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【番外編】全てを失った愛人の奮闘 ~悪事は全部かえって来て、愛しの侯爵に捨てられる~ 5-4
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ケビン様から貰った宝石。これまでずっと大切にしていたのを、生きて行くために売るって決めたのに…………。どうして、こうなってるの?
「ねぇ、お願い。お願いします。この宝石を買ってください。もう、このお店が最後なの。ここで断られたら、あたし、生きてけない」
「そんな、必死にすがられても、買えないものは買えないから。こんなにいっぱい持ってきたけど、これ全部ただのガラスだし。あー違った、こっちは貝殻だ。気の毒だけど、最近巷で横行してる詐欺商人に引っかかたんだろうさ。それにしても、こんなに沢山買わされてるのは、珍しいけどね。――って、お姉さん! そんな所に座り込んでも無駄だから。ねえ商売の邪魔だから、もう出てってくれる。あまりしつこいと役人を呼ぶよ」
「ああああ、失礼しました~」
「ほらっ、これも持って帰ってくれ」
――ポンっ。
店主から袋に入れた宝石を、そのまま突き返されちゃったんだけど。もう、何がどうなってんのよぉ~。
って、これ本当に宝石じゃないの⁉ 信じられない。あんな大きなお邸に出入りしている商人が「詐欺商人」って、そんなことある訳ないじゃない!
あいつら、あたしに宝石を勧めて、いっつも「大変お似合いですよ」って褒めちぎってくれてたじゃない。
それって、いつもいつも、ガラス玉が似合ってるって、あたしのことを馬鹿にしてたってこと! キィィ――許せない!
あっ……、この真っ赤なルビー。ケビン様があたしによく似合うって、微笑んでくれたんだ。だから、1番のお気に入りだったの。
一度売ろうとしてたけど、やっぱり、ケビン様は知らなかったのかな。知ってたら、教えてくれたはずだもん。
ちょっと、感傷に浸ってる場合じゃないわ。
どっどうしよう。宝石を売ればなんとかなると思って、家具を売ったお金はあっという間に使い切っちゃってるのに。
ジョンの家だって追い出されそうになってて、お金もないなんて。
それも、これも、あの料理長が身勝手に、あたしの事を好きになったせい。それで、ケビン様のことを勝手に勘違いして、あんな酷いことをして。
あたしとケビン様に酷いことをした、あの料理長の言ってた事なんて、絶対に信じる訳ないんだから。
ケビン様は、あたしにベタぼれだったんだから。
あっ、そうだ。あたしにはまだ、可愛い見た目に愛嬌があったじゃない。これで何とかなるわ。
「ふふふっ、自立した女なんて、あたしには似合わないんだ。可愛いあたしは、男の人に甘えながら、もう1回いい暮らしをする手があったのよ」
大丈夫、大丈夫。昔から、誘うのは上手なんだから、うふふっ。
ジョンが経営している酒場。
そりゃーしゃれた酒なんて置いてないわよ。でも、安くて沢山飲めるから、いつだって若い男たちで溢れてるんだもん。ふんっ、男なんて、より取り見取り。
まあ、あのアベリアって女じゃ、1人の男も捕まえられないでしょうけどね。
「お兄さん、かっこいいね。もう少しで仕事終わるから、この後、一緒に遊びに行かない?」
「あー、姉さん何言ってんだ。あんた少しは自分の体の事でも考えな。身重なんだから、子どもに障らないように、早く帰った帰った、しっ、しっ」
はぁっ、なんで、あたしが手で払われてるの。あんたらなんて、こっちから願い下げよ。
も~う、どいつもこいつも、何なのよ。
あたしがしばらく店に居ない間に、客の質が下がったんじゃない。
まあ、確かに、この子を産むまでは、無理するのはやめとくか。
癪に障るけど、次の男が見つかるまでは、ジョンに何とか頼み込むしかないか。
「このまま置いてくれ」って頼んだら、あのガラの悪い兄貴の思う壺だろうけど、少しの辛抱よ。
「オギャァ、オギャァーー」
「チィッ。おい、エリカ! その泣いてるガキ、静かにさせろ!」
「分かったわよ。ねぇケビン、お願い泣かないで…………」
「それにしても、そのガキ、ぶっさいくな顔してんのな。エリカの言ってたカッコいい侯爵様ってよ、大したことないな。お前、金に目がくらんで、良い男に見えてただけってやつか、ぷっっ」
「違うもん…………」
この子だって、少し大きくなったら、ケビン様のようにカッコよくなるんだから。
「ねぇ、お願い。お願いします。この宝石を買ってください。もう、このお店が最後なの。ここで断られたら、あたし、生きてけない」
「そんな、必死にすがられても、買えないものは買えないから。こんなにいっぱい持ってきたけど、これ全部ただのガラスだし。あー違った、こっちは貝殻だ。気の毒だけど、最近巷で横行してる詐欺商人に引っかかたんだろうさ。それにしても、こんなに沢山買わされてるのは、珍しいけどね。――って、お姉さん! そんな所に座り込んでも無駄だから。ねえ商売の邪魔だから、もう出てってくれる。あまりしつこいと役人を呼ぶよ」
「ああああ、失礼しました~」
「ほらっ、これも持って帰ってくれ」
――ポンっ。
店主から袋に入れた宝石を、そのまま突き返されちゃったんだけど。もう、何がどうなってんのよぉ~。
って、これ本当に宝石じゃないの⁉ 信じられない。あんな大きなお邸に出入りしている商人が「詐欺商人」って、そんなことある訳ないじゃない!
あいつら、あたしに宝石を勧めて、いっつも「大変お似合いですよ」って褒めちぎってくれてたじゃない。
それって、いつもいつも、ガラス玉が似合ってるって、あたしのことを馬鹿にしてたってこと! キィィ――許せない!
あっ……、この真っ赤なルビー。ケビン様があたしによく似合うって、微笑んでくれたんだ。だから、1番のお気に入りだったの。
一度売ろうとしてたけど、やっぱり、ケビン様は知らなかったのかな。知ってたら、教えてくれたはずだもん。
ちょっと、感傷に浸ってる場合じゃないわ。
どっどうしよう。宝石を売ればなんとかなると思って、家具を売ったお金はあっという間に使い切っちゃってるのに。
ジョンの家だって追い出されそうになってて、お金もないなんて。
それも、これも、あの料理長が身勝手に、あたしの事を好きになったせい。それで、ケビン様のことを勝手に勘違いして、あんな酷いことをして。
あたしとケビン様に酷いことをした、あの料理長の言ってた事なんて、絶対に信じる訳ないんだから。
ケビン様は、あたしにベタぼれだったんだから。
あっ、そうだ。あたしにはまだ、可愛い見た目に愛嬌があったじゃない。これで何とかなるわ。
「ふふふっ、自立した女なんて、あたしには似合わないんだ。可愛いあたしは、男の人に甘えながら、もう1回いい暮らしをする手があったのよ」
大丈夫、大丈夫。昔から、誘うのは上手なんだから、うふふっ。
ジョンが経営している酒場。
そりゃーしゃれた酒なんて置いてないわよ。でも、安くて沢山飲めるから、いつだって若い男たちで溢れてるんだもん。ふんっ、男なんて、より取り見取り。
まあ、あのアベリアって女じゃ、1人の男も捕まえられないでしょうけどね。
「お兄さん、かっこいいね。もう少しで仕事終わるから、この後、一緒に遊びに行かない?」
「あー、姉さん何言ってんだ。あんた少しは自分の体の事でも考えな。身重なんだから、子どもに障らないように、早く帰った帰った、しっ、しっ」
はぁっ、なんで、あたしが手で払われてるの。あんたらなんて、こっちから願い下げよ。
も~う、どいつもこいつも、何なのよ。
あたしがしばらく店に居ない間に、客の質が下がったんじゃない。
まあ、確かに、この子を産むまでは、無理するのはやめとくか。
癪に障るけど、次の男が見つかるまでは、ジョンに何とか頼み込むしかないか。
「このまま置いてくれ」って頼んだら、あのガラの悪い兄貴の思う壺だろうけど、少しの辛抱よ。
「オギャァ、オギャァーー」
「チィッ。おい、エリカ! その泣いてるガキ、静かにさせろ!」
「分かったわよ。ねぇケビン、お願い泣かないで…………」
「それにしても、そのガキ、ぶっさいくな顔してんのな。エリカの言ってたカッコいい侯爵様ってよ、大したことないな。お前、金に目がくらんで、良い男に見えてただけってやつか、ぷっっ」
「違うもん…………」
この子だって、少し大きくなったら、ケビン様のようにカッコよくなるんだから。
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本作を読んでいただき、ありがとうございます。 本作は、緩急のある恋愛小説の為、途中に暴言等が含まれます。そこも含めての結末ですが、不快に思われる方もいるかもしれません。苦手な方は読み流しをおねがいします。 これからも、応援よろしくお願いします。 本作のタイトルロゴを作ってくれた、まちゃさんありがとうございます。
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