私にだけ冷たい最後の優良物件から婚約者のふりを頼まれただけなのに、離してくれないので記憶喪失のふりをしたら、彼が逃がしてくれません!◆中編版
瑞貴◆『手違いの妻』4月15日発売!
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顔が赤いのはドレスのせい?③
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「エメリーの顔が赤く見えるのは、ドレスが赤いせいだろうか……」
「そうよ。赤色が顔に反射しているからでしょう。でも、せっかくドレスコードの赤を着て来たのに、少しも意味が分からないまま終わってしまったわね」
「また同じ舞台に行こうか?」
「ふふっ、そうね。次こそはちゃんと観ましょう。でも……、今日はいいものを見られたから、来て良かったわ」
「寝ていただけなのに?」
「うん。最初はちゃんと起きていたもの」
レオナールの寝顔を見て、何とも言えない幸福感を抱いたとは、恥ずかしくて伝えられない。
だけど、彼が私の横で安心しきった姿を見せていたことに、嘘や偽りはないはずだ。
そうなればきっと、今のレオナールが本当の姿なんだと思う。
私の記憶が戻ったと知っても、彼の態度はきっと変わらないはずだ。
それに、頭に花の咲いた両親ではあるけれど、そろそろ記憶が戻ったと伝えてあげたい。
心配してくれる両親に、このまま嘘をつき続けるのは、そろそろ限界を感じるし。
そんな風に考えていると、次の顔合わせについて、彼が提案してきた。
「次は、俺の屋敷に来ないか?」
「レオナールの屋敷へ?」
「以前伝えただろう。俺には妹がいるんだが、その妹がエメリーに会いたがっているんだ」
「そうなの?」
妹のアリアは、私とレオナールの婚約が偽装であると勘ぐっていたはずだけど、どうしてかしらと首を傾げる。
「実は、エメリーの両親が一度我が家に来て、事故のせいで記憶がないことを、うちの両親に報告していたんだ」
「全然知らなかったわ」
「エメリーの記憶喪失のことを、俺は全く気にしないと伝えていたんだが、後から俺の両親が結婚に反対するのではないかと、心配したみたいだ。もちろん、俺の家族もそんなことは気にしていないけどね」
「それでどうして、妹の……」
口ごもる私は、妹の名前について、分からないふりをした。
「アリアだ。エメリーに過去の記憶がないなら、いろいろ不便だろうと、アリアが心配しているみたいなんだ」
婚約発表のパーティーで、レオナールがいないタイミングを見計らい、文句をつけに来たアリアが、そんな発想に至るだろうか?
彼女に限って私を心配するはずはないだろうと感じたが、それを言うわけにもいかない。
過去の記憶がない以上、今の私はアリアの顔さえ知らない設定で、このまま話を貫かなくてはならない。
そうだとしても、私の記憶は、ラングラン公爵家の屋敷を見たタイミングで蘇る計画だし、アリアに会うときには、かつての自分に戻ってよいのだから問題はない。
この計画で「ボロはでないな」と考え、にっこりと笑う。
「そんなことを言ってくれるなんて嬉しいわ。私もアリア様にお会いしたいから、ぜひうかがうわ」
「それでは一週間後、エメリーの家まで迎えに行くから」
「レオナールの屋敷へ行くなんて、緊張するわね」
「なんの心配もいらないさ。アリアは優しいし、エメリーの横には、ずっと俺もいるんだから、普段どおりで構わないから」
穏やかに微笑む彼が言うものだから、胸がきゅんとする。
そんな自分に動揺してしまい、彼から顔を背け馬車の窓を見ると、ガラスに映る私の顔が赤い。
やだ。私ってばずっとこんな顔をしていたのかしら。
まるで彼を意識していると思われるじゃない。
そう思うとますます恥ずかしくなって、そのまま横を向き続け、屋敷へと戻った。
◇◇◇
「そうよ。赤色が顔に反射しているからでしょう。でも、せっかくドレスコードの赤を着て来たのに、少しも意味が分からないまま終わってしまったわね」
「また同じ舞台に行こうか?」
「ふふっ、そうね。次こそはちゃんと観ましょう。でも……、今日はいいものを見られたから、来て良かったわ」
「寝ていただけなのに?」
「うん。最初はちゃんと起きていたもの」
レオナールの寝顔を見て、何とも言えない幸福感を抱いたとは、恥ずかしくて伝えられない。
だけど、彼が私の横で安心しきった姿を見せていたことに、嘘や偽りはないはずだ。
そうなればきっと、今のレオナールが本当の姿なんだと思う。
私の記憶が戻ったと知っても、彼の態度はきっと変わらないはずだ。
それに、頭に花の咲いた両親ではあるけれど、そろそろ記憶が戻ったと伝えてあげたい。
心配してくれる両親に、このまま嘘をつき続けるのは、そろそろ限界を感じるし。
そんな風に考えていると、次の顔合わせについて、彼が提案してきた。
「次は、俺の屋敷に来ないか?」
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「以前伝えただろう。俺には妹がいるんだが、その妹がエメリーに会いたがっているんだ」
「そうなの?」
妹のアリアは、私とレオナールの婚約が偽装であると勘ぐっていたはずだけど、どうしてかしらと首を傾げる。
「実は、エメリーの両親が一度我が家に来て、事故のせいで記憶がないことを、うちの両親に報告していたんだ」
「全然知らなかったわ」
「エメリーの記憶喪失のことを、俺は全く気にしないと伝えていたんだが、後から俺の両親が結婚に反対するのではないかと、心配したみたいだ。もちろん、俺の家族もそんなことは気にしていないけどね」
「それでどうして、妹の……」
口ごもる私は、妹の名前について、分からないふりをした。
「アリアだ。エメリーに過去の記憶がないなら、いろいろ不便だろうと、アリアが心配しているみたいなんだ」
婚約発表のパーティーで、レオナールがいないタイミングを見計らい、文句をつけに来たアリアが、そんな発想に至るだろうか?
彼女に限って私を心配するはずはないだろうと感じたが、それを言うわけにもいかない。
過去の記憶がない以上、今の私はアリアの顔さえ知らない設定で、このまま話を貫かなくてはならない。
そうだとしても、私の記憶は、ラングラン公爵家の屋敷を見たタイミングで蘇る計画だし、アリアに会うときには、かつての自分に戻ってよいのだから問題はない。
この計画で「ボロはでないな」と考え、にっこりと笑う。
「そんなことを言ってくれるなんて嬉しいわ。私もアリア様にお会いしたいから、ぜひうかがうわ」
「それでは一週間後、エメリーの家まで迎えに行くから」
「レオナールの屋敷へ行くなんて、緊張するわね」
「なんの心配もいらないさ。アリアは優しいし、エメリーの横には、ずっと俺もいるんだから、普段どおりで構わないから」
穏やかに微笑む彼が言うものだから、胸がきゅんとする。
そんな自分に動揺してしまい、彼から顔を背け馬車の窓を見ると、ガラスに映る私の顔が赤い。
やだ。私ってばずっとこんな顔をしていたのかしら。
まるで彼を意識していると思われるじゃない。
そう思うとますます恥ずかしくなって、そのまま横を向き続け、屋敷へと戻った。
◇◇◇
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