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序章 日の目をみない「奇跡の力」と憂鬱

執念(SIDEカールディン第1王子)

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 カモメイル公爵へ、私の意向を伝えた後、一番の課題は父である国王を説き伏せることであった。
 国王は、リディのことを非常に高く評価しており、彼女以上に優秀な人材はいないと思っている。

 リディは妃以上の器だと評価しており、王妃に相応しいとさえ思っている。
 リディと結婚したならば、王太子として認められるだろうと口にしたこともあった。
 
 既に妃教育が終了しているリディの婚約解消を認めさせるのは、難しいのが予想された。
 案の定、国王は認めてくれなかった。

「陛下、お願いします。私にはソフィア・カモメイル嬢以外に求める女性はおりません。彼女こそが最愛の女性です。リディアンヌ・シェルブール嬢との婚約破棄をお認めください」
「ならぬ。リディアンヌ嬢は7歳の時から厳しい妃教育を受けて、既に全てを習得している。彼女ほど知性溢れる者は、他にいないだろう。これは王城の全ての教師が言っておる。ましてや、お前も彼女との婚姻を願っていたであろう。なぜそんなにリディアンヌ嬢を拒絶する」
「リディアンヌ嬢は癒しの力を使えません。私にとっては、知性や容姿以上に大事なことです」
「……そうはいっても。リディアンヌ嬢の立場もある。この期に及んで婚約破棄となれば、あらぬ噂を立てられ、貴族令嬢としての立場を失うことになる。あのような優秀なものを、易々と平民と結婚させては、この国にとって大きな損失だ。認める訳にはいかない」

 国王とカールディン王子の意見は平行線のまま、月日は経っていた。

 リディアンヌの社交界デビューが近づいていたが、全く気付いていない。
 エスコート役も、カールディン王子の役目とは分かっていない。
 本来、婚約者から贈るドレスを用意する事もなく。

 その女性のために作られたドレスであっても、直前には多少の直しが必要になる。あらかじめ余裕を持って届けられるものだが、届く気配はない。
 カールディン王子から何も連絡がないことに、事態を案じたシェルブール家当主から書簡を受け取るまで、リディアンヌのことは忘れていた。

 カールディン王子が慌てて、エスコートできない旨を連絡したのは、夜会の1週間前であった。

****

 国王の許しを得ることが出来ないまま、カールディン王子はソフィア嬢との夜会を楽しみ、淫靡な空気を纏う2人のダンスは、社交界では有名になっていた。
 
 常に寄り添いあう2人の事を「男女の関係」と皆が気づいていた。

 カールディン王子は、夜会だけでは足りず、昼もお忍びでソフィア嬢の元へ訪ねては逢瀬を重ねていた。
 カールディン王子からソフィア嬢は、周囲が何を言おうと離せないほどの執着だった。

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