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挿話
7歳のフレデリック②
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【SIDE 7歳のフレデリック第1王子(リック)】
「さっきからベンチを転々としていたから、君のお陰で助かったよ」
「まあ、そうだったの。じゃあ、わたしが隣に座って、変なのが来たら追っ払ってあげるわ」
くくっ、この子、その言葉を言い終わる前から既にベンチに座っているけど、マイペースだな。
「君は歴史が好きなのか?」
「うーん、別に好きじゃないわね。ただ、暇だから覚えただけね。あなたは何の本を読んでるの?」
「建築に関する本」
「ん? あなた商人の家の子よね、将来大工になりたいの?」
「いや、そうじゃないけど、色んなことを勉強したくて、本を読んでいるだけだ」
「うん、やっぱり文字が読めるのは大事よね、色んなことを学べるものね。学校ができて、この国の子ども達が、読み書きできるようになれば、将来なりたい仕事にだって就けると思っているのよ」
「誰でも通える学園とかが、あればいいのかもしれないな。君は将来何になりたいの」
「わたしはね……、お嫁さん」
「えっ、まるで何かやりたい仕事があるのかと思えば、お嫁さんなのか?」
「そうよ、変かしら。だって、母のような優しいお母さんになりたいから。あなたのお母様は、どんな方なの」
「僕はあまり知らないけど、皆が教えてくれる母上は、僕の理想の女性だな。ねぇ、君は僕のお嫁さんになるといいよ」
「なっ、何を言っているの。そんなの無理よ。わたしは父が決めた相手と結婚しなきゃならないんだから」
「大丈夫だよ。僕が君をお嫁さんにするって決めたから。名前は」
「あぅ、ぅんーと。そう、父には気安く名前を言っちゃ駄目だって教わっているから無理よ、教えられない」
「ふーん、僕はリックだ。君は呼んで欲しい愛称を教えてくれたいいよ」
「それだったら……、リーって呼んで」
「僕がリーを将来迎えにいくとき、君の欲しい物を持って迎えにいくよ」
さっきまで、僕を疑うような目をしていたけど、目がキラキラしている。
おっ、やっぱり令嬢は物をあげると言えば喜ぶのか。
「えっ本当! じゃぁ、サンドイッチがいい、好きなんだ」
「たっ食べ物か……、思っていた答えと違ったな」
令嬢なら身に着ける物を、言ってくるかと思ったが、まぁ、何でもいいか。
将来、彼女を見つけたときに、念のため確認する事項は、手に入れたことになるか。
「リックは何が好きなの?」
「リーに合わせるなら……。父が毎年この時期に仕事先から持ってくる、フィナンシエかな。今度リーも一緒に食べよう美味しいから」
フレンツ王国のフィナンシエは、他国へ広げるつもりはない伝統的な菓子だ。
レシピがこの国へ入ってくることはないから、リーと食べるなら、フレンツへ一緒に行ったときか。
「父は許してくれないから無理よ」
「じゃあ将来、結婚した後に一緒に食べよう」
「はぃっ? だから、どうしていきなり結婚の話になるのよ」
「僕が君を好きになって、嫁にするならリーしかいないと思った。それ以上の理由はいらないだろう」
「無理だってば、父が許してくれないから」
と言いつつも、嬉しそうにしている姿が可愛いくて、僕の心をくすぐる。
不思議だな、この子の隣は何だか落ち着く。
「リーはそんな心配しなくても大丈夫だ。僕が絶対に探して迎えにいく。必ず待ってて」
頬を赤く染めたリーは、コクッと恥ずかしそうに頷いてくれた。
リーと一緒なら、この国を変えられる気がする。
名前が分からなくても、会えば直ぐにわかるはずだ。
この国の建国史を言えるくらいの教養があるなら、高位貴族で間違いない。
将来、出会う機会はたくさんある。
ストロベリーブロンドの髪に、緑色の瞳。
この国で珍しい色彩の令嬢を見つけることくらい、簡単だろう。
「さっきからベンチを転々としていたから、君のお陰で助かったよ」
「まあ、そうだったの。じゃあ、わたしが隣に座って、変なのが来たら追っ払ってあげるわ」
くくっ、この子、その言葉を言い終わる前から既にベンチに座っているけど、マイペースだな。
「君は歴史が好きなのか?」
「うーん、別に好きじゃないわね。ただ、暇だから覚えただけね。あなたは何の本を読んでるの?」
「建築に関する本」
「ん? あなた商人の家の子よね、将来大工になりたいの?」
「いや、そうじゃないけど、色んなことを勉強したくて、本を読んでいるだけだ」
「うん、やっぱり文字が読めるのは大事よね、色んなことを学べるものね。学校ができて、この国の子ども達が、読み書きできるようになれば、将来なりたい仕事にだって就けると思っているのよ」
「誰でも通える学園とかが、あればいいのかもしれないな。君は将来何になりたいの」
「わたしはね……、お嫁さん」
「えっ、まるで何かやりたい仕事があるのかと思えば、お嫁さんなのか?」
「そうよ、変かしら。だって、母のような優しいお母さんになりたいから。あなたのお母様は、どんな方なの」
「僕はあまり知らないけど、皆が教えてくれる母上は、僕の理想の女性だな。ねぇ、君は僕のお嫁さんになるといいよ」
「なっ、何を言っているの。そんなの無理よ。わたしは父が決めた相手と結婚しなきゃならないんだから」
「大丈夫だよ。僕が君をお嫁さんにするって決めたから。名前は」
「あぅ、ぅんーと。そう、父には気安く名前を言っちゃ駄目だって教わっているから無理よ、教えられない」
「ふーん、僕はリックだ。君は呼んで欲しい愛称を教えてくれたいいよ」
「それだったら……、リーって呼んで」
「僕がリーを将来迎えにいくとき、君の欲しい物を持って迎えにいくよ」
さっきまで、僕を疑うような目をしていたけど、目がキラキラしている。
おっ、やっぱり令嬢は物をあげると言えば喜ぶのか。
「えっ本当! じゃぁ、サンドイッチがいい、好きなんだ」
「たっ食べ物か……、思っていた答えと違ったな」
令嬢なら身に着ける物を、言ってくるかと思ったが、まぁ、何でもいいか。
将来、彼女を見つけたときに、念のため確認する事項は、手に入れたことになるか。
「リックは何が好きなの?」
「リーに合わせるなら……。父が毎年この時期に仕事先から持ってくる、フィナンシエかな。今度リーも一緒に食べよう美味しいから」
フレンツ王国のフィナンシエは、他国へ広げるつもりはない伝統的な菓子だ。
レシピがこの国へ入ってくることはないから、リーと食べるなら、フレンツへ一緒に行ったときか。
「父は許してくれないから無理よ」
「じゃあ将来、結婚した後に一緒に食べよう」
「はぃっ? だから、どうしていきなり結婚の話になるのよ」
「僕が君を好きになって、嫁にするならリーしかいないと思った。それ以上の理由はいらないだろう」
「無理だってば、父が許してくれないから」
と言いつつも、嬉しそうにしている姿が可愛いくて、僕の心をくすぐる。
不思議だな、この子の隣は何だか落ち着く。
「リーはそんな心配しなくても大丈夫だ。僕が絶対に探して迎えにいく。必ず待ってて」
頬を赤く染めたリーは、コクッと恥ずかしそうに頷いてくれた。
リーと一緒なら、この国を変えられる気がする。
名前が分からなくても、会えば直ぐにわかるはずだ。
この国の建国史を言えるくらいの教養があるなら、高位貴族で間違いない。
将来、出会う機会はたくさんある。
ストロベリーブロンドの髪に、緑色の瞳。
この国で珍しい色彩の令嬢を見つけることくらい、簡単だろう。
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