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第3章 貴女をずっと欲していた
アリーチェを手にするのは⑧
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【SIDE アリーチェ】
目の前に来たマックスに、わたしは頭を撫でられている、そして、こう言われた。
「父上は、姉上と殿下のことで余りいい噂を聞かなかったから、姉上に見合う相手を国の外で探している。父は、ああ見えて姉上のことを一番心配しているから」
わたしは、ギュゥっと、少し苦しいくらいにマックスに抱きしめられ、弟の胸に顔をうずめていた。
予想外の流れに戸惑うわたしは、どうしていいか分からずにいる。
「マックス?」
「姉上は、もう2度と他の男のところに行かないで。僕と一緒に我が家の事業をしよう。僕は姉上を誰にも渡したくない」
「それは困る。だって、わたし子どもが欲しいもの。王子様みたいな男の子から、母と結婚するんだって言われるのに憧れているんだから」
冗談を言うマックスの胸を両腕で、おもいきり押して離れた。
わたしが真面に取り合わないからか、マックスは一瞬だけ悲しい顔をしていた。
わたしがマックスから目を逸らせば、ぎゅっと手を握られ、真剣な視線を向けられる。
あっ――……。
いくらわたしでも、これだけされれば冗談や悪戯でないことは、弟の表情で理解できる。
「それは僕たちの子どもの問題だけだ。そこだけ、何とかすればいい。僕は姉上に何でもしてあげられる。僕は、姉上が産んだ子であれば、2人の子として育てていける。この国の王城でさえ暮らせない姉上が、外の国に嫁いでも真面に暮らせないのは、もう分かるでしょう。父上の話は本当だから。父上の意見に姉上が流されてしまう前に、自分の気持ちをしっかり考えて。僕は、姉上が一番欲しいものを授けてあげられない。だけど、僕が選んだ貴女の相手は、今、貴女自身で取り戻す証拠を見つけたんだから」
「マックス、それ……、本気なの?」
「長い間、言いたくても言えなかった。でも、やっと伝えられるときがきた。姉上のことが好きなんだ、昔からずっと貴女のことを愛してる」
「愛してるって、そんなこと、急に言われても困る。分からない」
「じゃあ今から考えて。僕は、父上が帰ってくる前に、貴女を抱くつもりだ。父のことは僕が説得する」
予想もしていない言葉に動揺して、頭が真っ白になった。
「マ、マックス抱くって! 無理、考えられない」
「貴女にとって、弟にしか見えない僕に抱かれる方が、貴女がまともに暮らせない国へ行くより、よっぽどましだと僕は思っている。僕は、これまでどおり夜は貴女の元へ行く。でも、本当に僕が嫌なら、僕の手をとらなければいい」
マックスはそう言って、わたしの髪をひとしきり撫でて、城へわたしが見つけた証拠を持っていくと、時間を気にしながら立ち去った。
わたしは弟の気持ちに全く気付いていなかったから、直ぐに、弟の言葉を信じられずにいる。
わたし達は、双子の姉弟なのに、弟と体を重ねるなんて、出来る訳がない。
わたしを抱きしめる弟の雰囲気が、いつもと全く違い、わたしには戸惑いしかなかった。
マックスがわたしのことを愛している……そんなことって……。
それに気付かなかったのは、弟にしか見えなかったせいなのか、それとも、わたしがリックを追い続けていたからなのか……、分からない。
でも、どんなに弟から愛を囁かれても、まだ、そんな関係は考えられない。
もう少し時間が経てば、自分の気持ちが変わるのか? 今は何も実感が湧かない。
目の前に来たマックスに、わたしは頭を撫でられている、そして、こう言われた。
「父上は、姉上と殿下のことで余りいい噂を聞かなかったから、姉上に見合う相手を国の外で探している。父は、ああ見えて姉上のことを一番心配しているから」
わたしは、ギュゥっと、少し苦しいくらいにマックスに抱きしめられ、弟の胸に顔をうずめていた。
予想外の流れに戸惑うわたしは、どうしていいか分からずにいる。
「マックス?」
「姉上は、もう2度と他の男のところに行かないで。僕と一緒に我が家の事業をしよう。僕は姉上を誰にも渡したくない」
「それは困る。だって、わたし子どもが欲しいもの。王子様みたいな男の子から、母と結婚するんだって言われるのに憧れているんだから」
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あっ――……。
いくらわたしでも、これだけされれば冗談や悪戯でないことは、弟の表情で理解できる。
「それは僕たちの子どもの問題だけだ。そこだけ、何とかすればいい。僕は姉上に何でもしてあげられる。僕は、姉上が産んだ子であれば、2人の子として育てていける。この国の王城でさえ暮らせない姉上が、外の国に嫁いでも真面に暮らせないのは、もう分かるでしょう。父上の話は本当だから。父上の意見に姉上が流されてしまう前に、自分の気持ちをしっかり考えて。僕は、姉上が一番欲しいものを授けてあげられない。だけど、僕が選んだ貴女の相手は、今、貴女自身で取り戻す証拠を見つけたんだから」
「マックス、それ……、本気なの?」
「長い間、言いたくても言えなかった。でも、やっと伝えられるときがきた。姉上のことが好きなんだ、昔からずっと貴女のことを愛してる」
「愛してるって、そんなこと、急に言われても困る。分からない」
「じゃあ今から考えて。僕は、父上が帰ってくる前に、貴女を抱くつもりだ。父のことは僕が説得する」
予想もしていない言葉に動揺して、頭が真っ白になった。
「マ、マックス抱くって! 無理、考えられない」
「貴女にとって、弟にしか見えない僕に抱かれる方が、貴女がまともに暮らせない国へ行くより、よっぽどましだと僕は思っている。僕は、これまでどおり夜は貴女の元へ行く。でも、本当に僕が嫌なら、僕の手をとらなければいい」
マックスはそう言って、わたしの髪をひとしきり撫でて、城へわたしが見つけた証拠を持っていくと、時間を気にしながら立ち去った。
わたしは弟の気持ちに全く気付いていなかったから、直ぐに、弟の言葉を信じられずにいる。
わたし達は、双子の姉弟なのに、弟と体を重ねるなんて、出来る訳がない。
わたしを抱きしめる弟の雰囲気が、いつもと全く違い、わたしには戸惑いしかなかった。
マックスがわたしのことを愛している……そんなことって……。
それに気付かなかったのは、弟にしか見えなかったせいなのか、それとも、わたしがリックを追い続けていたからなのか……、分からない。
でも、どんなに弟から愛を囁かれても、まだ、そんな関係は考えられない。
もう少し時間が経てば、自分の気持ちが変わるのか? 今は何も実感が湧かない。
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