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第5章 祝福されるふたり
5-13 大波乱の舞踏会⑨
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鬼の形相をしたエドワードを見て、ぎょっとするルイーズは、既にこの場から逃亡したい気持ちになる。
(やってしまった。この顔、すごく怒っているときの顔じゃない。以前にも見たことがある……)
「なぁ宰相。俺は仕事中だと言っていたよな。なのに、俺の右隣にいた宰相は呑気に突っ立っていて、どうしてルイーズが俺の前で酒をかぶったんだ⁉ この後、ルイーズの頭をなでられなくなっただろう、どうしてくれるんだっ」
「ひーっ」
エドワードの父から、声にならない音が上がったのを目の当たりにする。
大変だ。自分のせいで宰相様が怒られた。ルイーズはその衝撃で肩をぶるぶると震わす。
エドワードが、すぐ横の宰相へ訴えた言葉は至って普通の声量。
彼らから数メートルの範囲にいる人物にしか聞こえていない。
聞き取れた者たちにとっては、親子喧嘩が始まったのか? と思っている。
だがエドワードは、少し離れた国王陛下へ向かって声を張り上げる。
「おい、じじぃっ! 俺は何度もあの酒を振る舞うのはやめろと言っただろう」
じじぃと呼ばれる人物に、心当たりがあるルイーズ。
恐る恐る、そうおぼしき人物へ視線を向けた。
国王陛下は、肩をビクッとしたあと、うろたえて1歩後ずさる。
……それを見て、ルイーズは愕然とする。
会場にいる参加者の大半は、エドワードが誰に向かって、この酒の話をしているのかは分かっていない。
大半の者は、エドワードのすぐ横にいる、宰相へ言っているくらいに捉えられているはずだ。
けれど、エドワードの秘密を知る者たちだけは正しく理解する。
そして、彼が相当に怒っていることも。
ギロッとルイーズの継母をにらんだエドワードは、もう歯止めがきかない。
ああ、待って……と、ルイーズは心の中で慌てて止めようとした。
だが、エドワードの気迫に押されて声も出せず、それは、かなわない。
「そして、お前だっ! お前、俺のことに気付いていたよな⁉ 俺がルイーズに指輪を渡して屋敷へ送り届けたときのことだ! あの日、俺としか会っていないはずのルイーズの右手が治っているのに気付いて、驚いた顔で俺をマジマジと見ていたからな。俺の職位を知らないとは言わせないぞ」
彼女の顔が酒にかぶれて真っ赤になっていることに、いよいよエドワードは我慢ができなくなった。
ルイーズは、強引に手を握られる。
……そして、次第に顔や胸の掻痒感が軽減していく。
全部わたしのせいだ……と、大きく肩を落とす。
ルイーズは、もう、どうにでもなれと、ただ大人しく受け入れていた。
(エドワード……、回復魔法師様であることは、何としても隠したかったんじゃないの……)
(やってしまった。この顔、すごく怒っているときの顔じゃない。以前にも見たことがある……)
「なぁ宰相。俺は仕事中だと言っていたよな。なのに、俺の右隣にいた宰相は呑気に突っ立っていて、どうしてルイーズが俺の前で酒をかぶったんだ⁉ この後、ルイーズの頭をなでられなくなっただろう、どうしてくれるんだっ」
「ひーっ」
エドワードの父から、声にならない音が上がったのを目の当たりにする。
大変だ。自分のせいで宰相様が怒られた。ルイーズはその衝撃で肩をぶるぶると震わす。
エドワードが、すぐ横の宰相へ訴えた言葉は至って普通の声量。
彼らから数メートルの範囲にいる人物にしか聞こえていない。
聞き取れた者たちにとっては、親子喧嘩が始まったのか? と思っている。
だがエドワードは、少し離れた国王陛下へ向かって声を張り上げる。
「おい、じじぃっ! 俺は何度もあの酒を振る舞うのはやめろと言っただろう」
じじぃと呼ばれる人物に、心当たりがあるルイーズ。
恐る恐る、そうおぼしき人物へ視線を向けた。
国王陛下は、肩をビクッとしたあと、うろたえて1歩後ずさる。
……それを見て、ルイーズは愕然とする。
会場にいる参加者の大半は、エドワードが誰に向かって、この酒の話をしているのかは分かっていない。
大半の者は、エドワードのすぐ横にいる、宰相へ言っているくらいに捉えられているはずだ。
けれど、エドワードの秘密を知る者たちだけは正しく理解する。
そして、彼が相当に怒っていることも。
ギロッとルイーズの継母をにらんだエドワードは、もう歯止めがきかない。
ああ、待って……と、ルイーズは心の中で慌てて止めようとした。
だが、エドワードの気迫に押されて声も出せず、それは、かなわない。
「そして、お前だっ! お前、俺のことに気付いていたよな⁉ 俺がルイーズに指輪を渡して屋敷へ送り届けたときのことだ! あの日、俺としか会っていないはずのルイーズの右手が治っているのに気付いて、驚いた顔で俺をマジマジと見ていたからな。俺の職位を知らないとは言わせないぞ」
彼女の顔が酒にかぶれて真っ赤になっていることに、いよいよエドワードは我慢ができなくなった。
ルイーズは、強引に手を握られる。
……そして、次第に顔や胸の掻痒感が軽減していく。
全部わたしのせいだ……と、大きく肩を落とす。
ルイーズは、もう、どうにでもなれと、ただ大人しく受け入れていた。
(エドワード……、回復魔法師様であることは、何としても隠したかったんじゃないの……)
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