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【番外編】全てを失った愛人の奮闘 ~悪事は全部かえって来て、愛しの侯爵に捨てられる~ 5-3
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私は、ケビン従兄の葬儀が終わり、彼がしていた仕事を確認しているが…………。
これは、仕事とは関係の無い請求書や督促状何だろうな。引き出しの中へ無造作に突っ込んだままになっている。
支払いは済んでいるようだ。まあ見なかったことにしておくか。
コンコン――
私の元へ訪ねてくる合図。領地にいる時にこの音を聞けば、いつだって心躍っていた。あの時は、にやけてしまう自分の顔を、彼女に悟られないようにしていたのにな。
今、私の部屋へ入って来る者など、執事の彼1人だ。
「デルフィー様、別邸で暮らしていたあの方が、あの部屋の物を全て持ち出して居なくなってますけど、どういたしましょうか?」
「ふふふっ、エリカって娘は、よくあれだけの荷物を運び出したものだな。こちらとしては、あの部屋の物が全部無くなってくれて、むしろ好都合だ。放っとけばいいだろう」
「デルフィー様はドレスの仕立て代を知らないから、そんな呑気な事を言っていられるんですよ」
「いや、ちょうど、その請求書を見て呆れてたところだ」
「分かってて、よくそんなに落ち着いていられますね。家具だって、あの方を別邸にお招きした時に、全て新調したんですから」
「いいんだよ、それくらい。いらない物を運び出してくれた駄賃だと思えばな」
思いついたら何でも作り始めるアベリア。彼女が、この邸へ戻ってきた時には、彼女が自由に好きなことが出来る、広い場所が必要になるだろうからな。
私は、彼女が彼女らしく過ごせる場所を作りたいんだ。
「エリカ……」
『うぅー、ぎゃぁー、助けて』
あたしの上に乗っかってる、気持ち悪い料理長を両手で、めいっぱい押してるのに、何なのよ――! どうして、びくともしないのよ。
『いや、やだやだ、気持ち悪い、止めて。汚い。何言ってんの馬鹿、この子はケビン様の子だから。無理、触らないで、ちょっと、嫌――』
うぐっっ、あたしの口に指入れるのやめてよ。苦しい。
「暴れないでよ。僕が、悪いことしてるみたいでしょう」
しっ、してるでしょう! どこまで馬鹿なの⁉ やだ、顔にあんたの涎つけないで。口の中にあんたの舌なんて入れないで、気持ち悪い。ぐえっ。
待って、わたしの下着に触らないでよ。そこは触らないでよ。えっ、ちょっと、何か触れてない……、ねぇ、本気なの……どうしてよぅ。やめてよー。
『キャー。お願い。それ、当てないで。やだ、それ以上したら……』
にゅっって、何かを感じたけど。もしかして、入っ……。嘘でしょう。
このびくびくしてるのって……「出ちゃった」って言った⁉ やだ、気色悪い。もーう早くよけて。
なんで、こんな気持ち悪い男に、こんなことされてるのよ。
しかも、ケビン様の赤ちゃんを「自分の子ども」とか言って、許せない。こんな男は、あたしの前に2度と姿を見せないようにしてやるんだから。
えっ、地震? 揺れてるっ! 体が大きく揺れてるけど、どうしたの。
「おい、エリカ。うなされてるけど大丈夫か?」
「ジョン? どうしてここに」
「まだ寝てんのか? ここ俺ん家だから」
「あっ、そうだった。今のは、ゆっ夢だったのね。それにしても酷い悪夢だった。もう、2度と見たくない」
「って、いつもお前、同じ事言ってるけどな。そういえば、腹のガキいつ産まれるんだ。俺、赤ん坊とか嫌いだから、勘弁してくれよな。あと、俺が女連れ込んでる時は、お前はどっか行っとけよな。お前みたいな性格の悪い妹がいるだけで、兄貴がモテなくなったら困るだろう」
「言われなくても、すぐに出て行くから、安心して」
あー残念だけど、そろそろ限界かなぁ。
毎日見つからないように、胸に隠し持っていた宝石。
ケビン様との大切な想い出だけど、ケビン様の赤ちゃんと生きて行く為に、そろそろ売るしかないか。
これは、仕事とは関係の無い請求書や督促状何だろうな。引き出しの中へ無造作に突っ込んだままになっている。
支払いは済んでいるようだ。まあ見なかったことにしておくか。
コンコン――
私の元へ訪ねてくる合図。領地にいる時にこの音を聞けば、いつだって心躍っていた。あの時は、にやけてしまう自分の顔を、彼女に悟られないようにしていたのにな。
今、私の部屋へ入って来る者など、執事の彼1人だ。
「デルフィー様、別邸で暮らしていたあの方が、あの部屋の物を全て持ち出して居なくなってますけど、どういたしましょうか?」
「ふふふっ、エリカって娘は、よくあれだけの荷物を運び出したものだな。こちらとしては、あの部屋の物が全部無くなってくれて、むしろ好都合だ。放っとけばいいだろう」
「デルフィー様はドレスの仕立て代を知らないから、そんな呑気な事を言っていられるんですよ」
「いや、ちょうど、その請求書を見て呆れてたところだ」
「分かってて、よくそんなに落ち着いていられますね。家具だって、あの方を別邸にお招きした時に、全て新調したんですから」
「いいんだよ、それくらい。いらない物を運び出してくれた駄賃だと思えばな」
思いついたら何でも作り始めるアベリア。彼女が、この邸へ戻ってきた時には、彼女が自由に好きなことが出来る、広い場所が必要になるだろうからな。
私は、彼女が彼女らしく過ごせる場所を作りたいんだ。
「エリカ……」
『うぅー、ぎゃぁー、助けて』
あたしの上に乗っかってる、気持ち悪い料理長を両手で、めいっぱい押してるのに、何なのよ――! どうして、びくともしないのよ。
『いや、やだやだ、気持ち悪い、止めて。汚い。何言ってんの馬鹿、この子はケビン様の子だから。無理、触らないで、ちょっと、嫌――』
うぐっっ、あたしの口に指入れるのやめてよ。苦しい。
「暴れないでよ。僕が、悪いことしてるみたいでしょう」
しっ、してるでしょう! どこまで馬鹿なの⁉ やだ、顔にあんたの涎つけないで。口の中にあんたの舌なんて入れないで、気持ち悪い。ぐえっ。
待って、わたしの下着に触らないでよ。そこは触らないでよ。えっ、ちょっと、何か触れてない……、ねぇ、本気なの……どうしてよぅ。やめてよー。
『キャー。お願い。それ、当てないで。やだ、それ以上したら……』
にゅっって、何かを感じたけど。もしかして、入っ……。嘘でしょう。
このびくびくしてるのって……「出ちゃった」って言った⁉ やだ、気色悪い。もーう早くよけて。
なんで、こんな気持ち悪い男に、こんなことされてるのよ。
しかも、ケビン様の赤ちゃんを「自分の子ども」とか言って、許せない。こんな男は、あたしの前に2度と姿を見せないようにしてやるんだから。
えっ、地震? 揺れてるっ! 体が大きく揺れてるけど、どうしたの。
「おい、エリカ。うなされてるけど大丈夫か?」
「ジョン? どうしてここに」
「まだ寝てんのか? ここ俺ん家だから」
「あっ、そうだった。今のは、ゆっ夢だったのね。それにしても酷い悪夢だった。もう、2度と見たくない」
「って、いつもお前、同じ事言ってるけどな。そういえば、腹のガキいつ産まれるんだ。俺、赤ん坊とか嫌いだから、勘弁してくれよな。あと、俺が女連れ込んでる時は、お前はどっか行っとけよな。お前みたいな性格の悪い妹がいるだけで、兄貴がモテなくなったら困るだろう」
「言われなくても、すぐに出て行くから、安心して」
あー残念だけど、そろそろ限界かなぁ。
毎日見つからないように、胸に隠し持っていた宝石。
ケビン様との大切な想い出だけど、ケビン様の赤ちゃんと生きて行く為に、そろそろ売るしかないか。
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本作を読んでいただき、ありがとうございます。 本作は、緩急のある恋愛小説の為、途中に暴言等が含まれます。そこも含めての結末ですが、不快に思われる方もいるかもしれません。苦手な方は読み流しをおねがいします。 これからも、応援よろしくお願いします。 本作のタイトルロゴを作ってくれた、まちゃさんありがとうございます。
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