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第4章 夢の実現へ
誕生日のサプライズ①
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【SIDE アリーチェ】
ぼんやりと目を覚ました時には、リックがわたしに、深いキスをしていた。
いつもなら、わたしが目を開けてから、熱いキスに変わるのに、最近のリックは大分と情熱的だ。
息継ぎをするように、一度離れれば、思わず声が漏れた。
わたしの耳元で、リックが囁く声と吐息が感情をくすぐり、ブゥワッッと全身に衝撃が走った。
「もう、我慢できないから、ごめん」
もう既に、リックの手はわたしに刺激を与えてたのに、ごめんって。
その言葉に、一気に気持ちが昂った。
お願いじゃなくて、する事が決定しているリックの甘い声で、ドキッとした。
与えられる快感で、頭が痺れて何も考えられ無いまま、あっという間に体中が溶けるように力尽きた。
フレンツ王国へ1年、わたしが行くと言い続けているのに、駄目としか言わないリック。
2人の意見が平行線で、ぶつかっている。
リックの統べる国が、属国になるくらいなら、わたしがフレンツへ行くことはどうってことは無い。
それよりも、あの船に、もう一度乗る方がよっぽど怖くて、逃げ腰になるくらい。だから、どうしてあの時、そのまま置いて来てくれなかったのかと思っている。毎日この文句をリックに当たり散らしている。
「フレンツの王女様は、まるで妹みたいに可愛かったの。あの子もいるんだから、1年位、フレンツに行っても問題は無いわ」
「だ~め。アリーチェは、私の腕の中にいてくれなきゃ困ると、何度も言ってるだろう。あの時、フレンツのカテリーヌ王女と何を話してたんだ?」
「読めない漢字を教えてあげてたの。あの子の周りにも、漢字が読める人が居ないんだって」
「アリーチェは、漢字まで分かるのか。私の知らないアリーチェの話を聞くと、感嘆せられる事ばかりだ」
「以前、リックに相談したわよ」
分からない漢字を一緒に勉強したいって伝えたら、講師から習えって言われたから、挿絵が多い本に変えたんだから。
「――もしかして、勉強を始めた言語って、……漢字の事だったのか」
「そうよ。リックが全然取り入ってくれないんだもん。でも、1人で考えたら、ちゃんと分かったわ。ふふっ」
「あ……、すまない。今なら分かるが、その時は、とんでもない勘違いをしていた」
伏し目がちに落ち込むリックの顔も、いつも不思議な勘違いをしているリックも嫌いじゃない。だから、少しも気にしていない。
「でも、そのおかげで、王女様が持っていた本に出合ったんだから、丁度良かったわ。初めて友達みたいにお話が出来たから、嬉しくって。やっぱりわたし、フレンツへ行くわ」
「そんな事を言うなら、このまま1日中、アリーチェを抱き続ける。愛してるアリーチェ……口を開けて」
そう言いながら、わたしの上に覆いかぶるリック。
リックの顔が近づき、唇が重なろうとしていた。わたしは期待して、それを受け入れようと、僅かに唇を緩めた。
「王太子っ! クロエがいるのを知ってやってますよね。ふざけてないで起きてください!」
クロエがいる事に気付いていなかったわたしは、ビックっとして、フレデリック様を睨んだ。
そして、フレデリック様にベーッと舌を出して、腕の中から逃げだした。そのまま、クロエにタオルを被せて貰い、洗面所へ向かう。
わたしは、クロエが運んで来た朝食を食べながら、フレデリック様の用事を確認することにした。
学校の準備の為に、城の外に出かけたいから、居ない時間の方が都合が良い。
それに、そろそろ……。
「ねえ、今日は何処へ視察へ行くの?」
「今日は、西の伯爵領だ。作物の害虫被害を補填して欲しいと言っていた要望書、アリーチェも見てただろう」
「あーあの要望書ね。そもそもアレは、害虫対策を講じるべきだわ。わたしが書いた薬液の作り方をよく読んで、その通りにやれば、十分に収穫は期待できるもの」
「あれは忘れずに持って行くさ。そうだ、明日はアリーチェの誕生日だろう。何か欲しいものは無いか? 良ければ一緒に買いに行こう」
明日……。
「わたし、書きやすい万年筆が欲しいわ。気に入ってたのに、フレデリック様のせいで折れたんですよ。だから、一緒には行かない! 責任もって探してきてくれなきゃ、嫌ですからっ!」
「ああ、すまない……。一緒に行きたかったけど仕方ないか。では何百本でも買って来るから待っててくれ」
「ハンカチもそうですけど、万年筆も1本あれば十分よ! どうしてそう、数がズレてるんですか?」
「くくっ、アリーチェだけには言われたくないな。アリーチェの言う、書きやすいが分からないからだろう」
やっぱり贈り物は、一緒に買いに行くより、一生懸命選んできてくれなきゃね。
ぼんやりと目を覚ました時には、リックがわたしに、深いキスをしていた。
いつもなら、わたしが目を開けてから、熱いキスに変わるのに、最近のリックは大分と情熱的だ。
息継ぎをするように、一度離れれば、思わず声が漏れた。
わたしの耳元で、リックが囁く声と吐息が感情をくすぐり、ブゥワッッと全身に衝撃が走った。
「もう、我慢できないから、ごめん」
もう既に、リックの手はわたしに刺激を与えてたのに、ごめんって。
その言葉に、一気に気持ちが昂った。
お願いじゃなくて、する事が決定しているリックの甘い声で、ドキッとした。
与えられる快感で、頭が痺れて何も考えられ無いまま、あっという間に体中が溶けるように力尽きた。
フレンツ王国へ1年、わたしが行くと言い続けているのに、駄目としか言わないリック。
2人の意見が平行線で、ぶつかっている。
リックの統べる国が、属国になるくらいなら、わたしがフレンツへ行くことはどうってことは無い。
それよりも、あの船に、もう一度乗る方がよっぽど怖くて、逃げ腰になるくらい。だから、どうしてあの時、そのまま置いて来てくれなかったのかと思っている。毎日この文句をリックに当たり散らしている。
「フレンツの王女様は、まるで妹みたいに可愛かったの。あの子もいるんだから、1年位、フレンツに行っても問題は無いわ」
「だ~め。アリーチェは、私の腕の中にいてくれなきゃ困ると、何度も言ってるだろう。あの時、フレンツのカテリーヌ王女と何を話してたんだ?」
「読めない漢字を教えてあげてたの。あの子の周りにも、漢字が読める人が居ないんだって」
「アリーチェは、漢字まで分かるのか。私の知らないアリーチェの話を聞くと、感嘆せられる事ばかりだ」
「以前、リックに相談したわよ」
分からない漢字を一緒に勉強したいって伝えたら、講師から習えって言われたから、挿絵が多い本に変えたんだから。
「――もしかして、勉強を始めた言語って、……漢字の事だったのか」
「そうよ。リックが全然取り入ってくれないんだもん。でも、1人で考えたら、ちゃんと分かったわ。ふふっ」
「あ……、すまない。今なら分かるが、その時は、とんでもない勘違いをしていた」
伏し目がちに落ち込むリックの顔も、いつも不思議な勘違いをしているリックも嫌いじゃない。だから、少しも気にしていない。
「でも、そのおかげで、王女様が持っていた本に出合ったんだから、丁度良かったわ。初めて友達みたいにお話が出来たから、嬉しくって。やっぱりわたし、フレンツへ行くわ」
「そんな事を言うなら、このまま1日中、アリーチェを抱き続ける。愛してるアリーチェ……口を開けて」
そう言いながら、わたしの上に覆いかぶるリック。
リックの顔が近づき、唇が重なろうとしていた。わたしは期待して、それを受け入れようと、僅かに唇を緩めた。
「王太子っ! クロエがいるのを知ってやってますよね。ふざけてないで起きてください!」
クロエがいる事に気付いていなかったわたしは、ビックっとして、フレデリック様を睨んだ。
そして、フレデリック様にベーッと舌を出して、腕の中から逃げだした。そのまま、クロエにタオルを被せて貰い、洗面所へ向かう。
わたしは、クロエが運んで来た朝食を食べながら、フレデリック様の用事を確認することにした。
学校の準備の為に、城の外に出かけたいから、居ない時間の方が都合が良い。
それに、そろそろ……。
「ねえ、今日は何処へ視察へ行くの?」
「今日は、西の伯爵領だ。作物の害虫被害を補填して欲しいと言っていた要望書、アリーチェも見てただろう」
「あーあの要望書ね。そもそもアレは、害虫対策を講じるべきだわ。わたしが書いた薬液の作り方をよく読んで、その通りにやれば、十分に収穫は期待できるもの」
「あれは忘れずに持って行くさ。そうだ、明日はアリーチェの誕生日だろう。何か欲しいものは無いか? 良ければ一緒に買いに行こう」
明日……。
「わたし、書きやすい万年筆が欲しいわ。気に入ってたのに、フレデリック様のせいで折れたんですよ。だから、一緒には行かない! 責任もって探してきてくれなきゃ、嫌ですからっ!」
「ああ、すまない……。一緒に行きたかったけど仕方ないか。では何百本でも買って来るから待っててくれ」
「ハンカチもそうですけど、万年筆も1本あれば十分よ! どうしてそう、数がズレてるんですか?」
「くくっ、アリーチェだけには言われたくないな。アリーチェの言う、書きやすいが分からないからだろう」
やっぱり贈り物は、一緒に買いに行くより、一生懸命選んできてくれなきゃね。
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