酔ったらしい。
具合が悪そうに口元を押さえるトムの背中をさすってあげると、苦しそうにもう一度呻く。
これは、早く地面に下ろしてあげた方が良さそうだ。
「揺らさないように。けど、なるべく早く家まで行って」
そう言うと、絨毯は滑るように空を飛んだ。
風が心地よく、トムの頭をそのまま撫でてやると、少しだけ顔色が戻ったようでホッとした。
ある程度は進んでいたから、家に着いたのはすぐだった。
箒に乗った時よりは遅く、それでも歩くよりは早く家に着いたので、運転さえ気を付ければ便利な乗り物になるだろう。
「トム、大丈夫?」
フラフラと絨毯から降りたトムは、顔色は悪いものの、しっかりした足取りで荷物を運んでいた。
私も慌てて手伝おうと駆け寄ると、何故か足が言うことを聞かず、ガクンとチカラが抜ける。
「え?」
転ぶのを避けようと手を伸ばそうとしても、頭がクラクラしてそれすらも出来ない。
遠くで、トムが叫ぶ声が聞こえたけど、地面の上にいるのに、風の音のようなゴウゴウという轟音のせいで上手く聞き取れない。
地面に打つかる衝撃と、それを無抵抗に受け入れた身体が少しバウンドした。
頭から倒れたわけじゃないけど、強かに打った肩が痛い。
地面に寝転がり、何とか立ち上がろうとしても力が入らなかった。
急に瞼が重くなり、このまま死んでしまうかのような脱力感に恐怖する。
さっきまで、あんなに楽しかったのに。
まだこの世界に来てから、一日もたってないのに、こんな死に方はさすがに嫌だな。
グラグラした視界はどんどん狭まっていって、最後に見えたのはトムの綺麗な金髪だった。
いつの間にか、雑貨屋も町も、遥か足元だ。
空の上は、風が強い。
はためくスカートの裾を押さえつつ、私はヒドく感動した。
箒に乗った時でさえ、上空の景色には感動したけど、その感動を味わう余裕などなかったので、改めて景色を堪能する。
綺麗だった。
青く澄んだ空も。
眼下に広がるカラフルな屋根も。
遥か遠くにそびえ立つ山脈も。
小さく見えるけど、驚くほど大きな木々も!
日本にいたら、決して見れない景色に、私は本当に感動した。
だから、ついついというか。
思わず、両手をガバっと広げて中腰になった。
突然の行動に、隣で座っていたトムが身体をビクリと震わせている。
けど、そんなことはお構いなし。私は、自分の感情の昂りのままに大きな声で歌っていた。
「すーてきーすぎーてー!!」
有名なシーンの歌。まさに、ヒロインとヒーローが魔法の絨毯に乗って歌うシーンだ。
あの何とも言えない空の旅が、私は大好きだった。
本当に信じられない。
まさか、あの歌のように魔法の絨毯で空を飛ぶ日が来るなんて!
「あーたらーしいーせかーいー!」
映画のシーンのように、いつの間にか絨毯が私を乗せてクルクルとアクロバティックに飛ぶ。
でも、それすらも私は楽しくて仕方ない。
風が気持ちよくて、思わず立ち上がろうとする私をトムが必死に何か叫びながら引き止めている。
風が煩くて何いってるか分からないけど、取り敢えず酷い顔だ。
あれかな、乗り物酔いかな。魔法の本の癖に。
しょうがないので歌をやめて、大人しく座ると、絨毯はさっきまでの動きが嘘のようにピタリと止まった。
「トム、大丈夫?」
トムは、肩で息をしながら苦しそうに私にしがみついている。
思わず声をかけると、トムは顔を歪ませた。
「ほ、箒より酷いじゃないですか!
何ですか、この動き!!」
どうやら、本当に酔ったらしい。
具合が悪そうに口元を押さえるトムの背中をさすってあげると、苦しそうにもう一度呻く。
これは、早く地面に下ろしてあげた方が良さそうだ。
「揺らさないように。けど、なるべく早く家まで行って」
そう言うと、絨毯は滑るように空を飛んだ。
風が心地よく、トムの頭をそのまま撫でてやると、少しだけ顔色が戻ったようでホッとした。
ある程度は進んでいたから、家に着いたのはすぐだった。
箒に乗った時よりは遅く、それでも歩くよりは早く家に着いたので、運転さえ気を付ければ便利な乗り物になるだろう。
「トム、大丈夫?」
フラフラと絨毯から降りたトムは、顔色は悪いものの、しっかりした足取りで荷物を運んでいた。
私も慌てて手伝おうと駆け寄ると、何故か足が言うことを聞かず、ガクンとチカラが抜ける。
「え?」
転ぶのを避けようと手を伸ばそうとしても、頭がクラクラしてそれすらも出来ない。
遠くで、トムが叫ぶ声が聞こえたけど、地面の上にいるのに、風の音のようなゴウゴウという轟音のせいで上手く聞き取れない。
地面に打つかる衝撃と、それを無抵抗に受け入れた身体が少しバウンドした。
頭から倒れたわけじゃないけど、強かに打った肩が痛い。
地面に寝転がり、何とか立ち上がろうとしても力が入らなかった。
急に瞼が重くなり、このまま死んでしまうかのような脱力感に恐怖する。
さっきまで、あんなに楽しかったのに。
まだこの世界に来てから、一日もたってないのに、こんな死に方はさすがに嫌だな。
グラグラした視界はどんどん狭まっていって、最後に見えたのはトムの綺麗な金髪だった。
0
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
竜の契約者
ホワイトエンド
ファンタジー
一人の青年は魂の半分を失った------
1体の竜は肉体を失った--------
二つの魂は混ざり合い生まれ変わった-----
あの日、全てを失った彼はその身に宿した力を振るう
悪を裁くために
正義をまっとうするために
例え、歪んでいようとも
冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる