15 / 24
第2章 今の情勢とこれからの立場
14.本当の〈月と太陽〉伝説
しおりを挟む
城から国王であるソレイユが居なくなって1晩が経った朝。
王の執務室の机上から見つかった3つの爆弾と言っても差し支えなほどの置き土産が見つかった。
2つ折りにされた1枚の紙に、ある法案に関する書類1式、そして1冊の古そうな本だ。それらを順に目を通したエルデイン王国の重鎮達は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。
それらがどんな物だったのかと言うと、まず1つ目がエルデイン王国の王政を廃止する旨の書かれた王の署名と認印が既にされている書類1式。2つ目が『私は太陽にあらず。王家とは代替わりと共に満ち欠けを繰り返す月なり。エルデインの太陽は前は国と共にあったが今はすでに無い。』という文の書かれた紙切れ。
そして最後3つ目が、これまで王にのみ伝わっていたのだろう古代の予言書〈月と太陽〉の原本である。
今まで月と太陽の予言の詳細は王家しか知らないとされていたが、大まかな内容はこの国の人なら誰もが知っているほど有名な話だった。
未来を明るく照らし導く、太陽。
そんな太陽と共に国を静かに見守る、月。
大きな変革が起こる時、太陽の子が現れる。太陽は月と共にある事で真の力を発揮し、そうする事で世の安寧とさらなる躍進が約束される。そのため決して失ってはならない。と、そう言われている。
それがこの大陸のはるか昔からある誰でも知る伝説だった。
太陽が王でそれに寄り添い支える月が王妃。
エルデイン王国では平民向けの絵本や劇にすらなっている有名な話だが、王の置き土産を見るにその伝説の解釈は根底から間違っていたと言う事になる。
【エルデイン王国首都トリスティナ・中央区1番地1-4(シエルリュミエール城 国王執務室横大会議室)】
その場にいる全員に聞かせるために本の冒頭を朗読する者の声は読み進める内にどんどん震えていく。
『はるか昔、神々が今いる天界に移り住むと決めた時、我々人間はこの地の管理のために生み出された。その後──(中略)──
…こうして、神の世界からの使いである太陽の"みこ"と神から力を授かった月の王は世界の危機を乗り越えた。
その時に神は言った。世界にとって大きな変革が起こる時にまた太陽の"みこ"が生まれる。絶対に守りなさい、と。
それから長い長い時が過ぎ、その時の出来事が忘れさられていった頃。ある何代目かの太陽の"みこ"がよからぬ事を企む人の手で殺された。
それから世界は数百年間荒れ続けた。
神々は怒り姿を消し、生き物は変容し人を襲うようになった。それだけでもとんでもない事だったがそれだけでは無い。
ありとあらゆる天変地異が大陸全体を頻繁に襲うようにもなったのだ。
そして、その時に人は1度滅びかけた。
──(中略)──
太陽の"みこ"は全てを見通す神の目を持ち、神々から愛された者なり。
月とは現在までに刻まれたものを読み解く目をもち、太陽と共にある者なり。
月と太陽は2つで1つ。次にどちらかがかけた時、世界は今度こそ滅びるだろう。』
エルデイン王国の重鎮達は今まで王が秘匿してきただろう予言書とも言えるその本の冒頭を少し読んで、王の置き手紙の内容を思い出して青ざめる。
『この本がこれから先の未来で生まれる、新たな 太陽の神子 のためにならんことを願っている。』
『この本が、子孫達未来の月の王の助けとなりますように。』
本の最初のページをめくったすぐのところにそれぞれ違う筆跡で書かれたその2つの文は、どちらが月でどちらが太陽なのかで揺れるこの場の誰もが誤解や考える余地も無く理解できるように明確に示されていた。
太陽とは王のことではなかったのだ。神から愛された者、"みこ"と呼ばれる者が本当の太陽だったのだ。
この大陸で言う"みこ"とは巫女と言ったり神子と言ったり様々だが、総じて未来を視ることの出来る力を持つ者の事を指す。
そしてこの国にも、国王の手紙通り以前は未来を視る事ができる巫女がいるという噂が存在していた。
噂が真実だったなら巫女が数百年ぶりに現れた事になると当時それなりに騒ぎになったからそこそこ有名な話だ。
その巫女の名前はクリスティーナ・フィア・マクファディン。3年前に前国王らにそそのかされて自分達の手で殺した公爵家のご令嬢だった。
^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-
お読みくださりありがとうございます。
次回も明日のお昼ぐらいに更新できるように頑張ります。また読みに来てくれると嬉しいです。
王の執務室の机上から見つかった3つの爆弾と言っても差し支えなほどの置き土産が見つかった。
2つ折りにされた1枚の紙に、ある法案に関する書類1式、そして1冊の古そうな本だ。それらを順に目を通したエルデイン王国の重鎮達は蜂の巣をつついたような大騒ぎになっていた。
それらがどんな物だったのかと言うと、まず1つ目がエルデイン王国の王政を廃止する旨の書かれた王の署名と認印が既にされている書類1式。2つ目が『私は太陽にあらず。王家とは代替わりと共に満ち欠けを繰り返す月なり。エルデインの太陽は前は国と共にあったが今はすでに無い。』という文の書かれた紙切れ。
そして最後3つ目が、これまで王にのみ伝わっていたのだろう古代の予言書〈月と太陽〉の原本である。
今まで月と太陽の予言の詳細は王家しか知らないとされていたが、大まかな内容はこの国の人なら誰もが知っているほど有名な話だった。
未来を明るく照らし導く、太陽。
そんな太陽と共に国を静かに見守る、月。
大きな変革が起こる時、太陽の子が現れる。太陽は月と共にある事で真の力を発揮し、そうする事で世の安寧とさらなる躍進が約束される。そのため決して失ってはならない。と、そう言われている。
それがこの大陸のはるか昔からある誰でも知る伝説だった。
太陽が王でそれに寄り添い支える月が王妃。
エルデイン王国では平民向けの絵本や劇にすらなっている有名な話だが、王の置き土産を見るにその伝説の解釈は根底から間違っていたと言う事になる。
【エルデイン王国首都トリスティナ・中央区1番地1-4(シエルリュミエール城 国王執務室横大会議室)】
その場にいる全員に聞かせるために本の冒頭を朗読する者の声は読み進める内にどんどん震えていく。
『はるか昔、神々が今いる天界に移り住むと決めた時、我々人間はこの地の管理のために生み出された。その後──(中略)──
…こうして、神の世界からの使いである太陽の"みこ"と神から力を授かった月の王は世界の危機を乗り越えた。
その時に神は言った。世界にとって大きな変革が起こる時にまた太陽の"みこ"が生まれる。絶対に守りなさい、と。
それから長い長い時が過ぎ、その時の出来事が忘れさられていった頃。ある何代目かの太陽の"みこ"がよからぬ事を企む人の手で殺された。
それから世界は数百年間荒れ続けた。
神々は怒り姿を消し、生き物は変容し人を襲うようになった。それだけでもとんでもない事だったがそれだけでは無い。
ありとあらゆる天変地異が大陸全体を頻繁に襲うようにもなったのだ。
そして、その時に人は1度滅びかけた。
──(中略)──
太陽の"みこ"は全てを見通す神の目を持ち、神々から愛された者なり。
月とは現在までに刻まれたものを読み解く目をもち、太陽と共にある者なり。
月と太陽は2つで1つ。次にどちらかがかけた時、世界は今度こそ滅びるだろう。』
エルデイン王国の重鎮達は今まで王が秘匿してきただろう予言書とも言えるその本の冒頭を少し読んで、王の置き手紙の内容を思い出して青ざめる。
『この本がこれから先の未来で生まれる、新たな 太陽の神子 のためにならんことを願っている。』
『この本が、子孫達未来の月の王の助けとなりますように。』
本の最初のページをめくったすぐのところにそれぞれ違う筆跡で書かれたその2つの文は、どちらが月でどちらが太陽なのかで揺れるこの場の誰もが誤解や考える余地も無く理解できるように明確に示されていた。
太陽とは王のことではなかったのだ。神から愛された者、"みこ"と呼ばれる者が本当の太陽だったのだ。
この大陸で言う"みこ"とは巫女と言ったり神子と言ったり様々だが、総じて未来を視ることの出来る力を持つ者の事を指す。
そしてこの国にも、国王の手紙通り以前は未来を視る事ができる巫女がいるという噂が存在していた。
噂が真実だったなら巫女が数百年ぶりに現れた事になると当時それなりに騒ぎになったからそこそこ有名な話だ。
その巫女の名前はクリスティーナ・フィア・マクファディン。3年前に前国王らにそそのかされて自分達の手で殺した公爵家のご令嬢だった。
^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-^-
お読みくださりありがとうございます。
次回も明日のお昼ぐらいに更新できるように頑張ります。また読みに来てくれると嬉しいです。
0
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。
あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。
「君の為の時間は取れない」と。
それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。
そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。
旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。
あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。
そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。
※35〜37話くらいで終わります。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。
Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。
彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。
そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。
この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。
その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。


【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる