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第1章 (強制連行という名の)帰還

4. 懐かしい記憶と逃走 (途中までクリスティーナ視点)

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【精霊の森北西部奥地】

クリスティーナがいつもの様に魔物を駆除していたら、最近色々な所からよく来るどこかの国の騎士達が加勢してくれた。
魔法から逃げやり損ねたやつと背後から隙をつこうとしたやつを片付けてくれたお陰でいつもより少し早く駆除が終わった。
お礼も兼ねて…というか周囲を綺麗にするついでに魔法の効果範囲内に居る騎士達も綺麗にする。

そこでようやく顔も見ずに失礼だったと思い至り、振り向いて騎士たちに向き直るとー。

ぁ……ルヴァイン様…。

黒い髪に紺の瞳、クールで冷静沈着、常に無表情。だが両思いになった後の優しく微笑む表情が人気のキャラだった。
そして、クリスティーナの数少ない友人…いや友人の1人。
ルヴァイン・クレスウェル。

突然の事に頭が真っ白になったクリスティーナは小さな頃からずっとルヴァインに身体的な能力では勝てたことが無かったことを忘れて逃げ出した。

後から思えば逃げ出さずにシラを切れば良かったと思う。
そのせいで後々面倒な事になったのだから。


「ま、待ってくれ!!お願いだから話だけでも聞いてくれっ!」

ルヴァイン様の声が聞こえる。
クールなこの人のこんなに焦った声初めて聞いたわ。
でも、だからと言って止まるわけにはいかない。
足音からどんどん距離が縮まっているのがわかるから。

とか考えてたらもう囲まれた…流石ね。他の国の兵士達とは大違い。はぁ…この邪魔な羽で空でも飛べればいくら相手があのルヴァイン様でも逃げられるかもしれないのに…。

何も知らない人が見れば取り囲んで包囲するのはやりすぎだと思うでしょうけれど、ルヴァイン様はわたくし以外にはここまでやらない事を知っている。

きっと今回もあの頃みたいに私の手をとって言うのでしょう『クリスティーナ様帰りましょう』と。
あの頃は、逃げ出す私をルヴァイン様とあの御方とで捕まえるのが日課みたいになってたもの。

きっと今回も取り囲んでから手を掴んで絶対に逃げられないようにする。
そこまでしないと逃げられた前科があるから。

ルヴァイン様が私に向かって1歩ずつ近づく。
すかさずルヴァイン様が抜けた穴を左右にいる騎士達が詰めて塞ぐ。

徹底してるわね…まぁ、ここまで来たら一旦諦めて城まで連行されようかしら。城なら裏道や隠し通路までなんでもわかるしいつでも逃げられるわ。


クリスティーナは自分の手に手を伸ばすルヴァインをぼんやりと見た。

だが、私の手はルヴァインの手をすり抜けて空を切った。

予想外の出来事にびっくりしたわたくしはここでようやくルヴァイン様の顔をちゃんと見た。

色々な感情がごちゃ混ぜになり眉間みけんにシワの出来た表情見た私は自分が死んだ経緯を思い出した。

思い出してしまった。

私…。

私、あの時…。

毒…。

そう、毒だとわかってアレを飲んだんだっ、痛っ――


思い出した所で強烈な頭痛と眠気に襲われる。
しばらく我慢したクリスティーナだったがあまりの痛みと眠気に耐えきれず、膝を折り前に倒れ込むように体が傾く。
そしてそのまま意識はぷっつりと切れて、そのまま倒れた。

ルヴァインはそれを見て反射的に慌てて抱き止めようと手を伸ばす。
だがやはりと言うべきか先程と同じくクリスティーナの体はルヴァインをすり抜ける。

クリスティーナの体が地面に打ち付けられる寸前で今までクリスティーナの周りで遊んでいた精霊達が魔法でクリスティーナを守ってふんわりと地面に下ろした。

「倒れた~」

「また倒れた~」

「運ぶ~」

「お家~」

精霊達が個人に無償で魔法を使っている光景に驚き、ぽかんと見ていたルヴァイン達だったが、精霊達がクリスティーナを再び浮かせてどこかへ運ぼうとしているのを見て慌てて精霊達に声をかける。

「せ、精霊様、待ってください。我々が拠点にしている街があります。そこには医者もいるのでクリスティーナ様をそこにお連れしたいのです!元々、天使様か女神様が居ればお連れ出来るようにこの近くに馬車も用意してあります。」

ルヴァインのその言葉を聞いた精霊達は動きを止めて話し出す。

「街だって~」

「街~?」

「ティナが前に嫌って言ってたよ~」

「じゃあやめとく~?」

「え~ここからだと家遠いよ~?」

「本当だ~馬車の方が近い~」

「決定~?」

「決まり~」

「街にする~」

「馬車~」

「医者~」

「ティナ良くなる~」

「街に行く~」


精霊達は方向を変えてクリスティーナを馬車のある方へ運び出した。

そして彼女を馬車まで運んでもらったルヴァインはそのまま精霊達から止められないのをいい事に城まで数日かけてクリスティーナを運んでしまった。

クリスティーナが目を覚ましたのは城についてからさらに1週間後の事だった。



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ここまでお読み下さりありがとうございます。
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