4 / 24
第1章 (強制連行という名の)帰還
4. 懐かしい記憶と逃走 (途中までクリスティーナ視点)
しおりを挟む*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
【精霊の森北西部奥地】
クリスティーナがいつもの様に魔物を駆除していたら、最近色々な所からよく来るどこかの国の騎士達が加勢してくれた。
魔法から逃げやり損ねたやつと背後から隙をつこうとしたやつを片付けてくれたお陰でいつもより少し早く駆除が終わった。
お礼も兼ねて…というか周囲を綺麗にするついでに魔法の効果範囲内に居る騎士達も綺麗にする。
そこでようやく顔も見ずに失礼だったと思い至り、振り向いて騎士たちに向き直るとー。
ぁ……ルヴァイン様…。
黒い髪に紺の瞳、クールで冷静沈着、常に無表情。だが両思いになった後の優しく微笑む表情が人気のキャラだった。
そして、クリスティーナの数少ない友人…いや元友人の1人。
ルヴァイン・クレスウェル。
突然の事に頭が真っ白になったクリスティーナは小さな頃からずっとルヴァインに身体的な能力では勝てたことが無かったことを忘れて逃げ出した。
後から思えば逃げ出さずにシラを切れば良かったと思う。
そのせいで後々面倒な事になったのだから。
「ま、待ってくれ!!お願いだから話だけでも聞いてくれっ!」
ルヴァイン様の声が聞こえる。
クールなこの人のこんなに焦った声初めて聞いたわ。
でも、だからと言って止まるわけにはいかない。
足音からどんどん距離が縮まっているのがわかるから。
とか考えてたらもう囲まれた…流石ね。他の国の兵士達とは大違い。はぁ…この邪魔な羽で空でも飛べればいくら相手があのルヴァイン様でも逃げられるかもしれないのに…。
何も知らない人が見れば取り囲んで包囲するのはやりすぎだと思うでしょうけれど、ルヴァイン様は私以外にはここまでやらない事を知っている。
きっと今回もあの頃みたいに私の手をとって言うのでしょう『クリスティーナ様帰りましょう』と。
あの頃は、逃げ出す私をルヴァイン様とあの御方とで捕まえるのが日課みたいになってたもの。
きっと今回も取り囲んでから手を掴んで絶対に逃げられないようにする。
そこまでしないと逃げられた前科があるから。
ルヴァイン様が私に向かって1歩ずつ近づく。
すかさずルヴァイン様が抜けた穴を左右にいる騎士達が詰めて塞ぐ。
徹底してるわね…まぁ、ここまで来たら一旦諦めて城まで連行されようかしら。城なら裏道や隠し通路までなんでもわかるしいつでも逃げられるわ。
クリスティーナは自分の手に手を伸ばすルヴァインをぼんやりと見た。
だが、私の手はルヴァインの手をすり抜けて空を切った。
予想外の出来事にびっくりした私はここでようやくルヴァイン様の顔をちゃんと見た。
色々な感情がごちゃ混ぜになり眉間にシワの出来た表情見た私は自分が死んだ経緯を思い出した。
思い出してしまった。
私…。
私、あの時…。
毒…。
そう、毒だとわかってアレを飲んだんだっ、痛っ――
思い出した所で強烈な頭痛と眠気に襲われる。
しばらく我慢したクリスティーナだったがあまりの痛みと眠気に耐えきれず、膝を折り前に倒れ込むように体が傾く。
そしてそのまま意識はぷっつりと切れて、そのまま倒れた。
ルヴァインはそれを見て反射的に慌てて抱き止めようと手を伸ばす。
だがやはりと言うべきか先程と同じくクリスティーナの体はルヴァインをすり抜ける。
クリスティーナの体が地面に打ち付けられる寸前で今までクリスティーナの周りで遊んでいた精霊達が魔法でクリスティーナを守ってふんわりと地面に下ろした。
「倒れた~」
「また倒れた~」
「運ぶ~」
「お家~」
精霊達が個人に無償で魔法を使っている光景に驚き、ぽかんと見ていたルヴァイン達だったが、精霊達がクリスティーナを再び浮かせてどこかへ運ぼうとしているのを見て慌てて精霊達に声をかける。
「せ、精霊様、待ってください。我々が拠点にしている街があります。そこには医者もいるのでクリスティーナ様をそこにお連れしたいのです!元々、天使様か女神様が居ればお連れ出来るようにこの近くに馬車も用意してあります。」
ルヴァインのその言葉を聞いた精霊達は動きを止めて話し出す。
「街だって~」
「街~?」
「ティナが前に嫌って言ってたよ~」
「じゃあやめとく~?」
「え~ここからだと家遠いよ~?」
「本当だ~馬車の方が近い~」
「決定~?」
「決まり~」
「街にする~」
「馬車~」
「医者~」
「ティナ良くなる~」
「街に行く~」
精霊達は方向を変えてクリスティーナを馬車のある方へ運び出した。
そして彼女を馬車まで運んでもらったルヴァインはそのまま精霊達から止められないのをいい事に城まで数日かけてクリスティーナを運んでしまった。
クリスティーナが目を覚ましたのは城についてからさらに1週間後の事だった。
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-
ここまでお読み下さりありがとうございます。
0
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。
なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。
追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。
優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。
誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、
リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。
全てを知り、死を考えた彼女であったが、
とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。
後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

五歳の時から、側にいた
田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。
それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。
グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。
前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです

離れ離れの婚約者は、もう彼の元には戻らない
月山 歩
恋愛
婚約中のセシーリアは隣国より侵略され、婚約者と共に逃げるが、婚約者を逃すため、深い森の中で、離れ離れになる。一人になってしまったセシーリアは命の危機に直面して、自分の力で生きたいと強く思う。それを助けるのは、彼女を諦めきれない幼馴染の若き王で。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる