私にだけ冷たい最後の優良物件から婚約者のふりを頼まれただけなのに、離してくれないので記憶喪失のふりをしたら、彼が逃がしてくれません!◆中編版
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
文字の大きさ
大中小
5 / 36
犬猿の幼馴染の婚約発表⑤【SIDEレオナール】
しおりを挟む
プロポーズなんて、壁が厚すぎるし高すぎる。到底、突破できるとは思えない。
「エメリーの前に行けば、うまく言えないんだ」
「それなら、宰相に頼めばいいだろう。いくらエメリーヌ嬢だって、レオナールの父から婚約の申し出を受ければ、断れないでしょう」
「いや、エメリーのことだけは、人の手を借りたくないんだ。そんなことをしても、初夜で取り返しのつかない大失敗を犯す気がするから」
「くくっ、やりそう」
「二度と関係修復ができなくなる前に、何としても自分自身で彼女に想いを伝えたいから」
「こうなったら『結婚する』って、新聞で言えばいいだろう。それから彼女の元へ迎えに行けば、いくらレオナールがエメリーヌ嬢に余計なことを言っても結婚してくれるって」
「それは本当だろうな!」
「まあ、大丈夫だろう。他の令嬢と話すときみたいに、レオナールが普通にしていれば悩む問題でもないんだけど。どうしてエメリーヌ嬢にはできないんだろうな」
「エメリーが、可愛いのが悪い」
「ははっ、これでは当分無理だな。まあ失敗してもレオナールと結婚したい令嬢なんて山のようにいるし、当たって砕けろ」
その言葉に、すでに心が折れてしまい肩を落とす。
「そんな言い方をするなよ。万が一にも砕けたら……。立ち直れる気がしない」
「レオナールはどうして、エメリーヌ嬢のことになると駄目男になるんだろうな。それ以外は完璧なのに。農民への意識改革で、今年の農作物の収穫量は軒並み上昇しているのを陛下が高く評価していたぞ。レオナールが普通に接すれば、エメリーヌ嬢だって、すぐに惚れるだろう」
ウスターシュは、げらげらと笑っているが、うまくできたら煩わしい日々を何年も過ごしていない。
最後の優良物件と呼ばれているが、事実はただの売れ残りだ。
俺がエメリーに想いを伝えられないまま月日が過ぎ去ったせいで、最後までパートナーが定まらず、残っているだけにすぎない。
俺の心の中では、とっくにエメリーに売約済みなのだが。
心から愛する女性にはうまく向き合えないにもかかわらず、どうでもいい令嬢たちから、執拗なまでにつけ狙われ、もはや身の危険さえ感じる。
「新聞か……。試してみる価値はあるな」
「一つだけアドバイスをしてやろうか?」
「聞きたくない」
「そう言われても、レオナールなら変な啖呵をきって撃沈しそうだから見ていられない」
「言うな……。本当にそうなる気がしているんだから、変な予言をするなよ」
「エメリーヌ嬢がレオナールの婚約者だと、世間に広めるまではへまをするな」
「あのなぁ……。俺はいつだって、へまをするつもりは毛頭ない。エメリーへ、真剣に全力で当たった結果が、全戦全敗でいつも大喧嘩だ」
「それなら少しは学習しろよ」
「学習も深い反省も毎回しているさ。だけど、エメリーの前で緊張した俺が、彼女の気を引く方法を変えると、そのたびに、余計おかしくなっていくんだよ」
そう言うと、気の毒なもを見るような目を向けられた。
「いいか。エメリーヌ嬢に素直になれないレオナールは、目標を一つに絞れ。無理に好かれようとするな」
「他人事だと思って悲しいことを言うなよ。俺はエメリーから愛されたい」
「それは後から考えろ。とにかくエメリーヌ嬢をレオナールの婚約者にするんだよ。『婚約者のふりを頼む』でもいいから、適当な理由で社交界中に二人の関係を公表すれば、あとは何とかなる。第一段階はそれだ」
「何とかなるって言ってもな……」
「一度世間に広げてしまえば、婚約破棄をしなければいいんだ。婚約の解消は、子爵家の彼女から公爵家へ言い出せないだろう。いくらレオナールでも、『婚約解消する!』と、啖呵は切らないでしょう」
ウスターシュは、いつにも増してあくどい王子スマイルを見せた。
なるほどなと頷く。
エメリーを目の前にすると、悪い意味で別人に変わる俺だが、この作戦はいける。
そうして俺は、以前から決まっていた我が家主催のパーティーで、自分の婚約者を披露する準備を始めた。
◇◇◇
「エメリーの前に行けば、うまく言えないんだ」
「それなら、宰相に頼めばいいだろう。いくらエメリーヌ嬢だって、レオナールの父から婚約の申し出を受ければ、断れないでしょう」
「いや、エメリーのことだけは、人の手を借りたくないんだ。そんなことをしても、初夜で取り返しのつかない大失敗を犯す気がするから」
「くくっ、やりそう」
「二度と関係修復ができなくなる前に、何としても自分自身で彼女に想いを伝えたいから」
「こうなったら『結婚する』って、新聞で言えばいいだろう。それから彼女の元へ迎えに行けば、いくらレオナールがエメリーヌ嬢に余計なことを言っても結婚してくれるって」
「それは本当だろうな!」
「まあ、大丈夫だろう。他の令嬢と話すときみたいに、レオナールが普通にしていれば悩む問題でもないんだけど。どうしてエメリーヌ嬢にはできないんだろうな」
「エメリーが、可愛いのが悪い」
「ははっ、これでは当分無理だな。まあ失敗してもレオナールと結婚したい令嬢なんて山のようにいるし、当たって砕けろ」
その言葉に、すでに心が折れてしまい肩を落とす。
「そんな言い方をするなよ。万が一にも砕けたら……。立ち直れる気がしない」
「レオナールはどうして、エメリーヌ嬢のことになると駄目男になるんだろうな。それ以外は完璧なのに。農民への意識改革で、今年の農作物の収穫量は軒並み上昇しているのを陛下が高く評価していたぞ。レオナールが普通に接すれば、エメリーヌ嬢だって、すぐに惚れるだろう」
ウスターシュは、げらげらと笑っているが、うまくできたら煩わしい日々を何年も過ごしていない。
最後の優良物件と呼ばれているが、事実はただの売れ残りだ。
俺がエメリーに想いを伝えられないまま月日が過ぎ去ったせいで、最後までパートナーが定まらず、残っているだけにすぎない。
俺の心の中では、とっくにエメリーに売約済みなのだが。
心から愛する女性にはうまく向き合えないにもかかわらず、どうでもいい令嬢たちから、執拗なまでにつけ狙われ、もはや身の危険さえ感じる。
「新聞か……。試してみる価値はあるな」
「一つだけアドバイスをしてやろうか?」
「聞きたくない」
「そう言われても、レオナールなら変な啖呵をきって撃沈しそうだから見ていられない」
「言うな……。本当にそうなる気がしているんだから、変な予言をするなよ」
「エメリーヌ嬢がレオナールの婚約者だと、世間に広めるまではへまをするな」
「あのなぁ……。俺はいつだって、へまをするつもりは毛頭ない。エメリーへ、真剣に全力で当たった結果が、全戦全敗でいつも大喧嘩だ」
「それなら少しは学習しろよ」
「学習も深い反省も毎回しているさ。だけど、エメリーの前で緊張した俺が、彼女の気を引く方法を変えると、そのたびに、余計おかしくなっていくんだよ」
そう言うと、気の毒なもを見るような目を向けられた。
「いいか。エメリーヌ嬢に素直になれないレオナールは、目標を一つに絞れ。無理に好かれようとするな」
「他人事だと思って悲しいことを言うなよ。俺はエメリーから愛されたい」
「それは後から考えろ。とにかくエメリーヌ嬢をレオナールの婚約者にするんだよ。『婚約者のふりを頼む』でもいいから、適当な理由で社交界中に二人の関係を公表すれば、あとは何とかなる。第一段階はそれだ」
「何とかなるって言ってもな……」
「一度世間に広げてしまえば、婚約破棄をしなければいいんだ。婚約の解消は、子爵家の彼女から公爵家へ言い出せないだろう。いくらレオナールでも、『婚約解消する!』と、啖呵は切らないでしょう」
ウスターシュは、いつにも増してあくどい王子スマイルを見せた。
なるほどなと頷く。
エメリーを目の前にすると、悪い意味で別人に変わる俺だが、この作戦はいける。
そうして俺は、以前から決まっていた我が家主催のパーティーで、自分の婚約者を披露する準備を始めた。
◇◇◇
88
お気に入りに追加
815
あなたにおすすめの小説
前世で私を嫌っていた番の彼が何故か迫って来ます!
ハルン
恋愛
私には前世の記憶がある。
前世では犬の獣人だった私。
私の番は幼馴染の人間だった。自身の番が愛おしくて仕方なかった。しかし、人間の彼には獣人の番への感情が理解出来ず嫌われていた。それでも諦めずに彼に好きだと告げる日々。
そんな時、とある出来事で命を落とした私。
彼に会えなくなるのは悲しいがこれでもう彼に迷惑をかけなくて済む…。そう思いながら私の人生は幕を閉じた……筈だった。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
「婚約の約束を取り消しませんか」と言われ、涙が零れてしまったら
古堂すいう
恋愛
今日は待ちに待った婚約発表の日。
アベリア王国の公爵令嬢─ルルは、心を躍らせ王城のパーティーへと向かった。
けれど、パーティーで見たのは想い人である第二王子─ユシスと、その横に立つ妖艶で美人な隣国の王女。
王女がユシスにべったりとして離れないその様子を見て、ルルは切ない想いに胸を焦がして──。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【本編完結済】溺愛されすぎ公爵夫人の日常。強力な権力とコネを使って人の役に立とうと思います!『色褪せ令嬢は似合わない婚約を破棄したい』続編
橘ハルシ
恋愛
国一番の貴族、ハーフェルト公爵夫人エミーリア。彼女の夫は元第二王子で、王太子補佐であるリーンハルト。
妻を過度に溺愛している彼は、素直で人を疑わない彼女が可愛くて、いつもからかって遊んでしまう。
彼女の方は毎回きれいに夫の罠に嵌って、怒りつつ愛される。そんな二人のほぼ日常のドタバタ話になります。
お人好し過ぎるエミーリアが夫を振り回して、人助けをしたり事件に巻き込まれたりもします。
この話は、『色褪せ令嬢は似合わない婚約を破棄したい。』の続編になりますが、そちらを読んでいなくても問題なく読んでいただけます。
2/2 話が思ってたのと違ってきたので、あらすじを変えました。
家から追い出された後、私は皇帝陛下の隠し子だったということが判明したらしいです。
新野乃花(大舟)
恋愛
13歳の少女レベッカは物心ついた時から、自分の父だと名乗るリーゲルから虐げられていた。その最中、リーゲルはセレスティンという女性と結ばれることとなり、その時のセレスティンの連れ子がマイアであった。それ以降、レベッカは父リーゲル、母セレスティン、義妹マイアの3人からそれまで以上に虐げられる生活を送らなければならなくなった…。
そんなある日の事、些細なきっかけから機嫌を損ねたリーゲルはレベッカに対し、今すぐ家から出ていくよう言い放った。レベッカはその言葉に従い、弱弱しい体を引きずって家を出ていくほかなかった…。
しかしその後、リーゲルたちのもとに信じられない知らせがもたらされることとなる。これまで自分たちが虐げていたレベッカは、時の皇帝であるグローリアの隠し子だったのだと…。その知らせを聞いて顔を青くする3人だったが、もうすべてが手遅れなのだった…。
※カクヨムにも投稿しています!
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる