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第1章 (強制連行という名の)帰還

6. 元婚約者との再会

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読みに来て下さりありがとうございます。

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「これでわたくしに許可なく触れようとする者は黒焦げになる様になりましたのでもう遅れはとりませんわ。要件はなんですの?死にたくなければ早く話してくださいな?誘拐犯とそのお仲間の皆様方。」

冷ややかな眼差しと共に放たれたのは拒絶の言葉だった。

クリスティーナの言葉に皆が凍りついた中で真っ先にそれから復活したのはクリスティーナの元婚約者で現国王のソレイユだった。

「ティーナは私の、いや、僕の事は覚えてる?」

クリスティーナが居なくなってから王としての姿しか見てなかった側近達は王の懐かしい"僕"という一人称を聞いて、ようやく我に返り2人のやり取りを固唾を呑んで見守った。

「ティーナ?それは何かしら?…え、あぁ、そうなの私の名前なのね。あ…ありがとう、後で数日分まとめてお礼をあげないといけないわね。」

最初、不思議そうにしていたクリスティーナだが突然何も無い虚空こくうを見て何かと話し1人で納得して言った。そして、何かを撫でる仕草をしてその何かに感謝を伝えている。
その様子を見て精霊が見えない者も会話相手が精霊だとわかった。だがその事を口に出してクリスティーナに聞けるものはいなかった。
そして、クリスティーナ以外に唯一この一連の会話を正しく認識出来ていた者が1人。
彼は可愛らしい精霊の言動におかしくて少し笑ってしまうと同時に認識出来て理解出来たからこそクリスティーナのこれからの行動がある程度予測できてしまい悲しみや後悔がおしよせてまた少し泣きたくなった。

「回りくどいのは嫌いだからはっきり言うけど全く覚えてないわ。人違いじゃないかしら。」

以前のクリスティーナはおおっぴらに笑うことこそなかったがいつもニコニコと笑い、微笑みの崩れる事が無かったので、見た事ない彼女の無表情にまた部屋の温度が下がったように皆が感じ再び固まった。
ただ1人クリスティーナの無表情を以前から見慣れていた者を除いて。

「人違いは有り得ない。君は間違いなく僕のティーナで、僕の婚約者で、僕の全てだ。」

クリスティーナの言葉を聞き、間髪入れずに言葉を返す。

こちらをじっとみて目をそらさないソレイユをじっと見つめ返す。
しばらく見たあと、変わらず無表情のままではあるが少し表情を和らげた。

「綺麗な瞳ね、貴方は大丈夫そう。貴方名前はなんと言うの?(訳:久しぶり、あなたは相変わらずね。けどもう婚約者ではないの。)」

「ソレイユ・ヴァン・グローリア。(訳:そう言うと思ってた。僕はあの時、間に合わなかった。)」

ソレイユは悲しそうに微笑んで言った。

「ソレイユ…太陽ね。貴方にピッタリの素敵な名前ね。(訳:あなたのせいでは無いわ。)」

そう言うと、クリスティーナは目覚めてから初めてちゃんと笑った。
その笑みはとても静かな微笑みだったがソレイユはそれだけの事がすごく嬉しかった。

「ティーナは前に同じ事を僕に言ってくれたよね。ソレイユが太陽って意味だって僕に教えてくれた。覚えて…ない、よね。その様子だと。(訳:だったらもう一度婚約したい。だめかな?)」

以前と同じ様に、昔を懐かしむ様に、お互いだけに本当の気持ちが伝わるように話すクリスティーナとソレイユ。クリスティーナの静かな微笑みにソレイユは久しぶりに心から笑っていた。
それを見たクリスティーナが突然ソレイユに手をかざす。
警戒した護衛がやめさせようとしたがそれはソレイユ本人によってとめられた。

「ごめんなさい。少し間だけ動かないで待っていてくれるかしら。」

「いいけど…動いたらどうなるの?」

唐突に動くなと言われ周囲はザワついたがティーナのお願いを断る選択肢はソレイユには初めからなかった。

「どうにもならないわ。でも、貴方は後悔することになるわ。」

「そっか、じゃあじっとしてる。」

ニコニコと嬉しそうに笑うソレイユをハラハラとした様子で見つめる周囲の者達。
彼らの中にはクリスティーナへの罪悪感から、クリスティーナが自分達を恨んでいてソレイユに害を及ぼそうとしているのではないかと思っている者もいた。
クリスティーナはそんな居心地の悪い視線に気づきつつも、ちらりと見ただけですぐにソレイユに向き直った。

「すぐに終わるわ。"天にまします我らの母よ、かの者ソレイユ・ヴァン・グローリアに我の加護を与える許k――"」

クリスティーナが全てを言い終わる前に、ソレイユにだけ光が降り注ぎその後クリスティーナから出た光がソレイユの中に入っていった。

「……ティーナ、今のは?」

クリスティーナは僅かに顔を引き攣らせて、食い気味に許可された事を頭の隅に追いやり考えないようにしながらソレイユに説明した。

「加護よ。これであなただけは私の魔法で傷つかないわ。貴方は大丈夫そうだから。」

「加護……これで君に触れられる?」

「触れる?なんの事かしら?」

なんの事か分からないと言った様子のクリスティーナを見て同じ部屋に居たルヴァイン達は人によって差はあれど戸惑いを隠せなかった。
そんな中ソレイユは想定内の回答だったのか驚くことも悲しむ事もなく質問に答えて言った。

「僕、そこの騎士団長から誰も君に触れないし近づくことも出来なかったって報告を聞いたんだけど覚えてない?」

ソレイユは、ルヴァインをちらりと見て言った後、クリスティーナに森での出来事から城で目覚めるまでの経緯を掻い摘んで話した。

「触れない?そうなの。それは便利ね。けれど初めて知ったわ。今まで人に触れられるような事はなかったから。」

無表情で言っている為クリスティーナを1番知るソレイユ以外には伝わっていないがクリスティーナは本気で驚いていた。

「そう…ティーナは、天族?いや、それとも加護が使えるって事は天使か女神?」

この世界には天使、天族、女神、どれも存在する。
しかし天使に関してはここ数百年出現した話を聞かないし、天族は上空に浮かぶ浮島に独自の国家を築いていて、なかなか降りてくることは無いので、情報はどちらも皆無に等しかった。女神は天界に住まいこちら側には滅多に干渉してこないので女神に関してが1番情報は少ないが信仰の対象で人々に身近な存在ではあった。

「なんで突然そんな事を聞いてきたのか分からないけれど、それは私にもよく分からないわ。気がついたらあの森にいて、天族はおろか人にすらまともに会ったこと無いもの。」

それを聞いたソレイユが悲しそうに「そっか」呟いた。
それを聞いた周囲に重い空気が流れ始めた頃、クリスティーナがなんでもなさそうな顔をして言った。

「うーん…でも、さわれないとかは有り得ないわ。私が人に触れないなら魔物退治も出来なければ、今こうやってベットに寝てる事も体がベットをすり抜けてしまって出来ないはずでしょう?実体が無いって事だから。…あるとするなら魔法だけど…知ってると思うけど、魔法は便利だけど万能ではないわ。いくら私でも人だけを透過するなんてことは出来ないわ。…たぶん。実体をなくして人に触れられないようにするだけならすぐ出来ないことも無いけれど、それをすると重力もかからなる上に地に立つ事も出来ず、さらに実体がないから呼吸も出来ず、光もすり抜けるから目も見えない。
何も見えない真っ暗闇で何の音も聞けずに、ただそこら辺をふよふよ漂う事になるわ。なに…その顔…あぁ、納得していないのね。……そうねぇ、その辺の物理法則やらを全部無視した、そんな馬鹿げたことができるとするなら唯一神様くらいね。けれど…。」

「けど…?」

「貴方は加護なんてなくてもなんか大丈夫な気がするわ。根拠なんてないから理由を聞かれると困ってしまうけれど。」

クリスティーナはさらりとそう言ってソレイユに向かって手を差し出した。

「いいの?」

「ええ。触れる保証はないけれど、貴方は加護があるからわたくしのライトニングオーラも効かないし、もしだめでも話の通りならすり抜けるだけでしょうし…別にいいわ。」

クリスティーナの言葉を聞いてソレイユは恐る恐る手を近づけてクリスティーナの手を



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次話はソレイユ視点で少し時間を遡ってクリスティーナが城に連れてこられてすぐの回想から始まります。

次話は修正が終わり次第投稿致します。

↓以下余談です。
クリスティーナとソレイユの会話の始めの方の(訳)がついていたところはそういう話を精霊を通じて2人だけで実際にしていたとかそういうのは全く無く、幼い頃にした約束を知っている2人だけには相手の言いたいことの本当の意味がわかるというだけです。
今回の(訳)は、クリスティーナ側の(訳)なのでソレイユが全く同じ内容だと思ったとは限らないです。
その辺も近いうちに幼い頃の回想含め出てくるかと思いますが念の為に。
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