私にだけ冷たい最後の優良物件から婚約者のふりを頼まれただけなのに、離してくれないので記憶喪失のふりをしたら、彼が逃がしてくれません!◆中編版
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
文字の大きさ
大中小
18 / 36
破天荒な兄の教え②
しおりを挟む
……記憶喪失のふりがバレたとなれば、平凡地味ライフを目指す私は、是が非でも兄を味方に付けるしかないだろう。
「私もお兄様のような、のこぎりでも切れない図太い神経が欲しいわね」
「言っておくが、レオナール様を知らないふりをするエメリーの方が、俺よりよっぽど図太い神経をしているだろう。俺が知っている令嬢の中で、一番強気でふてぶてしい性格だと思うぞ」
「お兄様が常々言っていたでしょう。可愛くすっとぼけろって」
「ああ、なんだそういうことか。レオナール様に構って欲しくて、すっとぼけていたのか」
「違うわぁーっ‼ 人生最大のピンチだからよ」
「何を意味の分からないことを言っているんだ?」
「レオナールに騙されて、窮地に陥ったのよ!」
「まあ、パッとしないエメリーは、ちょっとくらい窮地があった方が、刺激があっていいだろう。人生が潤うぞ」
私の肩をポンポンと叩いて笑っている。
「よくないわぁ―っ‼ レオナールの『婚約者のふり』をしないと、婚約解消の違約金を払えって脅されているのよ。これのどこが潤いなのよ!」
「俺には脅しに聞こえないが、それの何が問題なんだ?」
「は? 大問題でしょう!」
「おお、そうだった……伝えるのを忘れていた」
「何を?」
「婚約おめでとう」
「は? 何がおめでとうよ! これは婚約じゃなくて、お金をたかる恐喝よ! 恐喝ッ!」
「だから、結婚すれば払わなくてもいいんだろう。それならさっさと結婚すればいいだろう」
ふんと鼻で笑われた。
「なんでレオナールと結婚しなきゃならないのよ! 彼は私のことが大っ嫌いで、私だって彼なんか嫌いだもの。そんな二人が結婚できるわけないし、しないから」
「レオナール様は、エメリーのことが好きだろう。どっからどうみても大好きだぞ」
「モテないお兄様は、本当に感性がどうかしているのね。彼が私のことを好きなわけないでしょう」
「なるほどな……。こんな調子のエメリーを好きになったレオナール様に同情するな……。とにかくエメリーはそのまま婚約者に収まっていればいいだろう。それが一番平和な解決方法だ」
「このまま婚約者のふりなんかしていたら、穏やかな日常が遠退いていくじゃない……」
がっくしと項垂れる。
「それはレオナール様の妻の生活でいいだろう。『レオナール大好き♡』とでも可愛く言ってみろ。そんな気がしてくるはずだ。良かったな、はははっ」
「あのね、私の話を聞いていたかしら? それともお兄様は本当に馬鹿なのかしら?」
「何に悩んでいるのか俺には毛ほども理解できんが、エメリーはそのままレオナール様と婚約者のままでいるのが無難だ」
「ひっどい。私の事情も分からず、そんなことを軽々しく口にするなんて、横暴だわ!」
「何言ってんだよ。エメリーの我が儘のために、ラングラン公爵家へ違約金を払えるわけないだろう。婚約解消は駄目だ。考えを改めろ」
「どうせお兄様なんて、当てにしていないわよ。自分で何とかするもん」
いよいよ頭にきた私は、手に取った枕を兄に投げつけようかと思ったが、兄の言葉で固まった。
「それじゃあエメリーは、公爵家に違約金を払うために、娼館に身売りでもするか?」
「でたわ、でたわ! これだもの。実の妹を娼館に売るなんて、レオナールと同じで、人でなしだわ」
「どうせ極上客が即座に身請けするだろうな」
兄がにこっと笑う。
おや? 枯れ木だと思われていた私も、案外美人なのかしらと誇らしげに尋ねる。
「それって私が美人だからってことかしら?」
「安心しろ。そんなことは言っていないから」
「あっそ……。じゃあ極上客って誰よ」
「エメリーが娼館にいると知れば、レオナール様が毎日足しげく通って、堂々と手籠めにするんじゃないか?」
「あるわけないでしょ!」
「はははっ試してみろ。最短ルートで結婚だ。良かったな」
「どこがいいのよッ‼」
「どのみち逃げられないから、可愛くすっとぼけて、婚約者をやっていればいいだろう」
「っていうか、お兄様はこの部屋に何しに来たのよ」
「レオナール様から頼まれた」
「は? 何をですか?」
「私もお兄様のような、のこぎりでも切れない図太い神経が欲しいわね」
「言っておくが、レオナール様を知らないふりをするエメリーの方が、俺よりよっぽど図太い神経をしているだろう。俺が知っている令嬢の中で、一番強気でふてぶてしい性格だと思うぞ」
「お兄様が常々言っていたでしょう。可愛くすっとぼけろって」
「ああ、なんだそういうことか。レオナール様に構って欲しくて、すっとぼけていたのか」
「違うわぁーっ‼ 人生最大のピンチだからよ」
「何を意味の分からないことを言っているんだ?」
「レオナールに騙されて、窮地に陥ったのよ!」
「まあ、パッとしないエメリーは、ちょっとくらい窮地があった方が、刺激があっていいだろう。人生が潤うぞ」
私の肩をポンポンと叩いて笑っている。
「よくないわぁ―っ‼ レオナールの『婚約者のふり』をしないと、婚約解消の違約金を払えって脅されているのよ。これのどこが潤いなのよ!」
「俺には脅しに聞こえないが、それの何が問題なんだ?」
「は? 大問題でしょう!」
「おお、そうだった……伝えるのを忘れていた」
「何を?」
「婚約おめでとう」
「は? 何がおめでとうよ! これは婚約じゃなくて、お金をたかる恐喝よ! 恐喝ッ!」
「だから、結婚すれば払わなくてもいいんだろう。それならさっさと結婚すればいいだろう」
ふんと鼻で笑われた。
「なんでレオナールと結婚しなきゃならないのよ! 彼は私のことが大っ嫌いで、私だって彼なんか嫌いだもの。そんな二人が結婚できるわけないし、しないから」
「レオナール様は、エメリーのことが好きだろう。どっからどうみても大好きだぞ」
「モテないお兄様は、本当に感性がどうかしているのね。彼が私のことを好きなわけないでしょう」
「なるほどな……。こんな調子のエメリーを好きになったレオナール様に同情するな……。とにかくエメリーはそのまま婚約者に収まっていればいいだろう。それが一番平和な解決方法だ」
「このまま婚約者のふりなんかしていたら、穏やかな日常が遠退いていくじゃない……」
がっくしと項垂れる。
「それはレオナール様の妻の生活でいいだろう。『レオナール大好き♡』とでも可愛く言ってみろ。そんな気がしてくるはずだ。良かったな、はははっ」
「あのね、私の話を聞いていたかしら? それともお兄様は本当に馬鹿なのかしら?」
「何に悩んでいるのか俺には毛ほども理解できんが、エメリーはそのままレオナール様と婚約者のままでいるのが無難だ」
「ひっどい。私の事情も分からず、そんなことを軽々しく口にするなんて、横暴だわ!」
「何言ってんだよ。エメリーの我が儘のために、ラングラン公爵家へ違約金を払えるわけないだろう。婚約解消は駄目だ。考えを改めろ」
「どうせお兄様なんて、当てにしていないわよ。自分で何とかするもん」
いよいよ頭にきた私は、手に取った枕を兄に投げつけようかと思ったが、兄の言葉で固まった。
「それじゃあエメリーは、公爵家に違約金を払うために、娼館に身売りでもするか?」
「でたわ、でたわ! これだもの。実の妹を娼館に売るなんて、レオナールと同じで、人でなしだわ」
「どうせ極上客が即座に身請けするだろうな」
兄がにこっと笑う。
おや? 枯れ木だと思われていた私も、案外美人なのかしらと誇らしげに尋ねる。
「それって私が美人だからってことかしら?」
「安心しろ。そんなことは言っていないから」
「あっそ……。じゃあ極上客って誰よ」
「エメリーが娼館にいると知れば、レオナール様が毎日足しげく通って、堂々と手籠めにするんじゃないか?」
「あるわけないでしょ!」
「はははっ試してみろ。最短ルートで結婚だ。良かったな」
「どこがいいのよッ‼」
「どのみち逃げられないから、可愛くすっとぼけて、婚約者をやっていればいいだろう」
「っていうか、お兄様はこの部屋に何しに来たのよ」
「レオナール様から頼まれた」
「は? 何をですか?」
60
お気に入りに追加
815
あなたにおすすめの小説
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
国王陛下、私のことは忘れて幸せになって下さい。
ひかり芽衣
恋愛
同じ年で幼馴染のシュイルツとアンウェイは、小さい頃から将来は国王・王妃となり国を治め、国民の幸せを守り続ける誓いを立て教育を受けて来た。
即位後、穏やかな生活を送っていた2人だったが、婚姻5年が経っても子宝に恵まれなかった。
そこで、跡継ぎを作る為に側室を迎え入れることとなるが、この側室ができた人間だったのだ。
国の未来と皆の幸せを願い、王妃は身を引くことを決意する。
⭐︎2人の恋の行く末をどうぞ一緒に見守って下さいませ⭐︎
※初執筆&投稿で拙い点があるとは思いますが頑張ります!
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。
若松だんご
恋愛
「リリー。アナタ、結婚なさい」
それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。
まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。
お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。
わたしのあこがれの騎士さま。
だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!
「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」
そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。
「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」
なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。
あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!
わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと
暁
恋愛
陽も沈み始めた森の中。
獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。
それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。
何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。
※
・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。
・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。
公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます
柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。
社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。
※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。
※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意!
※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる