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第4章 夢の実現へ
呑気な妃③
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【SIDE アリーチェ】
今朝、わたしが、フレデリック様へ「もう1回って」我が儘な、お願いをしているのを、クロエに聞かれてしまった。
慌てて、もう1回化粧をする話だと誤魔化したら、何故か面倒な事になってしまった。
わたしが浮かれると、余り良い事が起き無いのは、分かっていたのに。
もう、しっかりしなきゃ。
王族居住区の衛兵に声をかけて、階段を駆け上った。
階段の踊り場まで登ったところで、前方から衝撃を受け、誰かと激しくぶつかったことを認識した。
ぁっ――! これはまずい。
間違い無く、このまま落ちると思った体勢になった。なのに、落下する直前に、グッと手を引っ張られ、男の人の胸の中に抱きかかえられている。
危なかった。
あんなに反動がついていれば、階段の下まで一気に落ちる所だった。
まじまじと、階段の下を見下ろせば、その恐怖で冷や汗がでた。
わたしを抱え込んでる、ミカエル殿下のお陰だ。
「ミカエル殿下のお陰で助かりました。危なく階段から落ちるところでした」
「いや、寧ろ、僕が避けられなかったせいで、申し訳なかった。痛い所は無いかい? 手を掴んだけど、大丈夫だろうか」
そう言って、心配そうにわたしの右手を撫でている。
心配性なのは、兄のフレデリック様と似ていて、微笑ましく感じてしまう。
フレデリック様は、わたしがちょっと怖がったくらいで、ご自分の大切な任命式中でさえ、わたしの事ばかり気にしてくれる程だもの。
でも、こんなんじゃ駄目だから。
マックスに甘えてばかりだったわたしは、もっと、大人になって、しっかりしないといけないから。
「痛い所はありませんから、大丈夫です。部屋に忘れ物を取りに行くのに、慌ててたから、よく前を見てなくて、申し訳ありませんでした」
「次は気をつけて、僕じゃ無かったら、本当に階段の下まで転がってたよ」
「そうですね。下まで落ちてたかと思うと、ゾッとします。あっ、わたし急いでるので、失礼します」
ミカエル殿下の腕を解き、離れようとした時。
離そうとした手を、ぎゅっと握られる。
「ねえ、アリーチェ妃は知ってた? この城からの景色って、部屋によって全然違うんだよ。僕や兄の部屋からは、一般開放されてない噴水が見えるけど、妃の部屋からは、王都の街並みが見えるんだ。悪いんだけど、アリーチェ妃の部屋の景色を見せてくれないだろうか? 他の部屋は、鍵がかかって入ることが出来ないんだ。どうしても、見たい所があって」
ミカエル殿下に、助けて頂いたのに断っていいのか、それも、窓の景色を見るだけの事を拒むのは、心が狭いんだろうかと迷ってしまう。
だけど、少しでも気になって、迷う位なら、断るのが正解でしょう。大概、わたしが気がかりな要素のある取引は、問題が起きるんだもん。
「部屋に……、人を入れるのは、ちょっと」
「そう。そんなに気にした顔をしなくても大丈夫だよ。やはり、アリーチェ妃は僕が思っていたような人だ。昔、ワーグナー公爵家の庭にいる、貴女を見たことがあって」
「そうですか。それは、いつですか」
「アリーチェ妃が10歳位の頃だよ。一目ぼれって言うのか、恥ずかしい話だけど、その後も、何度か、見に行ってしまったんだ」
ミカエル殿下は、嘘を吐いてる。理由は? もしかして、此処で衝突したのもわざとか?
急いでいたとはいえ、わたしは、前を見ていなかった訳では無いし、急に出てきたのは、ミカエル殿下の方だった。
わたしがいつもやってる、信用するかしないかを決める、罠に引っかかったから、この人を無暗に部屋に入れたくなかった。
考えたく無いけど、フレデリック様に何か企んでいるのかもしれない。
わたしは、弟が可愛いから、何をされても許せてしまう。きっと、フレデリック様だって。
ミカエル殿下は、前王妃のように、フレデリック様を暗殺しようと企んでいるのかしら? もしそうなら、直ぐにフレデリック様に伝えるべきだろうか……。
いや、マックスが、わたしの暗殺を企ててるなんて聞いても、わたしは絶対に信じない。
フレデリック様は、疑り深いから、わたしの事でさえ、間者だと思っていたんだもの。
これは、わたしが何とかするしかない。
「景色を見るだけなら、いいですよ。部屋に案内します」
「ありがとう、助かるよ」
やはり今、右側だけ口角が上がったわね。
わたしの部屋に何かを仕掛けると言うなら、証拠が残って、丁度いいわ。
今朝、わたしが、フレデリック様へ「もう1回って」我が儘な、お願いをしているのを、クロエに聞かれてしまった。
慌てて、もう1回化粧をする話だと誤魔化したら、何故か面倒な事になってしまった。
わたしが浮かれると、余り良い事が起き無いのは、分かっていたのに。
もう、しっかりしなきゃ。
王族居住区の衛兵に声をかけて、階段を駆け上った。
階段の踊り場まで登ったところで、前方から衝撃を受け、誰かと激しくぶつかったことを認識した。
ぁっ――! これはまずい。
間違い無く、このまま落ちると思った体勢になった。なのに、落下する直前に、グッと手を引っ張られ、男の人の胸の中に抱きかかえられている。
危なかった。
あんなに反動がついていれば、階段の下まで一気に落ちる所だった。
まじまじと、階段の下を見下ろせば、その恐怖で冷や汗がでた。
わたしを抱え込んでる、ミカエル殿下のお陰だ。
「ミカエル殿下のお陰で助かりました。危なく階段から落ちるところでした」
「いや、寧ろ、僕が避けられなかったせいで、申し訳なかった。痛い所は無いかい? 手を掴んだけど、大丈夫だろうか」
そう言って、心配そうにわたしの右手を撫でている。
心配性なのは、兄のフレデリック様と似ていて、微笑ましく感じてしまう。
フレデリック様は、わたしがちょっと怖がったくらいで、ご自分の大切な任命式中でさえ、わたしの事ばかり気にしてくれる程だもの。
でも、こんなんじゃ駄目だから。
マックスに甘えてばかりだったわたしは、もっと、大人になって、しっかりしないといけないから。
「痛い所はありませんから、大丈夫です。部屋に忘れ物を取りに行くのに、慌ててたから、よく前を見てなくて、申し訳ありませんでした」
「次は気をつけて、僕じゃ無かったら、本当に階段の下まで転がってたよ」
「そうですね。下まで落ちてたかと思うと、ゾッとします。あっ、わたし急いでるので、失礼します」
ミカエル殿下の腕を解き、離れようとした時。
離そうとした手を、ぎゅっと握られる。
「ねえ、アリーチェ妃は知ってた? この城からの景色って、部屋によって全然違うんだよ。僕や兄の部屋からは、一般開放されてない噴水が見えるけど、妃の部屋からは、王都の街並みが見えるんだ。悪いんだけど、アリーチェ妃の部屋の景色を見せてくれないだろうか? 他の部屋は、鍵がかかって入ることが出来ないんだ。どうしても、見たい所があって」
ミカエル殿下に、助けて頂いたのに断っていいのか、それも、窓の景色を見るだけの事を拒むのは、心が狭いんだろうかと迷ってしまう。
だけど、少しでも気になって、迷う位なら、断るのが正解でしょう。大概、わたしが気がかりな要素のある取引は、問題が起きるんだもん。
「部屋に……、人を入れるのは、ちょっと」
「そう。そんなに気にした顔をしなくても大丈夫だよ。やはり、アリーチェ妃は僕が思っていたような人だ。昔、ワーグナー公爵家の庭にいる、貴女を見たことがあって」
「そうですか。それは、いつですか」
「アリーチェ妃が10歳位の頃だよ。一目ぼれって言うのか、恥ずかしい話だけど、その後も、何度か、見に行ってしまったんだ」
ミカエル殿下は、嘘を吐いてる。理由は? もしかして、此処で衝突したのもわざとか?
急いでいたとはいえ、わたしは、前を見ていなかった訳では無いし、急に出てきたのは、ミカエル殿下の方だった。
わたしがいつもやってる、信用するかしないかを決める、罠に引っかかったから、この人を無暗に部屋に入れたくなかった。
考えたく無いけど、フレデリック様に何か企んでいるのかもしれない。
わたしは、弟が可愛いから、何をされても許せてしまう。きっと、フレデリック様だって。
ミカエル殿下は、前王妃のように、フレデリック様を暗殺しようと企んでいるのかしら? もしそうなら、直ぐにフレデリック様に伝えるべきだろうか……。
いや、マックスが、わたしの暗殺を企ててるなんて聞いても、わたしは絶対に信じない。
フレデリック様は、疑り深いから、わたしの事でさえ、間者だと思っていたんだもの。
これは、わたしが何とかするしかない。
「景色を見るだけなら、いいですよ。部屋に案内します」
「ありがとう、助かるよ」
やはり今、右側だけ口角が上がったわね。
わたしの部屋に何かを仕掛けると言うなら、証拠が残って、丁度いいわ。
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