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第4章 夢の実現へ

掌の中⑨

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【SIDE アリーチェ】

 リックと一緒に、フレンツ王国での交渉について話し合っていた。
 本来であれば、国王陛下が直接赴くべきだけど、王妃の事があり、リックが会合を任されていた。
 勿論わたしも、それに同伴する。

「このままだと、フレンツ王国とは悪くて国交断絶。良くて属国よ。国交を断たれると、小麦だけは、今まで通りって訳にはいかないもの大問題だわ。代替え国が遠すぎるのよ」

「ああ、状況は理解している。フレンツ王国と関係が切れるのは、我が国にとって不利益だ。何としても、同盟関係が維持できるように、交渉するつもりだ」

「リックなら分かるでしょう。フレンツ王国は、自国の炭鉱が少ないから人口増加に対して、燃料の供給が追い付いていないのよ」
「だから、フレンツと国交のない、ソメヌ帝国から燃料供給を支援する、それは悪くはない」

 リックの息が耳にかかり、くすぐったい。
 彼の耳に手をあて顔を近づける。


「その真面目な話は、服を着てからされたらいかがですか? アリーチェ様は、今、王太子に何かしようとしてましたよね。もう、いい加減朝食にしてください」
 いつもの様に、呆れた顔をしているカレンが、わたし達を起こしに来た。

「カレンは勘違いをしているわ。肌を重ねると、より相手に考えが伝わる。わたし達は、その技法を使ってるだけよ」
「ふ~ん、それで昨日は、ミカエル殿下をここへ連れて来たんですか? そんなふざけた事を言ってないで、早く起きてください」

 わたしがキスをしようと触れていた、目の前にいるフレデリック様が、驚いた顔でわたしを覗き込んでいる。

 そして、フレデリック様の震えた声が部屋中に響く。
「ァァアリーチェが、ミカエルを部屋に連れ込んだ⁉」

 わたしを見つめたまま、固まってるフレデリック様は、断じて起こりえない、わたしとミカエル殿下の不純な事を想像している。
 しまった、と、咄嗟に起き上がり、クロエからタオルを奪い取って洗面所へ向かう。
 
  
 クロエ、それはフレデリック様に聞かせちゃまずいわ。
 まさかクロエが、サラリと大事な話を漏らすとは思っていなかった。
 いつも、何も言わなくてもわたしの気持ちを察してくれると、油断してた。
 そのせいで、昨日のうちに、口止めをするのを忘れていた。あ~、こんな失敗は、今までしたことなかった。

 酷いわクロエ、昨日、一緒に髪留めを探してあげたのに。
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