58 / 88
第4章 離れたふたり
4-13 ルイーズの捕獲③
しおりを挟む
「えっと…………」
きょとんと首をかしげているルイーズは、何のことやら、さっぱり分かっていない。
ルイーズに自分が回復魔法師だと気付いて欲しいエドワードは、はっきりと分かる言葉を付け足す。
「ルイーズの右手を傷付けてしまい、俺は、何としても自分の体に戻って、ルイーズの体を治療したかった」
(ちっ、治療……。うっ、うっ、ウソでしょう。そんなわけない。
まままさか、それってエドワードは回復魔法師様だと、そっ、そういうこと⁉)
気安く接していたエドワードが、至上者である回復魔法師だと知ったルイーズ。
目の前のエドワードを、目を見開き凝視する。
全然知らなかった。……とはいえ、これまで散々エドワードに好き勝手なことを言ってきた自覚がある。そんな自分は、とんだ無礼者ではないか。
大変だ。
一大事だ。ルイーズの頭の中は大混乱に陥った。
これまでの自分の言動を思い起こすルイーズは、あたふたしだす。
やっと口に出した言葉も、シドロモドロで何を言いたいのか分からない。
「も、もももしかして……、エッ、エドワードって、えっ、えー、ひっ」
「やっと分かったか。ほら、王宮に着いたぞ。部屋で適当に何か食べさせてやるよ。はぐれるとまずい、俺から離れるな」
理解が追い付かず、及び腰のルイーズをよそに、真剣な表情のエドワードはグイグイとルイーズを引っ張っている。
エドワードは、さもさも当然のように関係者以外立ち入りを固く禁じている通路を通り、自分の部屋へ向かっていた。
ひぇーっと怯えながら、ルイーズは周囲をキョロキョロと見回す。
自分なんかが、厳重な警備を抜けて、王宮の奥に入り込んでいることが怖すぎる。
……たどり着いた部屋。そこは無駄に豪華な家具で整えられ、2人以外誰もいない。
ルイーズは、突然連れられてきた場所がどこか、よく分かっていない。
だが、あまりにも自分は場違いだ。
気まずさを感じたルイーズは、ふいっとエドワードから目をそらす。
困惑の色を見せるルイーズを気に止めないエドワードは、ルイーズと向かい合った。
「右手が動かなくて困っているんだろう、何で言わないんだよ! 何かあったら俺に相談しろって言わなかったか。俺は別に、ルイーズはルイーズだし、その右手が動かなくても、結婚するつもりだ。それでもルイーズは、結婚相手が俺だと困る理由は何かあるのか?」
「えっ、何で右手のことがバレているの……。違う、エドワードが嫌なわけじゃなくて、むしろ好きと言うか……。でも、右手のことを知ったら、エドワードが嫌な気分になるだろうから、知られたくなくて。だから、それで……」
自分を信用せず何も打ち明けてこない。それどころかルイーズは、ウソで誤魔化そうとする。エドワードは、それに気が立っていた。
だが、何も言わないのは自分を思ってのことだと分かり、一安心したエドワード。
ふっと柔らかい笑みを浮かべると同時に、大きなため息をつく。
「そんなことだと思った。俺、ルイーズが好きだって確信した。俺の妻はルイーズしか考えられない、入れ替わるほど相性が合う相手は、この先お互いにいないだろう。結婚するぞ」
表情に真剣さが増すエドワードの一方、不安そうな表情のルイーズ。
「わたし、エドワードの役に立てることなんてないけど、それでもいいの?」
「ルイーズがいてくれるだけで俺にとっては助かるから、余計な心配はするな。ほら、手を出せ、指輪をはめるから。今度は、裏にルイーズと俺の名前を彫ってもらったからな、誰かに盗まれるなよ」
そう言いながら、ルイーズの左手をとり、薬指にそっと大きなダイヤが埋め込まれた指輪をはめるエドワード。
そして、指輪をはめた左手を両手で優しく包み込む。
……しばらくして。
上に乗せていたエドワードの手でルイーズの手の甲へ、軽く2回、いつもの癖で合図をしていた。
「ルイーズ以上に欲しいものはなかった。たった数日会えないだけで自分が壊れるほど、ルイーズを愛してる。自分の気持ちに気付くのが遅くなって、ごめんな」
そう言ったエドワードは、ルイーズの白くてなめらかな左手の甲に、優しいキスを落とす……。
きょとんと首をかしげているルイーズは、何のことやら、さっぱり分かっていない。
ルイーズに自分が回復魔法師だと気付いて欲しいエドワードは、はっきりと分かる言葉を付け足す。
「ルイーズの右手を傷付けてしまい、俺は、何としても自分の体に戻って、ルイーズの体を治療したかった」
(ちっ、治療……。うっ、うっ、ウソでしょう。そんなわけない。
まままさか、それってエドワードは回復魔法師様だと、そっ、そういうこと⁉)
気安く接していたエドワードが、至上者である回復魔法師だと知ったルイーズ。
目の前のエドワードを、目を見開き凝視する。
全然知らなかった。……とはいえ、これまで散々エドワードに好き勝手なことを言ってきた自覚がある。そんな自分は、とんだ無礼者ではないか。
大変だ。
一大事だ。ルイーズの頭の中は大混乱に陥った。
これまでの自分の言動を思い起こすルイーズは、あたふたしだす。
やっと口に出した言葉も、シドロモドロで何を言いたいのか分からない。
「も、もももしかして……、エッ、エドワードって、えっ、えー、ひっ」
「やっと分かったか。ほら、王宮に着いたぞ。部屋で適当に何か食べさせてやるよ。はぐれるとまずい、俺から離れるな」
理解が追い付かず、及び腰のルイーズをよそに、真剣な表情のエドワードはグイグイとルイーズを引っ張っている。
エドワードは、さもさも当然のように関係者以外立ち入りを固く禁じている通路を通り、自分の部屋へ向かっていた。
ひぇーっと怯えながら、ルイーズは周囲をキョロキョロと見回す。
自分なんかが、厳重な警備を抜けて、王宮の奥に入り込んでいることが怖すぎる。
……たどり着いた部屋。そこは無駄に豪華な家具で整えられ、2人以外誰もいない。
ルイーズは、突然連れられてきた場所がどこか、よく分かっていない。
だが、あまりにも自分は場違いだ。
気まずさを感じたルイーズは、ふいっとエドワードから目をそらす。
困惑の色を見せるルイーズを気に止めないエドワードは、ルイーズと向かい合った。
「右手が動かなくて困っているんだろう、何で言わないんだよ! 何かあったら俺に相談しろって言わなかったか。俺は別に、ルイーズはルイーズだし、その右手が動かなくても、結婚するつもりだ。それでもルイーズは、結婚相手が俺だと困る理由は何かあるのか?」
「えっ、何で右手のことがバレているの……。違う、エドワードが嫌なわけじゃなくて、むしろ好きと言うか……。でも、右手のことを知ったら、エドワードが嫌な気分になるだろうから、知られたくなくて。だから、それで……」
自分を信用せず何も打ち明けてこない。それどころかルイーズは、ウソで誤魔化そうとする。エドワードは、それに気が立っていた。
だが、何も言わないのは自分を思ってのことだと分かり、一安心したエドワード。
ふっと柔らかい笑みを浮かべると同時に、大きなため息をつく。
「そんなことだと思った。俺、ルイーズが好きだって確信した。俺の妻はルイーズしか考えられない、入れ替わるほど相性が合う相手は、この先お互いにいないだろう。結婚するぞ」
表情に真剣さが増すエドワードの一方、不安そうな表情のルイーズ。
「わたし、エドワードの役に立てることなんてないけど、それでもいいの?」
「ルイーズがいてくれるだけで俺にとっては助かるから、余計な心配はするな。ほら、手を出せ、指輪をはめるから。今度は、裏にルイーズと俺の名前を彫ってもらったからな、誰かに盗まれるなよ」
そう言いながら、ルイーズの左手をとり、薬指にそっと大きなダイヤが埋め込まれた指輪をはめるエドワード。
そして、指輪をはめた左手を両手で優しく包み込む。
……しばらくして。
上に乗せていたエドワードの手でルイーズの手の甲へ、軽く2回、いつもの癖で合図をしていた。
「ルイーズ以上に欲しいものはなかった。たった数日会えないだけで自分が壊れるほど、ルイーズを愛してる。自分の気持ちに気付くのが遅くなって、ごめんな」
そう言ったエドワードは、ルイーズの白くてなめらかな左手の甲に、優しいキスを落とす……。
1
お気に入りに追加
379
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】婚約者が好きなのです
maruko
恋愛
リリーベルの婚約者は誰にでも優しいオーラン・ドートル侯爵令息様。
でもそんな優しい婚約者がたった一人に対してだけ何故か冷たい。
冷たくされてるのはアリー・メーキリー侯爵令嬢。
彼の幼馴染だ。
そんなある日。偶然アリー様がこらえきれない涙を流すのを見てしまった。見つめる先には婚約者の姿。
私はどうすればいいのだろうか。
全34話(番外編含む)
※他サイトにも投稿しております
※1話〜4話までは文字数多めです
注)感想欄は全話読んでから閲覧ください(汗)
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!
utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑)
妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?!
※適宜内容を修正する場合があります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる